クレストールとは?
クレストール(一般名:ロスバスタチンカルシウム)は、HMG-CoA還元酵素阻害薬と呼ばれる系統の薬剤です。クレストールは、肝臓におけるコレステロール合成で重要な役割を担うHMG-CoA還元酵素を阻害して、血液中のコレステロールを低下させます。
なお、「クレストール」という名称は「波頭、頂上、最上」を意味する「Crest」に由来します。
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クレストールの特徴
クレストールはスタチン系薬剤の中でもコレステロール低下作用が強い「ストロングスタチン」で、特にLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を大きく減少させます。処方できる量に幅があるため、症状に合わせて細かな調整がしやすいのが特徴です。また、水溶性であるため組織移行性が低く、副作用や薬物相互作用が少ないとされています。さらにCYP(おもに肝臓に存在する薬物代謝酵素)の影響をあまり受けないため、飲み合わせの悪い薬が少なく、グレープフルーツジュースによる影響も受けにくいとされています。
適応疾患・用法用量
クレストールは、高コレステロール血症と家族性高コレステロール血症に適応があります。
通常、成人には1日1回2.5mgから治療をスタートしますが、早期にLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる必要がある場合には5mgから投与を開始することもあります。
年齢・症状により投与量は適宜増減しますが、投与開始後あるいは増量後4週以降に効果が不十分な場合には10mgまで増量できます。
そして、10mgを投与してもLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が十分に低下しない場合、あるいは重症の家族性高コレステロール血症の場合に限り、1日最大20mgまで増量できます。
コレステロール低下作用と治療上のメリット
クレストールはコレステロール低下作用が比較的強く、臨床試験ではLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を40%以上低下させる効果が認められています。また、中性脂肪を低下させる効果もあります。
加えて、HMG-CoA還元酵素阻害薬の効果は複数の大規模臨床試験で証明されており、脂質異常症の人の心筋梗塞などのリスクを3割ほど減らせることが報告されています。
クレストールを服用する上での注意点
クレストールを服用できない方
以下に該当する場合は、クレストールの服用が禁忌とされています。
- クレストールの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 急性肝炎、慢性肝炎の急性増悪、肝硬変、肝癌、黄疸など、肝機能が低下していると考えられる場合(クレストールの血中濃度が上昇するおそれがあります。また、肝障害を悪化させるおそれがあります。)
- 妊娠中の方または妊娠の可能性がある方、および授乳中の方(催奇形性が報告されています。また、動物を対象とした試験で乳汁への移行が報告されています。)
- シクロスポリンを使用中の場合(クレストールの血漿中濃度が上昇するおそれがあります。)
服用に注意が必要な方
以下の場合は、クレストールの副作用である横紋筋融解症の発症リスクが高いため、服用に注意が必要です。
- アルコール中毒
- 甲状腺機能低下症
- 遺伝性の筋疾患(筋ジストロフィーなど)がある場合、またはその家族歴がある場合
- 高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症のある方(血清カルシウム値が上昇するおそれがあります。)
- 薬剤性の筋障害の既往歴がある場合
その他、腎機能障害がある方、禁忌には該当しないものの肝機能障害がある方も、クレストールの服用には注意が必要です。(参照:特定の患者様への使用に関して)。
クレストールの副作用
おもな副作用として、筋肉痛や肝機能障害などが報告されています。
また、重大な副作用として、横紋筋融解症や肝炎、過敏症状などが報告されています。重大な副作用が起きることは稀ですが、下記のような症状があらわれた場合はすぐに受診して、適切な治療を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
クレストールは、シクロスポリン(免疫抑制薬)との併用が禁忌とされています。シクロスポリンと併用すると、クレストールの肝臓への取り込みが阻害されて血漿中濃度が上昇するおそれがあるためです。
その他、併用に注意が必要とされている薬剤は以下のとおりです。他の医療機関で該当する薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- フィブラート系薬剤(脂質異常症の治療薬)、ニコチン酸(脂質異常症や末梢循環障害の治療薬)、アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗生物質:急激な腎機能悪化をともなう横紋筋融解症があらわれるおそれがあります。
- ワルファリン(抗血栓薬):抗凝血作用が増強することがあります。
- 制酸剤(水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウム):クレストールの血中濃度が低下することが報告されています
- リトナビルなど(一部の抗エイズウイルス薬)、ダロルタミド(前立腺がんの治療薬)、レゴラフェニブ(抗悪性腫瘍薬)、カプマチニブ塩酸塩水和物(抗悪性腫瘍薬)、バダデュスタット(腎性貧血の治療薬)、フェブキソスタット(高尿酸血症などの治療薬)、エルトロンボパグ(再生不良性貧血などの治療薬):クレストールの血中濃度が上昇するおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
重度の腎機能障害がある方にクレストールを使用すると、クレストールの血中濃度が高くなるおそれがあります。また、クレストールの副作用である横紋筋融解症は、腎機能障害がある方に生じやすい傾向があります。
そのため、腎機能障害がある方へクレストールを使用する場合は、副作用の初期症状の有無や検査値の変化などに留意し、慎重に投与を行います。
肝機能障害がある方への使用
急性肝炎、慢性肝炎の急性増悪、肝硬変、肝癌、黄疸など、肝機能が低下していると考えられる方にクレストールを使用すると、クレストールの血中濃度が高くなるおそれがあります。したがって、肝機能が低下していると考えられる方にはクレストールを使用できません。
また、クレストールは肝臓に分布して作用するため、肝障害やその既往歴のある方では肝障害が悪化するおそれがあります。
これらのことから、肝機能障害がある方へクレストールを使用する場合は、症状や副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
クレストールを妊娠中の方に投与した場合の安全性は確立していません。また、動物を対象とした試験では、胎児の骨格奇形が報告されています。さらに、ヒトではクレストールの類薬を妊娠3ヵ月までに使用した症例で、胎児に先天性奇形があらわれたとの報告もあります。
したがって、妊娠中の方または妊娠の可能性がある方には、クレストールは使用できません。
授乳中の方への使用
クレストールは、動物を対象とした試験で母乳中への移行が報告されています。
そのため、クレストールを授乳中の方に使用することはできません。
お子さまへの使用
クレストールは、小児などを対象とした有効性・安全性に関する臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、クレストールの保管場所にご注意ください。
ご高齢の方への使用
クレストールは、臨床上問題となる加齢の影響はないと考えられています。しかし、高齢の方では腎臓や肝臓の機能が低下していることも少なくありません。
したがって、高齢の方へクレストールを使用する場合は、効果や症状、検査値などを観察しながら治療を進めていきます。
クレストールの患者さま負担・薬価について
クレストールには普通錠とOD錠(口腔内崩壊錠)があり、それぞれ2.5mg・5mgの2規格があります。各剤型・規格の薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがクレストール錠2.5mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は290.7円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- クレストールを処方してもらうときに、筋肉痛に気を付けるようにいわれました。運動してはいけないということですか?
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クレストールの重大な副作用の一つに、「横紋筋融解症」というものがあります。
横紋筋融解症になると、筋肉の細胞が融解・壊死して筋肉の痛みや脱力が生じます。その初期症状としてよく見られるのが、筋肉痛や手足のしびれ、脱力感、赤褐色の尿などです。
そして、「筋肉痛に気を付けるように」というのは「原因不明の筋肉痛などが生じたらすぐに受診してください」という意味で、運動してはいけないという意味ではありません。むしろ、運動は脂質異常症の改善に役立つものです。日常生活では、無理のない範囲で体を動かすようにしてください。
- クレストールを飲んでも効果を実感できないのですが……。飲まないとダメですか?
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脂質異常症はほとんど自覚症状がない病気なので、クレストールを服用しても効果を実感するのは難しいかもしれません。
しかし、クレストールの服用をやめてしまうと、血清脂質の値が今以上に高くなるおそれがあります。そして、血清脂質値が高い状態を放置すると、動脈硬化が進行して狭心症や心筋梗塞などをまねくおそれがあります。一方で、血清脂質値が適度におさえられると、血栓などが生じるリスクが少なくなります。
将来の健康のためにも、自己判断で治療を中断することがないようにしましょう。
- クレストールを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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クレストールを飲み忘れたときは、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は1回服用を飛ばし、次の服用時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用が発生しやすくなります。