アダラートとは?
アダラート(一般名:ニフェジピン)は、カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)と呼ばれる薬剤の一種です。
アダラートは、血管平滑筋および心筋細胞内にカルシウムイオンが流入するのをおさえ、冠血管を拡張するとともに全末梢血管抵抗を減少させます。安定的で持続的な降圧作用を示し、左室にかかる負荷を軽減して心機能を改善する作用を持つことから、高血圧症や狭心症の治療に用いられます。
「アダラート」という名称は、「Ader:血管、脈管」「adult:成人の」などの医学関連用語を用いてコンピュータ合成したものだそうです。
なお、アダラートは徐放剤であることから、商品名の最後に「Controlled Release(放出制御)」を意味する「CR」がつけられています。
オンライン診療対応可能
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アダラートの特徴
アダラートCRは有効成分がゆっくりと放出されるように製剤設計されている薬剤です。そのため、かみ砕いたり粉砕したりして服用することはできません。穏やかな降圧効果が長時間続くため、夜間に過度の降圧をきたしにくく、早朝の血圧上昇をおさえる効果もあります。通常は1日1回投与ですが、難治例に対しては40mg錠を1日2回投与してより厳格な血圧コントロールを図ることもあります。また、狭心症にも適応があり、冠攣縮性狭心症では第一選択薬としてよく使われます。
適応疾患・用法用量
アダラートの適応症は、成人の高血圧症・腎実質性高血圧症・腎血管性高血圧症および狭心症・異型狭心症です。ただし、疾患により用法用量が異なります(下表)。
効果持続時間
アダラートは効果持続時間が長く、1日1回の投与で安定した効果が得られます。また、臨床試験では血中濃度の日内変動が小さいことも認められています。
ただし、降圧効果の発現にともない、めまいやふらつき、立ちくらみなどを起こすことがあります。これらの症状がある場合は無理をせず、車の運転など危険をともなう作業は注意して行うようにしてください。
アダラートの製剤上の工夫と注意点
アダラートは、消化管液の豊富な小腸上部でゆっくり有効成分が溶出する外層部と、消化管液の少ない結腸で比較的すみやかに溶出する内核錠を組み合わせた二層構造になっており、長時間にわたって安定した血圧降下を示します。一方で、薬剤を割ったり噛み砕いたりすると、二層構造が破壊されて副作用が強くあらわれるおそれがあります。
したがって、アダラートを服用する際には、錠剤を割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしてはいけません。噛まずにそのまま水か白湯で服用してください。
アダラートを服用する上での注意点
アダラートを服用できない方
アダラートの成分に対して過敏症の既往歴がある場合は、アダラートを使用できません。誤って服用すると、重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
また、心原性ショック(心臓に何らかの異常が生じて、血液を十分に送れない状態)の方にも、アダラートは使用できません。このような方にアダラートを使用すると、血圧の低下により症状が悪化するおそれがあります。
アダラートの服用に注意が必要な方
大動脈弁狭窄、僧帽弁狭窄、肺高血圧のある方は、アダラートの血管拡張作用により重篤な血行動態の悪化をまねくおそれがあるため注意が必要です。
また、過度に血圧が低い方や血液透析療法中の循環血液量減少をともなう高血圧の方は、アダラートの服用で過度に血圧が下がるおそれがあります。
その他、重篤な腎機能障害がある方・重篤な肝機能障害がある方も、アダラートの服用に注意が必要です。
他の医療機関でこれらの病気・症状を指摘されている場合は、あらかじめ診察時にご相談ください。検査データなどをお持ちの場合は、ご提示いただけると診察がスムーズに進みます。
アダラートの副作用
おもな副作用として、頭痛・頭重感、顔面潮紅・顔のほてり、動悸などが報告されています。また、Ca拮抗薬で生じやすい副作用として、歯肉肥厚が報告されています。
その他、重大な副作用として、紅皮症(はく脱性皮膚炎)、無顆粒球症・血小板減少、肝機能障害・黄疸、意識障害などが報告されています。重大な副作用が生じる頻度は0.1%未満ですが、以下のような症状があらわれた場合はすぐに受診して適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、アダラートとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。しかし、併用に注意が必要とされている薬剤はいくつかあります。以下に該当する薬剤を服用している場合は、念のため診察時にご相談ください。
- 他の降圧薬:相互に作用を増強するおそれがあります。
- β遮断薬(高血圧症や狭心症などの治療薬):相互に作用を増強するおそれがあります。
- ジゴキシン(心不全や頻脈などの治療薬):ジゴキシンの血中濃度が上昇するおそれがあります。
- シメチジン(胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療薬)、ジルチアゼム(Ca拮抗薬の一種)、トリアゾール系抗真菌薬:アダラートの血中濃度が上昇して作用が増強されるおそれがあります。
- リファンピシン(結核などの治療薬)、フェニトイン(抗てんかん薬)、カルバマゼピン(てんかんや三叉神経痛などの治療薬):アダラートの血中濃度が上がらず、期待した作用が得られないおそれがあります。
- タクロリムス(免疫抑制薬):タクロリムスの血中濃度が上昇して副作用があらわれるおそれがあります。
- シクロスポリン(免疫抑制薬):歯肉肥厚があらわれやすいとの報告があります。
- HIVプロテアーゼ阻害薬(抗ウイルス薬):アダラートの作用がより強くあらわれるおそれがあります。
グレープフルーツジュースとの飲み合わせについて
アダラートなどのCa拮抗薬は、グレープフルーツジュースとの飲み合わせが悪いことが知られています。これは、グレープフルーツジュースに含まれる成分がアダラートの代謝を阻害して、有効成分の血中濃度が上昇するおそれがあるためです。そして、Ca拮抗薬のなかでも、アダラートは比較的グレープフルーツジュースの影響を受けやすいとされています。したがって、アダラートを服用している間はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。
特定の患者さまへの使用に関して
肝機能障害がある方・腎機能障害がある方への使用
アダラートは肝臓でほとんど完全に代謝されるため、肝機能が低下している方に投与すると血中濃度が通常より上昇するおそれがあります。したがって、肝機能障害がある方に投与する場合は低用量からスタートし、降圧効果や副作用の発現状況などを確認しながら慎重に治療を進めていきます。
一方、アダラートが腎臓から排泄される量はごくわずかです。そのため、腎機能障害があっても用量の調節は基本的に必要ないとされています。
妊娠中の方への使用
アダラートは、動物を対象とした試験で催奇形性および胎児毒性が報告されています。一方でヒトに対しては、アダラートやアダラートを含むCa拮抗薬の使用で先天奇形の頻度は上昇しないとの報告も複数あります。
このようなことから、妊娠中の方または妊娠している可能性のある方に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与を検討します。
授乳中の方への使用
アダラートは、ヒトの母乳中へ移行することが報告されています。一方で、アダラートは乳児に対する安全性が確立していません。したがって、授乳中の方への使用は避けるべきであり、やむを得ず投与する場合は授乳を中止する必要があるとされています。
お子さまへの使用
アダラートは、低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児に対する安全性が確立していません。そのため、使用できるのは成人のみとされています。
ご家庭ではお子さまの誤服用を避けるため、保管場所にご注意ください。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などの発生リスクが高まるため、好ましくないとされています。高齢の方に使用する場合は、低用量から投与をスタートするなどして患者さまの忍容性を観察しながら慎重に治療方針を検討します。
アダラートの患者さま負担・薬価について
アダラートには10mg・20mg・40mgの3規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがアダラートCR錠20mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は167.4円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- 最近、血圧がとても安定しています。アダラートを飲むのをやめていいですか?
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血圧が安定していても、アダラートの服用を自己判断でやめてはいけません。アダラートなどのCa拮抗薬を急に中止すると、症状が悪化するおそれがあります。
なお、血圧が安定しているのはアダラートが効いているためです。高血圧症が治ったわけではありませんので、治療は継続してください。
- アダラートを飲み始めてから、顔のほてりなどが気になります。飲み続けても大丈夫ですか?
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アダラートなどのCa拮抗薬は、副作用として顔のほてりなどが出やすいという特徴があります。もっとも、顔のほてり・赤みなどは服用を続けるうちに慣れてくることがほとんどです。そのため、ほてりなどを理由に治療を中断する必要はありません。
- アダラートを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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アダラートの服用を忘れた場合は、気付いたときに1回分をすぐに服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、1回分を飛ばして次の服用時間に1回分を服用してください。なお、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると副作用の発現リスクが高まります。
- 歯医者さんで歯茎の腫れを指摘されました。アダラートの影響でしょうか?予防方法があるなら教えてください。
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アダラートなどのCa拮抗薬を長期間服用していると、歯肉が腫れることがあります(歯肉肥厚)。歯肉肥厚は、歯肉をよくブラッシングして口内を清潔に保つとある程度予防できます。
- グレープフルーツジュースと飲み合わせが悪いならば、グレープフルーツの実を食べるのもダメですか?
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アダラートの血中濃度に影響する成分は、グレープフルーツの果肉にも含まれている可能性があります。そのため、アダラートを服用している間はグレープフルーツの果肉も食べないようにしてください。なお、夏ミカン・ブンタン・スウィーティー・ハッサク・金柑・ライムなどもグレープフルーツジュースと同じような成分を含むため、摂取は控えてください。