フルイトランとは?
フルイトラン(一般名:トリクロルメチアジド)は、チアジド系(サイアザイド系)利尿薬の一種です。
フルイトランをはじめとしたチアジド系利尿薬は、腎臓の遠位尿細管で塩分の再吸収を阻害して、ナトリウム・水分・カリウムの排泄量を増やします。血液中の余分な水分が排泄されるため、むくみが取れて血圧が下がり、心臓の負担も軽くなります。
なお、「フルイトラン」という名称は、「fluid=体液、尿をtransport=運ぶ→利尿剤」に由来します。
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フルイトランの特徴
フルイトランを含むチアジド系利尿薬は、ループ利尿薬(ラシックスなど)に比べて利尿作用は穏やかですが、効果持続時間が長く、1日1回の投与で翌朝まで安定した降圧効果が得られます。また、長期間使用しても効果が減弱することがなく、安定した降圧効果が維持されます。日本では1960年代から使用されており、低薬価であることもメリットといえます。
適応疾患・用法用量
フルイトランは、高血圧症(本態性、腎性など)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症に適応があります。
通常、成人には1日2~8mgを1~2回に分けて投与します。なお、投与量は年齢、症状により適宜増減します。
ただし、高血圧症に用いる場合は少量から投与をスタートして、徐々に増量します。また、悪性高血圧に用いる場合は、通常他の降圧薬と併用します。
効果発現時間・効果持続時間
フルイトランを健康な成人に投与した試験では、投与から100分以内に利尿効果のピークがあらわれ、その効果は約6~7時間持続したと報告されています。そのため、フルイトランを服用する際は、外出や就寝のタイミングに配慮する必要があります。
一方、血圧に対する効果を検討した試験では、朝1回の投与で翌朝まで降圧効果が持続したと報告されています。
フルイトランを服用する上での注意点
フルイトランを服用できない方
以下の方は、フルイトランを服用できません。
- 無尿の方(フルイトランの効果が期待できません。)
- 急性腎不全の方(腎機能をさらに悪化させるおそれがあります。)
- 体液中のナトリウム・カリウムが明らかに減少している方(電解質失調を悪化させるおそれがあります。)
- チアジド系薬剤またはその類似化合物に対して過敏症の既往歴のある方(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 男性の夜間頻尿の治療としてデスモプレシン酢酸塩水和物を服用中の方(低ナトリウム血症が発現するおそれがあります。)
フルイトランの服用に注意が必要な方
以下の場合は、フルイトランの服用に注意が必要です。
- 重篤な冠動脈硬化症または脳動脈硬化症のある方(急激な利尿があらわれた場合、血栓塞栓症を誘発するおそれがあります。)
- 本人または両親・兄弟に痛風、糖尿病のある方(高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、血糖値の悪化や顕性化のおそれがあります。)
- 下痢、嘔吐のある方(電解質失調を起こすおそれがあります。)
- 高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症のある方(血清カルシウム値が上昇するおそれがあります。)
- 減塩療法中の方(低ナトリウム血症を起こすおそれがあります。)
- 交感神経切除後の方(降圧作用が増強されます。)
フルイトランの副作用
おもな副作用として、発疹、顔面潮紅、光線過敏症、電解質失調、血清脂質の増加、高尿酸血症、高血糖症などが報告されています。
その他、重大な副作用として再生不良性貧血、低ナトリウム血症、低カリウム血症などが報告されています。重大な副作用が発生することは稀ですが、以下のような症状があらわれた場合はすぐに受診して適切な治療を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
フルイトランは、デスモプレシン酢酸塩水和物(商品名:ミニリンメルト)との併用が禁忌になっています。これは、併用により低ナトリウム血症をまねくおそれがあるためです。
その他、併用に注意しなければならない薬剤は以下のとおりです。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。また、他の医療機関で治療を受ける場合は、フルイトランを服用していることを伝えてください。
- バルビツール酸誘導体(てんかんなどの治療薬)、アヘンアルカロイド系麻薬(がん性疼痛などに対する鎮痛薬):降圧作用が増強されるおそれがあります。
- 他の降圧薬:降圧作用が増強されるおそれがあります。
- ジギタリス製剤(心不全や頻脈などの治療薬):ジギタリス製剤の作用が増強されるおそれがあります。
- 糖質副腎皮質ホルモン剤(ステロイドの一種)、グリチルリチン製剤、甘草含有製剤:低カリウム血症が発現するおそれがあります。
- SU剤、インスリン(いずれも糖尿病の治療薬):SU剤やインスリンの作用が著しく減弱するおそれがあります。
- リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
- コレスチラミン(高コレステロール血症の治療薬):フルイトランの作用が減弱するおそれがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬:フルイトランの利尿作用が減弱するおそれがあります。
なお、フルイトランはアルコールと併用すると降圧作用が増強されるおそれがあるため、アルコールとの併用にも注意が必要とされています。
特定の患者さまへの使用に関して
肝機能障害がある方・腎機能障害がある方への使用
腎機能障害のある方にフルイトランを投与すると、腎機能がさらに悪化するおそれがあります。
また、進行した肝硬変のある方にフルイトランを投与すると、肝性脳症を誘発するおそれがあります。そして、肝疾患・肝機能障害のある方にフルイトランを投与すると、肝機能がさらに悪化するおそれがあります。
そのため、腎機能障害や肝機能障害のある方にフルイトランを投与する場合は、体調や検査値の変化に注意しながら慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
フルイトランなどのチアジド系薬剤は、新生児または乳児に高ビリルビン血症、血小板減少などを起こすことがあります。また、利尿効果に基づく血漿量減少、血液濃縮、子宮・胎盤血流量減少があらわれることもあります。
そのため、妊娠後期には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方への使用
フルイトランの類薬において、ヒトの乳汁中に移行することが報告されています。
したがって、フルイトラン投与中は授乳しないのが望ましいとされています。
お子さまへの使用
乳児には、成人に比べて電解質バランスが崩れやすいという特徴があります。したがって、お子さまにフルイトランを使用する場合は、全身状態や検査値などにも十分に注意しながら慎重に投与量などを検討します。
ご高齢の方への使用
高齢の方の場合、急激な利尿は脱水・低血圧などによる立ちくらみ・めまい・失神などを引き起こすことがあります。特に心疾患のある方では、急激な利尿が脳梗塞などの血栓塞栓症を誘発するおそれがあります。さらに、高齢の方は低ナトリウム血症や低カリウム血症のリスクも高い傾向があります。
このようなことから、高齢の方にフルイトランを使用する場合は、少量から投与を始めるなどして症状や検査値に留意しながら慎重に治療を進めます。
フルイトランの患者さま負担・薬価について
フルイトランには1mg・2mgの2規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがフルイトラン錠2mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は88.2円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- フルイトランを飲むとどれくらいトイレが近くなるのですか?夜のトイレが近くなることはありますか?
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フルイトランは、通常服用から1~2時間以内に利尿効果のピークがあらわれます。効果持続時間は6~7時間とされていますが、ピークを過ぎれば強い尿意を頻繁に感じることはほとんどありません。
夜間の排尿回数の増加が心配な場合は、フルイトランを午前中に服用すればまず大丈夫ですのでご安心ください。
- フルイトランで脱水を起こすことはありますか?
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高齢の方の場合・フルイトランの服用量が多い場合などは、急激な利尿で脱水を起こすリスクが高くなります。特に夏場や運動時など、汗をかく場面では脱水を起こしやすいため、のどの渇きや立ちくらみ、めまい、倦怠感などがある場合はすぐに受診して適切な治療を受けてください。
- フルイトランを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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フルイトランを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近いときは1回分を飛ばし、次の服用時間に1回分を服用してください。このとき、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。
なお、夜間の休息が特に必要な場合は、飲み忘れた分をできるだけ午前中に服用するようにしてください。午後遅い時間に服用すると、睡眠が妨げられるおそれがあります。
- フルイトランは形が花のようなので、子どもがお菓子だと思い込み欲しがって困ります。形の違うジェネリック薬はありませんか?
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フルイトランのジェネリック薬のなかには、フルイトランと同じように花のような形の製品もありますが、丸い錠剤タイプの製品もあります。丸い錠剤タイプのものをご希望の場合は、調剤薬局にてご相談ください。
ただ、ジェネリック薬の在庫状況は薬局により異なります。また、入手までに時間がかかる製品もあります。そのため、ご希望の薬剤がすぐに手に入るとは限りませんので、ご了承ください。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。