高血圧症治療薬「ディオバン(バルサルタン)」選択的ARB

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ディオバンとは?

ディオバンの写真

ディオバンODの写真

ディオバン(一般名:バルサルタン)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に分類される薬剤です。アンジオテンシンII受容体のサブタイプであるAT1受容体に選択的に結合し、アンジオテンシンII(強い血管収縮作用を持つ体内物質)に対して競合的に拮抗して降圧作用を示すため、高血圧症の改善に用いられます。
「ディオバン」という名称は、バルサルタンが受容体に対してDual effects(AT1受容体をブロックする作用・AT2受容体にはアンジオテンシンⅡが刺激する作用)を持つことから、「2つの機能を持つバルサルタン」(VALSARTAN)という意味で命名されました。

ディオバンの特徴

適応疾患

ディオバンの適応疾患は高血圧症です。血圧を適度に下げることで、心臓や腎臓に対する負担を軽減する効果も期待できます。また、血圧を適切な範囲に保つことは、将来の脳血管疾患や心疾患、腎機能障害などの発生リスクをおさえることにもつながります。

適応年齢・用法用量

ディオバンは6歳以上から使用できます。ただし、小児に使用する場合は体重によって投与量が異なります。
体重35kg未満の小児の場合、通常1日1回20mgを投与します。体重35kg以上の小児の場合、1日1回40mgを投与します。ただし、体重35kg未満の場合、1日の最高用量は40mgです。(下表参照)。
一方、成人に使用する場合は通常40~80mgを1日1回投与します。処方量は年齢や症状により適宜増減しますが、1日160mgまで増量できます。

6歳以上の小児
(体重35kg未満)
通常1日1回20mgを投与
年齢・体重・症状により適宜増減
1日の最大投与量:40mg
6歳以上の小児
(体重35kg以上)
通常1日1回40mgを投与
年齢・体重・症状により適宜増減
成人 通常1日1回40~80mg
年齢・症状により適宜増減
1日の最大投与量:160mg

効果持続時間

ディオバンは効果持続時間が長く、1日1回の投与で24時間安定した血圧コントロールが可能です。
ただし、血圧が安定するまでには数日間かかることもあります。特に飲み始めはめまいや立ちくらみなどを起こしやすいため、そのような場合は車の運転など危険をともなう作業は注意して行うようにしてください。

ディオバンを服用する上での注意点

ディオバンを服用できない方

以下に該当する場合は、ディオバンを服用できません。

  • ディオバンの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 妊娠中または妊娠している可能性のある女性(ディオバンを含むARBやACE阻害薬で、胎児・新生児の死亡などが報告されています。)
  • ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスク増加が報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など治療上やむを得ない場合は、ラジレスとの併用を考慮することもあります。

ディオバンの服用に注意が必要な方

腎動脈狭窄や高カリウム血症のある方は、病状によってはディオバンを使用できません。また、重篤な腎障害がある方・脳血管障害がある方は、ディオバンの服用で病状が悪化するおそれがあります。
さらに、厳重な減塩療法中の方・血液透析中の方などは一過性の急激な血圧低下を起こすことがあるため、注意が必要です。肝機能障害がある方も、低血圧などの体調変化に注意が必要です。
他の医療機関でこれらの病気や症状などを指摘されている方は、あらかじめご相談ください。その際、検査データなどをご提示いただけると診察がスムーズに進みます。

ディオバンの副作用

おもな副作用として、発疹やそう痒、めまい、頭痛、貧血、低血圧、動悸、吐き気、腹痛、咳、体のだるさ、むくみなどが報告されています。
また、重大な副作用として、血管浮腫、肝炎、腎不全、ショック、低血糖、横紋筋融解症などが報告されています。重大な副作用が起こることはまれですが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して適切な処置を受けてください。

血管浮腫 顔面・口唇・喉・舌などの腫れ
肝炎 食欲不振、全身のだるさ、
皮膚や白目が黄色くなる
腎不全 尿量の減少、むくみ、食欲低下
高カリウム血症 手足や口唇のしびれ、筋力低下、手足の麻痺
ショック、失神、意識消失 冷感、嘔吐、意識を失う
無顆粒球症、
白血球減少、血小板減少
発熱、のどの痛み、体のだるさ、皮下出血、
歯茎からの出血、血が止まりにくい
間質性肺炎 発熱、空咳、息苦しさ
横紋筋融解症 筋肉痛、脱力感、赤褐色の尿
中毒性表皮壊死融解症(TEN)、
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、
多形紅斑
高熱、目の充血、口唇のただれ、のどの痛み、
紅斑、皮膚や粘膜の水疱・びらん、表皮の剝離
天疱瘡、類天疱瘡 水疱、びらん

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

ディオバンは、原則としてラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病を併発している方のみです。また、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、併用を考慮することもあります。
その他、併用に注意が必要とされている薬剤は以下のとおりです。飲み合わせが心配な方は、診察時にご相談ください。

  • ACE阻害薬(高血圧症などの治療薬):腎機能障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
  • 利尿降圧薬:降圧作用が強くあらわれることがあります。
  • カリウム保持性利尿薬・カリウム補給薬:血清カリウム値が上昇することがあります。
  • ドロスピレノン・エチニルエストラジオール(月経困難症の治療薬):血清カリウム値が上昇することがあります。
  • シクロスポリン(免疫抑制薬):血清カリウム値が上昇することがあります。
  • トリメトプリム含有製剤(合成抗菌薬):血清カリウム値が上昇することがあります。
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(解熱・鎮痛に使われる薬):降圧作用が弱くなることがあります。また、腎機能が悪化するおそれがあります。
  • ビキサロマー(高リン血症治療薬):降圧作用が弱くなるおそれがあります。
  • リチウム(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

重篤な腎障害がある方

重篤な腎機能障害がある方がディオバンを服用すると、腎機能が悪化するおそれがあります。そのため、症状に応じて投与量を減らすなどして慎重に治療を進めていきます。

血液透析中の方

血液透析中の方の場合、ディオバンの初回投与後に一過性の急激な血圧低下を起こすおそれがあります。したがって、投与は低用量からスタートし、増量する場合は体調の変化に配慮しながら徐々に行います。

肝機能障害がある方

ディオバンは、おもに胆汁中に排泄されます。そのため、肝障害(特に胆汁性肝硬変および胆汁うっ滞)のある方が服用すると血中濃度が高くなるおそれがあります。したがって、肝障害のある方に投与する場合は、低血圧などの副作用の発現に注意しながら治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

妊娠中期・末期にディオバンを含む類薬を投与された高血圧症例で、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があります。
したがって、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある女性にディオバンは使用できません。ディオバン使用中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止します。

授乳中の方への使用

周産期および授乳期の動物にディオバンを投与した試験では、出生児の低体重や生存率の低下が認められています。また、動物を対象とした試験で、ディオバンは乳汁中への移行が確認されています。
そのため、ディオバン服用中は授乳しないことが望ましいとされています。

お子さまへの使用

ディオバンは6歳以上の高血圧症に使用できますが、低出生体重児・新生児・乳児・6歳未満の幼児を対象とした臨床試験を実施していません。また、糸球体ろ過量(GFR)が30mL/min/1.73m2未満、もしくは透析を受けている小児などに対する臨床試験も実施していません。このようなことから、ディオバンの使用可能年齢は6歳以上とされています。
なお、小児の高血圧症では腎機能障害をともなっているケースが多くあります。そのため、お子さまにディオバンを使用する場合は腎機能や血清カリウム値を注意深く観察し、体調や併用薬の影響などにも配慮しながら投与量や治療方針を決定します。

ご高齢の方への使用

一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞をまねくおそれがあるため望ましくありません。また、高齢の方にディオバンを投与した場合、若い世代の方に比べてディオバンの血中濃度が高くなることが認められています。したがって、ディオバンを投与する際には、年齢や症状、合併症、併用薬などに配慮したうえで治療方針を決定します。

ディオバンの患者さま負担・薬価について

ディオバンには普通錠と口腔内崩壊錠があり、それぞれ、20mg・40mg・80mg・160mgの4規格があります。各剤型・規格の薬価は以下のとおりです。

ディオバン錠20
ディオバンOD錠20
20.0円/錠
ディオバン錠40
ディオバンOD錠40
25.3円/錠
ディオバン錠80
ディオバンOD錠80
45.6円/錠
ディオバン錠160
ディオバンOD錠160
66.0円/錠

患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがディオバンOD錠80を1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は410.4円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。

よくあるご質問

ディオバンの服用を始めてから、めまいやふらつきが出るようになりました。服用をやめるほうがいいですか?

ディオバンなど血圧の薬は、飲み始めにめまいやふらつき、立ちくらみなどが生じることがあります。毎日服用して血中濃度が安定してくると、不快な症状はあらわれにくくなりますのでご安心ください。
ただし、ひどいめまいやふらつきなどが長期間続く場合は、診察時にご相談ください。その際、ご家庭で測定した血圧記録をご提出いただけますと、処方の決定に役立ちます。

ディオバンを飲み忘れたら、どうすればいいですか?

ディオバンを飲み忘れたら、気付いたタイミングですぐに1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間との間隔は8時間以上空けてください。次に服用する時間が近い場合は、1回分を飛ばして次の服用時間に1回分を服用してください。
なお、飲み忘れがある場合でも2回分を一度に飲まないでください。服用量が多くなると、副作用が発現しやすくなります。

ディオバンOD錠をシートから出そうとしたら、割れてしまいました。かけらも飲んだほうがいいですか?

ディオバンOD錠はやわらかいため、シートから取り出す際にかけたり割れたりすることがあります。品質には問題ありませんので、かけらも含めて1錠分を服用するようにしてください。
なお、取り出す際に、指の腹を使って優しく押し出すと、割れにくくなります。

手術前にディオバンを中止しなければならないのは、なぜですか。

ディオバンをはじめとしたARBを服用していると、麻酔中や手術中に血圧低下を起こすおそれがあります。そのため、手術前24時間はディオバンを投与しないことが望ましいとされています。

 

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