休んでも抜けない倦怠感ー鉄分、足りていますか?
「ちょっと動いただけで息が上がる」
「顔色が良くないと言われることがある」
「何となくいつもだるい」
―このような日々の不調は、もしかすると鉄不足が関係しているかもしれません。
特に女性は、月経や妊娠・授乳などにより鉄の必要量が高まります。
しかし、食事だけで体に必要な鉄を摂取するのは簡単ではありません。
そのため、鉄不足が気になる場合は、サプリメントを活用するのも方法の一つです。
鉄の働きと食品に含まれる鉄の種類
鉄はヒトの体内に約3~5gあるとされていますが、約7割は赤血球や筋肉のなかに存在します。
そして残りのほとんどは、肝臓や脾臓、骨髄などにストックされています。
赤血球中の鉄は全身に酸素を運ぶ役割を担っていますが、鉄不足になると酸素が十分に供給できなくなり、「(鉄欠乏性)貧血」の症状(集中力の低下、頭痛、食欲不振など)があらわれてきます。
また、筋肉中の鉄の量が少なくなると、筋力の低下や疲労感なども生じてきます。
なお、食べ物に含まれる鉄には、たんぱく質と結合した「ヘム鉄」と、たんぱく質と結合していない「非ヘム鉄」の2種類があります。
「ヘム鉄」は、肉類や魚などの動物性食品に多く含まれる成分です。
ヘム鉄はたんぱく質に包まれた状態になっているため、ほかの食品と一緒に摂取しても吸収を妨げられにくく、15~25%程度は体に取り込まれるといわれています。
一方、「非ヘム鉄」は野菜などの植物性食品に含まれる成分です。
非ヘム鉄の吸収率は5%程度と高くありませんが、動物性たんぱく質やビタミンCなどと一緒に摂取すると吸収率が高くなります。
鉄は若い女性に不足しがちな栄養成分
鉄は、毎日の食事などから積極的に摂取しなければならない必須ミネラルの一つです。
鉄の食事摂取基準(推奨量)は成人男性で6.5~7.5mg/日、成人女性で5.5~10.5mg/日ですが、月経のある女性や妊婦・授乳婦で摂取量が足りていません。
表:鉄の食事摂取基準(推奨量)(mg/日)と実際の摂取量(1日当たり平均値:mg/日)
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書および令和5年「国民健康・栄養調査」より作成
鉄は、赤身の肉や身の赤い魚(カツオなど)、アサリやシジミ、ヒジキ、大豆や納豆、小松菜などに比較的多く含まれています。
また、鉄のフライパンなど鉄製の調理器具を使うと摂取量を増やせることが知られています。
一方で、タンニン(コーヒーや紅茶などに含まれる成分)や食物繊維などは、鉄(特に非ヘム鉄)の吸収を阻害するため、食べ合わせに注意が必要です。
排泄によって失われる鉄の量は、1日あたりわずか1mgです。
しかし、鉄は吸収率が低く、他の食べ物によって吸収が阻害される可能性があることを考えると、毎日それなりの量を摂取しなければなりません。
したがって、鉄不足が心配な場合はサプリメントなどで補うのも方法の一つといえます。
「ヘム鉄」の特徴
「ヘム鉄」とは
「ヘム鉄」は、2粒で鉄が9mg摂取できるサプリメントです。
動物(ブタ)由来のヘム鉄なので体に吸収されやすく、食事だけでは補いきれない鉄を効率よく摂取できます。
「ヘム鉄」の成分など
- エネルギー:2.54kcal、たんぱく質:0.34g、脂質:0.05g、炭水化物:0.17g、ナトリウム:2.48mg(食塩相当量0.006g)
- アレルギー表示(特定原材料等28品目)なし
- 配合栄養素(2カプセルあたり)栄養成分:鉄 9mg(ヘム鉄として450mg)
「ヘム鉄」の摂取方法
「ヘム鉄」は、1日2~4カプセルを目安に、水などで摂取してください。
摂取タイミングは特に決まっていません。
飲み忘れがないように、毎日の摂取時間をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
「ヘム鉄」はこんな方におすすめ
「ヘム鉄」は、体に吸収されやすいヘム鉄を配合した医療機関専用サプリメントです。
そのため、以下のような方におすすめです。
- 月経による鉄不足が心配な方
- 食が細く動物性食品をあまり摂らない方
- 休んでも疲れが抜けない方
- 市販の健康食品に不安がある方
「ヘム鉄」を摂取するうえでの注意点
摂取にともない生じる可能性のある体調変化
鉄は胃腸を刺激しやすい成分であるため、「ヘム鉄」を摂取すると胃の痛みや不快感、軟便や便秘などの症状があらわれることがあります。
これらの症状が続く場合は摂取を中止し、摂取量や摂取間隔などを主治医にご相談ください。
なお、鉄を含む医薬品やサプリメントを摂取すると、吸収しきれなかった鉄の影響で便が黒くなる場合がありますが、この点については特に問題はありません。
ただ、胃や腸からの出血でも便が黒くなることがあるため、心当たりがある場合は速やかに医師の診察を受けてください。
他の治療薬やサプリメントとの併用について
医療機関で薬を処方されている場合は、「ヘム鉄」を摂取する前に併用の可否を主治医にご相談ください。
医療用医薬品のなかには、鉄との併用で吸収率が変わるものもあります。
また、鉄そのものを主成分とする薬剤もあるため、気づかないまま併用すると過剰摂取になるおそれがあります。
他のサプリメントとの併用を希望する場合も、あらかじめ主治医にご相談ください。
栄養成分の過剰摂取や不必要な成分の摂取は、かえって体調不良をまねくおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用に関して
妊娠中・授乳中は鉄の必要量が多くなります。
鉄不足が気になる場合は、「ヘム鉄」をご活用ください。
ただし、1日に摂取すべき鉄の量は一人ひとり異なります。
また、妊娠中や授乳中は体調が変化しやすく、栄養バランスに一層の配慮が必要な時期でもあります。
そのため、摂取にあたってはあらかじめ主治医にご相談ください。
お子さまへの使用に関して
乳幼児・小児と成人では、必要な鉄の量が異なります。
特に女児の場合、月経の有無でも摂取すべき鉄の量が変わってきます。
また、幼いお子さんについてはカプセルを誤嚥するリスクもあるため、注意が必要です。
このようなことから、乳幼児・小児については、まず食事で不足分を補うことをおすすめします。
「ヘム鉄」の費用
「ヘム鉄」は、1瓶90カプセル入り(1日2カプセル摂取で約1.5ヵ月分)で4950円です。医療用医薬品ではなく、保険の適用もないため、全額自費負担になります。
なお、「ヘム鉄」は医療機関専用のサプリメントなので、ドラッグストアなどでは購入できません。
よくあるご質問
- 「ヘム鉄」を毎日飲み続けた場合、鉄の過剰摂取になることはありませんか?
-
ヘム鉄の吸収率は15~25%程度といわれています。
消化管で吸収されなかった鉄は便や尿に排出されるため、1日の目安量を超えて摂取しない限り、通常は過剰摂取になりません。
ただし、医療用の鉄含有製剤や鉄を含むサプリメントなどを併用すると鉄の摂取量が過剰になることがあります。
また、肝障害などがあると鉄が体内に蓄積しやすくなります。
そのため、併用薬や治療中の病気などがある場合はあらかじめご相談ください。
- 「ヘム鉄」2カプセルに含まれる鉄9mgを食事から摂取する場合、何をどれだけ食べればいいですか?
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煮干し(イワシ)なら50g、鶏卵(生の卵黄)なら190g、牛肉(モモ肉の赤身)なら350g程度です。
これだけの食品を摂取すると、鉄だけでなくコレステロールなどもたくさん摂取することになるため、健康面に悪影響が生じるおそれがあります。
- 「ヘム鉄」を飲み忘れた場合は、どうすればいいですか?
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「ヘム鉄」を飲み忘れた場合は、気がついたときに1回分を服用すれば大丈夫です。
なお、何日も飲み忘れた場合でも、1日の目安量を超えて摂取するのは避けてください。
過剰摂取は、体調不良をまねくおそれがあります。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。