ゼチーアとは?
ゼチーア(一般名:エゼチミブ)は、コレステロールの吸収に関与するたんぱく質(コレステロールトランスポーター)の働きを阻害する薬剤です。コレステロールトランスポーターの機能が阻害されると、小腸における胆汁性および食事性コレステロールの吸収が選択的に阻害されるため、結果として血中のコレステロールが低下します。
なお、「ゼチーア(Zetia)」という名称は、一般名である「エゼチミブ(Ezetimibe)」に由来します。
オンライン診療対応可能
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ゼチーアの特徴
ゼチーアは、既存の薬剤(スタチン系薬剤など)とはまったく異なる作用機序でコレステロールを低下させる薬剤です。おもにLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を下げますが、トリグリセリド(中性脂肪)を低下させる作用もあわせ持っています。なお、胆汁酸の排出に影響しないため、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)や脂溶性の併用薬の吸収を阻害しません。また、CYP(おもに肝臓に存在する薬物代謝酵素)が関与する代謝を受けないため、薬物間相互作用が少ないのも特徴です。
適応疾患・用法用量
ゼチーアは、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症(難病の一種)に適応があります。
通常、成人には1日1回10mgを食後に投与します。ただし、年齢・症状に応じて適宜減量を考慮します。
コレステロール低下作用
高コレステロール血症の方を対象とした臨床試験では、ゼチーアの投与でLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が18.1%、総コレステロールが12.8%、トリグリセリドが2.2%低下し、HDL-コレステロールが5.9%上昇するという結果が得られています。別の臨床試験では、HMG-CoA還元酵素阻害薬との併用で、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)をさらに低下させるという結果が示されています。
治療上のメリット
ゼチーアは、従来の高脂血症治療薬とは異なる作用機序でコレステロールを低下させる薬剤です。錠剤が小さいため飲みやすく、作用時間が長いため1日1回の服用で効果が持続します。
一方で、胆汁酸の排出には影響しないため、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)や併用薬の吸収を阻害しません。また、併用薬との相互作用が少ないのも特徴です。
ゼチーアを服用する上での注意点
ゼチーアを服用できない方
以下に該当する場合は、ゼチーアの服用が禁忌とされています。
- ゼチーアの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用する場合は、重篤な肝機能障害のある患者(重篤な肝機能障害がある方に対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与は禁忌あるいは注意が必要とされています。)
服用に注意が必要な方
国内の臨床試験では、ゼチーアを服用した糖尿病の方で空腹時血糖の上昇が報告されています。もっとも、HbA1cおよびグリコアルブミンは、ゼチーアの投与前後で変化は認められていません。そのため、ゼチーア糖代謝へ影響をおよぼす可能性は低いと考えられていますが、糖尿病治療中の方・高血糖を指摘されている方は注意が必要です。
その他、肝機能障害がある方もゼチーアの服用には注意が必要です。(参照:特定の患者様への使用に関して)。
ゼチーアの副作用
おもな副作用として、便秘、下痢、腹痛、腹部膨満、悪心や嘔吐、発疹などが報告されています。
また、重大な副作用として、過敏症や横紋筋融解症、肝機能障害などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、下記のような症状があらわれた場合はすぐに受診して、適切な治療を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ゼチーアとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、併用に注意が必要な薬剤はいくつかあります。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 陰イオン交換樹脂(高脂血症などの治療薬):ゼチーアの吸収が遅延あるいは減少するおそれがあります。
- シクロスポリン(免疫抑制薬):ゼチーアおよびシクロスポリンの血中濃度の上昇が報告されています。
- ワルファリンなどクマリン系抗凝固薬:血液が固まるまでの時間が長くなることが報告されています。
特定の患者さまへの使用に関して
肝機能障害がある方への使用
重篤な肝機能障害がある方については、ゼチーアとHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用することはできません。
HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用しない場合であっても、重度または中等度の肝機能障害がある方については、ゼチーアを投与しないことが望ましいとされています。これは、ゼチーアの血漿中濃度が上昇するおそれがあるためです。
なお、肝機能障害が軽度であっても、ゼチーアの血漿中濃度が上昇する可能性は否定できません。したがって、肝機能障害がある場合は副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。
腎機能障害がある方への使用
ゼチーアは、腎機能障害がある方が使用する場合でも用量調整の必要はなく、透析をしている方でも使用できます。
ただし、体調変化や副作用などがあらわれた場合は、投与の中止も含めて治療方針を検討します。
妊娠中の方への使用
ゼチーアは、動物を対象とした試験で催奇形性は認められていないものの胎盤通過性が確認されています。したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬は妊娠中の方に対して禁忌とされているため、ゼチーアとの併用投与は行いません。
授乳中の方への使用
ゼチーアがヒトの母乳中へ移行するかどうかは明らかになっていませんが、妊娠後から授乳期までの動物を対象とした試験では、乳児への移行が認められています。そのため、授乳中の方に対しては、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬は授乳中の方に対して禁忌とされているため、ゼチーアとの併用投与は行いません。
お子さまへの使用
ゼチーアは、低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児を対象とした国内臨床試験を実施していません。また、欧米の臨床試験においても小児などに対する使用経験は少なく、9歳未満の小児などでは使用経験がありません。
ご家庭ではお子さまの誤飲事故を防ぐため、ゼチーアの保管場所にご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、生理機能が低下している場合があります。
したがって、高齢の方へゼチーアを使用する場合は、副作用の発現などに注意しながら治療を進めていきます。
ゼチーアの患者さま負担・薬価について
ゼチーアは10mgのみで規格違いはありません。1錠あたりの薬価は126.1円です。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがゼチーア錠10mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1134.9円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- ゼチーアは食事性のコレステロールの吸収を阻害すると聞きました。では、ダイエットにも効果が期待できるのでしょうか?
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ゼチーアを服用したところで、ダイエット効果は期待できません。
そもそも、体重が増加するのはカロリーの過剰摂取が原因です。そして、一般的に人間が摂取するカロリーの多くは、ご飯やパン、麺類などに含まれる炭水化物に由来するものです。
一方、ゼチーアは小腸におけるコレステロールの吸収を阻害する作用はありますが、他の栄養素には影響を与えません。したがって、ゼチーアを服用してもダイエット効果はほとんど期待できないと考えるべきでしょう。
- 今までもコレステロールの薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)を飲んでいたのですが、ゼチーアが追加になりました。両方飲まなくてはいけないのですか?
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HMG-CoA還元酵素阻害薬は、体内(おもに肝臓)におけるコレステロール生合成を抑制して血中コレステロールを低下させます。また、二次的に肝臓のLDL受容体活性を増強し、血中から肝細胞内へのLDLの取り込みを促すことで、血中LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)を低下させます。
一方で、ゼチーアは食事性および胆汁性コレステロールの吸収を阻害します。
このように両者は作用機序がまったく異なるため、併用することでより高い効果が期待できます。
実際、重い急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞)の方を対象とした長期的な大規模臨床試験では、HMG-CoA還元酵素阻害薬のみの治療より、ゼチーアとHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用するほうが、心血管イベント(心臓血管死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、再血行再建、非致死的脳梗塞など)をより一層抑制できる可能性が示唆されました。
将来の心血管系疾患のリスクをおさえるためにも、副作用や禁忌に該当する事項がない限り、処方された薬を継続して服用するようにしましょう。
- ゼチーアを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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A.ゼチーアを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は無理に服用せず、次の服用時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。