2型糖尿病治療薬「カナリア(テネリグリプチン・カナグリフロジン)」選択的DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤

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カナリアとは?

カナリアの写真

カナリア(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物・カナグリフロジン水和物)は、2種類の血糖降下薬を含む配合剤です。含まれている成分のうち、一つはDPP-4阻害薬のテネリグリプチンで、もう一つはSGLT2阻害薬のカナグリフロジンです。
テネリグリプチンは、インクレチン(インスリンの分泌を促す作用と肝臓における糖の産生を抑制する作用を併せ持つホルモン)を分解するDPP-4という酵素を選択的に阻害してインクレチンの濃度を上昇させ、結果として血糖低下作用を示します。
カナグリフロジンは、腎臓の近位尿細管に局限的に分布するナトリウム・グルコース共輸送担体2(SGLT2)を選択的に阻害して腎臓における糖の再吸収を抑制し、血糖低下作用を示します。
なお、「カナリア(Canalia)」という名称は、配合成分であるカナグリフロジンの製品名カナグル(canaglu)と、テネリグリプチンの製品名テネリア(tenelia)から命名したとのことです。

カナリアの特徴

効能効果・用法用量

カナリアは2型糖尿病に適応があります。ただし、投与できるのはテネリグリプチンおよびカナグリフロジンの併用による治療が適切と判断される場合に限られます。
通常、成人には1日1回1錠(テネリグリプチン/カナグリフロジンとして20mg/100mg)を朝食前または朝食後に投与します。

臨床成績

非薬物療法(食事療法+運動療法)に加えてカナグリフロジン単剤治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の方を対象とした臨床試験(試験期間24週間)では、テネリグリプチンを追加投与することでHbA1cが0.94%、空腹時血糖が5.6mg/dL、食事負荷後2時間血糖が35.3mg/dL減少しました。
また、非薬物療法(食事療法+運動療法)に加えてテネリグリプチン単剤治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の方を対象とした臨床試験(試験期間24週間)では、カナグリフロジンを追加投与することでHbA1cが0.97%、空腹時血糖が34.9mg/dL、食事負荷後2時間血糖が60.1mg/dL減少しました。
なお、テネリグリプチンとカナグリフロジンの併用治療では、長期(52週間)にわたりHbA1c低下効果が持続することも示されています。

カナリアを服用する上での注意点

カナリアを服用できない方

以下に該当する場合は、カナリアの服用が禁忌とされています。

  • カナリアの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるので、カナリアの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、カナリアの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合は、カナリアの服用に注意が必要です。

  • 心不全(NYHA分類III~IV)がある場合(使用経験がなく、安全性が確立していません。)
  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(カナリアの服用で低血糖の発現リスクが高くなります。)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合
  • 血糖コントロールが極めて不良の場合・高齢者・利尿薬を併用している場合など脱水を起こしやすい場合(カナグリフロジンの利尿作用により脱水を起こすおそれがあります。)
  • 尿路感染・性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
  • 腹部手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(腸閉塞を起こすおそれがあります。)
  • QT延長の既往歴またはTorsade de pointesの既往歴がある場合・重度の徐脈などの不整脈またはその既往歴がある場合・うっ血性心不全などの心疾患がある場合・低カリウム血症がある場合などQT延長を起こしやすい場合(QT延長を起こすおそれがあります。)

その他、腎機能障害や肝機能障害がある場合などもカナリアの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

カナリアの副作用

おもな副作用として、口渇、便秘、頻尿や多尿、湿疹などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、脱水、腎盂腎炎、敗血症、腸閉塞、肝機能障害、間質性肺炎、類天疱瘡、急性膵炎などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 めまい、冷や汗、脱力感、
動悸、手足のふるえ、
強い空腹感、意識の消失
脱水 口や喉の渇き、多尿や頻尿、
血圧低下、体のだるさ、
立ちくらみ、めまい
ケトアシドーシス 吐き気・嘔吐、食欲の減退、
腹痛、口の渇き、倦怠感、
息苦しさ、呼吸が荒い、
呼吸が深く大きい、
意識や判断力の低下
腎盂腎炎、
外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、
敗血症
寒気、発熱、脇腹や背中の痛み、
腰痛、陰部や性器周辺の強い痛み・腫れ・赤み、
腸閉塞 ひどい便秘、腹部の張り、腹痛の持続、嘔吐
肝機能障害 全身のだるさ、食欲不振、
皮膚や白目の黄変
間質性肺炎 空咳、呼吸困難、発熱など
類天疱瘡 水疱、びらん、紅斑
急性膵炎 激しい腹痛が続く、
吐き気・嘔吐

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、カナリアとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖のリスクが増加するおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
  • クラスIA抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)およびクラスIII抗不整脈薬(カリウムチャネル遮断薬)などQT延長を起こすことが知られている薬剤:QT延長などが起こるおそれがあります。
  • ジゴキシン(心不全や頻脈などの治療薬):ジゴキシンの効果が強くあらわれるおそれがあります。
  • リファンピシン(結核などの治療薬)、フェニトイン(抗てんかん薬)、フェノバルビタール(てんかんのけいれん発作などの治療薬)、リトナビル(抗ウイルス薬)など:カナグリフロジンの代謝が促進され、血糖降下作用が減弱するおそれがあります。
  • 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

高度腎機能障害または透析中の末期腎不全をともなう2型糖尿病については、カナグリフロジンの血糖低下作用が期待できません。そのため、血糖コントロール改善を目的とした投与は行いません。
また、中等度の腎機能障害がある2型糖尿病についても、カナグリフロジンの血糖降下作用が十分に得られないおそれがあるため、投与の必要性を慎重に判断します。

肝機能障害がある方への使用

カナリアは、高度肝機能障害を持つ方を対象とした臨床試験を実施していません。
そのため、肝機能障害がある方へカナリアを投与する場合は、症状や効果、副作用の発現状況などに配慮しながら慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

カナリアの成分であるテネリグリプチンおよびカナグリフロジンは、動物を対象とした試験で胎児への移行が報告されています。また、カナグリフロジンについては、動物を対象とした試験で幼若動物の腎盂および尿細管の拡張が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはカナリアを投与せず、インスリン製剤などを使用します。

授乳中の方への使用

カナリアの成分であるテネリグリプチンおよびカナグリフロジンは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。また、カナグリフロジンについては、動物を対象とした試験で哺育期間中に出生児の体重増加抑制や幼若動物の腎盂の拡張、尿細管の拡張が認められています。
そのため、カナリア服用中は授乳しないことが望ましいとされています。

お子さまへの使用

カナリアは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方では、一般的に生理機能が低下しています。また、高齢の方では脱水症状(口の渇きなど)の認知が遅れるおそれがあります。
そのため、高齢の方へカナリアを使用する場合は、状態を観察しながら慎重に治療を進めていきます。

低血糖に関する注意点

カナリアの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特に他の糖尿病治療薬を併用している場合は、低血糖のリスクが高くなります。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲食物を摂取してください。
糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
なお、高所での作業や自動車の運転などをする際は、体調の変化に特に注意してください。

カナリアの患者負担・薬価について

カナリア配合錠の1錠あたりの薬価は232.4円です。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがカナリア配合錠を1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は2091.6円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

カナリアを飲むようになってからトイレが近くなった気がします。水分を控える方がいいですか?

カナリアを服用すると、有効成分の作用で尿量や尿の回数が増える傾向があります。だからといって水分摂取量を減らすと脱水を起こすリスクが高くなるため、水分は積極的に摂取してください。できれば、カナリアの服用前より多めに水分を摂るようにしましょう。特に夏場や運動時など発汗量の多いときは体内の水分量が少なくなりやすいため、意識して水分を多く摂ってください。

カナリアを飲んだ場合と、テネリア(テネリグリプチン)とカナグル(カナグリフロジン)を併用した場合では、どちらのほうがよく効きますか?

飴カナリア(テネリグリプチン20mg+カナグリフロジン100mg)のみを服用した場合と、テネリア(20mg)とカナグル(100mg)を併用した場合で効果に違いはありません。このことは臨床試験で明らかにされています。
ただし、テネリアには20mgと40mgがあります。そのため、たとえテネリアとカナグルの残薬があっても自己判断で併用するのは避けてください。

カナリアを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

カナリアを飲み忘れた場合は、その日は飲まずに次の日の通常の服用時間に1回分を飲んでください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多くなると、副作用が発現するおそれがあります。

 

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