ミカルディスとは?
ミカルディス(一般名:テルミサルタン)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれる高血圧症治療薬の一種です。ミカルディスは、おもに血管平滑筋のアンジオテンシンII受容体においてアンジオテンシンII(強い血管収縮作用を持つ体内物質)と拮抗し、その血管収縮作用を抑制することで降圧作用を発揮します。
「ミカルディス」という名称は、「myocardial disease(心筋疾患)」と「cardiovascular disease(心血管疾患)」に由来し、mycardis→micardis(ミカルディス) と命名されたとのことです。
オンライン診療対応可能
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ミカルディスの特徴
ミカルディスはCYP(おもに肝臓に存在する薬物代謝酵素)では代謝されず、胆汁酸を介して糞便中にほぼ100%排泄されます。そのため、腎機能が低下している方にも使いやすいのが特徴です。また、ほかのARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)とは少し構造が異なり、ピオグリタゾン(アクトス)に類似した構造を有していることから、インスリン抵抗性を改善する作用もあります。
適応疾患
ミカルディスの適応疾患は、高血圧症です。病状にもよりますが、心臓や腎臓の負担をおさえる作用も期待できます。血圧を適正範囲に保つことは、脳血管疾患や心疾患、腎機能障害などのリスクをおさえることにもつながります。
適応年齢・用法用量
ミカルディスは成人を対象とした高血圧症治療薬です。小児への適応はありません。
通常、40mgを1日1回経口投与しますが、原則として治療は1日20mgから始めて徐々に増量します。投与量は年齢・症状により適宜加減しますが、1日の最大投与量は80mgです。ただし、肝障害がある場合の投与量は、最大でも1日1回40mgまでとされています。
効果持続時間
ミカルディスは血中半減期が長く、また、持続的にアンジオテンシンII受容体に結合するのが特徴です。そのため、1日1回の投与で24時間にわたり持続的な降圧作用が得られます。臨床試験では、早朝の血圧コントロールにも優れていることが示されています。
ミカルディスを服用する上での注意点
ミカルディスを服用できない方
以下の場合は、ミカルディスを服用できません。
- ミカルディスの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 妊娠中または妊娠している可能性のある女性(胎児・新生児の死亡や発育不全などが報告されています。)
- 胆汁の分泌が極めて悪い場合、または重篤な肝障害がある場合(ミカルディスの血中濃度が高くなることが報告されています。)
- ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスク増加が報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など、治療上やむを得ない場合はラジレスとの併用を考慮することもあります。
ミカルディスの服用に注意が必要な方
肝機能障害や腎動脈狭窄、高カリウム血症のある方は、病状によってはミカルディスが使用できません。そして、重篤な腎機能障害がある方・脳血管障害がある方は、ミカルディスの服用で病状が悪化するおそれがあるため注意が必要です。また、厳しい減塩療法中の方・血液透析中の方などは、過度の降圧を避けるために低用量から治療をスタートしなければなりません。
他の医療機関でこれらの病気や症状などを指摘されている方は、診察時にご相談ください。なお、あらかじめ検査データなどをご提示いただけると、診察がスムーズに進みやすくなります。
ミカルディスの副作用
おもな副作用として、めまい、頭痛、眠気、ほてり、動悸、腹痛、下痢、吐き気、咳、耳鳴り、倦怠感などが報告されています。
また、重大な副作用として血管浮腫やショック、低血糖、横紋筋融解症などが報告されています。重大な副作用が発生することはまれですが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
ミカルディスは、ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は原則禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病を併発している方のみです。また、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、ラジレスとミカルディスの併用を考慮することもあります。
その他、併用に注意が必要な薬剤は以下のとおりです。該当する薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- ジゴキシン(心不全や頻脈などの治療薬):ジゴキシンの血中濃度が上昇したとの報告があります。
- カリウム保持性利尿薬・カリウム補給薬:血清カリウム値が上昇することがあります。
- リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
- 利尿降圧薬:急激な血圧低下を起こすおそれがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(解熱・鎮痛薬):降圧作用が弱くなることがあります。また、腎機能が悪化する可能性も指摘されています。
- ACE阻害薬(高血圧症などの治療薬):腎機能障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
肝機能障害がある方への使用
ミカルディスはおもに胆汁中に排泄されます。そのため、胆汁の分泌が極めて悪い方や重篤な肝障害のある方には使用できません。上記に該当しない場合でも、肝機能障害があるとミカルディスの血中濃度が上昇するおそれがあるため、1日の最大投与量は通常の半分である40mgまでとされています。
重篤な腎機能障害がある方への使用
重篤な腎機能障害がある方にミカルディスを使用すると、腎機能がさらに悪化するおそれがあります。これは、過度の降圧や急激な降圧で腎血流量が減少したり糸球体ろ過圧が低下したりするためです。そのため、重篤な腎障害がある場合(血清クレアチニン値3.0mg/dL以上の場合)は、低用量からスタートするなど慎重に投与量を検討します。
透析をしている方への使用
血液透析中の方がミカルディスを服用すると、急激な血圧低下をまねくおそれがあります。したがって、使用する際には低用量からスタートし、増量が必要な場合は徐々に行うなどして、体調変化に十分注意しながら治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
ミカルディスは、動物を対象とした試験で催奇形性は認められなかったものの、胎児の死亡が報告されています。
また、妊娠中期・末期の女性にミカルディスを含むARBを使用したところ、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があります。
そのため、ミカルディスは妊娠中の方あるいは妊娠している可能性のある方には使用できません。また、ミカルディス使用中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止します。
授乳中の方への使用
動物を対象とした試験で、ミカルディスは乳汁中への移行が確認されています。また、動物を対象とした試験では出生児の生存率の低下や低体重、身体の発達遅延も報告されています。
したがって、ミカルディスを服用する場合は授乳しないことが望ましいとされています。
お子さまへの使用
ミカルディスは、小児に対する臨床試験を実施していません。小児に対する安全性も確認されていません。そのため、使用できるのは成人のみです。
お子さまの誤飲を避けるため、ご家庭でのミカルディスの保管には十分ご注意ください。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞発症のリスクが高まるため、好ましくないとされています。
ミカルディスを投与する場合には、年齢のほか症状や合併症、併用薬などにも配慮して治療方針を決定します。
ミカルディスの患者さま負担・薬価について
ミカルディスには、20mg・40mg・80mgの3種類の規格があります。それぞれの薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがミカルディス錠40mgを1日1回30日間処方された場合、ご負担金額は682.2円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を選択すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- ミカルディスを飲み始めてから、少しめまいを感じるときがあります。飲み続けても大丈夫でしょうか。
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ミカルディスに限らず血圧を下げる作用のある薬は、飲み始めにめまいやふらつきが生じることがあります。特に急に立ち上がるとめまいや立ち眩みを起こしやすいため、ゆっくり動作するように心がけましょう。
めまいやふらつきは治療を続けているうちに少しずつ治まってきますが、症状がひどい場合や1~2週間たっても改善しない場合は早めに受診してください。
なお、めまいがあるときは、車の運転など危険をともなう作業は無理して行わないでください。
- ミカルディスをシートから出して保管しておいたら、錠剤が少し変色して軟らかくなってしまいました。飲んでも大丈夫ですか?
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変色・軟化した錠剤は服用せず、廃棄してください。
ミカルディス錠は、無包装の状態で保管すると湿気を吸って軟化したり光で黄色っぽく着色したりすることがあります。できれば、PTP包装のまま高温多湿を避けて保管してください。
薬局で薬を一包化してもらっている場合は、高温多湿を避け、乾燥材と一緒に密閉容器で保管するようにしてください。
- ミカルディスを飲み忘れてしまいました。どうすればいいですか?
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ミカルディスは食事の影響で吸収率が変わるため、用法によって飲み忘れ時の対処法が変わります。
毎日食前に服用している場合は、気付いた時点で1回分を服用してください。
毎日食後に服用している場合は、気付いたタイミングで軽食をとってから1回分を服用してください。空腹のまま服用すると、血中濃度が高くなり過ぎて副作用が発生するおそれがあります。
ただし、いずれの場合も次に飲む時間が近い場合には1回分をとばし、次の回から通常通りに服用してください。その際、2回分を一度に飲んではいけません。
- 手術を控えています。手術前にミカルディスを中止するように言われたのですが、どうしてですか?
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ミカルディスなどARBに分類される薬を服用していると、麻酔中や手術中に高度な血圧低下を起こすことがあります。このようなリスクを避けるために、手術前24時間はミカルディスの服用を避けることが望ましいとされています。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。