高血圧症治療薬「アテレック(シルニジピン)」持続性Ca拮抗薬

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アテレックとは?

アテレックの写真

アテレック(一般名:シルニジピン)は、カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)の一種です。
アテレックには、血管平滑筋の細胞膜に作用してカルシウムイオンの流入をおさえる作用があります。その結果、血管平滑筋を弛緩・拡張させて降圧作用を発現します。また、交感神経終末からのノルアドレナリンの放出を抑制する作用も併せ持ち、交感神経活動の亢進による降圧時の心拍数増加やストレス負荷時の昇圧などを抑制する作用もあると考えられています。
なお、「アテレック」という名称は、「Arteriosclerosis(動脈硬化)」に由来する造語です。

アテレックの特徴

適応疾患・用法用量

アテレックの適応症は高血圧症です。
通常、成人には1日1回5~10mgを朝食後に投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、効果が不十分な場合には1日1回20mgまで増量できます。
ただし、重症高血圧症には1日1回10~20mgを朝食後に投与します。

効果持続時間と特徴的な効果

アテレックは効果持続時間が長く、1日1回朝食後の投与で昼・夜間・早朝にわたり良好な血圧コントロールが得られます。
なお、臨床試験では、早朝高血圧やストレス性昇圧(寒冷ストレス、精神ストレス)に対する効果も報告されています。

アテレックを服用する上での注意点

アテレックを服用できない方・服用に注意が必要な方

添付文書上、アテレックが禁忌とされているのは、妊娠中の方または妊娠の可能性のある方のみです。過敏症については禁忌とされていませんが、アテレックの成分に対して過敏症の既往歴がある場合は使用を避けるべきでしょう。
なお、服用に注意が必要とされているのは、重篤な肝機能障害がある方や高齢の方などです。特に重篤な肝障害がある方の場合、アテレックの血中濃度が上昇するおそれがあるため、副作用の発現などに注意が必要です。

アテレックの副作用

おもな副作用として、頭痛や頭重感、動悸、顔のほてりや赤みなどが報告されています。そして、頻度は低いものの、他のCa拮抗薬と同様に歯肉肥厚の発生も報告されています。また、降圧作用によってめまいなどがあらわれることもあるため、車の運転など危険をともなう作業は十分に注意して行うようにしてください。
その他、重大な副作用として肝機能障害や黄疸、血小板減少も報告されています。重大な副作用が発生することはまれですが、以下のような症状があらわれた場合はすぐに受診して適切な治療を受けてください。

肝機能障害・黄疸 全身のだるさ、白目や皮膚が黄色くなる、食欲不振
血小板減少 皮下出血、鼻血、歯茎からの出血、血が止まりにくい

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、アテレックとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。しかし、併用に注意しなければならない薬剤はいくつかあります。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 降圧作用を有する薬剤:相互に作用を増強して血圧が過度に低下するおそれがあります。
  • ジゴキシン(心不全や頻脈などの治療薬):他のCa拮抗薬との併用でジゴキシンの血中濃度が上昇したという報告があります。
  • シメチジン(胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療薬):他のCa拮抗薬で、作用の増強が報告されています。
  • リファンピシン(結核などの治療薬):他のCa拮抗薬で、作用の減弱が報告されています。
  • アゾール系抗真菌薬:アテレックの血中濃度が上昇して作用が増強されるおそれがあります。

グレープフルーツジュースとの飲み合わせについて

アテレックなどのCa拮抗薬は、グレープフルーツジュースとの飲み合わせが悪いことが知られています。これは、グレープフルーツジュースに含まれる成分がアテレックの代謝を阻害して、有効成分の血中濃度が上昇するおそれがあるためです。
アテレックは、Ca拮抗薬のなかでも比較的グレープフルーツジュースの影響を受けやすい薬剤です。したがって、アテレックを服用している間はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。

特定の患者さまへの使用に関して

肝機能障害がある方・腎機能障害がある方への使用

アテレックは、おもに肝臓で代謝されたあと、胆汁を介して糞便中に排泄されます。そのため、重篤な肝機能障害のある方が服用すると、血中濃度が上昇して副作用の発現リスクが高まります。
このようなことから、肝機能障害がある方にアテレックを投与する場合は、降圧効果や副作用の発現状況などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。
なお、臨床試験では、アテレックを腎機能障害のない方と腎機能障害のある方に投与した場合において、有効成分の血漿中濃度の推移に差はなかったとされています。

妊娠中の方への使用

アテレックは、動物を対象とした試験で胎児毒性が報告されています。そして、妊娠期間および分娩時間の延長も報告されています。そのため、アテレックは妊娠中の方や妊娠の可能性がある方への投与は禁忌となっています。

授乳中の方への使用

アテレックは、動物を対象とした試験で母乳中への移行が報告されています。そのため、授乳中の方へアテレックを投与する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

アテレックは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。そのため、アテレックを使用できるのは成人のみです。
ご家庭ではお子さまの誤服用を避けるため、お子さまの手の届かない場所に保管するなど十分にご注意ください。

ご高齢の方への使用

一般的に、高齢の方の過度の降圧は好ましくないとされています。高齢の方に使用する場合は、低用量から投与をスタートするなどして慎重に治療方針を決めていきます。

アテレックの患者さま負担・薬価について

アテレックには5mg・10mg・20mgの3規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。

規格 薬価
アテレック錠5 20.7円/錠
アテレック錠10 35.2円/錠
アテレック錠20 57.8円/錠

なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがアテレック錠10を1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は316.8円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。

よくあるご質問

医師に「アテレックを少量からスタートして、少しずつ増量していきましょう」といわれました。早く血圧を下げたいので、家に残っている他の血圧の薬を飲んでもいいですか?

アテレックによる治療を少量から始めるのは、過降圧などの副作用の発現をおさえるためです。増量のタイミングは、医師が血圧の変化や副作用の有無などを確認しながら決定しますので、不安がある場合は診察時にご相談ください。
なお、アテレックと他の血圧の薬を併用すると血圧が下がり過ぎてしまうことがあります。そのため、自己判断で薬を追加するのは避けてください。

アテレックは毎日飲まないとダメですか?やめるとどうなりますか?

アテレックは、毎朝1回の投与で昼から夜間、早朝にわたる良好な血圧コントロールが得られる降圧薬です。したがって、血圧を適正範囲に保つためにはアテレックを毎日服用する必要があります。
一方、アテレックの服用を急にやめると症状が悪化するおそれがあります。そのため、自己判断で服用量を減らしたり服用を中断したりしないでください。

アテレックを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

アテレックを飲み忘れた場合は、気付いたときにできるだけ早く1回分を服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は忘れた分は飲まず、次の服用時間に1回分を服用してください。なお、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると副作用が発生しやすくなります。

「歯肉肥厚」って何ですか?予防方法はありますか?

歯肉肥厚とは、歯肉が過度に増殖する状態のことです。歯肉肥厚は歯肉炎を悪化させたり、噛み合わせの悪化や義歯の装着不全をまねいたりすることもあります。
歯肉肥厚は、歯肉をよくブラッシングしたり定期的に歯石を除去したりするなどして口腔内を清潔に保つと予防しやすくなります。

グレープフルーツジュースを飲みたいのですが、アテレックの服用時間と間隔を空ければ飲んでも大丈夫ですか?

グレープフルーツジュースの影響は、数日間続くことがあると考えられています。一方、アテレックは通常毎日服用します。そのため、グレープフルーツジュースとアテレックの飲むタイミングをずらしても、アテレックの血中濃度が高まる可能性は否定できません。
副作用の発現をおさえるためにも、アテレックを服用している間はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。

 

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