ニューロタンとは?
ニューロタン(一般名:ロサルタンカリウム)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に分類される薬剤です。
ニューロタンは投与後すみやかに吸収され、その一部がカルボン酸体に変換されます。そして、ニューロタンはカルボン酸体とともにアンジオテンシンII(強い血管収縮作用を持つ体内物質)に特異的に拮抗して降圧効果を発揮します。
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ニューロタンの特徴
ニューロタンは、降圧作用と腎保護作用をあわせ持つ薬剤です。高血圧だけでなく糖尿病性腎症にも適応があり、2型糖尿病性腎症の末期腎不全(透析または腎移植)への進展を遅延させる効果が認められています。また、尿酸値を低下させる作用もあることから、痛風や高尿酸血症を合併している高血圧の治療にも向いています。
効能効果・用法用量
ニューロタンは、高血圧症と高血圧および蛋白尿をともなう2型糖尿病における糖尿病性腎症に適応があります。
用法用量は適応疾患により若干異なり、高血圧症に使用する場合は、通常25~50mgを1日1回投与します。年齢・症状により適宜増減は可能ですが、1日に投与できる最高量は100mgです。
高血圧および蛋白尿をともなう2型糖尿病における糖尿病性腎症に使用する場合は、通常50mgを1日1回投与します。ただし、過度の血圧低下を起こすおそれがある場合は25mgから投与を開始します。なお、投与量は血圧値をみながら1日100mgまで増量できます。
治療におけるメリット
ニューロタンはACE阻害薬とよく似た作用を有する薬剤ですが、ACE阻害薬で生じることが多い空咳の副作用がほとんどありません。
また、糖尿病性腎症において腎機能の低下を抑制する作用が認められているのも特徴です。
作用持続時間が長く、1日1回の服用で持続的な効果が得られるのもメリットといえます。
臨床上の効果
国内で実施された臨床試験では、ニューロタンによる降圧効果は69.3%でした。
また、高血圧および蛋白尿をともなう2型糖尿病における糖尿病性腎症を対象とした国際共同試験では、末期腎不全または死亡に至るリスクを19.9%軽減することが示されました。さらに、ニューロタンを平均3.4年以上投与したグループでは、尿蛋白量が平均で34.3%低下し、腎機能低下率を13.9%低下させました。
ニューロタンを服用する上での注意点
ニューロタンを服用できない方
以下に該当する場合はニューロタンを服用できません。
- ニューロタンの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 妊娠中または妊娠している可能性のある女性(胎児・新生児の死亡などが報告されています。)
- 重篤な肝障害がある場合(ニューロタンおよびカルボン酸体の血漿中濃度が上昇するおそれがあります。)
- ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を服用している糖尿病の方(非致死性脳卒中・腎機能障害・高カリウム血症・低血圧の発生リスク増加が報告されています。)ただし、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合など、治療上やむを得ない場合はラジレスとの併用を考慮することもあります。
ニューロタンの服用に注意が必要な方
以下の場合はニューロタンの服用が禁忌ではありませんが、注意が必要です。
- 両側性腎動脈狭窄がある場合、または片腎で腎動脈狭窄がある場合(腎血流量の減少や糸球体ろ過圧の低下により、急速に腎機能が悪化するおそれがあります。)
- 高カリウム血症の場合(高カリウム血症を増悪させるおそれがあります。)
- 腎機能障害やコントロール不良の糖尿病などにより血清カリウム値が高くなりやすい場合(高カリウム血症をまねくおそれがあります。)
- 脳血管障害がある場合(過度の降圧で脳血流不全が惹起され、病態を悪化させるおそれがあります。)
- 厳重な減塩療法中の場合(一過性の血圧低下を起こすおそれがあります。)
その他、重篤な腎機能障害がある場合・肝機能障害またはその既往がある場合なども、ニューロタンの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
ニューロタンのおもな副作用
おもな副作用として、頭痛やめまい、起立性低血圧、嘔気・嘔吐、発疹やかゆみ、ほてり、体のだるさなどが報告されています。
また、高血圧および蛋白尿をともなう2型糖尿病における糖尿病性腎症の場合については、貧血や血清カリウム上昇、血清クレアチニン上昇があらわれやすいとされています。
ニューロタンの重大な副作用
ニューロタンの重大な副作用として、アナフィラキシー、急性肝炎、横紋筋融解症、低血糖などが報告されています。重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、以下のような症状があらわれた場合は早急に受診して適切な処置を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
ニューロタンは、原則としてラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)との併用は禁忌です。ただし、併用できないのは糖尿病を併発している方のみです。また、他の降圧治療を行っても血圧のコントロールが著しく不良の場合は、併用を考慮することもあります。
その他、併用に注意が必要な薬剤は以下のとおりです。該当する薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- カリウム保持性利尿薬・カリウム補給薬:血清カリウム値の上昇や高カリウム血症をまねくおそれがあります。
- 利尿降圧薬:一過性の血圧低下を起こすおそれがあります。
- アリスキレン(ラジレス):腎機能障害、高カリウム血症および低血圧を起こすおそれがあります。
- ACE阻害薬(高血圧症などの治療薬):急性腎障害、高カリウム血症、低血圧をまねくおそれがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬:降圧作用が弱くなるおそれがあります。また、腎機能が悪化している場合は、さらに症状が悪化するおそれがあります。
- リチウム(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
グレープフルーツジュースとの飲み合わせについて
ニューロタンとグレープフルーツジュースを併用すると、期待する降圧効果が得られなくなるおそれがあります。これは、グレープフルーツに含まれる成分によりニューロタンの代謝が阻害され、活性代謝物であるカルボン酸体の血中濃度が低下するためです。
したがって、ニューロタンを服用中はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
重篤な腎機能障害がある方は、ニューロタンの服用で高カリウム血症があらわれやすい傾向があります。また、腎機能のさらなる悪化をまねくおそれもあります。そのため、投与量を減らすなどして慎重に治療を進めていきます。
血液透析中の方については、ニューロタンの服用で一過性の血圧低下を起こすことがあります。したがって、治療は低用量から開始して、増量する場合は症状や副作用の発現状況を確認しながら徐々に行います。
肝機能障害がある方への使用
重篤な肝障害がある場合は、ニューロタンの使用が禁忌となっています。
それ以外の肝機能障害または既往歴がある場合についても、ニューロタンおよびカルボン酸体の血漿中濃度が上昇するおそれがあります。
そのため、投与量を減らすなどして体調変化に留意しながら治療を行います。
妊娠する可能性がある方への使用
妊娠中にニューロタンを使用すると、胎児・新生児に重大な影響が及ぶおそれがあります。
したがって、妊娠する可能性がある方・妊娠可能年齢の方については、ニューロタンの投与開始前に代替薬の有無なども考慮して投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を行います。
なお、ニューロタンによる治療を行う場合には、事前に妊娠していないことを確認させていただきます。また、投与中も妊娠していないことを定期的に確認させていただきます。投与中に妊娠が判明した場合は直ちに投与を中止しますので、妊娠が判明した場合または妊娠が疑われる場合は、すみやかにご相談ください。
妊娠中の方への使用
ニューロタンは妊娠中の方への使用は禁忌になっています。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止します。
これは、妊娠中期および末期に類薬を投与した症例で、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、多臓器不全、頭蓋の形成不全および羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の奇形、肺の低形成などがあらわれたとの報告があるためです。
授乳中の方への使用
ニューロタンは、動物を対象とした試験で乳汁中への移行が報告されています。また、周産期および授乳期の動物にニューロタンを投与した試験では、産児死亡の軽度の増加や産児の低体重が認められています。
そのため、ニューロタン服用中は授乳しないことが望ましいとされています。
お子さまへの使用
ニューロタンは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、ニューロタンの保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
一般的に、高齢の方の過度の降圧は脳梗塞などをまねくおそれがあるため、望ましくありません。また、高齢の方は腎機能・肝機能などの生理機能が低下している場合もあります。さらに、高齢の方を対象とした試験では、ニューロタンおよびカルボン酸体の血漿中濃度が非高齢者に比べて高かったことが報告されています。
したがって、高齢の方にニューロタンを投与する場合は、低用量から開始するなど慎重に治療を進めていきます。
ニューロタンの患者さま負担・薬価について
ニューロタンには、25mg・50mg・100mgの3種類があります。各規格の薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがニューロタン錠50mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は645.3円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- ニューロタンはグレープフルーツジュースと相性が悪いと聞きました。どうしても飲みたい場合は、飲む時間をあければ大丈夫ですか?
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ニューロタンは作用時間が長く、1回の服用で長時間効果が持続します。一方で、グレープフルーツの薬に対する影響は個人差があり、また、その影響が持続する時間も明らかではありません。
そのため、ニューロタンとグレープフルーツの服用間隔をあけても、降圧効果の低下は避けられないと考えられます。
このようなことから、ニューロタン服用中はグレープフルーツジュースを飲まないようにしてください。
- ニューロタンを飲み始めてから時々ふらつきを感じます。不安なので、飲むのをやめてもいいですか。
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ニューロタンに限らず、血圧の薬は飲み始めにめまいやふらつきなどがあらわれることがあります。しばらく飲み続けて血中濃度が安定してくると、不快な症状はあらわれにくくなりますのでご安心ください。
なお、ひどいめまいやふらつきなどが長期間続く場合は、投与量の変更なども検討いたしますので診察時にご相談ください。その際、ご家庭で測定した血圧値の記録をご提出いただけますと、処方の決定がスムーズに進みます。
- ニューロタンを飲み忘れたら、どうすればいいですか?
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ニューロタンを飲み忘れたら、気付いたタイミングですぐに1回分を飲んでください。
ただし、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばし、次の服用タイミングで1回分を服用してください。その際、2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると、副作用が発現しやすくなります。
記事制作者
木村眞樹子
東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医、内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。