クラビットとは?
クラビット(一般名:レボフロキサシン水和物)は、細菌のDNA複製に欠かせない酵素を阻害して殺菌的に作用するニューキノロン系の抗菌薬です。
通常、クラビットは皮膚感染症や呼吸器感染症、泌尿器感染症、婦人科感染症、消化器感染症、眼科感染症、耳鼻科感染症、歯科感染症などの治療に使われます。
なお、「クラビット」という名称は「CRAVE(熱望する、切望する)IT」に由来し、待ち望まれた薬剤であることを表現しているとのことです。
クラビットの特徴
クラビットは、嫌気性菌を含むグラム陽性菌群およびグラム陰性菌群に対して広く効果が期待できる抗菌薬で、適応症は44種類、適応菌種は35種類もあります。また、ペニシリン耐性およびマクロライド耐性肺炎球菌のほか、インフルエンザ菌など呼吸器感染症の主要原因菌に強い抗菌力を有し、呼吸器感染症の治療における有効な抗菌薬として位置付けられています。
なお、クラビットの投与量(1日1回、1回500mg)は、薬物動態と薬力学を組み合わせた理論に基づくものです。実際、クラビット500mgを1日1回投与する場合と100mgを1日3回投与する場合を比較すると、前者のほうが初期殺菌効果が高く、かつ、耐性菌の出現を抑制することが確認されています。
クラビットの効能効果・用法用量
効能効果
クラビットの適応菌種は、レボフロキサシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、炭疽菌、結核菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、アクネ菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマなどです。
適応症は、上記菌種による皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷および手術創などの二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、子宮内感染、涙嚢炎、麦粒腫、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、炭疽、ペスト、肺結核およびその他の結核症などです。
用法用量
通常、成人には1日1回、1回500mgを投与します。ただし、疾患や症状に応じて減量することもあります。
なお、肺結核およびその他の結核症については、他の抗結核薬と併用するのが原則です。
また、腸チフス、パラチフスについては、1回500mgを1日1回14日間投与します。
クラビットの禁忌・副作用など
クラビットを服用してはいけない例
クラビットの成分やオフロキサシン(クラビットとほぼ同じ構造の成分を含む薬剤)に対して過敏症の既往歴がある場合は、重篤なアレルギー症状をまねくおそれがあるためクラビットを服用できません。
また、炭疽などの重篤な疾患でない限り、妊娠中の方や小児への投与も禁忌とされています(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
クラビットの服用に注意が必要な例
以下の場合は、クラビットの服用に注意が必要です。
- てんかんなどの痙攣性疾患またはこれらの既往歴がある場合(痙攣を起こすことがあります。)
- オフロキサシン以外のキノロン系抗菌薬に対して過敏症の既往歴がある場合(アレルギー症状をまねくおそれがあります。)
- 重篤な心疾患(不整脈、虚血性心疾患など)がある場合(QT延長(心臓の電気伝達異常の一種)を起こすおそれがあります。)
- 重症筋無力症がある場合(症状を悪化させることがあります。)
- 大動脈瘤または大動脈解離を合併している場合や既往歴がある場合、家族歴やリスク因子(マルファン症候群など)を有する場合(海外において、類薬の投与後に大動脈瘤および大動脈解離の発生リスクが増加したとの報告があります。)
- 腎機能障害がある場合(クラビットの血中濃度が高いまま持続することが報告されています。)
クラビットの副作用
おもな副作用は、発疹、下痢、腹部不快感、食欲不振、悪心、めまい、不眠、頭痛などです。
また、重大な副作用として、ショックやアナフィラキシー、痙攣やQT延長、重篤な大腸炎、低血糖、横紋筋融解症などが報告されています。
重大な副作用が発生する頻度は明らかになっていませんが、下記のような症状があらわれた場合は適切な処置を行ったり受診したりしてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、クラビットとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、一部の痛み止めや制酸剤、鉄剤などとの併用には注意が必要です。他の医療機関で下記のような薬剤を処方されている場合は、診察時にご相談ください。他院で処方されている薬の内容がわからない場合は、おくすり手帳をお持ちください。
- フェニル酢酸系またはプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬(ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウムなど):痙攣を起こすおそれがあります。
- アルミニウムまたはマグネシウムを含む制酸薬や鉄剤:クラビットの効果が減弱するおそれがあります。併用する場合は、クラビットを服用してから1~2時間後に制酸薬や鉄剤を投与します。
- ワルファリン(抗血栓薬):ワルファリンの作用が増強するという報告があります。
- デラマニド(多剤耐性肺結核の治療薬)などQT延長を起こすことが知られている薬剤:QT延長を起こすおそれがあります。
- 副腎皮質ホルモン薬(ステロイド):腱障害のリスクが増大するとの報告があります。
自動車運転に関する注意
クラビットの重大な副作用として、低血糖が報告されています。また、重篤ではないものの、眠気やぼんやり感が生じたりすることもあります。これらにともない、意識障害があらわれる可能性が否定できないため、クラビット服用中は自動車の運転など危険をともなう機械の操作には十分に注意してください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中の方・授乳中の方への使用
クラビットは、動物を対象とした試験で胚・胎児死亡率の増加や発育抑制作用、骨格変異出現率の増加が認められています。
そのため、炭疽などの重篤な疾患でない限り、クラビットを妊娠中の方や妊娠の可能性がある方に投与することはできません。また、炭疽などの重篤な疾患であっても、治療上の有益性を考慮したうえで投与の可否を判断します。
なお、クラビットはヒトの乳汁中へ移行することが報告されています。したがって、クラビット服用中は授乳しないことが望ましいです。
お子さまへの使用
クラビットは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。また、動物を対象とした試験では関節異常が認められています。そのため、小児への投与は禁忌とされています。
もっとも、炭素などの重篤な疾患に使用する場合は必ずしも禁忌ではありません。しかし、使用にあたっては治療上の有益性を考慮したうえで投与の可否を検討します。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、クラビットの副作用の一つである腱障害があらわれやすいという報告があります。また、クラビットはおもに腎臓から排泄されますが、高齢の方では腎機能が低下している場合も少なくないため、血中濃度の高い状態が持続するおそれがあります。
したがって、高齢の方にクラビットを投与する場合は投与量や投与間隔、副作用の発現などに留意し、慎重に治療を進めていきます。
クラビットの患者負担・薬価について
クラビットには、規格の違う2種類の錠剤と細粒があります。それぞれの薬価は以下のとおりです。
なお、患者様にご負担いただくのは保険割合に応じた金額となります。例えば、3割負担の患者さまがクラビット500mgを1日1回、7日分処方された場合、ご負担額は279.93円となります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用する場合は、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- クラビット錠500mgは錠剤がとても大きいので飲むのが不安です。割ったり砕いたりして飲んでもいいですか。
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クラビットの有効成分であるレボフロキサシン水和物には苦みがあるため、口に含んだ際に味を感じないようマスキング加工されています。また、フィルムコーティングで光による分解をおさえています。割ったり砕いたりすると、このマスキング加工やコーティングが損なわれてしまうため、できるだけそのままの形で服用してください。
「どうしてものめない」という場合は、錠剤についている割線にそって割り、速やかに1錠分を服用してください。
なお、高齢で嚥下する力が弱いなどの事情がある場合は、あらかじめ診察時にご相談ください。状態に応じて細粒での処方を考慮します。
- クラビット細粒は苦いのですか?ニオイはありますか?
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クラビット細粒は薄黄色の細粒で、ニオイはほとんどありません。また、コーティング加工されているため、口に入れたときに苦みを感じることはまずありません。
ただし、細粒を口の中に長くとどめていると、コーティングが溶けて苦みを感じるおそれがあります。服用する際は口腔内に長くとどめず、速やかに服用してください。
- クラビット錠が7日分処方されました。症状が良くなったら飲むのをやめて、残りは取っておいてもいいですか。
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クラビットなどの抗菌薬は、副作用など気になる体調変化がない限り、指示された日数分だけしっかり飲み切ってください。途中で服用をやめると、薬剤に抵抗力を持つ耐性菌が発現するおそれがあります。
- クラビットを飲み忘れてしまいました。どうすればよいですか。
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クラビットを飲み忘れた場合は、気づいた時にできるだけ早く服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は忘れた分は飲まず、次の服用時間に1回分を服用してください。なお、飲み忘れがあっても2回分を一度に飲んではいけません。過量投与により、副作用が発生するおそれがあります。