2型糖尿病治療薬「マリゼブ(オマリグリプチン)」持続性選択的DPP-4阻害薬

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マリゼブとは?

マリゼブの写真

マリゼブ(一般名:オマリグリプチン)は、血糖コントロールに関与するインクレチンを分解するDPP-4という酵素を選択的に阻害する薬剤です。
マリゼブは、DPP-4を阻害することでインクレチンホルモンの不活化を遅延させ、活性型インクレチンの濃度を上昇させることにより、血糖依存的にインスリン分泌促進作用およびグルカゴン濃度低下作用を増強して血糖コントロールを改善します。また腎臓での再吸収機構により、1回の投与で1週間効果が持続します。
なお、「マリゼブ(Marizev)」という名称のうち、「Mari」は一般名のオマリグリプチン(Omarigliptin)に由来し、「zev」はseven(7日間の持続的な効果)に由来するとのことです。

マリゼブの特徴

効能効果・用法用量

マリゼブは2型糖尿病に適応があります。
通常、成人には1回25mgを1週間に1回投与します。
ただし、マリゼブはおもに腎臓で排泄されるため、重度の腎機能障害がある場合や血液透析または腹膜透析を要する末期腎不全では、腎機能の程度に応じて投与量を調節します。

血糖降下作用

非薬物療法(食事療法+運動療法)を行っても十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、マリゼブを24週間投与することでHbA1c値が平均で0.7%低下したと報告されています。この結果は、ほかの選択的DPP-4阻害薬(毎日飲むタイプ)の効果に劣らないことが証明されています。
また、ザファテックを長期間投与した場合でも血糖低下作用は減弱せず、良好な血糖コントロールが持続することも報告されています。

治療上のメリット

マリゼブは、1回の投与で24時間×7日間にわたり持続的なDDP-4阻害活性を示し、次回投与直前まで良好な血糖降下作用が認められるのが特徴です。そのため、週1回の服用で良好な血糖コントロールが可能になります。
また、マリゼブをはじめとしたDPP-4阻害薬は、従来の糖尿病治療薬とは作用機序が異なるため、インスリン注射薬などほとんどの糖尿病治療薬と併用できるというメリットもあります。
さらに、血糖に応じて緩やかに作用が発現するため、低血糖を起こしにくいのも特徴です。一方で、食欲増進作用がなく体重増加をまねきにくいため、過体重気味の方にも使いやすい薬剤といえます。

マリゼブの服用方法

マリゼブは1週間に1度服用するタイプの薬剤です。曜日を決めて、毎週忘れないように服用してください。
万が一、予定より多く飲んでしまった場合(例:日曜日のみ服用予定なのに、水曜日も飲んでしまった場合など)は医師に相談のうえ、1回分の服用を休んで次の予定日から服用を再開してください。

画像提供:キッセイ薬品工業株式会社「マリゼブ®を服用される方へ

また、誤って2錠同時に服用してしまった場合も、医師に相談のうえ、1回分の服用を休んで次の予定日から服用を再開してください。

画像提供:キッセイ薬品工業株式会社「マリゼブ®を服用される方へ

なお、飲み忘れた場合は気づいたときに1錠服用し、次からはあらかじめ決められた曜日に服用してください。ただし、同じ日に2回分服用するのは避けてください。

画像提供:キッセイ薬品工業株式会社「マリゼブ®を服用される方へ

マリゼブを服用する上での注意点

マリゼブを服用できない方

以下に該当する場合は、マリゼブの服用が禁忌とされています。

  • マリゼブの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液およびインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるため、マリゼブの投与は適しません。)
  • インスリン注射による血糖管理が望まれる重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、マリゼブの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合はマリゼブの禁忌には該当しませんが、服用にあたっては注意が必要です。

  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(マリゼブの服用で低血糖の発生リスクが高くなります。)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合

その他、腎機能障害がある場合や高齢の方なども、マリゼブの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

マリゼブの副作用

マリゼブのおもな副作用として、便秘や下痢、湿疹などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、類天疱瘡、急性膵炎、腸閉塞などが報告されています。マリゼブの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は重大な副作用の初期症状である可能性が否定できないため、適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 ふらつき、めまい、冷や汗、
脱力感、動悸、
手足のふるえ、異常な空腹感
類天疱瘡 水疱、びらん、紅斑
急性膵炎 持続的な激しい上腹部の痛み、
腰や背中の痛み、腹部の張り、
吐き気、嘔吐
腸閉塞 ひどい便秘、ガスが出ない、
腹部の張り、持続的な腹痛、
吐き気、嘔吐

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、マリゼブとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。ほかの医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖症状が起こるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

マリゼブはおもに腎臓から排泄されるため、重度の腎機能障害がある場合や、血液透析または腹膜透析を要する末期腎不全の場合には血中濃度が上昇するおそれがあります。
したがって、マリゼブを投与する際は腎機能の程度に応じて用量を調節し、慎重に治療を進めます。

妊娠中の方への使用

マリゼブは、動物を対象とした試験で胎児体重の減少や過剰肋骨発現、胎児数の経度増加、および骨化仙尾椎数の減少が認められたとの報告があります(ただし、臨床投与量の約645倍を投与した場合)。
このようなことから、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。

授乳中の方への使用

マリゼブは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。
そのため、マリゼブを授乳中の方へ使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

マリゼブは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方では、腎機能など生理機能が低下していることが稀ではありません。
そのため、高齢の方へマリゼブを使用する場合は特に腎機能に注意し、重度の腎機能障害がある場合や血液透析・腹膜透析が必要な末期腎不全の場合は適切な用量調節を行ったうえで治療を進めます。

低血糖に関する注意点

マリゼブの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特にインスリン製剤やSU剤との併用では重篤な低血糖症状があらわれやすく、意識消失をきたした症例も報告されています。
そのため、マリゼブを服用しているあいだは、高所での作業や自動車の運転など危険をともなう作業を行う際は体調の変化に注意してください。
なお、低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖などを含む食べ物や飲み物を摂取してください。また、糖尿病治療薬を飲んでいることをご家族などまわりの方にも知らせ、対処法についても知らせておいてください。
糖分を摂っても低血糖症状が続く場合は、速やかに受診してください。症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。

マリゼブの患者負担・薬価について

マリゼブには、12.5mgと25mgの2規格があります。各規格の薬価は以下の通りです。

マリゼブ錠12.5mg 388.9円/錠
マリゼブ錠25mg 729.6円/錠

なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがマリゼブ錠25mgを4日分(週1回服用、4週間分)処方された場合、ご負担金額は875.52円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

マリゼブをしばらく飲んでいたのですが、週1回だと飲み忘れが多いため毎日飲むタイプの薬に戻ることになりました。マリゼブを最後に服用してから1週間空けて毎日飲むタイプの薬を再開するように言われたのですが、もっと早くにスタートしてはだめですか?

マリゼブは服用後1週間は効果が持続するため、他剤に変更する場合は最後の服用から少なくとも7日間空ける必要があります。面倒ですが、副作用の発現を防ぐために最終服用日から1週間後に毎日飲むタイプの薬に切り替えてください。
なお、薬を変更すると血糖値に変化が見られたり副作用が発現したりすることがあります。したがって、薬を切り替えたら体調変化に注意し、気になる症状があらわれた場合は早めに受診してください。

他院にかかるとき、マリゼブを飲んでいない期間なら「一緒に飲んでいる薬はない」といってもいいですか?

マリゼブは週1回のみの服用ですが、服用していない期間も効果が持続します。そのため、他院を受診する際には必ずマリゼブの服用を伝えてください。
服用薬を伝えるのが難しい場合は、お薬手帳や薬局で交付される薬の説明書(薬情)などを医療機関に提出してください。医師が手帳の記録や薬情を参考にして処方する薬を決定するため、薬の重複や禁忌薬が誤って処方されるリスクが低くなります。

マリゼブ錠を誤って2錠同時に服用した場合は、次の1回を休薬するんですよね。その場合、効果は続くのでしょうか?

2錠に相当する50mgを服用した場合の血糖低下効果の持続性を検討したデータはありません。しかし、健康な人を対象とした反復投与試験では、50mgを服用した際の効果が以下のように変化したと報告されています。
最終投与から9日目:80%強、10日目:約80%、13日目:約70%、14日目70%弱。
ただしこのデータは、血糖低下作用の持続を保証するものではありません。
したがって、服用にあたっては用法用量を間違えないよう十分にご注意ください。

 

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