セイブルとは?
セイブル(一般名:ミグリトール)は、小腸において炭水化物をブドウ糖に分解する酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害し、ブドウ糖の吸収を遅延させることによって食後の過血糖を改善する薬剤です。
「セイブル」という名称には、食後高血糖による膵臓の疲弊や血管障害を防止し、糖尿病患者の生命を救う(セイブする)ことができれば……との願いが込められているとのことです。
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セイブルの特徴
セイブルは、食後の過血糖を改善する薬剤です。食後30分から2時間の血糖値の上昇を抑制しますが、特に食後1時間値の抑制に優れています。同系統のほかの薬剤(ベイスン、グルコバイなど)と異なり小腸上部から吸収されるため、高用量を投与しても小腸下部での副作用(消化器症状)が起こりにくいとされています。また、食欲抑制効果のあるGLP-1の分泌をおさえる作用もあるため、体重増加の副作用も起きにくいです。
効能効果・用法用量
セイブルは、糖尿病の食後過血糖の改善に適応があります。
通常、成人には1回50mgを1日3回毎食直前に投与します。ただし、効果不十分な場合は、経過を十分に観察しながら1回量を75mgまで増量できます。
なお、投与が認められるのは、食事療法・運動療法のみでは十分な効果が得られない場合、または食事療法・運動療法に加えてSU剤、ビグアナイド系薬剤、もしくはインスリン製剤を使用しても十分な効果が得られない場合に限られます。
糖尿病の食後過血糖の改善効果
2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、12週間のセイブル投与後にHbA1cが0.35%低下し、食後血糖1時間値および2時間値がそれぞれ73.0mg/dL・27.8mg/dL低下するという結果が得られています。
また、インスリン製剤や血糖降下薬を併用している症例でも、食後過血糖の改善などの効果が認められています。
セイブルの服用方法
セイブルは、小腸で作用して糖の吸収を遅らせることで食後の急激な血糖の上昇を抑えます。したがって、食後や食間に服用しても十分な効果は期待できません。
このようなことから、セイブルの用法は「食直前」とされています。
なお、OD錠は舌の上に乗せると唾液が浸み込み簡単に崩壊します。そのため、水なしでも服用できます。また、普通錠と同じように水で服用することも可能です。
セイブルを服用する上での注意点
セイブルを服用できない方
以下に該当する場合は、セイブルの服用が禁忌とされています。
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、セイブルの投与は適しません。)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、セイブルの投与は適しません。)
- セイブルの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 妊娠している場合または妊娠の可能性がある場合(動物を対象とした試験で、胎児死亡率の増加などが報告されています。)
服用に注意が必要な方
以下の場合はセイブルの禁忌には該当しませんが、注意が必要です。
- 開腹手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(腸内ガスなどの増加により、腸閉塞の発現リスクが高くなります。)
- 消化・吸収障害をともなう慢性腸疾患がある場合(セイブルの作用により、病態が悪化することがあります。)
- ロエムヘルド症候群、重度のヘルニア、大腸の狭窄・潰瘍などがある場合(腸内ガスなどの増加により、症状が悪化することがあります。)
その他、腎機能障害・肝機能障害がある場合や高齢の方なども、セイブルの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
セイブルの副作用
セイブルの副作用として、腹部の張りや下痢、便秘、発疹やかゆみ、めまいなどが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、腸閉塞、肝機能障害や黄疸が報告されています。重大な副作用の発現頻度は明らかになっていませんが、セイブルの服用にともない下記のような症状があらわれた場合は、適切な処置をしたり受診して治療を受けたりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、セイブルとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病用薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。ほかの医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 糖尿病用薬:低血糖が発現するおそれがあります。
- 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)、フィブラート系薬剤(高脂血症の治療薬)、ワルファリン(抗凝血薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
- 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):これらの薬剤による血糖降下作用の減弱にセイブルの糖質吸収遅延作用が加わるため、血糖値の変動に注意が必要です。
- プロプラノロール(高血圧や狭心症、不整脈、片頭痛などの治療薬):プロプラノロールの効果が減弱するおそれがあります。
- ジゴキシン(心不全や頻脈などの治療薬):ジゴキシンの効果が減弱するおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害・肝機能障害がある方への使用
重篤な腎障害がある場合はセイブルの血漿中濃度が上昇することが報告されています。また、重篤な肝機能障害がある場合は、代謝状態が不安定で血糖管理状態が大きく変化するおそれがあります。
そのため、腎機能障害・肝機能障害がある場合は、血糖値の変化や副作用の発現状況などに留意しながら慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
セイブルは器官形成期の動物を対象とした試験で、母動物の摂餌量の低下や体重増加抑制、胎児体重の低下や骨化遅延および胎児死亡率の増加が報告されています。
そのため、セイブルは妊娠中の方あるいは妊娠の可能性がある方への投与が禁忌とされています。
授乳中の方への使用
セイブルは人の乳汁中へ移行することが報告されています。
したがって、授乳中の方にセイブルを投与する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
国内で実施された小児を対象とした臨床試験において、小児特有の副作用は認められず、成人の場合と大きな違いはありませんでした。
なお、ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、一般的に生理機能が低下しています。
したがって、投与を低用量(例えば1回量25mg)から開始するとともに、血糖値の変化および副作用の発現に留意するなど、経過を十分に観察しながら慎重に投与を進めていきます。
低血糖に関する注意点
セイブルは糖分の消化や吸収を遅らせる作用があるため、ほかの糖尿病治療薬と併用した場合に低血糖の発現リスクが高くなります。また、糖尿病治療薬を併用していない場合でも低血糖症状があらわれることがあります。
そのため、高所での作業や自動車の運転など危険をともなう機械の操作をする際は、低血糖の発現に特に注意してください。
なお、低血糖症状があらわれた場合は、砂糖などではなく必ずブドウ糖を摂取してください。ブドウ糖以外の糖分はセイブルの作用により吸収が遅延されるため、低血糖の改善に十分な効果が期待できません。
セイブルの患者負担・薬価について
セイブルには25mg・50mg・75mgの3規格があり、それぞれ普通錠とOD錠(口腔内崩壊錠)があります。各規格・剤型の薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがセイブル錠50mgを1日3回30日分処方された場合、ご負担金額は696.6円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- 食事を摂れないときは、セイブルを服用しなくてもいいですか?
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セイブルは食後の過血糖を改善する薬です。食事をしないときは血糖値が上がらないため、服用しなくても大丈夫です。
なお、仕事やライフスタイルの影響で食事が摂れないことがある場合は、診察時にご相談ください。残薬がある場合は処方日数をコントロールしますので、遠慮せずに申し出てください。
- セイブルODをなめて溶かすと甘みを感じるのですが、血糖値に影響はありませんか?
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セイブルODのほのかな甘みは、成分そのものの甘さと矯味剤の甘さに由来するものです。もちろん、矯味剤の成分は血糖値に影響しないものが選ばれています。
したがって、セイブルODの服用で血糖値が上がることはないので、ご安心ください。
- セイブルを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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食事中または食直後にセイブルの飲み忘れに気付いた場合は、すぐに1回分を服用してください。
飲み忘れに気付いたのが食後や食間の場合は、1回分の服用を飛ばして次の食直前に1回分を服用してください。なお、飲み忘れた分をまとめて服用するのはやめてください。服用量が多くなりすぎると、副作用の発現リスクが高くなります。