ブロプレスとは?
ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に分類される薬剤です。
アンジオテンシンII(強い血管収縮作用を持ち、心不全を悪化させる体内物質)と拮抗する作用を持つため、高血圧症の改善や心不全の予後改善のために用いられます。
なお、「ブロプレス」という名称は、「アンジオテンシンII受容体に作用し、アンジオテンシンIIをブロック(BLOCK)することによって血圧(BLOOD PRESSURE)を下降させる薬剤」という意味でつけられたとのことです。
オンライン診療対応可能
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ブロプレスの特徴
ブロプレスは、軽症~重症までの高血圧、腎実質性高血圧、小児(1歳以上)の高血圧などさまざまなタイプの高血圧に使用できます。また、臓器保護作用を有することから、軽症~中等症の慢性心不全にも適応があります。食事の影響をほとんど受けないため、食前・食後いずれのタイミングでも服用できるという利点もあります。
適応疾患
ブロプレスの適応疾患は、高血圧症と腎実質性高血圧症です。また、ACE阻害薬の投与が適切でない場合の軽症~中等症の慢性心不全の治療に用いられることもあります。なお、慢性心不全に使用できるのは、ブロプレス錠2・4・8のみです。
適応年齢・用法用量
ブロプレスは、1歳以上の高血圧症に使用できます。
ただし、腎実質性高血圧症・慢性心不全の場合は、成人のみが対象となっています。効能効果ごとの適応年齢・用法用量は以下のとおりです。
血中濃度の変化
ブロプレスの血中濃度は、投与から4~6時間後にピークに達し、その後穏やかに低下します。
もっとも、血中濃度が安定するまでには服用開始から数日間かかることもあります。特に飲み始めは、一過性の急激な血圧低下をまねくこともあります。したがって、初回投与時や増量時は、血圧の変動にともなう体調変化にご注意ください。血圧低下によるめまいなどがある場合は、車の運転など危険をともなう作業には十分に注意して、無理をしないようにしましょう。
ブロプレスを服用する上での注意点
ブロプレスを服用できない方
以下に該当する場合は、ブロプレスを服用できません。
- ブロプレスの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 妊娠中または妊娠している可能性のある女性(胎児・新生児の死亡などが報告されています。)
- ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスク増加が報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など、治療上やむを得ない場合はラジレスとの併用を考慮することもあります。
ブロプレスの服用に注意が必要な方
腎障害や高カリウム血症のある方は、病状によってはブロプレスを使用できません。また、血液透析中の方、厳重な減塩療法中の方、利尿薬を服用している方などは、ブロプレスによる過降圧に注意が必要です。その他、肝疾患のある方は、ブロプレスの投与で肝機能が悪化するおそれがあります。
予期せぬ副作用を防ぐためにも、他の医療機関でこれらの病気・症状を指摘されている場合は診察時にご相談ください。検査データなどをお持ちの場合は、あらかじめご提出いただけますと治療方針の決定に役立ちます。
ブロプレスのおもな副作用
おもな副作用として、過敏症(発疹、湿疹、蕁麻疹など)、循環器症状(めまい、ふらつき、立ちくらみなど)、精神神経系症状(頭痛、頭重感、不眠など)、消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振など)、血液の異常(貧血など)、その他、倦怠感、脱力感、鼻出血などが報告されています。特に慢性心不全方の場合は、立ちくらみ、ふらつき、低血圧、腎機能異常や貧血などの発生頻度が高くなる傾向があります。
ブロプレスの重大な副作用
ブロプレスの重大な副作用として、血管浮腫やショック、横紋筋融解症、低血糖などが報告されています。重大な副作用が起こることはまれですが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
ブロプレスは、原則としてラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病を併発している方のみです。また、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、併用を考慮することもあります。
その他、併用に注意が必要な薬剤は以下のとおりです。該当する薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- カリウム保持性利尿薬・カリウム補給薬:血清カリウム値が上昇することがあります。
- エプレレノン(高血圧症や慢性心不全などの治療薬):血清カリウム値が上昇することがあります。
- 利尿薬:降圧作用が強くあらわれることがあります。
- ACE阻害薬(高血圧症などの治療薬):腎機能障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
- リチウム(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
- ACE阻害薬およびβ遮断薬とループ利尿薬およびカリウム保持性利尿薬を併用している場合:ひどい立ちくらみやふらつき、低血圧が高頻度で発生するおそれがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬・COX-2選択的阻害剤(解熱・鎮痛に使われる薬):降圧作用が弱くなることがあります。また、腎機能が悪化するおそれもあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎障害がある方・血液透析中の方などの高血圧症治療で用いる場合
腎障害がある方や血液透析中の方は、ブロプレスの服用で血圧の急激な低下やショック、失神、一過性の意識消失、腎機能の低下をまねくおそれがあります。そのため治療は低用量からスタートし、血圧や腎機能、病状などを十分に確認したうえで少しずつ投与量を加減していきます。
低ナトリウム血症の方・心不全の方なども同様です。
腎障害がある方・血液透析中の方などの慢性心不全治療で用いる場合
慢性心不全の治療にブロプレスを用いる場合は、通常ジギタリス製剤や利尿薬などと併用します。
また慢性心不全で腎障害のある方・血液透析中の方などは、ブロプレスの服用で急激な血圧低下や腎機能低下、貧血などを起こすリスクが高くなります。そのため、投与する際には、血圧や腎機能、貧血の指標(ヘモグロビンなど)および病状などに特に注意しながら治療を行います。
低ナトリウム血症の方・低血圧の方・重症度の高い慢性心不全の方なども同様です。
妊娠中の方への使用
妊娠中期・末期にブロプレスを含む類薬を使用した高血圧症例で、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があります。
したがって、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある女性にブロプレスは使用できません。ブロプレス使用中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止します。
授乳中の方への使用
周産期および授乳期の動物にブロプレスを投与した試験では、出生児に水腎症の発生増加が認められています。
そのため、ブロプレスを授乳中の方に投与することはできません。やむを得ず投与する場合は、授乳の中止が必要です。
お子さまへの使用
ブロプレスは1歳以上の高血圧症に適応がありますが、低出生体重児・新生児・1歳未満の乳児に対する使用経験が少なく、安全性も確立していません。また、糸球体ろ過量(GFR)が30mL/min/1.73m2未満の小児などに対する安全性も確立していません。
小児の高血圧は、腎機能障害をともなっている場合が多くあります。そのため、お子さまにブロプレスを使用する場合は腎機能や血清カリウム値に特に留意し、併用薬の影響などにも配慮しながら投与量や治療方針を決定します。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞をまねくおそれがあるため、望ましくありません。また、高齢の方は腎機能などの生理機能が低下している場合も少なくありません。したがって、ブロプレスによる治療を始める際には、年齢や症状、合併症、併用薬などに配慮して慎重に治療を進めていきます。
ブロプレスの患者さま負担・薬価について
ブロプレスには、2mg・4mg・8mg・12mgという4種類の規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがブロプレス錠8を1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は687.6円になります(薬剤費のみの計算です)。
薬剤費をおさえたい場合は、ジェネリック薬の使用をご検討ください。
よくあるご質問
- ブロプレスを飲むと、めまいやふらつきが出ます。それでも飲んだほうがいいですか?
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ブロプレスに限らず、血圧の薬は飲み始めにめまいやふらつきなどがあらわれることがあります。しばらく飲み続けて血中濃度が安定してくると、不快な症状はあらわれにくくなりますのでご安心ください。
なお、ひどいめまいやふらつきなどが長期間続く場合は、投与量の変更なども検討いたしますので診察時にご相談ください。その際、ご家庭で測定した血圧値の記録をご提出いただけますと、処方の決定がスムーズに進みます。
- ブロプレスを飲み忘れたら、どうすればいいですか?
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ブロプレスを飲み忘れたら、気付いたタイミングですぐに1回分を飲んでください。
ただし、ブロプレスは長時間効果が続くため、次の服用時間との間隔は8時間以上空けてください。なお、飲み忘れがある場合でも、2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると、副作用が発現しやすくなります。
- 手術前にブロプレスの服用を中止すると聞きました。理由を教えてください。
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ブロプレスなどARBを服用していると、麻酔中や手術中に高度な血圧低下を起こすおそれがあります。そのため、手術前24時間はブロプレスの投与を避けるのが望ましいとされています。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。