外用抗真菌薬「マイコスポール(ビホナゾール)」

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マイコスポールとは?

マイコスポールの写真

マイコスポール(一般名:ビホナゾール)は、イミダゾール系の外用抗真菌薬です。真菌の細胞膜の構成・機能を障害して抗真菌作用を発揮します。
マイコスポールは、日本では1980年代から販売されている歴史のある外用薬ですが、皮膚真菌症患者を対象とした臨床試験では、1日1回の塗布で他の抗真菌剤の1日2~3回塗布に匹敵する成績を示すことが確認されています。
なお、「マイコスポール」という名称は、「Myco=Mycoses(真菌症)」と「spor=spore(胞子)」に由来します。

マイコスポールの特徴

マイコスポールは、皮膚糸状菌、酵母類および癜風菌に優れた抗真菌作用を有する外用薬です。一部の菌には静菌的に作用しますが、その他の酵母様真菌や白癬菌の菌糸に対しては殺菌的に作用します。
また、皮膚浸透性に優れ、角質層で長時間有効濃度を維持するのも特徴です。

マイコスポールの効能効果・用法用量

マイコスポールは、白癬(足部白癬、体部白癬、股部白癬)、カンジダ症(指間びらん症、間擦疹、皮膚カンジダ症)、癜風に適応があります。
使用回数は1日1回で、塗るタイミングは特に定められていません。
ただ、入浴後は皮膚がやわらかくなっており、かつ清潔な状態なので、できるだけ入浴後に塗布するのがおすすめです。

マイコスポールを外用する上での注意点

マイコスポールを塗ってはいけない例・使用に注意が必要な例

マイコスポールの成分に対して過敏症の既往歴がある方は、マイコスポールを使用できません。
また、イミダゾール系の他の薬剤で過敏症の既往歴がある方は、マイコスポールを使用すると接触皮膚炎を起こすおそれがあります。イミダゾール系薬剤は市販の抗真菌薬にも含まれていることがあるため、市販薬でかぶれなどの症状を経験したことがある方は診察時にご相談ください。
なお、マイコスポールは眼科薬ではないため、角膜や結膜には使用できません。その他、著しいびらん面にも使用できません。特に外用液はクリームに比べて皮膚への刺激が強いため、亀裂やびらん面に使用する際には注意が必要です。

マイコスポールの副作用について

マイコスポールによる重篤な副作用は、特に報告されていません。
比較的報告数の多い副作用として、クリームでは皮膚炎や発赤、外用液では皮膚炎や発赤、亀裂、そう痒、びらん、乾燥などが報告されています。
これらの症状があらわれた場合は、マイコスポールの中止や他の薬剤への変更が必要になることもあるため、気になる症状がある場合は早めに受診してください。

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、マイコスポールとの併用が禁忌となっている薬はありません。
ただし、マイコスポールを使用している部位に、自己判断でステロイド外用薬を塗るのは避けてください。水虫など真菌感染症に対してステロイド外用薬を使用すると、症状が悪化するおそれがあります。
外用薬のなかにはマイコスポールと使い分けが必要なものもありますので、併用したい薬がある場合や併用している薬がある場合は診察時にご相談ください。

保管法などその他の注意点

マイコスポールクリームは、高温多湿を避けて室温で保管してください。
マイコスポール外用液も基本的に室温保存で構いませんが、低温(約3℃以下)になると凝固するため、保管場所の温度にご注意ください。また、外用液は添加物としてアルコールを含むため、火気を避けて保管してください。さらに、外用液は合成樹脂を軟化したり塗料を溶かしたりすることがあるため、取り扱いにご注意ください。
なお、マイコスポールクリームおよび外用液に基剤として使用されている油脂性成分は、コンドームやペッサリーなどの避妊用ラテックスゴム製品の品質を劣化・破損するおそれがあります。そのため、これらとの接触は避けてください。

特定の患者さまへの使用に関して

妊娠中の方、授乳中の方への使用に関して

妊娠中(3ヵ月以内)の方または妊娠している可能性がある方には、マイコスポールによる治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用を検討します。
また、動物を対象とした試験で、マイコスポールは乳汁中へ移行することが報告されていることから、授乳中の方については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで授乳の継続または中止を判断します。

お子さま、ご高齢の方への使用に関して

マイコスポールを適切に使う限りにおいては、特に問題はないと考えられます。ただし、副作用である皮膚炎や発赤などの症状があらわれる可能性は否定できません。
したがって、マイコスポールの使用にともない皮膚炎などの症状があらわれた場合は、速やかに受診して適切な処置を受けてください。

マイコスポールの患者さま負担・薬価について

マイコスポールクリームの薬価は18.1円/g、・マイコスポール外用液の薬価は18.1円/mLです。各剤型・規格の薬剤費は以下のとおりになります。

マイコスポールクリーム1% 10g/本:181円
マイコスポール外用液1% 10mL/本:181円

もっとも、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額です。例えば、3割負担の患者さまがマイコスポールクリームを10g/1本処方された場合、ご負担金額は54.3円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。

よくあるご質問

マイコスポールと同じ成分の市販薬はありますか?

マイコスポールの主成分であるビホナゾールを含む市販薬は、ドラッグストアなどで販売されています。しかし、市販薬はラノコナゾール以外の成分を含んでいる製品が多く、添加物も異なります。また、適応も異なるため、市販薬をマイコスポールの代わりに使用するのはおすすめできません。
なお、白癬やカンジダに感染しているかどうかは、医師の診察を受けなければ判断できません。また、市販薬で症状が一時的に落ち着いても、原因菌をしっかり退治しなければ症状が再発してしまいます。
市販薬を使用しても症状が改善しない場合・症状が再発する場合・かえって症状が悪化する場合などは薬が合っていない可能性があるため、早めに受診してください。

マイコスポールクリームは、足の水虫にどれくらい塗ればいいんですか?

マイコスポールクリームは、指の関節一つ分の量(約0.5g)で両手約2枚分の範囲に塗り広げられます。片足分なら、人差し指の第一関節より少し多めの量が必要です。
「多すぎなのでは?」と思われるかもしれませんが、水虫の場合、症状のない部分にも原因菌が付着していることがあります。そのため、症状がある部分だけではなく、足の指の間やアキレス腱のまわり、外側面などにも塗っておくと、感染の広がりをおさえられます。

マイコスポールは1日1回で効くようですが、塗る回数を増やせばもっと早く水虫を治せるのではないですか?

マイコスポールは、角質に浸透して長くとどまるため、1日1回の使用で十分な効果が期待できます。このことは、臨床試験でも実証されています。塗布回数を増やしすぎると皮膚炎や発赤などの副作用が発生するおそれがあるため、使用回数は1日1回にとどめてください。

マイコスポール外用液を冷所で保管したら、固まってしまいました。温めて溶かせば、また使えますか?

一度凝固したマイコスポール外用液は、使わずに廃棄してください。凝固した外用液は、たとえ溶解できても成分の均一性が損なわれているおそれがあります。また、マイコスポール外用液にはアルコールが含まれているため、火の気があるところで加温すると発火するおそれがあります。大変危険ですので、加温は避けてください。

マイコスポールを塗り忘れた場合は、どうすればいいですか?

塗り忘れに気が付いたら、できるだけ早く1回分を塗ってください。ただし、次の塗布時間が近い場合は、忘れた分を飛ばして次の塗布時間に1回分を塗ってください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗る必要はありません。

 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。