2型糖尿病治療薬「トラディアンス(リナグリプチン・エンパグリフロジン)」選択的DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤

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トラディアンスとは?

トラディアンスの写真

トラディアンス(一般名:リナグリプチン・エンパグリフロジン)は、2種類の血糖降下薬を含む配合剤です。含まれている成分のうち、一つは胆汁排泄型選択的DPP-4阻害薬のリナグリプチンで、もう一つは選択的SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンです。
リナグリプチンは、インクレチン(インスリンの分泌をうながす作用と肝臓における糖の産生を抑制する作用を併せ持つホルモン)を分解するDPP-4という酵素を競合的かつ可逆的に阻害してインクレチンの濃度を上昇させ、結果として血糖低下作用を示します。
エンパグリフロジンは、腎臓の近位尿細管における糖の再吸収で重要な役割を担うナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2を選択的に阻害し、尿中に排泄される糖の量を増加させて血糖降下作用を示します。
なお、「トラディアンス(Tradiance)」という名称は、配合成分であるリナグリプチンの製品名トラゼンタ(Trazenta) と、エンパグリフロジンの製品名ジャディアンス(Jardiance)から命名したとのことです。

オンライン診療対応可能

当院では、初診からオンライン診療にて治療薬の処方を行っております。通院なしで薬剤をお送りすることが可能です(送料無料)。アプリのインストールは不要で、システム利用料も徴収しておりません。よろしければご利用ください。

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トラディアンスの特徴

トラディアンスは、糖尿病治療薬のトラゼンタとジャディアンスの配合剤です。服用する薬の数を減らせるので飲み忘れや飲み間違いを減らすことができ、さらなるHbA1c低下作用も期待できます。また、トラディアンスは2つの用量規格があるため(AP錠とBP錠)、血糖コントロールの状態に合わせて1日1回1錠の用法を変えることなく成分量を増量できます。臨床試験では、AP錠で効果不十分な場合にBP錠に切り替えることでより良いHbA1c低下作用が得られることが証明されています。

効能効果・用法用量

トラディアンスは2型糖尿病に適応があります。ただし、投与できるのはリナグリプチンおよびエンパグリフロジンの併用による治療が適切と判断される場合に限られます。
通常、成人には1日1回1錠(リナグリプチン/エンパグリフロジンとして5mg/10mgまたは5mg/25mg)を朝食前または朝食後に投与します。

臨床成績

非薬物療法(食事療法+運動療法)に加えてリナグリプチン単剤治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の方を対象とした臨床試験(試験期間24週間)では、トラディアンスに切り替えることでHbA1cが0.93%、空腹時血糖値が35.84mg/dL減少しました。また、トラディアンスによる治療を続けることで、HbA1cおよび空腹時血糖値の低下効果が持続することも示されました。
一方、非薬物療法(食事療法+運動療法)に加えてエンパグリフロジン単剤治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の方を対象とした臨床試験(試験期間24週間)では、トラディアンスに切り替えることでHbA1cが0.91~0.94%、空腹時血糖値が9.45~14.38mg/dL減少しました。これらの効果は、トラディアンスの治療を続けることで持続することも示されています。

トラディアンスを服用する上での注意点

トラディアンスを服用できない方

以下に該当する場合は、トラディアンスの服用が禁忌とされています。

  • トラディアンスの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるので、トラディアンスの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、トラディアンスの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合は、トラディアンスの服用に注意が必要です。

  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(トラディアンスの服用で低血糖の発現リスクが高くなります。)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合
  • 血糖コントロールが極めて不良の場合・高齢者・利尿薬を併用している場合など脱水を起こしやすい場合(エンパグリフロジンの利尿作用により脱水を起こすおそれがあります。)
  • 尿路感染・性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
  • 腹部手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(腸閉塞を起こすおそれがあります。)

その他、腎機能障害や肝機能障害がある場合などもトラディアンスの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

トラディアンスの副作用

おもな副作用として、尿路感染、膀胱炎、性器感染、便秘、頻尿などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、脱水、腎盂腎炎、敗血症、腸閉塞、肝機能障害、類天疱瘡、間質性肺炎、急性膵炎などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていないものも多いですが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 めまい、冷や汗、
脱力感、動悸、
手足のふるえ、
強い空腹感、意識の消失
脱水 口や喉の渇き、多尿や頻尿、
血圧低下、体のだるさや脱力感、
立ちくらみ、めまい
ケトアシドーシス 吐き気や嘔吐、食欲の減退、
腹痛、口の渇き、体のだるさ、
息苦しさ、呼吸が荒い、
呼吸が深く大きい、
意識や判断力の低下
腎盂腎炎、
外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎
(フルニエ壊疽)、
敗血症
寒気、発熱、
脇腹や背中の痛み、腰痛、
陰部や性器周辺の強い痛み・腫れ・赤み
腸閉塞 ひどい便秘、ガスが出ない、
腹部の張り、持続的な腹痛、嘔吐
肝機能障害 全身のだるさ、食欲不振、吐き気
類天疱瘡 水疱、びらん、紅斑
間質性肺炎 空咳、呼吸困難、発熱
急性膵炎 激しい腹痛が続く、吐き気や嘔吐

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、トラディアンスとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖のリスクが増加するおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
  • リトナビル(抗ウイルス化学療法薬)、リファンピシン(結核などの治療薬):成分の一つであるリナグリプチンの薬物動態が変化するおそれがあります。
  • 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。
  • 炭酸リチウム(両極性障害などの治療薬):リチウムの作用が減弱されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

高度腎機能障害または透析中の末期腎不全をともなう2型糖尿病については、エンパグリフロジンの血糖低下作用が期待できません。そのため、トラディアンスは投与しないこととされています。
また、中等度の腎機能障害がある2型糖尿病についても、エンパグリフロジンの血糖降下作用が十分に得られないおそれがあるため、投与の必要性を慎重に判断します。

肝機能障害がある方への使用

トラディアンスは、高度肝機能障害を持つ方を対象とした臨床試験を実施していません。
そのため、肝機能障害がある方へトラディアンスを投与する場合は、症状や効果、副作用の発現状況などに配慮しながら慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

トラディアンスの成分であるリナグリプチンおよびエンパグリフロジンは、動物を対象とした試験で胎児への移行が報告されています。また、エンパグリフロジンについては、動物を対象とした試験で幼若動物の腎盂および尿細管の拡張が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはトラディアンスを投与せず、インスリン製剤などを使用します。

授乳中の方への使用

トラディアンスの成分であるリナグリプチンおよびエンパグリフロジンは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。
そのため、トラディアンス服用中は授乳しないことが望ましいとされています。

お子さまへの使用

トラディアンスは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方では、一般的に生理機能が低下しています。また、脱水症状(口の渇きなど)の認知が遅れるおそれがあります。さらに、エンパグリフロジンについては、75歳以上の方で体液量減少の有害事象の発現割合が高いことが報告されています。
そのため、高齢の方へトラディアンスを使用する場合は、状態を観察しながら慎重に治療を進めていきます。

低血糖に関する注意点

トラディアンスの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特に他の糖尿病治療薬(SU剤やインスリン製剤など)を併用している場合は、低血糖のリスクが高くなります。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲食物を摂取してください。
糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
なお、高所での作業や自動車の運転などをする際は、低血糖の発現に特に注意してください。

トラディアンスの患者負担・薬価について

トラディアンスには、リナグリプチン5mgとエンパグリフロジン10mgが配合されている「トラディアンス配合錠AP」と、リナグリプチン5mgとエンパグリフロジン25mgが配合されている「トラディアンス配合錠BP」があります。それぞれの薬価は以下のとおりです。

トラディアンス配合錠AP 248.5円/錠
トラディアンス配合錠BP 347.6円/錠

ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがトラディアンス配合錠APを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は2236.5円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

トラディアンスによる脱水を予防するために、水分を摂るようにいわれました。普段は緑茶をよく飲むのですが、それで大丈夫ですか?

脱水予防のために摂取する水分は、糖分を含まないものや利尿をうながすカフェインやアルコールを含まないものにしてください。緑茶は比較的カフェインを多く含むため、脱水予防に向いているとはいえません。
おすすめなのは、麦茶や何も含まない水です。特に夏場や運動時、発熱時などは気が付かないうちに水分を失っているケースが少なくありません。このような場合は、いつも以上に意識して水などを摂るようにしましょう。

トラディアンスを飲んでいるときの水分補給のポイントを教えてください。

トラディアンスの服用初期は尿量が増加して脱水のリスクが高くなります。そのため、のどが渇く前に水分を摂ることを心がけてください。
ただし、服用初期にみられる尿量増加は一時的なものです。とはいえ、トラディアンスによる脱水のリスクがなくなるわけではないため、のどが渇いたら必ず水分を摂るようにしてください。
なお、高齢の方は普段からこまめに水分を摂るようにしてください。体液量減少の有害事象は、トラディアンスの服用の有無に関係なく年齢にともない発現率が高くなります。

トラディアンスを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

トラディアンスを飲み忘れた場合は、その日は飲まずに次の日の通常の服用時間に1回分を飲んでください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多くなると、副作用が発現するおそれがあります。

 

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