糖尿病治療薬「カナグル(カナグリフロジン)」SGLT2阻害薬

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カナグルとは?

カナグルの写真

カナグル(一般名:カナグリフロジン水和物)は、腎臓の近位尿細管に局限的に分布するナトリウム・グルコース共輸送担体2(SGLT2)を選択的に阻害する薬剤です。
SGLT2を阻害すると、腎臓におけるグルコース(糖)の再吸収が抑制され、血液中の過剰な糖分が尿中に排泄されるため、結果として血糖が低下します。また、カナグルには血液をろ過する糸球体の内圧を下げる作用などもあるため、長期的な腎保護作用も期待できます。
なお、「カナグル(CANAGLU)」という名称は、一般名の「Canagliflozin」と、過剰な「Glucose(糖)」を尿中に排泄することで健康な人と変わらない日常生活を過ごしたい糖尿病患者の希望を「かな(CANA)える」という想いを込めた「CANA」、および「Glucose(糖)」の「GLU(グル)」から命名されたとのことです。

オンライン診療対応可能

当院では、初診からオンライン診療にて治療薬の処方を行っております。通院なしで薬剤をお送りすることが可能です(送料無料)。アプリのインストールは不要で、システム利用料も徴収しておりません。よろしければご利用ください。

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カナグルの特徴

カナグルは、血糖を下げる効果のほか尿中アルブミン排泄増加を抑制する作用もあることから、2型糖尿病および2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に適応があります。患者さんの背景(年齢やBMI、インスリン抵抗性の有無など)にかかわらずHbA1c低下作用を発揮し、大規模臨床試験では⼼筋梗塞や脳卒中などの脳・⼼⾎管系リスクを有意に低下させることが示されています。

効能効果・用法用量

カナグルは、2型糖尿病および2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に適応があります。ただし、末期腎不全または透析施行中の場合は適応外です。
通常、1日1回100mgを朝食前または朝食後に投与します。

血糖降下作用

食事療法と運動療法だけでは十分に血糖をコントロールできない2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、カナグルを単独で52週間投与した結果、HbA1cが平均で0.80%低下したという結果が得られています。
また、患者背景(年齢やBMI、インスリン抵抗性や分泌能など)にかかわらず、HbA1c低下作用を示すという結果も示されています。

カナグルを服用する上での注意点

カナグルを服用できない方

以下に該当する場合は、カナグルの服用が禁忌とされています。

  • カナグルの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の場合(輸液およびインスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、カナグルの投与は適しません。)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、カナグルの投与は適しません。)

服用に注意が必要な方

以下の場合は、カナグルの服用に注意が必要です。

  • 心不全(NYHA心機能分類IV)がある場合(使用経験がなく、安全性が確立していません。)
  • 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(カナグルの服用で低血糖の発生リスクが高くなります)
  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
  • 激しい筋肉運動を行う場合
  • 過度のアルコール摂取がある場合
  • 脱水を起こしやすい場合(血糖コントロールが極めて不良な方、高齢の方、利尿薬を併用している方、など)(カナグルの利尿作用によって脱水を起こすおそれがあります。)
  • 尿路感染や性器感染がある場合(症状が悪化するおそれがあります。)

その他、腎機能障害や肝機能障害がある方なども、カナグルの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。

カナグルの副作用

カナグルのおもな副作用として、尿路感染、無症候性低血糖、便秘、頻尿などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、脱水、腎盂腎炎、ケトアシドーシスなどが報告されています。カナグルの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。

低血糖 喉の乾き、体のだるさ、めまい、
冷や汗、動悸、
手足のふるえ、異常な空腹感
脱水 口や喉の渇き、多尿や頻尿、
血圧低下、立ちくらみ、めまい
ケトアシドーシス 嘔気・嘔吐、食欲の減退、
腹痛、口の渇き、倦怠感、
息苦しさ、呼吸が荒い、
呼吸が深く大きい、意識の低下
腎盂腎炎、
外陰部および会陰部の
壊死性筋膜炎
(フルニエ壊疽)
敗血症
寒気、発熱、
陰部や性器周辺の強い痛み・腫れ・赤み、
脇腹や背中の痛み、腰痛

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、カナグルとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬、利尿薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。

  • 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
  • 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
  • ジゴキシン:ジゴキシンの効果が強くあらわれるおそれがあります。
  • リファンピシン(結核などの治療薬)、フェニトイン(抗てんかん薬)、フェノバルビタール(てんかんのけいれん発作などの治療薬)、リトナビル(抗ウイルス薬)など:カナグルの代謝が促進され、血糖降下作用が減弱するおそれがあります。
  • 利尿薬:利尿作用が増強されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

高度腎機能障害または透析中の末期腎不全のある2型糖尿については、カナグルの血糖低下作用が期待できません。そのため、血糖コントロール改善を目的とした投与は行いません。
また、中等度の腎機能障害がある2型糖尿病についても、カナグルの血糖降下作用が十分に得られないおそれがあるため、投与の必要性を慎重に判断します。
2型糖尿病を合併する慢性腎臓病では、検査値の変化に留意しながら投与継続の必要性を判断していきます。

肝機能障害がある方への使用

カナグルは、高度肝機能障害がある方を対象とした臨床試験を実施していません。
そのため、肝機能障害がある方へカナグルを使用する場合は低用量から投与を開始するなどして慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用

動物を対象とした試験で、カナグルは胎児へ移行することが報告されています。また、ヒトの妊娠中期および後期にあたる期間の曝露により、幼若動物に腎盂および尿細管の拡張が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方にはカナグルを投与せず、インスリン製剤などを用いて血糖をコントロールします。

授乳中の方への使用

動物を対象とした試験で、カナグルは乳汁中へ移行することが報告されています。また、哺育期間中に出生児の体重増加抑制や幼若動物の腎盂の拡張・尿細管の拡張が認められています。
そのため、授乳中の方にカナグルを使用する場合は、授乳を中止するのが望ましいとされています。

お子さまへの使用

カナグルは、小児などを対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、カナグルの保管場所などにご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方は、一般的に生理機能が低下しており、脱水症状(口の渇きなど)の認知が遅れるおそれがあります。
したがって、高齢の方へカナグルを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。

水分補給に関する注意点

カナグルには利尿作用があるため、服用によって尿量や排尿回数が増加し、体液量の減少にともなう脱水を起こすおそれがあります。
そのため、カナグル服用中は、脱水を予防するために適度な水分補給を意識してください。特に高齢の方や腎機能障害がある方、利尿薬を併用している方は脱水を起こしやすいため、注意が必要です。

性器感染・尿路感染に関する注意点

カナグルなどSGLT2阻害薬の特徴的な副作用として、性器感染や尿路感染(膀胱炎など)があります。これは、SGLT2阻害薬の作用により尿中に糖分が多く排出され、尿路や陰部で雑菌などが繁殖しやすくなるためです。
性器感染や尿路感染は、放置するとより重篤な症状をまねくおそれがあります。したがって、カナグル服用中に尿路感染症や性器感染症を疑う症状があらわれたら、すみやかに受診してください。

低血糖に関する注意点

カナグルの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。低血糖を疑う症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取して症状の回復を図りましょう。適切に対処すれば、通常5分以内に低血糖症状は消失します。
なお、糖分を摂っても症状が回復しない場合は、すみやかに受診してください。症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。

カナグルの患者さま負担・薬価について

カナグルの剤型・規格は普通錠の100mgのみです。薬価は、1錠あたり168.8円です。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがカナグル錠100mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1519.2円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

「シックデイ」にはカナグルを飲まないように、と言われました。ところで、「シックデイ」って何ですか?どうしてカナグルを飲んではいけないのですか?

発熱や下痢、嘔吐などがあるときや、食欲不振で食事ができないときのことを「シックデイ」といいます。シックデイは脱水を起こしやすいため、カナグルを服用するとさらに脱水のリスクが高くなります。
したがって、シックデイにはカナグルを服用しないでください。誤って服用した場合は、なるべく早く受診してください。

カナグルの服用で尿路感染や性器感染のリスクが高まると聞き、不安を感じています。どのような症状があらわれたら、尿路感染や性器感染を疑うべきなのでしょうか?

尿路感染症の初期症状としては、排尿時の痛みや残尿感、発熱、寒気、背中やわき腹の痛みなどがあります。
女性の性器感染症では、性器やその周辺のかゆみ、白いおりもの(粥状・ヨーグルト状・酒粕状)などがあらわれることがあります。
男性の性器感染症では、性器の赤みやかゆみ、腫れ、湿疹、性器周辺の皮膚の痛みなどのほか、性器から悪臭のある排泄物が出ることもあります。
もっとも、性器感染症については発生頻度が1%未満だったと報告されています。
排尿を我慢せず、陰部を清潔にすることで感染症のリスクは軽減できますので、不安などがある場合は診察時にご相談ください。

カナグルを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

カナグルの服用を忘れた場合は、その日は飲まずに翌日の朝に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。

カナグルの合剤はありますか?

SGLT2阻害薬のカナグルとDPP-4阻害薬のテネリアを配合するカナリア配合錠があります。

 

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記事制作者

木村眞樹子

東京女子医科大学卒業。循環器内科専門医内科、睡眠科において臨床経験を積む。
東洋医学を取り入れた漢方治療にも対応。
オンライン診療に積極的に取り組む3児の母。