メインテートとは?
メインテート(一般名:ビソプロロールフマル酸塩)は、β1遮断薬と呼ばれる系統の薬剤です。
メインテートをはじめとしたβ1遮断薬は、心臓に交感神経の興奮を伝えるβ1受容体を選択的に遮断して心臓の過剰な働きをおさえ、降圧作用、抗狭心症作用、抗不整脈作用を示します。また、メインテートには内因性交感神経刺激作用がないため、心臓に余分な刺激を与えません。
なお、「メインテート」という名称は、「β遮断薬のMain state(中心的な位置)を占める」という意味で付けられました。
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メインテートの特徴
メインテートは心機能に関与するβ1受容体選択性が高く徐脈効果が優れているため、本態性高血圧症の治療のほか、狭心症や心室性期外収縮、頻脈性心房細動などの心疾患にも適応があります。他方、気管支拡張に関与するβ2受容体選択性が低いため、気管支ぜんそくなどを合併している方にも使いやすいのが特徴です。また、α受容体にはほとんど影響しないため、起立性低血圧を合併している方にも使いやすいです。
適応疾患・用法用量
メインテートは、軽症~中等症の本態性高血圧、狭心症、心室性期外収縮、虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全(ACE阻害薬またはARB、利尿薬、ジギタリス製剤などの基礎治療を受けている場合)、頻脈性心房細動に適応があります。ただし、メインテートは規格によって適応疾患が異なります。疾患ごとの用法用量は下記のとおりです。
- 本態性高血圧症、狭心症、心室性期外収縮(錠2.5mg、錠5mgのみ)
通常、成人には5mgを1日1回投与します。ただし、投与量は年齢、症状により適宜増減します。
- 虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全(錠0.625mg、錠2.5mg、錠5mg)
通常、成人には1日1回0.625mgから投与を開始します。
1日1回0.625mgの用量で2週間以上投与して忍容性が認められる場合は、1日1回1.25mgに増量します。その後、4週間以上の間隔で段階的に増量し(0.625mg→1.25mg→2.5mg→3.75mg→5mg)、忍容性がない場合は減量します。ただし、いずれの用量においても、1日1回投与とします。
その後、維持量として通常1日1回1.25〜5mgを投与します。
なお、年齢、症状により、使用開始時の用量を0.625mgよりも低用量に、増量幅をさらに小さくすることもあります。また、維持量も適宜増減しますが、最高投与量は1日1回5mgを超えないこととされています。
通常、成人には1日1回2.5mgから投与を開始し、効果が不十分な場合には1日1回5mgに増量します。投与量は年齢、症状により適宜増減しますが、最高投与量は1日1回5mgとされています。
効果持続時間・臨床成績
メインテートは効果持続時間が長く、1日1回の投与で24時間効果が持続します。特に高血圧症については、投与開始から2日目で収縮期血圧・拡張期血圧がともに有意に低下し、症状改善率は70%を上回ると報告されています。
また、狭心症については、継続治療で発作数や即効性硝酸剤使用量の減少などが認められており、心室性期外収縮については、継続治療で心拍数の減少や期外収縮数の減少などが認められています。
メインテートを服用する上での注意点
メインテートを服用できない方
以下の方は、メインテートを服用できません。
- 高度の徐脈がある方、重度の心臓の刺激電動障害(房室ブロック(II、III度)、洞房ブロック、洞不全症候群)のある方(症状を悪化させるおそれがあります。)
- 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある方(心収縮力の抑制が増強されるおそれがあります。)
- 心原性ショックのある方(心機能が抑制され、症状を悪化させるおそれがあります。)
- 肺高血圧による右心不全のある方(心機能が抑制されて、症状を悪化させるおそれがあります。)
- 強心薬または血管拡張薬を静脈内投与する必要がある心不全の方(メインテートの心収縮力抑制作用により、心不全が悪化するおそれがあります。)
- 非代償性の心不全の方(心収縮力抑制作用により、心不全が悪化するおそれがあります。)
- 重度の末梢循環障害(壊疽など)のある方(末梢血管の拡張が抑制され、症状を悪化させるおそれがあります。)
- 未治療の褐色細胞腫の方(メインテートを単独投与すると、急激に血圧が上昇することがあります。)
- 妊娠している方または妊娠している可能性のある方(動物を対象とした試験で、胎児毒性および新生児毒性が報告されています。)
- メインテートの成分に対し過敏症の既往歴がある方(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
メインテートの服用に注意が必要な方
以下の場合はメインテートの服用に注意が必要です。
- 特発性低血糖症、コントロール不十分な糖尿病、長期間絶食状態の方(低血糖の前駆症状である頻脈などがあらわれにくくなるため、血糖値の変化に注意が必要です。)
- 甲状腺中毒症の方(頻脈などの中毒症状があらわれにくくなることがあります。)
- 末梢循環障害(レイノー症候群、間欠性跛行症など)のある方(末梢血管の拡張が抑制され、症状を悪化させるおそれがあります。)
- 徐脈や房室ブロック(I度)のある方・異型狭心症の方(症状が悪化するおそれがあります。)
- 過度に血圧の低い方(血圧がさらに低下するおそれがあります。)
- 乾癬または乾癬の既往歴のある方(症状を悪化または誘発するおそれがあります。)
その他、重篤な肝機能障害のある方・腎機能障害のある方・気管支喘息や気管支痙れんのある方・高齢者の方もメインテートの服用には注意が必要です(参照:特定の患者様への使用に関して)。
メインテートの副作用
おもな副作用として、徐脈、めまい、立ちくらみ、低血圧、倦怠感、むくみなどが報告されています。
その他、重大な副作用として、心不全、完全房室ブロック、高度徐脈、洞不全症候群などが報告されています。このような重大な副作用が発生することは稀ですが、初期症状であるめまいや息苦しさ、むくみなどがあらわれた場合は、すぐに受診して適切な治療を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、メインテートとの併用が禁忌になっている薬剤はありません。しかし、併用に注意しなければならない薬剤はいくつかあります。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 交感神経系に対して抑制的に作用する薬剤:徐脈や血圧低下などがあらわれることがあります。
- 血糖降下薬(インスリン製剤、トルブタミドなど):血糖降下作用が増強されることがあります。また、低血糖症状(頻脈、発汗など)があらわれにくくなることがあります。
- Ca拮抗薬(高血圧症などの治療薬):徐脈や房室ブロック、洞房ブロックなどがあらわれることがあります。
- ジギタリス製剤(心不全や頻脈などの治療薬):徐脈や房室ブロックなどがあらわれることがあります。
- クロニジン塩酸塩、グアナベンズ酢酸塩(いずれも高血圧症の治療薬):クロニジン、グアナベンズを投与中止したあとにリバウンド現象(急激な血圧上昇)が増強されることがあります
- クラスI抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬)およびクラスIII抗不整脈薬(カリウムチャネル遮断薬):過度の心機能抑制(徐脈、低血圧など)があらわれることがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬:降圧作用が減弱することがあります。
- 降圧作用を有する薬剤:降圧作用が増強されることがあります。
- フィンゴリモド塩酸塩(多発性硬化症の治療薬):フィンゴリモド塩酸塩の投与開始時にメインテートを併用すると、重度の徐脈や心ブロックがあらわれるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
重篤な肝機能障害・腎機能障害がある方への使用
メインテートを重篤な肝機能障害や腎機能障害のある方へ使用すると、メインテートの代謝・排泄が遅延して作用が増強するおそれがあります。
そのため、重篤な肝機能障害や腎機能障害のある方に投与する場合は、効果の発現状況などを慎重に観察しながら必要に応じて用法・用量を調節します。
気管支喘息のある方への使用
メインテートは、β1選択性の高い薬剤ですが、わずかながらβ2遮断作用も認められています。そして、β2受容体は気管支平滑筋に多く存在しており、β2遮断作用によって気管支の痙れんや収縮を誘発することがあるため、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方に対しては特に慎重に投与を行います。
なお、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方を対象とした試験では、メインテートの投与で呼吸機能に悪影響は生じなかったとされています。
妊娠中の方への使用
メインテートは、動物を対象とした試験で催奇形性は認められていないものの、胎児毒性(早期の死亡や発育抑制など)や新生児毒性(発育毒性など)が報告されています。
そのため、メインテートを妊娠中の方や妊娠している可能性のある方へ使用するのは禁忌とされています。
授乳中の方への使用
メインテートは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。
したがって、メインテート投与中は授乳を避ける必要があります。
お子さまへの使用
メインテートは、小児に対する使用経験がなく、安全性も確立していません。そのため、投与対象は成人に限られています。
ご家庭では、メインテートをお子さまの手の届かない場所で保管するなどして、お子さまの誤服用を防ぐようにしてください。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方は交感神経系の機能が低下している場合も少なくないため、メインテートの作用が強くあらわれることがあります。また、一般的にご高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などをまねくおそれがあるため、好ましくないとされています。
このようなことから、ご高齢の方へメインテートを使用する際は少量から投与をスタートするなどして、状態を観察しながら慎重に治療を進めていきます。
メインテートの患者さま負担・薬価について
メインテートには0.625mg・2.5mg・5mgの3規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがメインテート錠5mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は216.9円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- メインテートを飲み始めてから、だいぶ脈拍が落ち着いてきました。最近調子がいいので薬をやめてもいいですか?
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メインテートなどのβ遮断薬は、急に服用を中止すると狭心症や心筋梗塞、不整脈などが誘発されたり、一時的に血圧が上昇したりすることがあります。そのため、自己判断でメインテートの服用を中断してはいけません。
なお、メインテートを休薬する場合は、心臓や血圧への悪影響を防ぐために、時間をかけて少しずつ減らしていきます。
- メインテートを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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メインテートを飲み忘れた場合は、気が付いたときにできるだけ早く1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近いときは1回分を飛ばし、次の正しい服用時間に1回分を服用してください。なお、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多いと、副作用が発生するリスクが高くなります。
- メインテートを服用したあと、車を運転してもいいですか?
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メインテートを服用すると、降圧作用の影響でめまいやふらつきなどがあらわれることがあります。したがって、車の運転など危険をともなう作業は注意して行うようにしてください。
- メインテートを服用していて、脈拍数が少なくなり過ぎたら受診するように言われています。1分間の脈拍数がどれくらいになったら受診するべきですか。
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メインテートを服用すると、副作用として徐脈があらわれることがあります。
そして、メインテートを服用中に、1分間の脈拍数が50回以下になった場合や、息が苦しい・胸が苦しいなどの症状がある場合は徐脈の可能性が否定できません。該当する症状がある場合はすぐに診察を受けて、適切な治療を受けてください。
- 手術前にはメインテートの服用をやめるように指示が出ています。大切な薬のはずなのに、どうしてですか?
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手術時は、麻酔の影響で交感神経活性が低下します。そこへβ遮断薬を投与すると交感神経活性がさらに低下し、心機能が抑制されるおそれがあります。
このような弊害を防ぐために、手術前48時間はメインテートを投与しないことが望ましいとされています。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。