- どんな患者さまが多いのですか?
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男女比は男性26%、女性74%となっております。こちらのグラフをご参照ください。
年代は30代、40代、50代を中心に、20歳未満から70代以上まで様々な患者さまが来院されます。詳細はこちらのグラフをご参照ください。
- 来院される患者さまの悩みはどんなものが多いですか?
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多い順に「かゆい」「痛い」「できもの」「おりもの」となっております。
詳細はこちらのグラフをご参照ください。
皮膚の病気は、「デリケートゾーン」と呼ばれる陰部や性器あたりにも発症することがあります。
まず、原因として考えられるものをいくつかみていきましょう。
かぶれ(接触皮膚炎)は、何らかの刺激物やアレルギーの原因となるものが皮膚に触れることで発症する湿疹性の炎症反応です。
おもな症状は、皮膚の赤みやかゆみ、ブツブツや水ぶくれなどです。
デリケートゾーンのかぶれの原因としては、以下のようなものがあります。
など
デリケートゾーンの感染症というと性感染症を連想するかもしれませんが、公共浴場で感染する場合や常在菌が原因で生じることもあります。
陰部を覆っている粘膜は手足などの皮膚に比べてバリア機能が弱く、一方で、デリケートゾーンは通気性が悪いうえに細菌などのエサとなる皮脂や汚れなどが蓄積しやすいため、感染症のリスクが高いのです。
陰部にかゆみなどを起こす感染症には、以下のようなものがあります。
常在菌であるカンジダ(真菌)による感染症。
感染時期がわからないことも多い。
男性は無症状のことが多いが、女性はカッテージチーズのようなおりものが増えたりかゆみが生じたりする。
免疫力が低下したときに症状が出やすい。
ヘルペスウイルスによる感染症。
ピリピリ・ムズムズするような不快な症状やむず痒さが初めに起こり、その後小さな赤い水疱が患部に集中してあらわれる。
一度感染すると、免疫力が低下したときなどに再発する。
「膣トリコモナス」という微生物による感染症。
男性は無症状のことが多いが、女性は悪臭のあるおりものが増加して激しいかゆみが生じることがある。
性行為のほか、タオルやシーツなどを介して感染することもある。
白癬菌による真菌感染症。
男性に多く、股間や臀部、太ももの付け根部分などに強いかゆみのある円形の発疹が生じる。
感染した人の皮膚(剥がれ落ちた角質)や、白癬菌が付いたペットの毛に触れるだけでうつることもある。
吸血性昆虫の毛ジラミが陰毛に寄生して起こる感染症。
肛門まわりの毛、太ももの毛、胸毛、わき毛などに寄生することもある。
感染すると強いかゆみが生じる。
接触の多い母子間やタオル・毛布などを介してうつることもある。
ウイルスによる感染症。
性器や肛門の周辺にカリフラワーや鶏冠のようなイボができる。
自覚症状がない場合もあるが、かゆみや痛み、灼熱感などがあらわれることもある。
性行為のほか、出産時に母子感染することもある。
粉瘤は、良性の皮膚腫瘍の一種です。
皮膚の下にできた袋状の構造物に角質や皮脂などがたまり、少しずつ大きくなります。
全身のどこにでも発症しうるもので、陰部にできることもあります。
軽症の粉瘤は症状がほとんどない場合もありますが、細菌やウイルスに感染すると赤みや腫れ、痛みなどをともなうことがあります。
毛包炎(毛嚢炎)は、毛の根元部分の「毛包」に生じる炎症です。
黄色ブドウ球菌や緑膿菌による感染が原因になる場合もありますが、常在菌のマラセチア(真菌)が毛包内で増殖し、炎症を起こすこともあります。
おもな症状は、軽くうずくような痛みやかゆみ、刺激感などです。
全身のどこにでも生じうるものですが、顔や首の後ろ、太もも、臀部や陰部付近などが好発部位です。
軽いものであれば自然治癒も期待できますが、症状が進行した場合は皮膚を切開して膿を出さなければならない場合もあります。
女性は、年齢によってエストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌量が変化します。
40代になると女性ホルモンの量が減り、45歳~50歳頃から更年期になる人もいます。
エストロゲンが減少すると、肌の水分を保ってくれるヒアルロン酸やコラーゲンの量も減少する傾向があります。
デリケートゾーン周辺も皮膚のうるおいが減って乾燥しやすくなるので、刺激に弱い状態になります。
エストロゲンの分泌量は、おりものにも影響します。
おりものは膣内に入り込んだ細菌を体外に排出する作用があるため、おりものの量が減るとその自浄作用も弱くなっていきます。
また、若い頃は「グリコーゲン」という物質のおかげで膣内が弱酸性に保たれているため、細菌が侵入しても繁殖を抑制できます。
しかし、更年期に入るとグリコーゲンが減少するため、細菌感染症などのリスクが高くなります。
陰部のかゆみや皮膚疾患を予防するためには、陰部を清潔にしたり摩擦などを避けたりするだけでなく、免疫力が落ちないようにすることも大切です。
陰部に汗や皮脂、排泄物などの汚れが付着したままになっていると、かゆみなどが生じやすくなります。
また、これらの汚れは細菌などの「エサ」になる場合もあります。
したがって、デリケートゾーンはできるだけ清潔を維持するようにしましょう。
だからといって、石鹸やボディタオルなどで洗いすぎるのは避けなければなりません。
洗う際は弱酸性の石鹸などをよく泡立て、やさしく汚れを落とすようにしましょう。
下着は通気性・吸湿性の良いものを選び、汗をかいたり汚れたりしたらすぐに取り換えるようにしましょう。
おすすめは、綿素材の下着です。
また、肌を締め付けるような下着(ガードルなど)や衣類(タイトなパンツスタイルなど)はできるだけ避けてください。
おりものシートや生理用品がかゆみや蒸れの原因になる場合もあるため、肌と相性の良いものを選び、こまめに取り換えるようにしましょう。
性行為で感染する病気については、コンドームの使用で防ぐようにしましょう。
口や肛門での性交でうつることもあるので、心当たりがある場合は注意してください。
万が一、性感染症にかかった場合はパートナーと一緒に治療を受けてください。
パートナーが未治療だと、性行為で再感染するおそれがあります。
白癬菌やシラミなどは、タオルなどを介して感染することもあります。
プールや公衆浴場などを利用したあとは、シャワーでしっかり洗い流すようにしましょう。
ヘルペスやカンジダ症などは、抵抗力が落ちたタイミングで症状が出やすくなります。
普段から疲労やストレスをためないように心がけ、抵抗力を落とさないようにしましょう。
更年期のデリケートゾーンのかゆみは、規則正しい生活とスキンケアによって予防・改善できます。
食事は肌にうるおいを与えるビタミンC・A・B群が豊富な野菜や果物、イソフラボンを含む大豆製品、動物性・植物性脂肪分も適度にとるようにしましょう。
また、熱すぎるお風呂への入浴は避け、肌を清潔にしたあとはセラミドやヒアルロン酸を含む低刺激性の化粧品でデリケートゾーンをやさしく保湿するようにしてください。
デリケートゾーンのかゆみや皮膚疾患が気になる場合は、早めの受診をおすすめします。
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
など
陰部の皮がむけて、強いかゆみをともなう場合は、白癬菌によるいんきんたむし、クラミジアや梅毒などの性感染症、ヘルペス、毛ジラミ症、接触性皮膚炎、ただれなどさまざまな疾患が考えられます。
いんきんたむしや性感染症は、大浴場や公衆の洋式トイレなどでも感染する場合があります。
市販薬では治療が難しいため、医療機関で薬を処方してもらって治療しましょう。
男性の場合は、亀頭や包皮にカンジダや細菌が感染して炎症を起こす「亀頭包皮炎」の可能性があります。
原因がブドウ球菌などの細菌なのか、カンジダなどの真菌なのか、あるいは両方に感染している(混合感染)なのかによって治療法が異なるため、自己判断での治療はおすすめしません。
細菌性の場合は、炎症が強いため赤みが出やすく、包皮が腫れあがることがあります。
カンジダ性の場合は、白いかすが皮にたまり、腐臭がします。
皮膚科などを受診して、抗生物質やステロイドなどの専門的な治療を受けるようにしてください。
他科や他の医療機関を受診して「大丈夫」といわれていても、症状が良くならない場合は早めに医療機関を受診してください。
実際、かゆみで婦人科を受診して問題ないといわれ、そのまま10年ほど放置したあと当院を受診し、がんの疑いで他科紹介になった方もいらっしゃいました。
このようなケースは滅多にありませんが、不安がある場合は積極的にセカンドオピニオンを求めてください。
当院では、デリケートゾーンにできるヘルペスや湿疹、いんきんたむし(股部白癬)、尖圭コンジローマ、臀部毛包炎などの治療に対応しています。
陰部は腫瘍などができる場合もあるため、早めに診せることが大切です。
当院は女性医師が担当しますので、特に女性の患者さまは相談しやすいのではないでしょうか。
病気によっては、お薬を使うことで症状が楽になる場合もあるため、受診をおすすめします。
以下は、当院にデリケートゾーンのお悩みで来院された患者さまの男女比・年代別のグラフです。女性医師が担当ということもあり、女性の患者さまが多いですが、幅広い年代の患者さまが来院されています。
なお、デリケートゾーンの皮膚に特に異常がなく、症状がおりもののみの場合は原則として婦人科へ紹介となりますので、ご承知ください。