高LDLコレステロール血症

FacebookTwitterLine

高LDLコレステロール血症とは?

高LDLコレステロール血症とは、血液中のコレステロール値が基準値から過剰に高値を示している「脂質異常症」のなかのひとつの状態です。
平成27年度に実施された厚生労働省による国民健康・栄養調査報告1)によると、成人男性の19.6%、成人女性の24.5%が高LDLコレステロール血症に該当するという結果を示しています。
脂質異常症には他にも、中性脂肪(トリグリセライド)が異常値となる高TG血症、高HDLコレステロールが異常値となる低HDLコレステロール血症、遺伝性の家族性高コレステロール血症などがあります。

高LDLコレステロール血症の原因

高LDLコレステロール血症の代表的な原因は食事です。
とくに「飽和脂肪酸」※)の摂りすぎはLDLコレステロールを高値にします。
また、コレステロールの摂取にも気をつける必要はありますが、飽和脂肪酸と比較すると影響が小さいため摂取の上限値が専門家の間でも見解が異なることが現状です。
また、運動、喫煙、アルコール摂取などもLDLコレステロールに影響を及ぼすリスク要因となります。
※)飽和脂肪酸を含む主な食材・食品
主に以下の食材・食品には飽和脂肪酸が多く含まれるため注意が必要です。

  • バター
  • ラード
  • コーヒーミルク
  • マーガリン
  • 生クリーム
  • 鶏肉(皮)
  • 牛肉(脂身)
  • ベーコン

 

疾患や薬剤が原因による高LDLコレステロール血症

病気や薬剤などが原因で起こる続発性脂質異常症があります。
高LDLコレステロール血症でよくみられる基礎疾患としては、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、原発性胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸、糖尿病、クッシング症候群。薬剤では、利尿薬、β遮断薬、コルチコステロイド、経口避妊薬などがあげられます。

脂質異常症の診断

脂質異常症の診断基準は以下のとおりです。検査には空腹時採血が用いられ、10~12時間の絶食後(水、お茶などの摂取は可能)の血液を検査します。

LDL
コレステロール
(LDL-C)
140mg/dL
以上
高LDL
コレステロール
血症
120~
139mg/dL
境界域高LDL
コレステロール
血症
HDL
コレステロール
(HDL-C)
40mg/dL
未満
低HDL
コレステロール
血症
トリグリセライド
(TG)
150mg/dL
以上
高トリグリセライド
血症

検査の結果、脂質異常症の診断基準に該当したときに必ずしも薬物療法が始まるわけではありません。
性別や血圧、糖尿病、喫煙などの有無、どの程度のリスクであるかにより治療の目標値が変わってきます。動脈硬化のリスクが低いと判断されれば160mg/dl程度まで経過観察とすることもあれば、糖尿病などはそれだけで高リスクと判断されるため治療目標はLDL-C120mg/dl未満とされます。また、すでに心臓病や脳卒中など動脈硬化の病気をされているときにはさらに厳格な管理が必要とされているのです。

診断基準と治療の目標値は異なるため薬を飲み始めるタイミングについては医療機関に相談するようにしてください。

高LDLコレステロール血症の治療

高LDLコレステロール血症における治療の三本柱は食事療法、運動療法、薬物療法です。

食事療法

高LDLコレステロール血症の食事療法では適正カロリーの摂取とLDLコレステロール値を高値にさせる食材・食品の摂取を控えることを中心として行います。

適正カロリーの摂取

適正カロリーの摂取は、肥満者を適正体重へ導き動脈硬化のリスクを低下させる目的があります。
1日の適正カロリーの計算は以下をご参照ください。
「1日の適正エネルギー量=目標体重(※1×エネルギー係数(※2
(※1 目標体重=身長(m)×身長(m)×22
(※2 エネルギー係数

労作の強度 エネルギー係数
軽い労作
(大部分が座位の静的活動)
25~30
(kcal/kg目標体重)
普通の労作
(通勤・家事、軽い運動を含む)
30~35
(kcal/kg目標体重)
重い労作
(力仕事、活発な運動習慣
35~
(kcal/kg目標体重)

例)身長160㎝の通勤などで適度な身体活動のある生活をおくっている人の場合。
目標体重は「1.6m×1.6×22=56㎏」となります。
エネルギー係数は「普通の労作=30~35」となり、これらを式にあてはめると。
「56㎏×30~35=1680~1960㎉」となり、1日あたりの摂取カロリーの目安が分かります。5)

LDLコレステロールを高値にさせる食材・食品の摂取を控える

動脈硬化性疾患ガイドラインにおいて、肥満者、非肥満者であっても脂質摂取内容を修正して制限することが記されています。3)
とくに、LDLコレステロールを高値にする飽和脂肪酸の摂り過ぎには注意が必要。主に肉の脂身部分やバターや生クリームなどの乳製品に飽和脂肪酸が多く含まれているため摂取を極力控えることが大切です。
同じ脂質であれば不飽和脂肪酸の摂取がおすすめ。サラダ油、アーモンド、青魚、アボカドなどには不飽和脂肪酸が多く含まれています。また、食物繊維も積極的に摂取することが大切です。

運動療法

運動によりLDLコレステロールが有意に低下されることは研究により明らかにされています。3)
推奨される運動は有酸素運動。ウォーキング、スロージョギングのように酸素を多く取り込みながら行う全身運動が有効です。
運動量と頻度は、1日30分以上の運動をできれば毎日。週180分以上を目安として行います。
運動強度の目安は中等度強度(最大酸素摂取量の50%)。自覚的な感覚でややきついと感じる程度の運動強度が望ましく、息がはずみながらも会話ができるほどの強度が理想的です。

薬物療法

食事療法、運動療法で思うような効果が出ない場合は薬物療法が併用されます。
高LDLコレステロール血症で用いられる代表的な薬剤は以下のとおりです。

スタチン系製剤

肝臓でコレステロールの合成を阻害しコレステロールの産生を抑制する薬です。
肝臓のコレステロールを意図的に不足させることで、血中のコレステロールが肝臓に取り込まれ血中のLDLコレステロール値が減少します。
主な副作用は、便秘、吐き気、腹部膨満感です。

陰イオン交換樹脂(レジン)製剤

コレステロールを胆汁酸とともに体外への排出を促進させる薬です。
胆汁酸が排出されることで肝臓のコレステロールが減少し、血中のコレステロールが肝臓に取り込まれるため血中のLDLコレステロール値が減少します。
主な副作用は、便秘、吐き気、腹部膨満感です。

高LDLコレステロール血症の予防と注意点

高LDLコレステロール血症の予防は、治療法と同じく食事と運動を含めた生活習慣を改善させることです。
食事では日本食を中心とし、野菜、果物、魚類を摂取。脂身や乳製品類などの摂取はできる限り控え、1日の適正エネルギー量を意識した摂取を心がけることが必要です。
また、運動は肥満改善や動脈硬化のリスクを下げるためにも積極的に行うようにしてください。非肥満者においても、適正体重の維持のため習慣的な運動を行うことが大切です。

高LDLコレステロール血症の大規模臨床試験

欧米と比較すると日本での高コレステロール血症に対する大規模臨床試験の実施は少ないことが現状です。
そのなかでも興味深い内容をご紹介します。

スタチン製剤の高LDLコレステロール血症に対する効果

J-LITでは国内の総コレステロール220mg/dl以上の52,421例の高コレステロール血症の患者に、シンバスタチン5mg/day(重症例は10mg/day)を投与し6年間の追跡を実施。
6ヶ月後の結果では、LDLコレステロールが26.0%低下したと報告がされておりスタチンの有意性を示しています。
また、HDLコレステロールは2.3%上昇、中性脂肪(トリグリセライド)は14.7%低下とすべての項目に有意な数値を示しています。

高齢者におけるスタチン製剤の効果

PATE Study3では、60歳以上の総コレステロール値220~280mg/dlの高コレステロール血症者665に、プラバスタチン5mg/日を投与した低用量群334例と、10~20mg/日投与した常用量群331例を比較したものです。
結果は、低用量群ではLDLコレステロール値が17~20%低下したことに対し常用量群では23~26%と有意に低下。
また、心筋梗塞や狭心症の発生が低用量群では17例、常用量群では10例。総死亡が低用量群では20例、常用量群では14例と、常用量群の有意性が報告されています。

1) 平成27年国民健康・栄養調査報告|厚生労働省
2) 脂質異常症(実践)|e-ヘルスネット(厚生労働省)
3) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022|日本動脈硬化学会
4) 脂質異常症の治療|日本動脈硬化学会
5) 糖尿病の食事のはなし(基本編)|糖尿病情報センター
6) 日本における脂質介入のエビデンス

nbsp;

FacebookTwitterLine