利尿降圧薬「アルダクトンA(スピロノラクトン)」アルドステロン拮抗薬

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アルダクトンAとは?

アルダクトンAの写真

アルダクトンA(一般名:スピロノラクトン)は、アルドステロン拮抗薬と呼ばれる系統の薬剤です。
アルダクトンAは、体内の水分量を増やして血圧を上昇させる「アルドステロン」というホルモンに対して拮抗的に作用します。アルドステロンの働きがおさえられると余分な水分・ナトリウムの排泄がうながされるため、むくみや血圧の上昇がおさえられ、心臓の負担も軽減されます。また、利尿作用を有するものの、カリウムの排泄を促進しないことから、「カリウム保持性利尿薬」と呼ばれることもあります。
なお、「アルダクトンA」の「アルダクトン」は「Aldosterone(アルドステロン)」に由来し、「A」は「Absorption(吸収)」に由来します。

オンライン診療対応可能

当院では、初診からオンライン診療にて治療薬の処方を行っております。通院なしで薬剤をお送りすることが可能です(送料無料)。アプリのインストールは不要で、システム利用料も徴収しておりません。よろしければご利用ください。

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アルダクトンAの特徴

アルダクトンAは、カリウム喪失傾向のある方にも使用しやすい利尿降圧薬です。高尿酸血症や痛風の悪化をまねかないこと、糖代謝に影響を与えないことなどから、合併症のある方にも使いやすいのが特徴です。もっとも、降圧作用はそれほど強くないため、単剤で用いることはあまり多くありません。

適応疾患・用法用量

アルダクトンAは、高血圧症(本態性、腎性など)、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍にともなう浮腫および腹水、栄養失調性浮腫、原発性アルドステロン症の診断および症状の改善に適応があります。
通常、成人には1日50~100mgを分割して投与します。なお、投与量は年齢・症状に応じて適宜増減します。
ただし、「原発性アルドステロン症の診断および症状の改善」以外に使用する場合は、他剤と併用するのが一般的です。

効果および治療上のメリット

アルダクトンAの利尿作用・降圧作用は、他の系統の利尿薬に比べてそれほど強くありません。
しかし、他の降圧薬と併用することで腎臓障害の進展を遅らせたり、心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞など)を有意に減少させたりする効果があることが認められています。また、アルダクトンAは体内のカリウム分を保持する性質があるため、チアジド系利尿剤やループ利尿剤によって生じる低カリウム血症を予防する併用剤としても有用です。

アルダクトンAを服用する上での注意点

アルダクトンAを服用できない方

以下の方は、アルダクトンAを服用できません。

  • 無尿または急性腎不全の方(腎機能をさらに悪化させるおそれがあります。また、腎からのカリウム排泄が低下しているため、高カリウム血症を誘発・増悪させるおそれがあります。)
  • 高カリウム血症の方(高カリウム血症を増悪させるおそれがあります。)
  • タクロリムス(免疫抑制薬)、エプレレノン(高血圧症や慢性心不全の治療薬)、エサキセレノン(高血圧症の治療薬)を服用中の方(高カリウム血症があらわれることがあります。)
  • ミトタン(副腎がんやクッシング症候群の治療薬)を服用中の方(ミトタンの効果が阻害されるという報告があります。)
  • アルダクトンAの成分に対して過敏症の既往歴がある方(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)

アルダクトンAの服用に注意が必要な方

以下の場合は、アルダクトンAの服用に注意が必要です。

  • 重篤な冠動脈硬化症または脳動脈硬化症がある場合(急激な利尿があらわれると、急速な血漿量減少や血液濃縮を来して血栓塞栓症をまねくおそれがあります。)
  • 減塩療法中の方(水分・電解質が欠乏して、脱水症状や低ナトリウム血症などがあらわれやすくなります。)

その他、腎機能障害のある方・肝機能障害のある方・ご高齢の方なども、アルダクトンAの服用には注意が必要です(参照:特定の患者様への使用に関して)。

アルダクトンAの副作用

おもな副作用として、内分泌系の症状(乳房の腫脹、月経不順、無月経、閉経後の出血、音声低音化など)、発疹や蕁麻疹、食欲不振や下痢、便秘、倦怠感、動悸、発熱などが報告されています。
その他、重大な副作用として電解質異常や急性腎不全などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、以下のような症状があらわれた場合はすぐに受診して適切な治療を受けてください。

電解質異常
(高カリウム血症、
低ナトリウム血症、
代謝性アシドーシスなど)
不整脈、胸痛
全身のだるさ、脱力感
急性腎不全 尿量の減少
手足や顔のむくみ
頭痛
中毒性表皮壊死融解症
(TEN)
皮膚粘膜眼症候群
(Stevens-Johnson症候群)
高熱、発疹
皮膚や粘膜のびらん・水ぶくれ

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

アルダクトンAは、タクロリムス(プログラフなど)、エプレレノン(セララ)、エサキセレノン(ミネブロ)との併用が禁忌になっています。これは、併用による相加・相乗作用によって血清カリウム値が上昇し、高カリウム血症が発現するリスクが高まるためです。
また、ミトタン(オペプリム)との併用も禁忌とされています。こちらは、併用によってミトタンの薬効が阻害されるという報告があるためです。
その他、併用に注意しなければならない薬剤は以下のとおりです。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。また、他の医療機関で治療を受ける場合は、アルダクトンAを服用していることを伝えてください。

  • 降圧薬:降圧作用が増強されるおそれがあります。
  • カリウム製剤、ACE阻害薬・ARB・アリスキレン(高血圧症の治療薬)、カリウム保持性利尿剤、フィネレノン(慢性腎臓病の治療薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、ドロスピレノン(月経困難症の治療薬):高カリウム血症をまねくおそれがあります。
  • コレスチラミン(高コレステロール血症の治療薬):代謝性アシドーシスを来すという報告があります。
  • ジゴキシン・メチルジゴキシン(いずれも心不全や頻脈などの治療薬):ジゴキシンおよびメチルジゴキシンの血中濃度が上昇することがあります。
  • リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
  • リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬:アルダクトンAの利尿作用が減弱するおそれがあります。また、腎機能障害患者で重度の高カリウム血症が発現したとの報告があります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

腎機能障害がある方にアルダクトンAを投与すると、腎機能がさらに悪化するおそれがあります。また、腎臓からのカリウム排泄が低下しているため、高カリウム血症を誘発・増悪させる可能性も否定できません。
そのため、アルダクトンAは急性腎不全の方には禁忌とされており、急性腎不全ではないものの重篤な腎機能障害のある方には慎重に投与することとされています。

肝機能障害がある方への使用

アルダクトンAは、おもに肝臓で代謝されます。そのため、肝機能障害のある方がアルダクトンAを服用すると、副作用である高カリウム血症があらわれるおそれがあります。
このようなことから、アルダクトンAを肝機能障害のある方に使用する場合は、検査値なども参考にしながら慎重に投与を行います。

妊娠中の方への使用

アルダクトンAは、動物を対象とした試験で雄胎仔に雌性化(男児の女性化)が認められています。
そのため、妊娠中の方または妊娠の可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。

授乳中の方への使用

アルダクトンAの主要な活性代謝物であるカンレノ酸は、ヒトの乳汁中に移行することが明らかになっています。
したがって、授乳中の方へアルダクトンAを使用する場合は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

アルダクトンAは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。また、乳児は成人に比べて電解質異常に対する抵抗力が弱く、電解質バランスを崩しやすいという特性があります。
そのため、お子さまにアルダクトンAを使用する場合は、症状や全身状態、検査値などにも十分に注意しながら慎重に投与を行います。

ご高齢の方への使用

高齢の方の場合、急激な利尿は血漿量の減少をまねき、脱水・低血圧などによる立ちくらみ・めまい・失神などを引き起こすことがあります。特に心疾患のある方や心疾患などにともなうむくみのある方では、急激な利尿が脳梗塞などの血栓塞栓症を誘発するおそれがあります。さらに、高齢の方は腎機能・肝機能が低下していることが多いため、高カリウム血症が発現するリスクも高くなっています。
このようなことから、高齢の方にアルダクトンAを使用する場合は、少量から投与を始めるなどして状態を観察しながら慎重に治療を進めます。

アルダクトンAの患者さま負担・薬価について

アルダクトンAには細粒・25mg・50mgの3種類があります。各剤型・規格の薬価は以下のとおりです。

アルダクトンA細粒10% 69.5円/g
アルダクトンA錠25mg 16.8円/錠
アルダクトンA錠50mg 36.0円/錠

患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがアルダクトンA錠25mgを1日2回30日分処方された場合、ご負担金額は302.4円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。

よくあるご質問

アルダクトンAを飲んで、夜のトイレが近くなることはありますか?

アルダクトンAの利尿・降圧効果は比較的穏やかなので、夜間の排尿回数が極端に増えることはまずありません。
しかし、利尿効果のあらわれ方には個人差があります。アルダクトンAの服用で睡眠が妨げられるなどの弊害がある場合は、診察時にご相談ください。

むくみはあまり気にならないのですが、それでもアルダクトンAを飲まないといけませんか?

アルダクトンAは、むくみを取るだけでなく降圧作用も期待できる薬剤です。
また、最近の研究で、アルダクトンAなどの抗アルドステロン性利尿薬には、重症心不全の方の全死亡や心臓突然死、心不全による入院などを抑制する効果があることも明らかになっています。
このように、アルダクトンAは降圧・利尿以外にもさまざまなすぐれた効果が期待できるため、むくみがひどくない場合でも指示通り服用するようにしてください。

アルダクトンAを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

アルダクトンAを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近いときは1回分を飛ばし、次の服用タイミングで1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

アルダクトンAで性ホルモン関係の副作用が起きるのはなぜですか?

アルダクトンAは、アルドステロン受容体に作用して薬理作用を発揮します。しかし、アルダクトンAはアルドステロン受容体だけではなく、類似した構造を持つアンドロゲン(男性ホルモンの一種)やプロゲステロン(女性ホルモンの一種)の受容体にも作用します。そのため、乳房の腫脹や月経不順などの性ホルモン関係の副作用が起きることがあります。
なお、アルダクトンAによる性ホルモン関係の副作用は、服用を中止すると回復します。ただし、自己判断で中止するのは避けてください。副作用が生じた場合は、薬の中止・性ホルモン関係の副作用が生じにくい代替薬の処方なども含めて検討しますので、診察時にご相談ください。

 

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記事制作者

木村眞樹子

東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。