高コレステロール血症治療薬「メバロチン(プラバスタチン)」HMG-CoA還元酵素阻害薬

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メバロチンとは?

メバロチンの写真

メバロチン細粒の写真

メバロチン(一般名:プラバスタチンナトリウム)は、HMG-CoA還元酵素阻害薬の一種です。メバロチンは、コレステロール生合成で重要な役割を担うHMG-CoA還元酵素を特異的・拮抗的に阻害します。肝臓や小腸のコレステロール生合成を選択的に阻害するのが特徴で、血清コレステロール値を速やかに、かつ強力に低下させます。
なお、メバロチンは作用の過程で「メバロン酸」と呼ばれる物質の生合成を阻害することから、「メバロン酸」+「一般名(プラバスタチンナトリウム)」で「メバロチン」と命名されました。

メバロチンの特徴

適応疾患・用法用量

メバロチンは、高コレステロール血症と家族性高コレステロール血症に適応があります。
通常、成人には1日10mgを1回または2回に分けて投与します。投与量は年齢・症状により適宜増減しますが、重症の場合は1日20mgまで増量できます。

コレステロール低下作用と治療上のメリット

メバロチンを高コレステロール血症患者に長期間投与した試験では、総コレステロールが20%前後、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が27~28%減少し、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)が8~10%増加することが示されました。
また、国内で行われた大規模臨床試験では、メバロチンの服用で心筋梗塞などの心疾患の発症が30%以上減らせることが明らかになりました。
その他、以下のような点もメバロチンのメリットといえます。

  • 同系統の薬剤の中で最も古く、長期服用時の安全性が確立されていること。
  • 有効成分が水溶性で他剤との相互作用が少ないこと。

など。

メバロチンを服用する上での注意点

メバロチンを服用できない方

メバロチンの成分に過敏症の既往歴がある方は、メバロチンの服用が禁忌となっています。これは、重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあるためです。
また、妊娠中の方または妊娠の可能性がある方、および授乳中の方もメバロチンを服用できません。こちらは、メバロチンと同系統の薬剤で先天性の奇形が認められていることや、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されているためです。

服用に注意が必要な方

以下の場合は、メバロチンの副作用である横紋筋融解症の発生リスクが高いため、服用に注意が必要です。
リスト

  • アルコール中毒
  • 甲状腺機能低下症
  • 遺伝性の筋疾患(筋ジストロフィーなど)がある場合、またはその家族歴がある場合
  • 薬剤性の筋障害の既往歴がある場合

その他、腎機能障害がある方・肝機能障害がある方・高齢の方も、メバロチンの服用には注意が必要です。(参照:特定の患者様への使用に関して)。

メバロチンの副作用

おもな副作用として、発疹やそう痒、胃部不快感や下痢・腹痛、尿酸値の上昇などが報告されています。
また、重大な副作用として、横紋筋融解症や肝機能障害、間質性肺炎などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は不明ですが、下記のような症状があらわれた場合はすぐに受診して、適切な治療を受けてください。

横紋筋融解症 筋肉痛、脱力感、赤褐色の尿
肝機能障害 体のだるさ、食欲不振、
黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)
血小板減少 鼻血、歯ぐきの出血、皮下出血
間質性肺炎 発熱、空咳、呼吸困難
ミオパチー 広範囲におよぶ筋肉痛、筋肉の圧痛、
強い脱力感、筋肉のこわばり
免疫介在性
壊死性ミオパチー
筋肉痛、手足の脱力、
筋肉のこわばり、手足のしびれ
末梢神経障害 手足のしびれ、痛み、
指などの感覚が鈍くなる
過敏症状 発熱、関節の痛み、むくみ、
全身のだるさ、
足や腕に紫色や赤色のあざができる

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、メバロチンとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、併用に注意が必要な薬剤はいくつかあります。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • フィブラート系薬剤(脂質異常症の治療薬)、ニコチン酸(脂質異常症や末梢循環障害の治療薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬):急激な腎機能悪化をともなう横紋筋融解症があらわれるおそれがあります。

なお、フルイトランはアルコールと併用すると降圧作用が増強されるおそれがあるため、アルコールとの併用にも注意が必要とされています。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

メバロチンなどHMG-CoA還元酵素阻害薬の代表的な副作用である横紋筋融解症は、腎機能障害がある方で多く報告されています。また、腎障害のある方やその既往歴のある方では、横紋筋融解症にともない急激な腎機能の悪化が認められています。
そのため、腎機能障害がある方へメバロチンを使用する場合は、定期的に検査を実施し、副作用の有無なども確認しながら慎重に治療を行います。

肝機能障害がある方への使用

メバロチンはおもに肝臓で代謝され、作用します。そのため、重篤な肝機能障害がある方やその既往歴のある方がメバロチンを使用すると、肝機能障害が悪化するおそれがあります。
したがって、重篤な肝機能障害がある方やその既往歴のある方にメバロチンを使用する場合は、症状や検査値の変化、副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

メバロチンの類薬を動物に投与した試験では、出生児数の減少や胎児の生存率の低下・発育抑制などが報告されています。
また、同系統の他の薬剤を妊娠3ヵ月までの方に投与した症例では、胎児の先天性奇形が認められています。
したがって、妊娠中の方または妊娠の可能性がある方に対して、メバロチンは禁忌となっています。

授乳中の方への使用

メバロチンは、動物を対象とした試験で母乳中への移行が報告されています。そのため、授乳中の方へメバロチンを投与するのは禁忌とされています。
やむを得ず投与する場合は、授乳を中止する必要があります。

お子さまへの使用

メバロチンは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐために、メバロチンの保管場所にご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方では、加齢にともなう腎機能の低下がみられることがあります。そして、腎機能が低下していると、副作用である横紋筋融解症の発生リスクが高くなります。
したがって、高齢の方へメバロチンを使用する場合は、定期的に血液検査を行うなどして健康状態を確認しながら慎重に治療を行います。

メバロチンの患者さま負担・薬価について

メバロチンには錠剤と細粒の2つの剤型があり、規格もそれぞれ2種類あります。各剤型・規格の薬価は以下のとおりです。

メバロチン錠5mg 20.2円/錠
メバロチン錠10mg 37.0円/錠
メバロチン細粒0.5% 36.3円/g
メバロチン細粒1% 64.2円/g

なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがメバロチン錠10mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は333.0円になります(薬剤費のみの計算です)。
錠剤についてはジェネリック薬もありますので、薬剤費をおさえたい場合は薬局でご相談ください。

よくあるご質問

メバロチンを1日1回で飲む場合と1日2回で飲む場合では、効き目に違いがあるのですか。

メバロチンは、1日1回服用でも1日2回服用でも、1日の服用量が同じであれば効果に差はありません。
国内では、メバロチン5mgを1日2回(1日量10mg)投与した場合と、メバロチン10mgを1日1回(1日量10mg)投与した場合を比較した試験が行われていますが、いずれの場合も血清総コレステロール・LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)は著明に低下し、両グループ間に有意差はありませんでした。

メバロチンを飲み始めてどれくらいでコレステロールが下がり始めますか?

血清総コレステロール値が220mg/dL以上の方を対象とした臨床試験では、メバロチンの服用開始から1週間で総コレステロール・LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)に対する効果があらわれたと報告されています。また、その効果は服用開始から3~4週間で最大になったとされています。
ただし、適正なコレステロール値を維持するためには継続的な治療が必要です。血液中の脂質量をおさえて動脈硬化の進展を防ぐためにも、自己判断で治療を中断しないようにしてください。

メバロチンを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

A.メバロチンを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は忘れた分を服用せず、次の服用時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多くなると、副作用の発生リスクが高くなります。

 

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