インデラルとは?
インデラル(一般名:プロプラノロール塩酸塩)は、心臓に交感神経の興奮を伝えるβ受容体を遮断する薬剤(β遮断薬)です。心臓の過剰な働きをおさえ、降圧作用、抗狭心症作用、抗不整脈作用などを示します。
英国 ICI 社(現 AstraZeneca 社)で開発され、初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断剤です。現在はアストラゼネカから太陽ファルマに移管され製造販売されています。
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インデラルの特徴
インデラルは1960年代に開発された歴史のあるβ遮断薬で、心機能の過度な亢進をおさえて血圧降下作用を示します。高血圧の治療に用いられるほか、心疾患や甲状腺機能亢進症にともなう動悸の治療にも使われています。また、小児の不整脈にも適応があります。そのほか、片頭痛発作の予防薬として処方されることもあります。インデラルが片頭痛予防に効果的な理由は明らかになっていませんが、日本および海外の片頭痛治療ガイドラインにおいて使用が推奨されています。
インデラルの効能効果・用法用量・臨床成績
効能効果・用法用量
インデラルは、軽症~中等症の本態性高血圧、狭心症、褐色細胞腫手術時、期外収縮(上室性・心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防、片頭痛発作の発症抑制、右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制に適応があります。
適応ごとの用法用量は下記のとおりです。
- 狭心症、褐色細胞腫手術時、および成人の期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防
通常、成人には1日30mgから投与を始め、効果が十分でない場合は60mg・90mgと漸増し、1日3回分割投与します。ただし、投与量は年齢、症状により適宜増減します。
- 小児の期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防
通常、小児には1日0.5~2mg/kgから投与を開始し、1日3~4回に分割投与します。ただし、投与量は年齢、症状により適宜増減します。
なお、効果が十分でない場合は1日4mg/kgまで増量できますが、1日投与量として90mgを超えることはできません。
通常、成人には1日20~30mgから投与を始め、効果が十分でない場合は60mgまで漸増し、1日2回あるいは3回に分けて投与します。
通常、乳幼児には1日0.5~2mg/kgを低用量から開始し、1日3~4回に分けて投与します。ただし、投与量は年齢、症状により適宜増減します。
なお、効果が十分でない場合は1日4mg/kgまで増量できます。
臨床成績
インデラルを軽症~中等症の本態性高血圧症に用いた国内臨床試験では、有効率が72.8~73.0%であったと報告されています。また、狭心症に対する有効率は64.3~65.1%、期外収縮や洞性頻脈を主とする不整脈に対する有効率は56.3%であったと報告されています。
なお、片頭痛については発作を44%減少させるという結果が示されています。
インデラルを服用する上での注意点
インデラルを服用できない方
以下の場合は、インデラルを服用できません。
- インデラルの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 気管支喘息や気管支痙攣のおそれがある場合(喘息症状を誘発または悪化させるおそれがあります。)
- 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスがある場合(アシドーシスによる心筋収縮力の抑制を増強するおそれがあります。)
- 高度または症状を呈する徐脈、房室ブロック(Ⅱ、Ⅲ度)、洞房ブロック、洞不全症候群、心原性ショック、肺高血圧による右心不全、うっ血性心不全、低血圧症がある場合(症状を悪化させるおそれがあります。)
- 長期間絶食状態の場合(低血糖症状を起こしやすく、かつその症状があらわれにくくなるため、発見が遅くなる危険性があります。)
- 重度の末梢循環障害がある場合(壊疽など)(症状が悪化するおそれがあります。)
- 未治療の褐色細胞腫またはパラガングリオーマがある場合(インデラルの単剤投与で急激に血圧が上昇することがあります。)
- 異型狭心症の患者(症状が悪化するおそれがあります。)
- リザトリプタン安息香酸塩(片頭痛治療薬の一種)を投与中の場合(リザトリプタン安息香酸塩の作用が増強されるおそれがあります。)
インデラルの服用に注意が必要な方
以下の場合はインデラルの服用に注意が必要です。
- うっ血性心不全のおそれがある場合(心機能を抑制してうっ血性心不全をまねくおそれがあります。)
- 甲状腺中毒症がある場合(中毒症状に気付きにくくなるおそれがあります。)
- 特発性低血糖症やコントロール不十分な糖尿病がある場合、手術前後などで絶食状態の場合(低血糖の前駆症状である頻脈などがあらわれにくくなるため、血糖値の変化に注意が必要です。)
- 重度でない末梢循環障害(レイノー症候群、間欠性跛行症など)や徐脈、房室ブロック(Ⅰ度)がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
- 褐色細胞腫またはパラガングリオーマがある場合(インデラルの単独投与により急激に血圧が上昇することがあります。)
その他、重篤な肝機能障害や腎機能障害のある方などもインデラルの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
インデラルの副作用
おもな副作用として、徐脈を含む循環器系の副作用や、めまいなどの精神神経系の副作用が報告されています。
また、重大な副作用として以下の症状が報告されています。
重大な副作用が発生することは稀ですが、インデラルの服用にともない上記のような症状があらわれた場合はすみやかに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
インデラルはリザトリプタン安息香酸塩(マクサルト)の作用を増強するおそれがあります。そのため、インデラル投与中あるいは投与中止から24時間以内の場合はリザトリプタンを服用できません。
その他にも、併用に注意しなければならない薬剤はいくつかあります。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 交感神経系に対して抑制的に作用する薬剤:徐脈や心不全などをまねくおそれがあります。
- 血糖降下薬:血糖降下作用が増強されることがあります。また、低血糖にともなう症状があらわれにくくなることがあります。
- Ca拮抗薬(高血圧症などの治療薬):低血圧や徐脈、房室ブロックなどがあらわれることがあります。
- クロニジン(高血圧治療薬):クロニジン投与中止後のリバウンド現象(血圧上昇、頭痛、嘔気など)を増強するおそれがあります。
- クラスI抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)およびクラスIII抗不整脈薬(カリウムチャネル遮断薬):過度の心機能抑制(徐脈、低血圧など)があらわれることがあります。
- ジギタリス製剤(心不全や頻脈などの治療薬):徐脈や房室ブロックなどがあらわれることがあります。
- シメチジン(胃潰瘍などの治療薬)、ヒドララジン(高血圧治療薬)、キニジン、プロパフェノン(不整脈などの治療薬):インデラルの作用が増強されるおそれがあります。
- クロルプロマジン(統合失調症などの治療薬):双方の作用が増強するおそれがあります。
- 麦角アルカロイド(エルゴタミンなど):下肢の痛みや冷感、チアノーゼなどが発現することがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬:降圧作用が減弱することがあります。
- リファンピシン(結核などの治療薬):インデラルの作用が減弱するおそれがあります。
- ワルファリン(抗血栓薬):ワルファリンの作用が増強されるおそれがあります。
- フィンゴリモド(多発性硬化症の治療薬):フィンゴリモド塩酸塩の投与開始時にインデラルを併用すると、重度の徐脈や心ブロックがあらわれるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
重篤な肝機能障害・腎機能障害がある方への使用
インデラルは肝臓で代謝され、代謝体(β遮断効果を有する成分)は尿中に排泄されます。そのため、重篤な肝機能障害や腎機能障害のある方では、インデラルの代謝・排泄に影響が生じるおそれがあります。
治療にあたっては、効果の発現状況や副作用の有無などを慎重に見極め、必要に応じて用法・用量を調節します。
気管支喘息や気管支痙攣のおそれがある方への使用
インデラルはβ受容体全般に作用する薬剤です。そして、β受容体のうち、特にβ2受容体が遮断されると気管支の痙攣や収縮を誘発することがあります。
したがって、気管支喘息がある方・気管支痙攣のおそれがある方についてはインデラルの使用が禁忌とされています。
妊娠中の方への使用
インデラルを妊娠中の方へ投与したところ、新生児の発育遅延、血糖値低下、呼吸抑制が認められたとの報告があります。そのため、妊娠中の方には緊急でやむを得ない場合以外は投与しないことが望ましいとされています。
授乳中の方への使用
インデラルは母乳中へ移行することが報告されています。したがって、授乳中の方に使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
小児については、インデラルの服用で重度の低血糖を起こす可能性が指摘されています。そのため、インデラルを小児に使用する場合は、症状や副作用の発現状況などに配慮しながら慎重に治療を進めていきます。
ご高齢の方への使用
一般的に高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などをまねくおそれがあるため、好ましくありません。
一方で、インデラルの服用を急にやめたケースでは、症状が悪化したり心筋梗塞を起こしたりした症例が報告されています。
このようなことから、高齢の方へインデラルを使用する際は状態を観察しながら投与方針を決定します。
インデラルの患者負担・薬価について
インデラル錠の規格は10mgのみです。薬価は1錠あたり10.1円です。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがインデラル錠10mgを1回1錠、1日3回30日分処方された場合、ご負担金額は272.7円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- インデラルを飲み始めてから調子がいいです。薬を飲むのをやめていいですか?
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インデラルなどのβ遮断薬は、急に服用を中止すると症状が再発したり、一時的に血圧が上昇したりすることがあります。そのため、自己判断でインデラルの服用を中断してはいけません。
なお、インデラルを休薬する場合は、心臓や血圧への悪影響を防ぐために、時間をかけて少しずつ減らしていきます。
- 頭痛のためにインデラルが処方されました。頭痛が起きそうなときだけ服用すればいいですか?
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インデラルは毎日規則正しく飲むことで頭痛発作を減らす薬です。発作時、あるいは発作の起きそうなときだけ服用しても症状改善は期待できませんので、毎日服用してください。
なお、頭痛の回数が減ってきた場合は減薬を考慮しますので、診察時にご相談ください。
- インデラル服用中に車を運転しても大丈夫ですか?
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インデラルを服用すると、めまいやふらつきなどの副作用があらわれることがあります。そのため、特に服用初期は自動車の運転など危険をともなう作業には従事しないでください。
- インデラルを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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インデラルを飲み忘れた場合は、気が付いたときにできるだけ早く1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近いときは1回分飛ばし、次の正しい服用時間に1回分を服用してください。なお、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多いと、副作用発生リスクが高くなります。