フォシーガとは?
フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)は、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2を選択的に阻害する薬剤です。
SGLT2とは、腎臓の近位尿細管におけるグルコース(糖)の再吸収で重要な役割を担う輸送体です。フォシーガは、SGLT2を競合的かつ可逆的に阻害してグルコースの再吸収を抑制し、尿中グルコース排泄を促すことにより、血糖コントロールを改善します。
また、体液量の補正や血圧低下、血行動態の改善などさまざまな作用により、慢性心不全や慢性腎臓病を改善する効果も期待できます。
なお、「フォシーガ(forxiga)」という名称は、患者さまのため・患者さまの家族のため・医師のためを表す「for」と、inhibit glucose absorption(糖の吸収を阻害する)の頭文字の「iga」を掛け合わせる(x)ことで、既存の血糖降下薬にはない新たな作用であることを表現しているそうです。
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フォシーガの特徴
フォシーガは、2型糖尿病だけでなく1型糖尿病にも適応があり、慢性心不全や慢性腎臓病の治療にも使用される薬剤です。血糖降下作用がインスリンに依存しないため、単独で用いる場合は低血糖の発生リスクが低いとされています。糖尿病の有無に関係なく左室駆出率の低下した慢性心不全に適しており、標準的な治療に追加することで予後の改善が期待できます。また、食事の影響を受けないため、食前でも食後でも服用できるという利点もあります。
適応疾患・用法用量
フォシーガは、2型糖尿病、1型糖尿病、慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている場合に限る)、慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の場合を除く)に適応があります。
効能効果ごとの用法用量は、以下のとおりです。
血糖降下作用
2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、フォシーガの服用でHbA1cが平均で0.41~0.45低下したという結果が得られています。また、別の臨床試験では、長期間にわたって安定した血糖コントロールが得られたことが報告されています。
また、インスリンによる治療で血糖コントロールが十分にできていない1型糖尿病の方を対象とした試験では、インスリンとフォシーガの併用でHbA1cが平均で0.36~0.40低下したという結果が得られています。
慢性心不全に対する効果
標準的な治療を受けている慢性心不全の方を対象とした臨床試験では、フォシーガの服用で心不全関連イベント(心血管死、心不全圧下による入院など)が26%低下しました。
つまり、標準的な治療にフォシーガを追加することで、心不全悪化のリスクや死亡がおさえられ、生命予後が改善される可能性が示唆されたということになります。
慢性腎臓病に対する効果
標準的な治療を受けている慢性腎臓病の方を対象とした臨床試験では、標準的な治療にフォシーガを追加することで病状の悪化(腎機能の悪化、末期腎不全への進行、心血管死、腎不全による死亡)が相対的に39%低下することが示されました。この試験では、副作用についても大きな問題がないことが確認されています。
フォシーガを服用する上での注意点
フォシーガを服用できない方
以下に該当する場合は、フォシーガの服用が禁忌とされています。
- フォシーガの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の方(輸液、インスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、フォシーガの投与は適しません。)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(糖尿病を有する場合、インスリン注射による血糖管理が望まれるため、フォシーガの投与は適しません。)
服用に注意が必要な方
以下の場合は、フォシーガの服用に注意が必要です。
- 脱水を起こしやすい場合(血糖コントロールが極めて不良な糖尿病、高齢者、利尿薬を併用している、など)(フォシーガの利尿作用により、脱水を起こすおそれがあります。)
- 尿路感染や性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
- 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(フォシーガの服用で低血糖の発生リスクが高くなります)
- 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
- 栄養不良状態
- 飢餓状態
- 不規則な食事摂取
- 食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
- 激しい筋肉運動を行う場合
- 過度のアルコール摂取がある場合
- 1型糖尿病を合併する慢性心不全の方および慢性腎臓病の方(ケトアシドーシスを起こすおそれがあります。)
フォシーガの副作用
おもな副作用として、性器感染や尿路感染(膀胱炎など)が報告されています。その他、便秘や口渇、頻尿や尿量の増加なども報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、腎盂腎炎、敗血症、脱水などが報告されています。重大な副作用が発生することは稀ですが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診して治療を受けたりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、フォシーガとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬、利尿薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 糖尿病薬:血糖降下作用が相加的に増強するおそれがあります。
- 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
- 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
- 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。
なお、フルイトランはアルコールと併用すると降圧作用が増強されるおそれがあるため、アルコールとの併用にも注意が必要とされています。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
重度の腎機能障害がある場合、あるいは末期腎不全で透析中の場合は、フォシーガの血糖降下作用が期待できません。また、腎機能障害が中等度であっても、十分な血糖降下作用が得られない場合があります。そのため、腎機能障害がある方にフォシーガを使用する場合は、定期的に検査を行うなどして投与の必要性を慎重に判断します。
慢性心不全や慢性腎臓病に用いる場合も、腎機能障害の悪化などに留意しながら投与の必要性を判断していきます。
肝機能障害がある方への使用
肝機能障害がある方では、フォシーガの代謝が遅延するおそれがあります。また、フォシーガは、重度の肝機能障害がある方に対して長期の使用経験がありません。
そのため、肝機能障害がある方へフォシーガを使用する場合は、慎重に投与を進めていきます。
妊娠中の方への使用
フォシーガを妊娠中の方に投与した場合の安全性は確立されていません。
なお、動物を対象とした試験では、フォシーガが胎児へ移行することが確認されており、出生児の腎盂および尿細管の拡張が認められたとの報告もあります。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはフォシーガを投与せず、糖尿病がある場合はインスリン製剤などを使用します。
授乳中の方への使用
フォシーガは、授乳中の方を対象とした臨床試験を実施しておらず、安全性が確立していません。一方で、動物を対象とした試験では、フォシーガが乳汁中へ移行することが明らかになっています。
したがって、授乳中の方にフォシーガを使用する場合は、授乳を中止するのが望ましいとされています。
お子さまへの使用
フォシーガは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、フォシーガの保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方においては、副作用の一つである脱水症状(口渇など)の自覚が乏しい場合があります。そのため、高齢の方へフォシーガを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現などに注意しながら、慎重に治療を進めていきます。
水分補給に関する注意点
血糖値の高い方がフォシーガを服用すると、尿量が増えて脱水症状があらわれることがあります。糖尿病の治療としてフォシーガを服用する場合は、脱水予防のためにこまめに水分を摂取するようにしてください。
ただし、アルコール摂取は水分補給になりません。また、糖分を含む清涼飲料水は血糖コントロールを悪化させるため、避ける必要があります。
なお、心不全や腎臓病がある場合は過剰な水分摂取で症状が悪化することもあるため、診察時にご相談ください。
性器感染・尿路感染に関する注意点
フォシーガなどSGLT2阻害薬の特徴的な副作用として、性器感染や尿路感染(膀胱炎など)があります。これは、SGLT2阻害薬の作用により尿中に糖分が多く排出され、尿路や陰部で雑菌などが繁殖しやすくなるためです。
性器感染症・尿路感染症は治療が遅れると、腎盂腎炎や敗血症などをまねくこともあります。気になる症状がある場合は、すみやかに受診して適切な治療を受けてください。
低血糖に関する注意点
フォシーガの服用で血糖値が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取しましょう。
糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
フォシーガの患者さま負担・薬価について
フォシーガには、5mgと10mgの2規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがフォシーガ錠5mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1611.0円になります(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- 1型糖尿病です。フォシーガを服用するようになってから、インスリンの投与量が減りました。インスリンの投与量をゼロにすることもできるのでしょうか?
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フォシーガはインスリン製剤の代替薬ではありません。特に1型糖尿病の方の場合、体内でインスリンを産生できないため、インスリンを中断することはできません。インスリンの投与を中止すると、急激な高血糖やケトアシドーシスが生じるおそれがあるため、自己判断でインスリンの投与を中断しないでください。
- 副作用の尿路感染や性器感染が心配です。日常生活で気を付けることはありますか?
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日常生活の注意点としては、尿意を我慢しないこと・排尿や排便のあとは陰部を清潔に保つこと、などが大切です。
なお、感染症の初期症状に気が付いたら、すぐに受診して適切な治療を受けてください。気付きやすい自覚症状としては、以下のようなものがあります。
- 排尿時の痛みや灼熱感
- 頻繁な尿意
- 陰部のかゆみや痛み
など。
女性の場合は、以下のような症状があらわれることもあります。
など。
- フォシーガを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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次の服用時間まで半日以上あるときに飲み忘れに気付いた場合は、できるだけ早く1回分を服用してください。次の服用時間まで半日未満の場合は、服用を1回飛ばして次の服用時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。