ネシーナとは?
ネシーナ(一般名:アログリプチン安息香酸塩)は、インスリンの分泌を促すインクレチン(消化管ホルモン)を分解するDPP-4という酵素を選択的に阻害する薬剤です。
インクレチンは小腸から吸収されるブドウ糖の量に応じて分泌されますが、その多くはDPP-4によって分解されます。ネシーナはDPP-4の働きを抑えてインクレチンの分解を抑制する働きがあるため、結果としてインスリンの分泌量が増加して血糖値が下がります。
なお、「ネシーナ(Nesina)」という名称は「New Science」に由来するとのことです。
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ネシーナの特徴
ネシーナは、DPP-4阻害薬の中でも特にDPP-4(インスリン分泌をうながすGLP-1というホルモンを分解する酵素)に対する選択性が高い薬剤です。食事による血糖上昇に応じてインスリン分泌を促進するため、単独で使用する場合は低血糖を起こしにくいのが特徴です。また、単独投与・併用投与のいずれにおいても、長期にわたって良好な血糖コントロールが得られることが証明されています。
効能効果・用法用量
ネシーナは2型糖尿病に適応があります。
通常、成人には1日1回25mgを投与します。ただし、中等度以上の腎機能障害がある場合は、排泄の遅延によりネシーナの血中濃度が上昇するため、腎機能の程度に応じて投与量を適宜減量します。
血糖降下作用
非薬物療法(食事療法+運動療法)を行っても十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病の方を対象とした臨床試験では、ネシーナを12週間投与することでHbA1c値が平均で約0.77%低下したと報告されています。また、空腹時血糖と食後血糖2時間値もプラセボ群に比べて有意に改善されました。
別の試験では、単独投与・併用投与に関わらず、長期にわたって良好な血糖コントロールが得られることが示されました。
治療上のメリット
ネシーナをはじめとしたDPP-4阻害薬は従来の糖尿病治療薬とは作用機序が異なるため、インスリン注射薬などほとんどの糖尿病治療薬と併用できます。
また、血糖に依存して緩やかに作用が発現するため、低血糖を起こしにくいという利点もあります。一方で、食欲増進作用がないため体重増加をまねきにくく、過体重気味の方にも使いやすいという特徴もあります。
ネシーナを服用する上での注意点
ネシーナを服用できない方
以下に該当する場合は、ネシーナの服用が禁忌とされています。
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の場合(輸液、インスリンによるすみやかな高血糖の是正が必須となるため、ネシーナの投与は適しません。)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある場合(インスリン注射による血糖管理が望まれるため、ネシーナの投与は適しません。)
- ネシーナの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
服用に注意が必要な方
以下の場合は、ネシーナの服用が禁忌というわけではありませんが注意が必要です。
- 心不全(NYHA分類III~IV)がある場合(使用経験がなく、安全性が確立していません。)
- 低血糖を起こすおそれがある以下の場合(ネシーナの服用で低血糖の発生リスクが高くなります)
- 脳下垂体機能不全または副腎機能不全がある場合
- 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態の場合
- 激しい筋肉運動を行う場合
- 過度のアルコール摂取がある場合
- 腹部手術の既往または腸閉塞の既往がある場合(重大な副作用の一つである腸閉塞を起こすおそれがあります。)
その他、腎機能障害がある場合なども、ネシーナの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
ネシーナの副作用
ネシーナのおもな副作用として、発疹やそう痒、腹部の張り、胃腸炎、便秘、頭痛、めまい、四肢のしびれ、倦怠感、むくみ、浮腫、動悸、関節痛、筋肉痛、貧血などが報告されています。
また、重大な副作用として、低血糖、急性膵炎、腸閉塞、類天疱瘡などが報告されています。ネシーナの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は重大な副作用の初期症状である可能性が否定できないため、適切な処置を行ったり受診したりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ネシーナとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、糖尿病治療薬や血糖降下作用に影響を与える薬などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。
- 糖尿病用薬:血糖降下作用が増強され、低血糖のリスクが増加するおそれがあります。
- ピオグリタゾン塩酸塩(2型糖尿病の治療薬):併用により循環血漿量が増加し、むくみが発現するおそれがあります。
- 血糖降下作用を増強する薬剤(例:β遮断薬(高血圧や心不全などの治療薬)、サリチル酸剤(抗血小板薬など)、モノアミン酸化酵素阻害薬(パーキンソン病などの治療薬)、フィブラート系薬剤(高脂血症の治療薬)、ワルファリン(抗血栓薬)など):血糖降下作用が増強されるおそれがあります。
- 血糖降下作用を減弱する薬剤(例:アドレナリン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなど):血糖降下作用が減弱されるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
中等度以上の腎機能障害がある場合は、排泄の遅延によりネシーナの血中濃度が上昇するおそれがあります。そのため、投与量を適宜減量し、慎重に治療を進めていきます。
妊娠中の方への使用
ネシーナは、動物を対象とした試験で胎盤通過が報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方への使用
ネシーナは、動物を対象とした試験で乳汁中へ移行することが報告されています。
そのため、ネシーナを授乳中の方へ使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
ネシーナは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、一般的に腎機能をはじめとした生理機能が低下していることが少なくありません。
そのため、高齢の方へネシーナを使用する場合は特に腎機能に注意し、障害の程度に応じて適切な用量調整を行います
低血糖に関する注意点
ネシーナの服用で血糖が低くなり過ぎると、低血糖症状があらわれることがあります。特に他の糖尿病治療薬、なかでもSU剤やインスリン製剤を併用していると、低血糖のリスクが高くなります。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲料水などを摂取してください。
糖分を摂っても低血糖症状が続く場合は、すみやかに受診してください。また、症状が回復した場合でも、次回受診日には低血糖症状があらわれたことを必ず報告してください。
ネシーナの患者負担・薬価について
ネシーナには、6.25mg・12.5mg・25mgの3規格があります。各規格の薬価は以下の通りです。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがネシーナ錠25mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は1525.5円になります(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- 血糖値が下がらないため、現在ネシーナを含め3つの薬を飲んでいます。どうしてそんなにたくさんの薬が必要なのですか?
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糖尿病の薬には、インスリンの働きを改善するタイプ・糖の吸収を遅らせるタイプ・糖の排泄を増やすタイプ・インスリンの分泌量を増やすタイプなどさまざまな種類があります。
ネシーナはインスリンの分泌量を増やすタイプの薬剤ですが、ほかのタイプのものと併用することでより良い血糖コントロールが得やすくなります。
なお、薬物療法と併用して食事療法・運動療法に取り組み、血糖が下がってくれば、薬の減量・中止も見えてきます。将来の合併症を防ぐためにも、継続して治療に取り組んでください。
- 透析治療中なのですが、ネシーナは透析日に飲み方を変える必要がありますか?
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ネシーナは、透析を受けてもほとんど除去されません。
したがって、透析日は透析の時間にかかわらず、いつもと同じ時間にいつもと同じ量のネシーナを服用してください。
- ネシーナを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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ネシーナを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は服用せず、次の服用時間に1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。薬の服用量が多すぎると、副作用の発現リスクが高くなります。
- ネシーナの合剤はありますか?
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DPP-4阻害薬のネシーナとビグアナイド系薬のメトホルミンを配合するイニシンクがあります。