レニベースとは?
レニベース(一般名:エナラプリルマレイン酸塩)は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬と呼ばれる薬剤の一種です。
レニベースは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(血圧や体液量などの調節に関わる内分泌系の調節機構の1つ)においてアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、昇圧作用を有する「アンジオテンシンII」という体内物質の生成をおさえて降圧作用を示します。また、血圧を下げることで心臓や腎臓にかかる負担を軽減する効果もあります。
なお、「レニベース」という名称は、「Renin(レニン)」+「Vasodilation(血管拡張)」+「Angiotensin Converting Enzyme(アンジオテンシン変換酵素)」に由来します。
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レニベースの特徴
レニベースは臓器保護作用を有する降圧薬です。特に心保護作用が強いことから、高血圧はもちろんのこと慢性心不全の治療にもよく用いられます。また、血糖や尿酸、血清脂質に影響を与えず、幅広い年齢層に使えるという利点もあります。長期臨床試験において予後改善効果が証明されており、心不全だけでなく、腎不全、糖尿病性腎症についても有効であることが示されています。
適応疾患・用法用量
レニベースの適応疾患は、本態性高血圧症・腎性高血圧症・腎血管性高血圧症・悪性高血圧と、ジギタリス製剤や利尿薬などの基礎治療薬を投与しても十分な効果が認められない軽症~中等症の慢性心不全です。
効能効果ごとの用法用量は以下のとおりです。
なお、小児などに投与する場合には、1日10mgを超えないこととされています。
効果持続時間
レニベースは、服用から30分ほどで作用があらわれ、24時間効果が持続するため、1日1回の投与で良好な血圧コントロールが得られます。
しかし、飲み始めは一過性の急激な血圧低下を起こす場合があります。このようなときに急に立ち上がると、めまいや立ちくらみなどを起こしやすいため、ゆっくり動作することを心がけてください。また、車の運転など危険をともなう作業は、十分に注意して行うようにしてください。
レニベースを服用する上での注意点
レニベースを服用できない方
以下に該当する場合は、レニベースを服用できません。
- レニベースの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 血管浮腫の既往歴がある場合(高度の呼吸困難をともなう血管浮腫が起きるおそれがあります。)
- コレステロール吸着療法(LDLアフェレーシス)を受けている場合(ショック症状を起こすことがあります。)
- AN69膜を用いた血液透析を受けている場合(アナフィラキシーを起こすことがあります。)
- 妊娠中の方または妊娠している可能性のある方(ACE阻害薬の投与で、胎児・新生児の死亡などが報告されています。)
- ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスク増加が報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など、治療上やむを得ない場合はラジレスとの併用を考慮することもあります。
- エンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)を投与中の場合、あるいは投与中止から36時間以内の場合(血管浮腫があらわれるおそれがあります。)
レニベースの服用に注意が必要な方
腎障害や高カリウム血症のある方は、病状によってはレニベースを使用できません。また、脳血管障害のある方は、過度の降圧で病態が悪化するおそれがあります。その他、重症な高血圧症の方、厳重な減塩療法中の方、血液透析中の方などはレニベースによる過降圧に注意が必要です。
副作用の発生を防ぐためにも、他の医療機関でこれらの病気や症状を指摘されている場合は診察時にご相談ください。検査データなどをあらかじめご提出いただけますと、治療方針の決定に役立ちます。
レニベースの副作用
おもな副作用として、貧血、発疹・そう痒、めまい、頭痛、低血圧、動悸、腹痛、食欲不振、咳、倦怠感、ほてりなどが報告されています。
その他、重大な副作用として、血管浮腫やショック、高カリウム血症なども報告されています。重大な副作用が起こることは稀ですが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して、適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
レニベースは、原則としてラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病を併発している方のみです。そして、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、併用を考慮することもあります。
また、レニベースはエンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)とも併用できません。こちらは、血管浮腫の発生リスクが高くなるためです。
その他、併用に注意が必要な薬剤は以下のとおりです。該当する薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- カリウム保持性利尿薬、カリウム補給薬、トリメトプリム含有製剤(合成抗菌薬):血清カリウム値が上昇することがあります。
- リチウム(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
- ARB(高血圧症などの治療薬):腎機能障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
- 利尿降圧薬、利尿薬:降圧作用が強くあらわれることがあります。
- カリジノゲナーゼ製剤(循環障害の改善薬):過度の血圧低下をまねくおそれがあります。
- ニトログリセリン(狭心症などの治療薬):降圧作用が増強されることがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬:降圧作用が弱くなることがあります。また、腎機能が悪化している方ではさらに腎機能が悪化するおそれがあります。
- リファンピシン(結核などの治療薬):降圧作用が減弱されることがあります。
- ビルダグリプチン(糖尿病治療薬):血管浮腫のリスクが増加するおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方・血液透析中の方への使用
重篤な腎機能障害がある方は、レニベースの服用で過度の血圧低下や腎機能の悪化をまねくおそれがあります。また、重篤ではないものの腎機能障害のある方・血液透析中の方がレニベースを服用すると、初回投与後に一過性の急激な血圧低下を起こすことがあります。
そのため、これらの方にレニベースを使用する際は、投与量を減らしたり間隔を空けたりするなどして慎重に投与を行います。
妊娠中の方への使用
妊娠中期・末期にACE阻害薬を使用した高血圧症例で、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があります。また、妊娠初期にACE阻害薬を投与すると胎児奇形のリスクが高まるという報告もあります。
したがって、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある女性にレニベースは使用できません。レニベース使用中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止します。
授乳中の方への使用
レニベースは、ヒトの乳汁中へ移行することが明らかになっています。
そのため、授乳中の方にレニベースを使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
レニベースは1歳以上の高血圧症にも適応がありますが、低出生体重児や新生児、推算糸球体ろ過量(eGFR)が30mL/min/1.73m2未満の小児などを対象とした臨床試験は実施していません。
したがって、お子さまにレニベースを使用する場合は腎機能や血清カリウム値に特に留意し、体調の変化や併用薬の影響などにも配慮しながら投与量や治療方針を決定します。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などをまねくリスクが高くなるため、望ましくありません。また、高齢の方では腎機能などの生理機能が低下している場合もあります。
このようなことから、ご高齢の方にレニベースを使用する際には、年齢や症状、合併症、併用薬などにも配慮して慎重に治療を進めていきます。
レニベースの患者さま負担・薬価について
レニベースには、2.5mg・5mg・10mgという3種類の規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがレニベース錠5mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は181.8円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- レニベースを飲み始めてから、めまいやふらつきが出ます。これは副作用ですか?
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血圧の薬は、飲み始めや増量時にめまいやふらつきなどがあらわれることがあります。しばらく飲み続けると不快な症状はあらわれにくくなりますので、ご安心ください。
なお、ひどいめまいやふらつきなどが長く続く場合は、投与量や投与間隔の変更などを検討いたしますので診察時にご相談ください。その際、あらかじめご家庭で測定した血圧値の記録をご提出いただけますと、処方の決定がスムーズに進みます。
- 最近、風邪でもないのに咳が出ます。レニベースの副作用だと思うので、服用をやめてもいいですか?
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レニベースなどのACE阻害薬は、気管支を収縮させる「ブラジキニン」という物質を増やす作用があるため、副作用として「咳」が生じることがあります。この咳は、痰のからまない「空咳」で、レニベースを服用し始めたときだけではなく、しばらく飲み続けたあとにあらわれる場合もあります。
咳の副作用はレニベースを中止すると次第に治まってきますが、自己判断で服用を中止してはいけません。咳などの副作用でお悩みの場合は代替薬への変更も考慮しますので、診察時にご相談ください。
- レニベースを飲み忘れたら、どうすればいいですか?
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レニベースを飲み忘れたら、気が付いたタイミングですぐに1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばし、次の服用時間に1回分を飲んでください。なお、2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると、副作用が発現しやすくなります。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。