2型糖尿病治療薬「デベルザ(トホグリフロジン)」選択的SGLT2阻害薬

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デベルザとは?

デベルザの写真

デベルザ(一般名:トホグリフロジン水和物)は、腎臓の糸球体でろ過されるグルコース(糖)の再吸収を担うナトリウム・グルコース共輸送体-2(sodium glucose co-transporter 2:SGLT2)を選択的に阻害する薬剤です。SGLT2が阻害されると尿中への糖の排泄が促進されるため、結果として血糖が低下します。
「デベルザ(DEBERZA)」という名称は、ポルトガル語で「美」を意味する「de beleza」に由来します。これは、「過剰な糖を体外に排泄することで糖毒性を解除し、その結果としてエネルギー代謝全般を改善し、内面から身体本来の「Inner beauty」を取り戻すことを期待できる薬剤である」、との意味が込められているそうです。

デベルザの特徴

効能効果・用法用量

デベルザは、2型糖尿病に適応があります。
通常、成人には1日1回20mgを朝食前または朝食後に投与します。

血糖降下作用

食事療法と運動療法だけでは十分に血糖をコントロールできない2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、デベルザの単独投与(24週間)でHbA1cが平均で約1.0%低下したという結果が得られています。
また、ほかの臨床試験では、デベルザの投与で長期(52週)にわたり良好な血糖コントロールが得られたと報告されています。

デベルザを服用する上での注意点

デベルザを服用できない方

以下に該当する場合は、デベルザの服用が禁忌とされています。

  • デベルザの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の場合(輸液、インスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、デベルザの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、デベルザの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合は、デベルザの服用に注意が必要です。

  • 尿路感染や性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(デベルザの服用で低血糖の発生リスクが高くなります。)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合
  • 脱水を起こしやすい以下の場合(デベルザの利尿作用によって脱水を起こすおそれがあります。)
  • 血糖コントロールが極めて不良な場合
  • 高齢の方の場合
  • 利尿薬を併用している場合

その他、腎機能障害や肝機能障害がある方なども、デベルザの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

デベルザの副作用

デベルザのおもな副作用として、頻尿や口渇、尿路感染、尿量増加、便秘、空腹、めまい、性器感染などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、腎盂腎炎、脱水などが報告されています。デベルザの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は副作用の初期症状である可能性が否定できないため、適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 ふらつき、めまい、冷や汗、
脱力感、動悸、
手足のふるえ、異常な空腹感
腎盂腎炎、
外陰部および会陰部の壊死性筋
膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症
寒気、発熱、
陰部や性器周辺の強い痛み・腫れ・赤み、
脇腹や背中の痛み、
腰痛、関節や筋肉の痛み
脱水 口や喉の渇き、多尿や頻尿、
立ちくらみ、めまい、
血圧の低下、脱力感、皮膚の渇き
ケトアシドーシス 嘔気・嘔吐、食欲の減退、
腹痛、口の渇き、倦怠感、
息苦しさ、呼吸が荒い、
呼吸が深く大きい、意識の低下

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、デベルザとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬、利尿薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)、フィブラート系薬剤(高脂血症の治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
  • 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。
  • プロベネシド(痛風などの治療薬):デベルザの効果が増強されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

重度の腎機能障害がある場合、あるいは末期腎不全で透析中の場合は、デベルザの効果が期待できないため投与は行いません。
また、腎機能障害が中等度の場合も、デベルザの効果が十分に得られないおそれがあります。そのため、腎機能障害がある方については、事前に投与の必要性を慎重に判断します。

肝機能障害がある方への使用

デベルザは、重度の肝機能障害のある方を対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験を実施していません。
そのため、肝機能障害がある方へデベルザを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現状況などに留意しながら慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

類薬を動物に投与した試験で、ヒトの妊娠中期および後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂および尿細管の拡張が報告されています。また、動物を対象とした試験では、胎児への移行が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはデベルザを投与せず、インスリン製剤などを用いて血糖をコントロールします。

授乳中の方への使用

動物を対象とした試験で、デベルザは乳汁中へ移行することが報告されています。
そのため、授乳中の方にデベルザを使用する場合は、授乳を中止するのが望ましいとされています。

お子さまへの使用

デベルザは、小児などを対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、デベルザの保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方は、一般的に生理機能が低下しており、脱水症状(口の渇きなど)の認知が遅れるおそれがあります。
したがって、高齢の方へデベルザを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。

水分補給に関する注意点

デベルザには利尿作用があるため、服用にともなって尿量や排尿回数が増加し、体液量の減少を起こすおそれがあります。そのため、デベルザ服用中は体液量の減少による脱水を予防するため、適度な水分補給を意識してください。
特に、高齢の方、利尿作用のある薬を飲んでいる方、発熱や下痢・嘔吐などがある方、汗をかいたとき(夏季、運動時、入浴後など)、血糖値が安定していない方、血糖値が非常に高い方などは脱水のリスクが高くなるため、こまめな水分補給を心がけてください。

性器感染・尿路感染に関する注意点

デベルザなどSGLT2阻害薬の特徴的な副作用として、性器感染や尿路感染(膀胱炎など)があります。これは、SGLT2阻害薬の作用により尿中に糖分が多く排出され、尿路や陰部で雑菌などが繁殖しやすくなるためです。尿路感染や性器感染症は治療が遅れると腎盂腎炎や敗血症、陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)などをまねくことがあるため、大変危険です。
このようなことから、デベルザを服用している場合は陰部を清潔に保つようにしてください。そして万が一、排尿痛や陰部のかゆみ・違和感などが生じた場合は、すみやかに受診して適切な治療を受けてください。

低血糖に関する注意点

デベルザの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。低血糖は、症状が進行すると意識を失うこともあるため、早目に対処する必要があります。
したがって、ふらつきやめまい、冷や汗、脱力感、動悸、手足のふるえ、異常な空腹感など低血糖を疑う症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取して症状の回復を図ってください。そして、糖分を摂っても症状が回復しない場合はすみやかに受診してください。
なお、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。

デベルザの患者負担・薬価について

デベルザの規格・剤型は20mgの普通錠のみで、薬価は176.1円です。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがデベルザ錠20mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1584.9円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

デベルザなどSGLT2阻害薬は痩せる効果があると聞きました。では、デベルザを飲めば食事療法や運動療法はやめてもいいのでしょうか?

たしかに、デベルザなどSGLT2阻害薬を服用すると、体重の減少がみられることもあります。しかし、痩身効果を得るためには長期間の服用が必要です。また、体重の減少量は数%程度にとどまることがほとんどです。
したがって、デベルザを服用している場合でも、食事療法や運動療法は継続してください。食生活の見直しや適度な運動で血糖値が改善されれば、薬物治療が不要になることもあります。

今度、勤めている会社で集団検診を受けます。何か気を付けることはありますか?

デベルザを服用していると、尿検査で尿糖が「陽性」になることがあります。
そのため、検査時にはデベルザを服用していることを医師や看護師に必ず伝えてください。

デベルザを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

デベルザの服用を忘れた場合は、気が付いたときにできるだけ早く1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばして次のタイミングで1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。

 

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