高血圧症治療「セララ(エプレレノン)」選択的アルドステロン拮抗薬

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セララとは?

セララの写真

セララ(一般名:エプレレノン)は、選択的アルダクトン拮抗薬と呼ばれる系統の薬剤です。
セララは、ナトリウムの再吸収などを介して血圧を上昇させる「アルドステロン」というホルモンに対して拮抗的に作用します。アルドステロンの作用が阻害されると、体内の余分な水分やナトリウムの排泄が促進されるため、むくみや血圧の上昇がおさえられ、心臓の負担も軽減されます。また、利尿作用を有する一方でカリウムの排泄を促進しないことから、「カリウム保持性利尿薬」と呼ばれることもあります。
なお、「セララ」という名称は、「selective aldosterone receptor antagonist(選択的アルドステロン受容体拮抗薬)」に由来します。

セララの特徴

適応疾患・用法用量

セララは、高血圧症および慢性心不全(ただし、ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、利尿薬などの基礎治療を受けている場合)に適応があります。
ただし、セララは規格によって適応疾患が異なります。疾患ごとの用法用量は以下のとおりです。

  • 高血圧症(錠25mg、錠50mg、錠100mg)
    通常、成人には1日1回50mgから投与を開始します。ただし、効果が不十分な場合は100mgまで増量できます。
  • 慢性心不全(錠25mg、錠50mgのみ)
    通常、成人には1日1回25mgから投与を開始します。そして、血清カリウム値や状態に応じて、投与開始から4週間以降を目安に1日1回50mgへ増量します。
    ただし、中等度の腎機能障害がある場合は、1日1回隔日で25mgから投与を開始し、最大用量は1日1回25mgとされています。
    なお、血清カリウム値やその他の状態に応じて、使用量の適宜減量または投与の中断を検討します。

効果および治療上のメリット

セララは、血圧の上昇と臓器障害に影響をおよぼすアルドステロンを選択的に阻害することで優れた降圧作用を示します。降圧作用の持続時間が比較的長く、1日1回の投与で安定した血圧コントロールを得られます。
また、軽度の慢性心不全患者を対象とした臨床試験では、標準的な治療にセララを追加投与することで、心筋梗塞や脳卒中による死亡や心不全による入院を減らせることが示されています。
なお、従来からあるアルドステロン拮抗薬に比べて、セララはより選択的にアルドステロンの作用に拮抗します。そのため、他のアルドステロン拮抗薬に比べて、性ホルモン関係の副作用が生じにくいという特徴もあります。

セララを服用する上での注意点

セララを服用できない方

セララは、高血圧症と慢性心不全で禁忌が異なります。

高血圧症・慢性心不全で共通の禁忌

高血圧症・慢性心不全ともに禁忌となっているのは、以下の場合です。

  • セララの成分に対して過敏症の既往歴がある方(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
  • 高カリウム血症の方、もしくは治療開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている方(高カリウム血症を増悪させるおそれがあります。)
  • 重度の腎機能障害のある方(高カリウム血症を誘発するおそれがあります。)
  • 重度の肝機能障害のある方(高カリウム血症などの電解質異常が発現するおそれがあります。
  • カリウム保持性利尿薬を使用中の方(血清カリウム値が上昇するおそれがあります。)
  • イトラコナゾール(抗真菌薬)、リトナビル(抗ウイルス薬)、ネルフィナビル(抗ウイルス薬)を使用中の方(セララの血漿中濃度が上昇して、血清カリウム値の上昇を誘発するおそれがあります。)
高血圧症の禁忌

高血圧症では、以下の場合も禁忌とされています。

  • 微量アルブミン尿または蛋白尿のある糖尿病の方(高カリウム血症を誘発するおそれがあります。)
  • 中等度以上の腎機能障害のある方(高カリウム血症を誘発するおそれがあります。)
  • カリウム製剤を投与中の方(血清カリウム値が上昇するおそれがあります。)

セララの服用に注意が必要な方

セララを慢性心不全の治療に使用する場合、微量アルブミン尿または蛋白尿をともなう糖尿病の方においては高カリウム血症のリスクが高まるおそれがあります。そのため、より頻回に血清カリウム値を測定するなどして慎重に治療を進めていく必要があります。
その他、禁忌に該当しないものの腎機能障害・肝機能障害のある方、ご高齢の方なども、セララの服用には注意が必要です(参照:特定の患者様への使用に関して)。

セララの副作用

おもな副作用として、発疹、顔面潮紅、光線過敏症、電解質失調、血清脂質の増加、高尿酸血症、高血糖症などが報告されています。
その他、重大な副作用として再生不良性貧血、低ナトリウム血症、低カリウム血症などが報告されています。重大な副作用が発生することは稀ですが、以下のような症状があらわれた場合はすぐに受診して適切な治療を受けてください。

おもな副作用として、頭痛、めまい、低血圧、吐き気、消化不良、筋肉のけいれん、疲労感、腎機能障害、高尿酸血症などが報告されています。
その他、重大な副作用として高カリウム血症が報告されています。セララの服用にともない、手足や唇のしびれ・筋力の低下・手足の麻痺などがあらわれた場合は高カリウム血症の初期症状である可能性が否定できないため、すぐに受診して適切な治療を受けてください。

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

セララは、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン・トリアムテレン・カンレノ酸カリウム)との併用が禁忌とされています。これは、併用でカリウム貯留作用が増強され、血清カリウム値が上昇するリスクが高まるためです。
また、イトラコナゾール(抗真菌薬)・リトナビル(抗ウイルス薬)・ネルフィナビル(抗ウイルス薬)との併用も禁忌です。これらの薬剤を併用すると、セララの代謝が阻害されて血漿中濃度が上昇し、血清カリウム値の上昇を誘発するおそれがあるためです。
さらに、高血圧症についてはカリウム製剤との併用も禁忌とされています。こちらは、併用によりカリウム貯留作用が増強され、血清カリウム値が上昇するおそれがあるためです。
その他、併用に注意しなければならない薬剤は以下のとおりです。他の医療機関で以下の薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。また、他の医療機関で治療を受ける場合は、セララを服用していることを伝えてください。

  • ACE阻害薬、ARB、アリスキレン(高血圧症の治療薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、タクロリムス(免疫抑制薬)、ドロスピレノン(月経困難症の治療薬):血清カリウム値が上昇するおそれがあります。
  • クラリスロマイシン(抗生剤)、エリスロマイシン(抗生剤)、フルコナゾール(抗真菌薬)、サキナビル(抗ウイルス薬)、ベラパミル(不整脈や狭心症などの治療薬)など:セララの代謝が阻害され、血清カリウム値の上昇をまねくおそれがあります。
  • デキサメタゾン(ステロイドの一種)、フェニトイン(抗てんかん薬)、リファンピシン(結核などの治療薬)、カルバマゼピン(てんかんや三叉神経痛などの治療薬)、フェノバルビタール(てんかん発作などの治療薬)など:セララの代謝が促進され、血漿中濃度が減少するおそれがあります。
  • リチウム製剤(両極性障害などの治療薬):リチウム中毒をまねくおそれがあります。
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬:セララの降圧作用が減弱するおそれがあります。また、腎機能障害患者で重度の高カリウム血症が発現したとの報告があります。
  • ミトタン(副腎がんやクッシング症候群の治療薬):類薬で、ミトタンの効果が阻害されたという報告があります。

セントジョーンズワートやグレープフルーツジュースとの併用に関して

セララは、健康食品やハーブティーなどに含まれるセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)やグレープフルーツジュースとの併用にも注意が必要です。
セララとセントジョーンズワートを併用すると、セララの代謝が促進されて十分な効果が期待できなくなります。
一方、グレープフルーツジュースと併用すると、セララの代謝が阻害されて血中濃度が高くなることが報告されています。
予期せぬ副作用を防ぐためにも、セララを服用している間はセントジョーンズワートを含む食品や茶類、グレープフルーツジュースを摂取しないようにしてください。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用

重度の腎機能障害がある方には、セララの使用が禁忌とされています。また、セララを高血圧症の治療に用いる場合は、腎機能障害が中等度であっても使用できません。これは、高カリウム血症を誘発するおそれがあるためです。
なお、慢性心不全については、中等度の腎機能障害を有する方についてもセララの有効性・安全性が確認されているため、禁忌とはされていません。
ただし、軽度であっても腎機能障害がある場合は、より頻回に血清カリウム値を測定するなどしてカリウム値の変化に留意したうえで、治療を進めていきます。

肝機能障害がある方への使用

セララは、おもに肝臓で代謝されます。そのため、重度の肝機能障害がある方への使用は禁忌とされています。肝機能障害がある方にセララを使用すると、高カリウム血症などの電解質異常が生じるおそれがあるためです。
なお、肝機能障害が軽度~中程度であっても、高カリウム血症などの電解質異常が発現するリスクは依然存在します。そのため、検査値などを確認しながら投与量などを検討していきます。

妊娠中の方への使用

セララは、動物を対象とした試験で催奇形性は認められていないものの、胎児に移行することが確認されています。
そのため、妊娠中の方または妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。

授乳中の方への使用

セララは、動物を対象とした試験で乳汁への移行が確認されています。ヒトの乳汁中への移行については明らかになっていませんが、セララを授乳中の方へ使用する場合は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

セララは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。また、安全性も確立していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を避けるため、保管場所や保管方法にご注意ください。

ご高齢の方への使用

高齢の方の場合、一般的に過度の降圧は脳梗塞などを誘発するおそれがあるため、好ましくないとされています。また、腎機能が低下している場合も少なくないため、高カリウム血症が発現するリスクも高くなっています。
このようなことから、高齢の方にセララを使用する場合は、より頻回に血清カリウム値を測定するなどして副作用の発現に注意しながら、慎重に治療を進めていきます。

セララの患者さま負担・薬価について

セララには25mg・50mg・100mgの3つの規格があります。各規格の薬価は以下のとおりです。

セララ錠25mg 36.7円/g
セララ錠50mg 70.8円/錠
セララ錠100mg 131.7円/錠

患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがセララ錠50mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は637.2円になります(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

薬の数を減らしたいのですが……。セララだけで慢性心不全の治療はできないのですか?

セララをはじめとしたアルドステロン拮抗薬の慢性心不全に対する有効性は、いくつかの大規模な臨床試験で証明されています。ただし、これらの試験ではACE阻害薬やARBなど他の標準的な治療薬との併用が推奨されています。
添付文書ではこの点を踏まえ、セララの適応疾患を「ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、利尿薬などの基礎治療を受けている」慢性心不全患者に限っています。
原則として、セララのみで慢性心不全の治療の治療はできませんので、ご了承ください。

セララを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

セララを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近いときは忘れた分を服用せず、次の服用タイミングで1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

セントジョーンズワートのハーブティーやグレープフルーツジュースを飲むときは、セララの服用時間とずらせば大丈夫ですか?

セララに対するセントジョーンズワートの影響は、どの程度持続するのか明らかになっていません。また、グレープフルーツジュースが薬の代謝におよぼす影響は、数日間続くこともあるといわれています。
そのため、セララを服用している間は、セントジョーンズワートやグレープフルーツジュースの摂取を避けてください。

 

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