抗真菌薬「フロリードD(ミコナゾール硝酸塩)」

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フロリードDとは?

フロリードDの写真

フロリードD(一般名:ミコナゾール硝酸塩)は、イミダゾール系の外用抗真菌薬です。フロリードDの成分であるミコナゾール硝酸塩は、低濃度ではおもに細胞膜や細胞壁に作用し、細胞の膜透過性を変化させることで抗菌作用を発揮します。また、高濃度では細胞の壊死性変化をもたらし、殺菌的に作用します。
なお、「フロリードD」という名称は、「菌叢(bacterial flora)」のFLOと、「ふた(ふさぐ)」の意味を持つLIDに由来します。そして末尾の「D」は、「皮膚(dermat-)」を意味しています。

フロリードDの特徴

フロリードDは、白癬の起因菌である白癬菌属・小胞子菌属・表皮菌属や、カンジダ症の起因菌であるカンジダ属のほか、アスペルギルス属、クリプトコッカス・ネオフォルマンスなどの諸菌種に対しても強い抗真菌作用を有する外用薬です。
臨床成績については、真菌の消失率が75%(足部白癬)〜100%(外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)、臨床効果としての改善率が80%(爪囲炎)〜100%(指間びらん症、外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)、総合効果としての有効率が77%(爪囲炎)〜100%(外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)であったと報告されています。

フロリードDの効能効果・用法用量

フロリードDは、体部白癬(斑状小水疱性白癬、頑癬)、股部白癬(頑癬)、足部白癬(汗疱状白癬)、カンジダ症(指間びらん症、間擦疹、乳児寄生菌性紅斑、爪囲炎、外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)、癜風に適応があります。
通常は、1日2~3回患部に適量を塗布します。

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フロリードDを外用する上での注意点

フロリードDを塗ってはいけない例

フロリードDの成分に対して過敏症の既往歴がある方は、フロリードDを使用できません。また、フロリードDは眼科用薬ではないため、角膜や結膜には使用できません。

フロリードDの副作用について

フロリードDによる重篤な副作用は、特に報告されていません。
比較的発生件数の多い副作用として、発赤や紅斑、そう痒感、乾燥や亀裂、丘疹などが報告されています。
これらの症状があらわれた場合は、フロリードDの中止や他の薬剤への変更が必要になることもあるため、気になる症状がある場合は早めに受診してください。

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、フロリードDとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。
ただし、ワルファリンカリウム(抗血栓薬)との併用には注意が必要です。これは、ワルファリンとの併用で出血を来した症例が海外で報告されているためです。
なお、フロリードDを使用している部位に、自己判断でステロイド外用薬を塗るのは避けてください。水虫など真菌感染症に対してステロイド外用薬を使用すると、症状が悪化するおそれがあります。
外用薬のなかにはフロリードDと使い分けが必要なものもありますので、併用したい薬がある場合や併用している薬がある場合は診察時にご相談ください。

特定の患者さまへの使用に関して

妊娠中の方への使用に関して

妊娠中(3ヵ月以内)の方または妊娠している可能性がある方には、フロリードDによる治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用を検討します。
なお、フロリードDの主成分であるミコナゾール硝酸塩を動物に経口投与した試験では、生胎仔体重や催奇形性などは認められなかったと報告されています。

授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して

フロリードDを適切に使う限りにおいては、特に問題はないと考えられます。ただし、副作用のリスクがまったくないわけではありません。
そのため、フロリードDの使用にともない、皮膚の赤みやかゆみ、乾燥や亀裂など副作用と思われる症状があらわれた場合は、速やかに受診して適切な処置を受けてください。

その他の注意点

フロリードDクリームの基剤として使用されている油脂性成分は、コンドームなどの避妊用ラテックスゴム製品の品質を劣化・破損するおそれがあります。そのため、これらとの接触は避けてください。

フロリードDの患者さま負担・薬価について

フロリードDクリーム1%の薬価は11.4円/gです。10g(1本)処方された場合、薬剤費は114.0円/本になります。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがフロリードDクリーム1%を10g(1本)処方された場合、ご負担金額は34.2円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、フロリードDクリーム1%はジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。

よくあるご質問

フロリードDクリームと同じ成分の市販薬はありますか?

フロリードDクリームの主成分であるミコナゾール硝酸塩を含む市販薬は、ドラッグストアなどで販売されています。しかし、市販薬はミコナゾール硝酸塩以外の成分を含んでいる製品が多く、添加物も異なります。また、適応や使用条件がかなり限定されているため、市販薬をフロリードDクリームの代わりに使用するのはおすすめできません。
市販薬を使用しても症状が改善しない場合・症状が再発する場合・かえって症状が悪化する場合などは薬が合っていない可能性があるため、早めに受診してください。

フロリードDクリームは、どのタイミングで塗るのがいいのでしょうか?

フロリードDクリームは、塗るタイミングについて特に決まりはありません。一般的に、1日2回の場合は朝と晩、1日3回の場合は朝・昼・晩に塗ることが多いですが、ライフパターンに合わせて塗り忘れしにくいタイミングで毎日塗布すれば大丈夫です。
なお、1日2~3回のうち、1回は入浴後に塗るのがおすすめです。入浴後は皮膚がやわらかくなっており、かつ清潔な状態なので、フロリードDクリームの塗布に適しています。

以前、他のクリニックで口腔カンジダ症と診断され、フロリードゲル経口用が処方されました。口腔カンジダ症の症状が再発したら、フロリードDクリームをフロリードゲル経口用の代わりに使ってもいいですか?

フロリードDクリームとフロリードゲル経口用は、名称はよく似ていますが有効成分も適応症も違います(下表)。

医薬品名 成分 適応
フロリードD
クリーム
ミコナゾール
硝酸塩
白癬、カンジダ症
(指間びらん症、間擦疹、
乳児寄生菌性紅斑、
爪囲炎、外陰カンジダ症、
皮膚カンジダ症)、癜風
フロリードゲル
経口用
ミコナゾール 口腔カンジダ症、食道カンジダ症

このように、フロリードDクリームとフロリードゲル経口用はまったく別の薬ですので、口腔カンジダ症や食道カンジダ症にフロリードDクリームを使うことはできません。
逆に、フロリードゲル経口用を口腔カンジダ症や食道カンジダ症以外の症状(白癬や癜風、皮膚や外陰のカンジダ症など)に使うこともできませんので、ご承知ください。

フロリードDクリームのジェネリック品がないって本当ですか?以前、薬局で変更してもらった覚えがあるのですが……。

以前はたしかにフロリードDクリームのジェネリック品がありました。しかし、2021年にジェネリック品の製造販売が中止となり、2023年3月末をもって薬価削除となりました。そのため、2023年4月以降はジェネリック品への変更ができなくなっています。

フロリードDクリームを塗り忘れた場合は、どうすればいいですか?

塗り忘れに気が付いたら、できるだけ早く1回分を塗ってください。ただし、次の塗布時間が近い場合は忘れた分を抜き、次の塗布時間に1回分を塗ってください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗ってはいけません。

 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。