アトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ(トラロキヌマブ)」生物学的製剤

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アドトラーザの最新の話題

  • 2024年12月 アドトラーザ皮下注300㎎ペンが新発売となりました。
  • 2024年11月 薬価改定があり150mgシリンジの薬価が17.5%引き下げられました。
  • 2024年4月 在宅自己注射ができるようになりました。

アドトラーザとは?

アドトラーザの画像

アドトラーザ皮下注150㎎シリンジ(有効成分:トラロキヌマブ)は日本で初めてIL-13を選択的に阻害することで、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者さまに効果を発揮する生物学的製剤です。
国内においては2022年12月23日に承認され、2023年9月26日に発売されました。
海外では先行してEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療薬として使用されております(2022年8月現在)。
製造販売元のレオファーマはデンマークに本社を置く世界有数の皮膚科領域に特化した製薬会社です。ロゴマークのレオ(ライオン)はルーブル美術館にあったライオンの絵のスケッチからきているそうです。

クリス・シスネロス社長の表敬訪問を受けました

詳細はこちら

レオファーマ クリス・シスネロス社長

レオファーマのクリス・シスネロス社長にお越しいただきました。

アドトラーザにかける思いや、医療現場に対する真摯な姿勢に感銘を受けました。

患者さまによりよいアトピー性皮膚炎の治療を提供できるよう協力していきたいと思います。

 

アドトラーザの特徴

アドトラーザはアトピー性皮膚炎の病態に関与するIL-13を選択的に阻害することで効果を発揮するお薬です。
IL-13はアトピー性皮膚炎の患者さまの皮膚において過剰に発現しており、IL-13の発現量は疾患の重症度と相関しております。また、IL-13の主な働きとしてはケモカインとサイトカインの分泌を刺激して炎症反応を増幅し、さらに皮膚バリアのタンパク質と脂質の発現を低下させて皮膚バリアを破壊します。さらに、抗菌ペプチドの産生を低下させ、病原体の持続性を高め、痒みの末梢性感覚ニューロンを刺激することで痒みのシグナル伝達を活性化します。このようにIL-13はアトピー性皮膚炎の病態に深く関わっているサイトカインですので、その原因となるIL-13を選択的に阻害することを目的に開発されました。

アドトラーザの働き

アドトラーザの作用機序

アトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を果たす、免疫調節性サイトカインであるIL-13は、IL-13Rα1/IL-4Rα受容体複合体を介してシグナルを伝え、炎症反応を刺激し、痒みの発生に寄与し、正常皮膚のバリア機能に必要な蛋白の産生を阻害します。

アドトラーザは、2型サイトカインであるIL-13と結合し、IL-13とIL-13受容体のα1及びα2サブユニットとの相互作用を阻害します。IL-13を介したシグナル伝達を阻害することにより、アトピー性皮膚炎に対して効果を示します。

アドトラーザの有効性について

アドトラーザは病態の中心であるIL-13を選択的に阻害することで、皮膚表層のIL-13を減少させることができます。

その結果、ほぼ症状のない状態(EASI90達成)の達成率は、投与開始16週では3人に1人(32,9%)、32週では2人に1人(50,4%)となっております。

投与期間 EASI90達成率
16週 32,9%
32週 50,4%

また、併用が必要な外用ステロイド剤を減少できるという報告がある唯一の生物学的製剤です。血中半減期は22日と非常に長く、海外では4週間に1回の投与が認められています。

アドトラーザの安全性について

アドトラーザは副作用が少なく安全にお使いいただける薬剤です。重篤な副作用報告はほぼありません。2021年から先行して使用されているヨーロッパでは、全身療法の中で1stラインとして位置づけられています。結膜炎が少なく顔の赤みに対して効果があることが評価されているようです。

アドトラーザの対象患者さまについて

  • 15歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さま
  • 従来の治療(※)では十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎患者さま
    ※ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による治療

アドトラーザの投与方法と投与スケジュール

アドトラーザの投与方法

アドトラーザ®皮下注300mgペンは投与開始日のみ、ペン2本(600mg)を皮下投与します。その後は1回
にペン1本(300mg)を2週間隔で皮下投与します。
アドトラーザ®皮下注150mgシリンジは投与開始日のみ、シリンジ4本(600mg)を皮下投与します。その
後は1回にシリンジ2本(300mg)を2週間隔で皮下投与します。

アドトラーザの自己注射と長期処方について

2024年4月1日から投薬期間制限が解除され、自己注射・長期処方が可能となりました。これにより、2週間に1回の通院が困難であった方や自己注射を希望される方にもお使いいただけます。長期処方をすることで多くの患者さまが高額療養費制度の対象となりますので、毎月の薬剤費用の負担軽減になります。

アドトラーザの薬価(薬剤の価格)や治療費について

アドトラーザの薬価(薬剤の価格)は150㎎シリンジが24,182円、300mgペンが41,859円です。初回投与時は600㎎投与し、2回目以降は1回300㎎を2週間隔で投与します。
よってペンで導入した場合、初月の薬価は125,577円(3割負担の場合37,673円、2割負担の場合25,115円、1割負担の場合12,558円)となります。
2か月目以降は1回300㎎を2週間隔で投与するため、1か月の薬価は83,718円(3割負担の場合25,115円、2割負担の場合16,744円、1割負担の場合8,372円)となります。

アドトラーザ皮下注
300mgペン
アドトラーザ皮下注
150mgシリンジ
投与本数 初回
(2本)
2回目以降
(1本)
初回
(4本)
2回目以降
(2本)
薬剤費 83,718 41,859 96,728 48,364
3割負担 25,115 12,558 29,018 14,509
2割負担 16,744 8,372 19,346 9,673
1割負担 8,372 4,186 9,673 4,836

※いずれも薬剤費のみの計算です。
高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。また加入の健康保険組合で付加給付金制度がある方もいらっしゃいます。当院でアドトラーザによる治療をご検討の方は、アトピー専用フォームよりご相談いただきますようお願いします。

よくあるご質問

アドトラーザの投与を始めたら、これまでアトピー性皮膚炎の治療のために使っていた塗り薬や飲み薬はやめてもよいですか?

投与中も、ほかの治療法を続けることが大切です。自己判断でほかの薬をやめてしまうと、期待される治療効果が得られない可能性があります。治療について分からないことがあるときは、ご相談ください。

アドトラーザでの治療はやめられますか?

アドトラーザの治療により症状が改善し、良好な状態が保たれていれば、外用薬や飲み薬を使った治療などに切り替えることも可能です。症状によって適切にご判断いたします。

注射した日にお風呂に入っても大丈夫ですか?

注射当日の入浴は可能です。ただし、注射した部位からの感染を防ぐため、注射直後の入浴はお勧めできません。

なぜ初回に注射を4回打つのですか?

投与初期に注射を4回(600㎎)投与することで効果を最大限に発揮することができるため4回投与をします。最初の注射回数は多くなりますが、1シリンジの薬液量は1mlですので、注射時の針の痛みはあるものの、薬液による痛みや刺激は少ないと考えられます。

なぜ発売が遅れたのですか?

製品の製造工程における品質管理の目視確認において異物が発見されたため、法令に則り調査を行い、日本市場向けの品質基準に合わせて出荷をしませんでした。今回発売された製剤はすべて厳しい品質基準を満たしており、安心して投与できる製剤となっております。

急な用事や体調不良などで予定日に通院できなかった場合はどうしたらよいですか?

ご自身の考えでスキップせずにまずはご連絡くださいますようお願いします。状況によって適切にご判断いたします。

注射の痛みを和らげる方法はありますか?

薬液が冷たいと痛みを感じやすくなります。注射の30分以上前に注射器を冷蔵庫から出して、室温に戻しておきましょう。注射する部位を冷やすと注射時の痛みがやわらぎますので、スターターキットのクールジェルパッドなどで、注射する部位を冷やすことをおすすめします。

自己注射を開始した後に、通院での注射に切り替えることはできますか?

ご家庭での自己注射が難しい場合は、いつでも通院での注射に切り替えることが可能です。遠慮なく当院の医師や看護師にご相談ください。

 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。