糖尿病治療薬「ジャディアンス錠10mg・25mg(エンパグリフロジン)」選択的SGLT2阻害薬

FacebookTwitterLine

ジャディアンスとは?

ジャディアンスの写真

ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)は、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2を選択的に阻害する薬剤です。
SGLT2は、腎臓の近位尿細管におけるグルコース(糖)の再吸収で重要な役割を担う輸送体です。ジャディアンスは、SGLT2に選択的に作用して腎臓におけるグルコースの再吸収を阻害し、結果として尿中に排泄されるグルコースの量を増加させて血糖を低下させます。
また、ジャディアンスは近位尿細管におけるナトリウムの再吸収も抑制するため、心臓にかかる負担の軽減や交感神経活性の低下などにも影響している可能性があります。さらに、血管内皮機能に対する直接的な作用や酸化ストレス・炎症の抑制作用などもあることから、慢性心不全に対する効果も期待できます。
なお、「ジャディアンス(Jardiance)」という名称は、「Ja(ポジティブ、ドイツ語で”Yes”の意味)」と「Radiance(輝き)」を組み合わせたもので、「2型糖尿病の方に未来へのポジティブな輝きを与える薬剤」という意味を込めて命名されたとのことです。

オンライン診療対応可能

当院では、初診からオンライン診療にて治療薬の処方を行っております。通院なしで薬剤をお送りすることが可能です(送料無料)。アプリのインストールは不要で、システム利用料も徴収しておりません。よろしければご利用ください。

下記のいずれかのボタンからお申込みください。

» オンライン診療の詳細はこちら

ジャディアンスの特徴

ジャディアンスはSGLT2(腎臓における糖の再吸収で重要な役割を担う輸送体)に対する選択性が高く、その効果が長時間持続することから、1日1回の投与で優れた血糖降下作用を示します。また、糖だけではなくナトリウムの再吸収も抑制することから、心臓や腎臓にかかる負担を減らす作用も期待できます。単独で使用する場合は低血糖を起こしにくく、体重減少効果も報告されている点もメリットといえます。

適応疾患・用法用量

ジャディアンスは、2型糖尿病と慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている場合に限る)に適応があります。
効能効果ごとの用法用量は、以下のとおりです。

効能効果 1回の投与量
2型糖尿病 通常、成人には1日1回10mgを
朝食前または朝食後に投与する。
効果不十分な場合は、経過を十分に
観察しながら1日1回25mgに増量できる。
慢性心不全 通常、成人には1日1回10mgを
朝食前または朝食後に投与する。

血糖降下作用

2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、ジャディアンスを服用していないグループではHbA1cが0.08上昇したのに対して、ジャディアンスを服用したグループではHbA1cが平均で0.65低下したという結果が得られています。
また別の臨床試験では、長期間にわたり安定した血糖コントロールが得られることが確認されています。

効果発現時間・効果持続時間

フルイトランを健康な成人に投与した試験では、投与から100分以内に利尿効果のピークがあらわれ、その効果は約6~7時間持続したと報告されています。そのため、フルイトランを服用する際は、外出や就寝のタイミングに配慮する必要があります。
一方、血圧に対する効果を検討した試験では、朝1回の投与で翌朝まで降圧効果が持続したと報告されています。

慢性心不全に対する効果

慢性心不全の方を対象とした臨床試験では、ジャディアンスの服用で心血管死や心不全による入院のリスクが低下することが確認されています。この効果は、試験開始直後からあらわれ始め、治療期間を通して維持されたとのことです。

ジャディアンスを服用する上での注意点

ジャディアンスを服用できない方

以下に該当する場合は、ジャディアンスの服用が禁忌とされています。

  • ジャディアンスの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の方(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、ジャディアンスの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(糖尿病を有する場合、インスリン注射による血糖管理が望まれるため、ジャディアンスの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合は、ジャディアンスの服用に注意が必要です。

  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(ジャディアンスの服用で低血糖の発生リスクが高くなります)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合
  • 脱水を起こしやすい場合(血糖コントロールが極めて不良な方、高齢の方、利尿薬を併用している方、など)(ジャディアンスの利尿作用による多尿・頻尿で、脱水を起こすおそれがあります。)
  • 尿路感染や性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
    その他、腎機能障害がある方なども、ジャディアンスの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

ジャディアンスの副作用

おもな副作用として、尿路感染や膀胱炎、性器感染、陰部のかゆみ、めまい、便秘、頻尿や多尿、口渇、空腹感などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、脱水、ケトアシドーシス、腎盂腎炎、敗血症などが報告されています。重大な副作用が発生する頻度は非常に低いですが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 めまい、冷や汗、脱力感、
動悸、手足のふるえ
脱水 口の渇き、多尿や頻尿、
立ちくらみ、めまい、血圧の低下
ケトアシドーシス 嘔気・嘔吐、食欲の減退、
腹痛、口の渇き、倦怠感、息苦しさ、
呼吸が荒い、呼吸が深く大きい、意識の低下
腎盂腎炎
外陰部および会陰部の
壊死性筋膜炎
(フルニエ壊疽)
敗血症
寒気、発熱、
陰部や性器周辺の強い痛み・腫れ・赤み、
脇腹や背中の痛み、関節や筋肉の痛み、
嘔気、体のだるさ、意識低下

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、ジャディアンスとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬、利尿薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
  • 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。

なお、フルイトランはアルコールと併用すると降圧作用が増強されるおそれがあるため、アルコールとの併用にも注意が必要とされています。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

高度腎機能障害がある場合、あるいは末期腎不全で透析中の場合は、ジャディアンスの血糖降下作用が期待できません。また、腎機能障害が中等度であっても、十分な血糖降下作用が得られないことがあります。そのため、腎機能障害がある方にジャディアンスを使用する場合は、経過を十分に観察して投与の必要性も含めて慎重に判断します。
慢性心不全に使用する場合も、腎機能障害の悪化などに留意しながら投与の必要性を慎重に判断していきます。

肝機能障害がある方への使用

ジャディアンスは、高度肝機能障害の方を対象とした有効性・安全性を指標とした臨床試験を実施していません。
そのため、肝機能障害がある方へジャディアンスを使用する場合は、症状や副作用の発現などに留意しながら治療方針を慎重に検討していきます。

妊娠中の方への使用

動物を対象とした試験では、ヒトの妊娠中期および後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂および尿細管の拡張が報告されています。また、胎児への移行も報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはジャディアンスを投与せず、2型糖尿病の方についてはインスリン製剤などを使用します。

授乳中の方への使用

動物を対象とした試験で、ジャディアンスは乳汁中へ移行することが報告されています。
そのため、授乳中の方にジャディアンスを使用する場合は、授乳を中止するのが望ましいとされています。

お子さまへの使用

ジャディアンスは、小児などを対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、ジャディアンスの保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方は、一般的に生理機能が低下しており、脱水症状(口の渇きなど)の認知が遅れるおそれがあります。特に75歳以上の方は、75歳未満の方に比べて体液量減少の有害事象の発現率が高かったとの報告もあります。
したがって、高齢の方へジャディアンスを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。

水分補給に関する注意点

ジャディアンスには利尿作用があるため、服用にともなって尿量が増加し、体液量減少を起こすおそれがあります。
そのため、ジャディアンス服用中は体液量減少による脱水を予防するため、適度な水分補給を心がけてください。
ただし、アルコールの摂取で水分は補給できません。また、糖分を含む清涼飲料水は血糖コントロールを悪化させるため、避けるべきです。
なお、心不全がある場合は過剰な水分摂取で症状が悪化することもあるため、診察時にご相談ください。

性器感染・尿路感染に関する注意点

ジャディアンスなどSGLT2阻害薬の特徴的な副作用として、性器感染や尿路感染(膀胱炎など)があります。これは、SGLT2阻害薬の作用により尿中に糖分が多く排出され、尿路や陰部で雑菌などが繁殖しやすくなるためです。
性器感染・尿路感染を防ぐために、普段から以下の点に注意するようにしましょう。

  • トイレを我慢しない。
  • 陰部を清潔に保つ。
  • 充分な水分摂取を心がける。

なお、性器感染・尿路感染は治療が遅れると、腎盂腎炎や敗血症などをまねくこともあります。気になる症状がある場合は、すみやかに受診して適切な治療を受けてください。

低血糖に関する注意点

ジャディアンスの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。低血糖を疑う症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取して症状の回復を図りましょう。
糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。

ジャディアンスの患者さま負担・薬価について

ジャディアンスには、10mgと25mgの2規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。

ジャディアンス錠10mg 188.9円/錠
ジャディアンス錠25mg 322.6円/錠

患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがジャディアンス錠10mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1700.1円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

ジャディアンスにダイエット効果があるという話を聞きました。本当に痩せられるのですか?

たしかに、ジャディアンスなどSGLT2阻害薬の副次的な作用として体重減少があります。しかし、体重の減少量は数%程度ですし、長期間服用しなければ十分な効果は期待できません。また、過度の体重減少は健康にも良くありません。
そのため、ダイエット目的でジャディアンスを服用するのはおすすめできません。
体重減少を望むのであれば、薬に頼るのではなく、食生活の改善や適度な運動で健康的に痩せるようにしましょう。

慢性心不全でジャディアンス錠10mgを飲んでいます。薬の量を増やせばもっと症状が良くなると思うので、ジャディアンス錠25mgを処方してくれませんか?

慢性心不全に適応があるのは、ジャディアンス錠10mgのみです。ジャディアンス錠25mgを処方することはできませんので、ご承知ください。
なお、心血管リスクの高い2型糖尿病の方を対象とした国際共同試験の結果では、ジャディアンスの投与で心血管死、心不全による入院、またはそれらの複合評価項目のリスク低下が認められています。そして、そのリスク低下効果は 10 mg と 25 mg で同程度であったことから、ジャディアンスの慢性心不全に対する用法用量は1日1回10mgとされています。
また、慢性心不全の方を対象とした国際共同試験の結果では、ジャディアンス錠10mgの投与で心血管死や心不全による入院のリスクが大きく低下することが確認されています。

ジャディアンスを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

ジャディアンスの服用を忘れた場合は、1回分を飛ばして翌日の決められた時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。

 

FacebookTwitterLine

記事制作者

木村眞樹子

東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。