デュピクセントとは?
デュピクセント(一般名:デュピルマブ)は、炎症と関係が深い「サイトカイン」というたんぱく質の働きをおさえる薬剤です。デュピクセントは、サイトカインの一種である「IL-4」と「IL-13」の働きを直接阻害して炎症やかゆみをおさえることから、従来の治療では十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎や特発性の蕁麻疹などにも高い効果が期待できます。
デュピクセントの特徴
使用上のメリット
デュピクセントは既存の薬剤(抗ヒスタミン薬やステロイド薬など)とは異なり、炎症の原因であるサイトカインそのものをおさえます。そのため、より根本的な治療といえます。
また、飲み薬や塗り薬のように毎日服用・外用する必要はなく、アトピー性皮膚炎や結節性痒疹、特発性の慢性蕁麻疹などの皮膚疾患に使う場合は基本的に2週間に1度の投与で済みます。
そのほか、自己注射が可能なこと、アトピー性皮膚炎については生後6ヵ月から使用できることなども大きなメリットといえるでしょう。
臨床効果
ここでは、皮膚科領域の臨床試験の結果をいくつか紹介します。
アトピー性皮膚炎に対する効果
ステロイド外用剤で十分な効果が見られなかった中等症以上のアトピー性皮膚炎の方を対象とした臨床試験では、投与開始から16週間で68.9%の方に症状の大幅な改善が見られました。かゆみについては投与開始から2週間で有意に改善され、16週間でかゆみに関するスコアが56.6%減少しました。
また、中等症以上の小児アトピー性皮膚炎の方を対象とした臨床試験(ステロイド外用薬との併用療法)では、投与開始から16週間で43.3%の方に症状の大幅な改善が見られました。かゆみに関するスコアについては、投与開始から16週間で39.45%減少しました。
結節性痒疹に対する効果
外用薬ではコントロールが不十分、あるいは外用薬の使用が推奨されない結節性痒疹の方を対象とした臨床試験において、デュピクセントを24週間投与したグループではそう痒および皮膚病変、健康関連の生活の質がプラセボ群に比べて有意に改善されました。
特発性の慢性蕁麻疹に対する効果
第二世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬の使用で十分な効果が見られなかった方を対象とした臨床試験において、デュピクセントを24週間投与したグループでは、そう痒の重症度スコアがプラセボ群に比べて統計的に有意に改善されました。
デュピクセントの効能効果・用法用量
効能効果
デュピクセントは規格ごとに適応疾患が異なります。
300mgペンおよび300mgシリンジについては、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎、結節性痒疹、特発性の慢性蕁麻疹、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に適応があります。
200mgシリンジについては、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎および特発性の慢性蕁麻疹に適応があります。
用法用量
ここでは、皮膚科領域の疾患に関する用法用量を紹介します。
アトピー性皮膚炎
成人の場合
デュピクセントを初回に600mg皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。
小児の場合
生後6カ月以上の小児については、デュピクセントを体重に応じて皮下投与します(下表参照)。
結節性痒疹
通常、成人にはデュピクセントを初回に600mg皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。
特発性の慢性蕁麻疹
成人の場合
デュピクセントを初回に600mg皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。
小児の場合
12歳以上の小児については、デュピクセントを体重に応じて皮下投与します(下表参照)。
当院におけるデュピクセントの投与について
導入前のご相談
当院ではデュピクセントのオンライン診療に対応しております。デュピクセント投与可否の判定は全身の皮膚症状スコアの算出が必要なため、一度はご来院いただく必要があります。
なお、遠方にお住まいの場合などご来院が難しい患者さまについては、まず当院のオンライン診療をご利用いただくことをおすすめしております。オンラインにて詳しくお話を伺い、適応がありそうな場合にご来院いただくことで、少しでも患者さまのご不安の解消につながればと考えています。
» オンライン診療の詳細はこちら
デュピクセント導入に際し、オンライン診療の初回相談をご希望の方は、アトピー専用フォームよりご連絡ください。フォーム内の「ご相談内容」に▼初回オンライン診療希望▼とご記入いただきますようお願いいたします。
他院にて導入済みの方
すでに他院で導入済みの方についても対応可能です。自己注射されている方であれば、初診時でもデュピクセントの処方が可能です。デュピクセント導入時の医師の皮膚症状の評価をお持ちいただくとスムーズです。状況を確認させていただくため、下記のリンクよりご相談ください。
» 他院で治療中の方はこちら
自己注射について
デュピクセントは自己注射が可能な製剤ですので、指導を受けた患者さまはご自身で投与できます。ただし、自己注射にするか、院内注射を継続するかは患者さまとご相談しながら決めています。
なお、自己注射を選択された場合、当院では1回につき最長3ヵ月分(6本)の処方が可能です。自己注射を選択して医療費助成制度を利用すると、自己負担額をおさえられます。
注射お知らせサービス(無料)
自己注射をお選びいただいた方は、2週間に1度の注射の打ち忘れ防止のための注射お知らせサービス(無料)がご利用できます。
メールアドレスと注射予定日を登録するだけで決まった曜日にメールが届きますので、ぜひご活用ください。
デュピクセントの使用上の注意点
デュピクセント保管時の注意
デュピクセントは、使用する直前まで箱に入れたまま2~8度で保管する必要があります。適切な温度管理ができなかった場合、あるいは一度でも凍結してしまった場合は使用できなくなりますので、ご注意ください。
ご自宅までの持ち運びには、保冷バッグや十分に冷やした保冷剤をご利用ください。デュピクセントを受け取ったあとはすみやかに持ち帰り、ご自宅の冷蔵庫で保管してください。
なお、薬液の凍結を避けるため、冷凍庫やチルド室、野菜室、冷気の吹き出し口付近では保管しないでください。また遮光のため、外箱に入れたまま保管してください。
デュピクセントを打ってはいけない例
デュピクセントの成分にアレルギー歴がある場合は、デュピクセントを使用できません。使用すると重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあるため、必ず事前にお知らせください。
デュピクセントの副作用
デュピクセントのおもな副作用として、注射部位の赤みや腫れなどが報告されています。また、デュピクセントに特徴的な副作用として結膜炎が報告されています。
その他、重大な副作用としてアナフィラキシーが報告されています。アナフィラキシーはデュピクセント投与直後だけに起こるとは限らないため、ふらつき感や息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気や嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱などがあらわれた場合は、すみやかに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、デュピクセントとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、デュピクセントの投与によって、合併する他のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があります。そのような場合に適切な治療を怠ると症状が急激に悪化して、喘息などでは死亡に至る可能性も否定できません。
そのため、他院で治療を受けている場合は、服用薬の有無にかかわらずお知らせください。また、自己判断で治療内容を変更するのも避けてください。
特定の患者さまの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用
デュピクセントは、動物を対象とした試験で胎盤を通過することが確認されています。また、乳汁中へ移行する可能性も否定できません。そのため、妊娠している場合あるいは妊娠の可能性がある場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮して授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎について低出生体重児、新生児および生後6ヵ月未満の乳児を対象とした臨床試験を実施していません。同様に、結節性痒疹については小児などを対象とした臨床試験を実施していません。特発性の慢性蕁麻疹については、6歳未満の小児を対象とした臨床試験を実施しておらず、6歳以上12歳未満の小児に対する投与経験は極めて限られています。したがって、ご家庭では誤投与を防ぐため、お子さまがデュピクセントを勝手に持ち出すことがないよう十分にご注意ください。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方は、一般に生理機能(免疫機能など)が低下しています。
そのため、デュピクセントの使用にあたっては状態を観察しながら慎重に投与を行います。
デュピクセントの患者さま負担・薬価について
デュピクセントの薬剤費は以下のとおりです。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがデュピクセント皮下注300mgシリンジ2mLを2筒処方された場合、ご負担金額は36,913.8円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、1ヵ月の医療費の支払い額(自己負担額)が高額になる場合は、高額療養費制度などの負担軽減措置が受けられることもありますので、詳しくは、ご加入の保険者(市町村や企業の健保組合)にご確認ください。
よくあるご質問
- デュピクセントはどれくらいで効果が出ますか。いつまで続ければいいですか。やめたらどうなりますか?
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デュピクセントは投与開始後16週間(約4ヵ月)で効果判定をしますが、多くの方は1~2回の注射でかゆみや皮膚症状の改善を実感されています。そして、効果が認められた場合、約一年は治療を継続します。
ただ、デュピクセントによってほとんど皮膚症状がないくらいまでコントロールができていても、治療を中止すると半年から一年ぐらいかけて徐々に増悪していきます。良好な状態を維持するためには治療の継続が必要ですが、中止をご希望する場合はご相談ください。
- デュピクセントは顔の症状にも効きますか?
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体に比べると顔には効きにくいことがあります。実際、一回目の注射後に効果が出てくる場合もあれば、身体より遅れて効果が出る場合もあります。また、まれに赤みが増強することがあります。
顔面に限らず、症状が改善しない場合は外用薬や他の注射・内服薬に変更することもありますので、ご承知ください。