オルメテックとは?
オルメテック(一般名:オルメサルタン メドキソミル)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれる高血圧症治療薬の一種です。オルメテックは、体内で活性代謝物に変換されたあとアンジオテンシンII受容体に選択的に作用し、アンジオテンシンII(強い血管収縮作用を持つ体内物質)が受容体に結合するのを競合的に阻害して降圧作用を示します。
なお、「オルメテック」という名称は、「オルメサルタン(Olmesartan)」の「オルメ(Olme)」と「technology」の「テック(tec)」との組み合わせに由来します。
オンライン診療対応可能
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オルメテックの特徴
オルメテックは、CYP(おもに肝臓に存在する薬物代謝酵素)の代謝活性阻害の影響を受けにくい薬剤です。そのため、他剤との相互作用が比較的少なめです。効果持続時間が長く、24時間にわたり血圧を良好にコントロールするほか、血圧の日内変動の生体リズムを改善する効果も認められています。また、臓器保護作用も有しています。食事の影響を受けにくいため、生活パターンにあわせて用法を決められるのも大きな特徴です。
適応疾患
オルメテックは高血圧症治療薬です。血圧を適度に下げることで、心臓や腎臓の負担をおさえる作用も期待できます。また、適切な範囲に血圧を保つことは、将来の脳血管疾患や心疾患、腎機能障害などの発症リスク軽減にもつながります。
適応年齢・用法用量
オルメテックは小児への適応はありません。成人を対象とした高血圧症治療薬です。
通常、10~20mgを1日1回経口投与しますが、原則として治療は1日5~10mgから投与を始めます。投与量は年齢や症状に応じて適宜加減しますが、1日の最大投与量は40mgです。
効果持続時間
オルメテックは、アンジオテンシンII受容体に対して高い選択性と強い結合力を示します。そのため、1日1回の投与で24時間にわたり安定した降圧作用が続きます。
ただし、安定した降圧効果が得られるまでには数日かかることもあります。投与量にもよりますが、血中濃度が定常状態に達するのが投与開始から2~5日後、降圧作用が発現するのが約1週間後、有意な降圧を示すのが2週間以内という報告もあります。
特に飲み始めは、めまいやふらつき、頭痛などがあらわれるおそれがありますので、血圧の変動にともなう体調変化に十分ご注意ください。
オルメテックの服用方法
オルメテックは、水なしでも服用できるOD錠(口腔内崩壊錠)です。味はオレンジの風味で、わずかに甘みがあります。ただし、口腔粘膜からは吸収されないため、水なしで服用する場合は溶けた錠剤を唾液と一緒に飲み込む必要があります。また、水なしで飲む場合は必ず体を起こしてください。寝たまま水なしで服用すると、薬が食道などに引っかかって炎症を起こすおそれがあります。
なお、普通錠と同じように水やぬるま湯で服用することも可能です。非常に溶けやすいため、濡れた手で触らないように気を付けてください。
オルメテックを服用する上での注意点
オルメテックを服用できない方
以下に該当する場合は、オルメテックを服用できません。
- オルメテックの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
- 妊娠中または妊娠している可能性のある女性(類薬で胎児・新生児の死亡や発育不全などが報告されています。)
- ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスクが増加することが報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など、治療上やむを得ない場合はラジレスとの併用を考慮することもあります。
オルメテックの服用に注意が必要な方
腎動脈狭窄や高カリウム血症のある方は、病状によってはオルメテックが使用できません。重篤な腎機能障害がある方・脳血管障害がある方は、オルメテックの服用で病状が悪化するおそれがあるため注意が必要です。また、厳重な減塩療法中の方・血液透析中の方などは、一過性の急激な血圧低下を起こすリスクが高いため、低用量から治療をスタートしなければなりません。
他の医療機関でこれらの病気や症状などを指摘されている方は、診察時にご相談ください。検査データなどがある場合は、あらかじめご提示いただけると診察がスムーズに進みやすくなります。
オルメテックの副作用
おもな副作用として、めまい、立ちくらみ、ふらつき感、発疹、頭痛、頭重感、眠気、軟便、全身倦怠感、咳などが報告されています。
また、重大な副作用として血管浮腫、ショック、低血糖、横紋筋融解症、重度の下痢などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
オルメテックは、ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は原則禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病の方のみです。また、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、ラジレスとオルメテックの併用を考慮することもあります。
その他、併用に注意が必要な薬剤は以下のとおりです。該当する薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- カリウム保持性利尿薬・カリウム補給薬:血清カリウム値が上昇することがあります。
- 利尿降圧薬:一過性の急激な血圧低下を起こすおそれがあります。
- リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
- ACE阻害薬(高血圧症などの治療薬):腎機能障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(解熱・鎮痛薬):降圧作用が弱くなることがあります。また、腎機能が悪化するおそれもあります。
特定の患者さまへの使用に関して
重篤な腎機能障害がある方への使用
重篤な腎機能障害がある方にオルメテックを使用すると、腎機能がさらに悪化するおそれがあります。そのため、重篤な腎障害がある場合(血清クレアチニン値3.0mg/dL以上の場合)は、病状などにも配慮して慎重に投与を検討します。
透析をしている方への使用
血液透析中の方がオルメテックを服用すると、一過性の急激な血圧低下をまねくおそれがあります。そのため、オルメテックを投与する場合は低用量からスタートします。増量が必要な場合は徐々に行い、体調変化に注意しながら治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
妊娠中期・末期の高血圧症の女性にARBやACE阻害薬を使用したところ、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があります。
したがって、オルメテックは妊娠中の方あるいは妊娠している可能性のある方には使用できません。オルメテック使用中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止します。
授乳中の方への使用
動物を対象とした試験で、オルメテックは乳汁中への移行が確認されています。また、動物を対象とした試験では出生児の死亡や体重減少、体重の増加抑制や生後分化の遅延も報告されています。
したがって、オルメテックを服用している場合は授乳しないことが望ましいとされています。
お子さまへの使用
オルメテックは、小児に対する臨床試験を実施していません。小児に対する安全性も確認されていません。そのため、小児には使用できません。
なお、オルメテックは味が良いため、お子さまが菓子類と勘違いするおそれがあります。お子さまの誤飲を避けるため、ご家庭での保管には十分ご注意ください。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などの発症リスクが高まるため、好ましくないとされています。また、ご高齢の方は腎機能をはじめとした生理機能が低下している場合も少なくありません。
したがって、オルメテックを投与する場合は、年齢や症状、合併症、併用薬などにも配慮して治療方針を決定します。
オルメテックの患者さま負担・薬価について
オルメテックには、5mg・10mg・20mg・40mgの4種類があり、すべてOD錠(口腔内崩壊錠)となっています。各規格の薬価は以下のとおりです。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって異なります。
例えば、3割負担の患者さまがオルメテックOD錠20mgを1日1回30日間処方された場合、ご負担金額は529.2円になります(薬剤費のみの計算です)。
なお、ジェネリック薬を使用すれば薬剤費をさらにおさえられます。ジェネリック薬には、口腔内で崩壊しない普通錠もあります。
よくあるご質問
- オルメテックを飲み始めてから、めまいや立ちくらみが増えました。「血圧が安定してくれば自然に治るよ」と言われましたが、どれくらい続くものですか?
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オルメテックは、飲み始めてから1週間程度で降圧効果があらわれ始め、2週間以内に安定した降圧効果が得られるとされています。そのため、飲み始めからしばらくの間はめまいや立ちくらみ、ふらつきなどが生じるおそれがあります。
めまいなどは、急に立ち上がったり起き上がったりする際に生じやすいため、ゆっくり動作することを心がけてください。
なお、めまいがあるときは、車の運転など危険をともなう作業は十分注意して行うようにしましょう。
- オルメテックをシートから出すと、ヨーグルトのような匂いがします。飲んでも大丈夫ですか?
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オルメテックには、わずかに特異な匂い(発酵乳のような香り)があります。しかし、高温多湿を避けて室温で保存すれば変質することはほとんどないため、匂いがあっても服用して問題ありません。
- オルメテックと他の薬の一包化を希望したら、「一緒に分包できない薬がある」と言われました。どの薬と一緒にできないのですか?
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オルメテックをメトホルミン塩酸塩製剤(糖尿病などの治療薬)やカモスタットメシル酸塩製剤(膵炎などの治療薬)と一緒に一包化すると、メトホルミン塩酸塩製剤やカモスタットメシル酸塩製剤が変色することがあります。
そのため、これらの薬との一包化は避ける必要があります。ご了承ください。
- オルメテックを飲み忘れてしまいました。どうすればいいですか?オルメテックを飲み忘れてしまいました。どうすればいいですか?
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飲み忘れに気付いたら、その時点で1回分を服用してください。オルメテックは食事の影響を受けないため、どのタイミングで服用しても大丈夫です。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分をとばし、次の回から通常通りに服用してください。その際、2回分を一度に飲まないでください。
- 手術前にはオルメテックを飲まないようにと言われました。どうしてですか?
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オルメテックなどARBを服用していると、麻酔中や手術中に高度な血圧低下を起こすことがあります。そのため、手術前24時間はオルメテックの服用を避けるのが望ましいとされています。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。