テネリアとは?
テネリア(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)は、インクレチン(インスリンの分泌を促す作用と肝臓における糖の産生を抑制する作用を併せ持つホルモン)を分解するDPP-4という酵素を選択的に阻害する薬剤です。
テネリアは、DPP-4を選択的に阻害してインクレチンの濃度を上昇させ、結果として血糖低下作用を示します。
なお、「テネリア(TENELIA)」という名称は、Tenere(イタリア語で「保つ」という意味)、Liaison(フランス語で「つなぎ」という意味)に由来し、「1日1回の投与で24 時間効果を保ち、糖尿病治療の目標への懸け橋になるように」との願いを込めて命名されたとのことです。
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テネリアの特徴
テネリアは、インスリン分泌不全にともなう糖尿病の治療に向いている薬剤です。作用時間が長く、1日1回の投与で3食後の食後高血糖および翌朝の空腹時血糖を改善させます。一方、血糖依存的に作用することから、単独で用いる場合は低血糖になりにくいとされています。投与後、肝臓および腎臓より2ルートで消失し、腎臓にかかる負担が少ないのも特徴で、腎機能が低下している方や透析中の方に対しても用法用量を変更せずに使用できます。
テネリアは従来の糖尿病治療薬とは作用機序が異なるため、インスリン注射薬などほとんどの糖尿病治療薬と併用できます。また、血糖に依存して緩やかに作用するため、低血糖を起こしにくいという特徴もあります。
一方で食欲増進作用がないため、体重増加のリスクは低くなっています。食事の影響を受けないことから、ライフスタイルに合わせて服用時間を決められるのも大きなメリットです。
テネリアの効能効果・用法用量・臨床成績
効能効果・用法用量
テネリアは2型糖尿病に適応があります。
通常、成人には1日1回20mgを投与します。効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら 1日1回40mgまで増量できます。
臨床成績
非薬物療法(食事療法+運動療法)を行っても十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病の方にテネリアを12週間投与した臨床試験では、HbA1c値および血糖値が有意に低下しました。
また、他の血糖降下薬との併用でもその有用性が示されています。
テネリアを服用する上での注意点
テネリアを服用できない方
以下に該当する場合は、テネリアの服用が禁忌とされています。
- テネリアの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるので、テネリアを投与すべきではありません。)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、テネリアの投与は適しません。)
服用に注意が必要な方
以下の場合は、テネリアの服用に注意が必要です。
- 心不全(NYHA分類III~IV)がある場合(使用経験がなく、安全性が確立していません。)
- 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(テネリアの服用で低血糖の発生リスクが高くなります)
- 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
- 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
- 激しい筋肉運動を行う場合
- 過度のアルコール摂取がある場合
- 腹部手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(腸閉塞を起こすおそれがあります。)
- QT延長を起こしやすい場合(QT延長を起こすおそれがあります。)
その他、肝機能障害がある場合などもテネリアの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
テネリアの副作用
おもな副作用として、便秘や湿疹・発疹などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、腸閉塞、肝機能障害、間質性肺炎、急性膵炎などが報告されています。重大な副作用が発生することは稀ですが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、テネリアとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖のリスクが増加するおそれがあります。
- 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
- 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
- クラスIA抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)およびクラスIII抗不整脈薬(カリウムチャネル遮断薬)などQT延長を起こすことが知られている薬剤:QT延長などが起こるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
肝機能障害がある方への使用
肝機能障害のある方がテネリアを服用すると、効果が強くあらわれるおそれがあります。また、高度肝機能障害を持つ方については臨床試験が実施されていません。
そのため、肝機能障害がある方へテネリアを投与する場合は、症状や効果、副作用の発現状況などに配慮しながら慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
テネリアは、動物を対象とした試験で胎児への移行が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみテネリアの投与を考慮します。
授乳中の方への使用
テネリアは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。
そのため、テネリアを授乳中の方へ使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
テネリアは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、一般的に生理機能が低下しています。
そのため、高齢の方へテネリアを使用する場合は用量調整を行うなどして、慎重に治療を進めていきます。
低血糖に関する注意点
テネリアの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特に他の糖尿病治療薬を併用している場合は、低血糖のリスクが高くなります。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取してください。
糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
なお、高所での作業や自動車の運転などをする際は十分に注意してください。
テネリアの患者さま負担・薬価について
テネリアには普通錠とOD錠(口腔内崩壊錠)があり、それぞれ20mgと40mgの2規格があります。各剤型・規格の薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがテネリア錠20mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1035.0円になります(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- テネリアはとても良い薬だと聞きました。テネリアを飲めば、食事療法や運動療法はしなくて良くなるのですか。
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テネリアなど糖尿病治療薬を服用している場合でも、食事療法や運動療法は継続してください。薬を飲んでいるからといって暴飲暴食したり運動をしなくなったりすると、血糖値が上昇するおそれがあります。
食事療法や運動療法で血糖値が改善すれば、薬による治療が不要になる可能性もあります。無理のない範囲で良いので、食事療法と運動療法は継続してください。
- テネリアは1日1回飲めば効果が持続するんですよね。では、毎日時間を決めずに飲んでもいいんですか?
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たしかに、テネリアは1日1回の服用で十分な効果が期待できる薬です。しかし、日によってテネリアの服用時間が異なると安定した血中濃度を得ることが難しくなります。また、服用間隔が短くなると(例:1日目は就寝前服用、2日目は起床時に服用、など)、テネリアの血中濃度が高くなり過ぎて副作用の発現リスクが高くなります。
したがって、毎日できるだけ同じ時間(処方時に指示された用法通り)に服用してください。
- テネリアを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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テネリアを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は1回分を飛ばし、次の服用時間から通常通り1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。