ザファテックとは?
ザファテック(一般名:トレラグリプチンコハク酸塩)は、インスリンの分泌を促進するホルモン(グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1))を分解する酵素(DPP-4)を選択的に阻害する薬剤です。ザファテックの作用は投与後1週間持続するため、週1回の服用で持続的な血糖コントロール改善効果が得られます。
なお、「ザファテック(Zafatek)」という名称は、経口糖尿病治療薬で初の週1回投与製剤であることから、「The first technology of weekly DPP-4i」に由来するとのことです。
オンライン診療対応可能
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ザファテックの特徴
ザファテックは、週1回の服用で優れた血糖降下作用を示す薬剤です。開発段階の臨床試験では、週1回の投与で同系統のほかの薬剤(ネシーナ)に劣らない効果があることが証明されています。血糖に依存して比較的おだやかに作用するため、単独で使用する場合は低血糖を起こすリスクはそれほど高くありません。また、体重増加の副作用も起きにくいとされています。食事の影響を受けず、週に1度服用するだけなので、服薬サポートが必要な方でも治療の継続がしやすいです。
効能効果・用法用量
ザファテックは2型糖尿病に適応があります。
通常、成人には1回100mgを1週間に1回投与します。
ただし、中等度以上の腎機能障害がある場合は排泄の遅延によりザファテックの血中濃度が上昇するため、腎機能の程度に応じて投与量を減量します。
血糖降下作用
非薬物療法(食事療法+運動療法)を行っても十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、ザファテックを24週間投与することでHbA1c値が平均で約0.33%低下したと報告されています。この結果は、ほかの選択的DPP-4阻害薬(毎日飲むタイプ)の効果に劣らないことが証明されています。
また、ザファテックを長期間投与した場合でも血糖低下作用は減弱せず、良好な血糖コントロールが持続することも報告されています。
治療上のメリット
ザファテックは、週1回の服用で1週間効果が持続するのが特徴です。
また、ザファテックなどDPP-4阻害薬に分類される薬剤は、従来の糖尿病治療薬とは作用機序が異なるため、インスリン注射薬などほとんどの糖尿病治療薬と併用できるというメリットもあります。
さらに、血糖に応じて緩やかに作用が発現するため、低血糖を起こしにくいという利点もあります。一方で、食欲増進作用がないため体重増加をまねきにくく、過体重気味の方にも使いやすいというメリットもあります。
ザファテックの服用方法
ザファテックは、1週間に1度服用するタイプの薬です。曜日を決めて、毎週忘れないように服用してください。
万が一、予定より多く飲んでしまった場合(例:月曜日のみ服用予定なのに、火曜日・水曜日も飲んでしまった場合など)は、医師に相談のうえ、次からはあらかじめ決められた曜日に服用してください。
画像提供:帝人ファーマ株式会社「ザファテック錠を服用される患者様へ」
なお、飲み忘れた場合は気付いたときに1錠服用し、次からはあらかじめ決められた曜日に服用してください(参照:よくあるご質問)。
ザファテックを服用する上での注意点
ザファテックを服用できない方
以下に該当する場合は、ザファテックの服用が禁忌とされています。
- ザファテックの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるため、ザファテックの投与は適しません。)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、ザファテックの投与は適しません。)
服用に注意が必要な方
以下の場合はザファテックの禁忌には該当しませんが、注意が必要です。
- 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(ザファテックの服用で低血糖の発生リスクが高くなります。)
- 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
- 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
- 過度のアルコール摂取がある場合
- 激しい筋肉運動を行う場合
- 腹部手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(重大な副作用の一つである腸閉塞を起こすおそれがあります。)
その他、腎機能障害がある場合などもザファテックの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
ザファテックの副作用
ザファテックのおもな副作用として、発疹やかゆみ、尿潜血陽性、鼻咽頭炎などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、類天疱瘡、急性膵炎、腸閉塞などが報告されています。ザファテックの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は重大な副作用の初期症状である可能性が否定できないため、適切な処置を行ったり受診したりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ザファテックとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。ほかの医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖症状が起こるおそれがあります。
- 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)、フィブラート系薬剤(高脂血症の治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
- 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
ザファテックはおもに腎臓から排泄されるため、中等度以上の腎機能障害がある場合または透析中の末期腎不全の場合は、排泄の遅延により血中濃度が上昇するおそれがあります。
したがって、ザファテックを投与する際は腎機能の程度に応じて用量を調節し、慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
ザファテックは、動物を対象とした試験で胎盤通過が報告されています。
そのため、妊娠中の方や妊娠している可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方への使用
ザファテックは、動物を対象とした試験で乳汁中へ移行することが報告されています。
したがって、ザファテックを授乳中の方へ使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
ザファテックは、小児などを対象とした有効性および安全性を検討する試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、一般的に腎機能をはじめとした生理機能が低下している場合が多く見られます。
そのため、高齢の方へザファテックを使用する場合は特に腎機能に注意し、機能低下の程度に応じて用量調整をするなどして慎重に投与を行います。
低血糖に関する注意点
ザファテックの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特にほかの糖尿病治療薬(SU剤やインスリン製剤など)を併用していると、低血糖のリスクが高くなるため、注意が必要です。
低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲食物を摂取してください。また、糖尿病治療薬を飲んでいることをご家族などまわりの方にも知らせ、対処法についても知らせておいてください。
なお、糖分を摂っても低血糖症状が続く場合は、速やかに受診してください。症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
ザファテックの患者負担・薬価について
ザファテックには、25mg・50mg・100mgの3規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがザファテック錠100mgを4日分(週1回服用、4週間分)処方された場合、ご負担金額は1048.8円になります(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- 骨粗しょう症があるため、週1回骨の薬を飲んでいます。ザファテックも週に1回なので、骨の薬と同時に飲んでもいいですか?
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骨粗しょう症治療薬とザファテックの併用自体は問題ありません。しかし、同時に服用するのは避けてください。
週に1回服用するタイプの骨粗しょう症治療薬については、起床直後に水で服用し、30分間は飲食および他薬剤の服用を避けるように指示されているはずです。これは、ザファテックなどほかの薬と一緒に服用すると、骨粗しょう症治療薬の効果が十分に発揮されなくなるためです。そのため、同時服用は避ける必要があります。
もっとも、骨粗しょう症治療薬を服用から30分以上あければザファテックを服用することは可能です。ライフスタイルに合わせて、どちらも飲み忘れがないようにしてください。
- 1週間も効果が続くと低血糖が心配です。ほかの薬に比べて低血糖が起きやすいということはありませんか?
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ザファテックは、血糖値が高いときにインスリンの分泌量を増やす薬です。そのため、効果は1週間続きますが比較的低血糖は起きにくいとされています。
しかし、ほかの血糖降下剤などと併用しているときは低血糖の発現リスクが高くなります。また、食事の時間が遅い場合・食事量や炭水化物の量が少ない場合・激しい運動をする場合・空腹時に運動する場合は、低血糖を起こしやすくなります。したがって、これらに該当する場合はより一層低血糖の発現に注意してください。
なお、低血糖を疑う症状があらわれたらすぐに糖分を補給してください。糖分を摂っても症状が回復しない場合は速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けてください
- ザファテックを飲み忘れた場合について、詳しく教えてください。
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ザファテックの飲み忘れ時の対応を、3つのパターンに分けて解説します。
⦁ザファテックを飲み忘れ、次回予定日より前に気付いた場合は、気付いたときに1錠飲んでください。そして次からは、あらかじめ決められた曜日に飲んでください。
例:服用予定日が月曜日のケース
月曜日に飲み忘れ、火曜日~日曜日の間に飲み忘れに気付いた場合。
気付いたタイミングで1錠服用。次回予定日の月曜日に1錠を服用。
⦁ザファテックを飲み忘れ、次回予定日に気付いた場合は、予定日に1錠服用してください。
例:服用予定日が月曜日のケース
月曜日に飲み忘れ、火曜日~日曜日の間に飲み忘れに気付かず、次の服用日(月曜日)になった場合。
気が付いた月曜日に1錠服用。
⦁ザファテックを飲み忘れ、次回予定日よりあとに気付いた場合は、気付いたときに1錠飲んでください。そして次からは、あらかじめ決められた曜日に飲んでください。
例:服用予定日が月曜日のケース
月曜日に飲み忘れ、火曜日~日曜日の間に飲み忘れに気付かず、次の服用日(月曜日)よりあとに飲み忘れに気付いた場合。
気付いたタイミングで1錠服用。次回予定日の月曜日に1錠を服用。
画像提供:帝人ファーマ株式会社「ザファテック錠を服用される患者様へ」
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。