糖尿病治療薬「ベイスン(ボグリボース)」食後過血糖改善薬

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ベイスンとは?

ベイスンの写真

ベイスン(一般名:ボグリボース)は、腸管で炭水化物をブドウ糖に分解する酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害し、小腸からブドウ糖が吸収されるのを遅らせる薬剤です。
食後に血糖値が急上昇するのを抑えるため、糖尿病の治療や耐糖能異常による2型糖尿病の発症抑制に使用されます。
なお、「ベイスン(Basen)」という名称は、有効成分であるボグリボースが糖尿病の基礎治療である食事療法の効果を高めることから、糖尿病のbasic therapy(基礎治療)の一環として有用性が期待できる薬剤であることを表現しているとのことです。

オンライン診療対応可能

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ベイスンの特徴

ベイスンは、食前に服用することで食後の過血糖を改善する薬剤です。錠0.2およびOD錠0.2は、耐糖能異常を有する方の2型糖尿病発症抑制にも用いられます。副作用の発現状況を考慮したうえで用量が設定されているため、同系統のほかの薬剤(セイブル、グルコバイなど)に比べて消化器症状が出にくいとされています。

効能効果・用法用量

ベイスンは、糖尿病の食後過血糖の改善に適応があります。ベイスン錠0.2およびベイスンOD錠0.2については、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制にも適応があります。
いずれの場合も、成人は1回0.2mgを1日3回毎食直前に投与します。
ただし、糖尿病の食後過血糖の改善に用いて効果不十分な場合は、経過を十分に観察しながら1回量を0.3mgまで増量できます。

糖尿病の食後過血糖の改善効果

1型糖尿病および2型糖尿病の方を対象とした国内の臨床試験では、ベイスンの投与で中等度改善以上(「著明改善」+「中等度改善」)と評価された症例が45.8%、軽度改善以上と評価された症例が75.3%でした。
また、インスリン製剤や血糖降下薬を併用している症例でも、食後過血糖の改善をはじめとする有用性が認められています。
さらに、長期投与試験では効果の持続が確認され、安定した血糖コントロールが得られることが報告されています。

耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制効果

2型糖尿病の発症リスクの高い耐糖能異常を有する人を対象とした臨床試験では、ベイスン錠0.2またはベイスンOD錠0.2の投与開始から48週の時点で、2型糖尿病の発症がプラセボ群に比べて半分以下に抑えられたことが報告されています。さらに、投与開始から96週の時点では、2型糖尿病の発症がプラセボ群に比べて6割以上抑えられたことが報告されています。

ベイスンの服用方法

ベイスンは、小腸で作用して糖の吸収を遅らせることで食後の急激な血糖の上昇を抑えます。したがって、食物より先にベイスンを服用しなければ十分な効果が期待できません。
このようなことから、ベイスンの用法は「食直前」とされています。
なお、OD錠は舌の上に乗せると唾液が浸み込み簡単に崩壊します。そのため、水なしでも服用できます。また、普通錠と同じように水で服用することも可能です。

ベイスンを服用する上での注意点

ベイスンを服用できない方

以下に該当する場合は、ベイスンの服用が禁忌とされています。

  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、ベイスンの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、ベイスンの投与は適しません。)
  • ベイスンの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)

服用に注意が必要な方

以下の場合はベイスンの投与が禁忌とされているわけではありませんが、服用に注意が必要です。

  • 開腹手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(腸内ガスなどの増加により、腸閉塞の発現リスクが高くなります。)
  • 消化・吸収障害をともなう慢性腸疾患がある場合(ベイスンの作用により、病態が悪化することがあります。)
  • ロエムヘルド症候群、重度のヘルニア、大腸の狭窄・潰瘍などがある場合(腸内ガスなどの増加により、症状が悪化することがあります。)

その他、腎機能障害・肝機能障害がある場合や高齢の方なども、ベイスンの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

ベイスンの副作用

ベイスンの副作用として、下痢や軟便、放屁、腹部膨満、便秘、食欲不振、悪心、嘔吐、胸やけ、めまい、貧血、しびれ、発汗、脱毛などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、腸閉塞、劇症肝炎、意識障害をともなう高アンモニア血症などが報告されています。重大な副作用の発現頻度は明らかになっていませんが、ベイスンの服用にともない下記のような症状があらわれた場合は、適切な処置をしたり受診して治療を受けたりしてください。

低血糖 めまい、ふらつき
冷や汗、脱力感、動悸
手足のふるえ
異常な空腹感
意識障害
腸閉塞 腹部の張り
放屁の増加
持続する腹痛や嘔吐
劇症肝炎
重篤な肝機能障害
黄疸
全身のだるさ、食欲不振、
吐き気、皮膚や白目の黄変
意識障害を伴う
高アンモニア血症
物忘れ、幻覚
行動が不穏になる
意識が低下する

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、ベイスンとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。ほかの医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:低血糖が発現するおそれがあります。
  • β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)、フィブラート系薬剤(高脂血症治療薬)、ワーファリン(抗凝血薬)と糖尿病用薬を併用している場合:これらの薬剤による血糖降下作用の増強にベイスンの糖質吸収遅延作用が加わるため、血糖値の変動に注意が必要です。
  • アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなどと糖尿病用薬を併用している場合:これらの薬剤による血糖降下作用の減弱にベイスンの糖質吸収遅延作用が加わるため、血糖値の変動に注意が必要です。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害・肝機能障害がある方への使用

重篤な腎障害・肝障害がある場合にベイスンを使用すると、代謝状態が変化して血糖管理状況が大きく変化するおそれがあります。
また、重篤な肝硬変症例では、高アンモニア血症が増悪して意識障害をともなうおそれがあります。
そのため、腎機能障害・肝機能障害がある方の治療については、血糖値の変化や副作用の発現状況などに留意しながら慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

動物を対象とした試験で、ベイスンは親動物・胎児・出生児に影響がないことが確認されています。
しかし、妊娠中の方または妊娠している可能性がある方については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。

授乳中の方への使用

ベイスンは、動物を対象とした試験で、母動物の糖質吸収抑制に起因する乳汁産生抑制にともなうと考えられる出生児の体重増加抑制が認められています。
したがって、授乳中の方にベイスンを投与する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

ベイスンは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、ベイスンの保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方では、一般的に生理機能が低下しています。
したがって、投与を低用量(例えば1回量0.1mg)から開始するとともに、血糖値および消化器症状の発現に留意するなど、経過を十分に観察しながら慎重に投与を進めていきます。

低血糖に関する注意点

ベイスンは、糖分の消化や吸収を遅らせる作用があるため、ほかの糖尿病治療薬と併用した場合に低血糖の発現リスクが高くなります。また、糖尿病治療薬を併用していない場合でも、低血糖症状があらわれることがあります。
したがって、高所での作業や自動車の運転など危険をともなう機械の操作をする際は、低血糖に特に注意してください。
なお、低血糖症状があらわれた場合は、砂糖などではなく必ずブドウ糖を摂取してください。ブドウ糖以外の糖分はベイスンの作用により吸収が遅延されるため、低血糖の改善に十分な効果が期待できません。

ベイスンの患者負担・薬価について

ベイスンには0.2mg・0.3mgの2規格があり、それぞれ普通錠とOD錠(口腔内崩壊錠)があります。各規格・剤型の薬価は以下のとおりです。。

ベイスン錠0.2
ベイスンOD錠0.2
19.0円/錠
ベイスン錠0.3
ベイスンOD錠0.3
22.0円/錠

なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがベイスン錠0.2mgを1日3回30日分処方された場合、ご負担金額は513.0円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。

よくあるご質問

食事を摂れないときでも、ベイスンは服用するほうがいいですか?

ベイスンは、食後の過血糖を改善する薬です。食事をしないときに服用しても血糖値の改善は期待できないため、服用する必要はありません。
なお、仕事やライフスタイルの影響で食事が摂れないことがある場合は、診察時にご相談ください。残薬がある場合は処方日数をコントロールしますので、遠慮せずに申し出てください。

ベイスンは食事の前に服用すればよいとのことなので、食直前ではなく10時や15時など食事と食事のあいだに服用してもいいですか?

ベイスンは、食直前に服用してください。
ベイスンの服用タイミングについて検討した臨床試験では、食事4時間前、2時間前、1時間前、食直前に服用した場合を比較していますが、食直前の服用がもっとも効果的であったと報告されています。

ベイスンを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

ベイスンを飲み忘れた場合は、1回とばして次の食事の直前に1回分を服用してください。その際、2回分を一度に服用してはいけません。服用量が多くなると、副作用の発現リスクが高くなります。

 

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記事制作者

木村眞樹子

東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。