ユベラ(錠)とは?
ユベラ(一般名:トコフェロール酢酸エステル)は、ビタミンE(トコフェロール)を有効成分とする薬剤です。
ビタミンEは抗不妊因子として発見された脂溶性ビタミンですが、近年になり、細胞膜やミトコンドリアなどの生体膜安定化作用や、過酸化物生成の抑制作用が立証されています。これらの作用は、循環器、神経、内分泌、血液、生殖などの機能の維持に重要な役割を果たすものです。
なお、「ユベラ」という名称は、「若々しい」という意味のラテン語(Juvenil)に由来します。
ユベラの特徴
ユベラ錠の有効成分であるビタミンEは抗酸化ビタミンとしても知られており、異常酸化(過酸化)を抑制して過酸化脂質の生成を抑制する作用があります。
また、末梢の血行を促すとともに、血小板粘着・凝集能を抑制して微小循環系の動態を改善する作用も認められています。
その他、内分泌の失調を是正して内分泌系を賦活・調整する作用があることもわかっています。
ユベラ錠の効能効果・用法用量
ユベラ錠は、ビタミンE欠乏症の予防および治療、末梢循環障害(間歇性跛行症、動脈硬化症、静脈血栓症、血栓性静脈炎、糖尿病性網膜症、凍瘡、四肢冷感症)、過酸化脂質の増加防止に適応があります。
成人には、通常1日2~3回、1回1〜2錠を投与します。ただし、年齢や症状により適宜増減を行います。
ユベラ錠の臨床効果
ビタミンE欠乏症に対する効果
ビタミンE欠乏症は、低出生体重児や新生児、無β‒リポタンパク血症、肝・胆・膵疾患にともなう脂肪吸収障害患者に生じることがある疾患です。ビタミンE欠乏症になると、眼や肺の障害、赤血球溶血亢進と寿命低下、筋萎縮、神経機能の異常などが発現しますが、ユベラ錠の投与により改善することが認められています。
末梢循環障害に対する効果
ユベラ錠の間歇性跛行症(閉塞性末梢動脈硬化症)に対する効果は、二重盲検試験で有用性が認められています。
また、凍瘡(しもやけ)や四肢冷感などの末梢循環障害に対しても、一般臨床試験で有用性が確認されています。
ユベラ錠とユベラNカプセル・ユベラNソフトカプセルの違い
「ユベラ」の名称を持つ医療用医薬品は複数あり、内服薬としては「ユベラ錠」と「ユベラNカプセル」「ユベラNソフトカプセル」があります。
ただし、ユベラ錠とユベラNカプセル・ユベラNソフトカプセルは、有効成分も効能効果も異なります(下表)。
したがって、ユベラ錠をユベラNカプセル・ユベラNソフトカプセルの代わりに使うことはできませんし、逆もまた同様です。
ユベラ錠を服用する上での注意点
添付文書上、ユベラ錠の使用が禁忌となっている疾患や病態などはありません。
また、ユベラ錠の服用にあたり、重篤な副作用は特に報告されていません。ただし、比較的発現率の高い副作用として、便秘や胃部不快感、下痢、発疹などが報告されています。もっとも、いずれの副作用も発現率が低く、再評価結果時の副作用発現率は総症例3,586例中、32例(0.89%)でした。
日常生活における注意点
ユベラ錠の過剰摂取について
ユベラ錠の有効成分であるビタミンEは脂溶性ビタミンです。適量を摂取する場合は特に問題ありませんが、過剰に摂取すると体内に蓄積するだけではなく、死亡率が高まるという報告もあります。
そのため、ユベラ錠の服用量を自己判断で増やすのは避けてください。
他の治療薬やサプリメントとの併用について
添付文書上、ユベラ錠との併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、ユベラ錠の有効成分であるビタミンEは、サプリメントなどにも含まれていることがあります。
したがって、ビタミンEを含むサプリメントなどを併用する場合は、過剰摂取に注意してください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用に関して
添付文書上、妊娠中または授乳中の方へのユベラ錠の使用に関して特に記載はありません。
ただし、妊娠中の方にビタミンEを投与したケースでは、母体の血中ビタミンE濃度は高値となったものの臍帯血におけるビタミンE量の増加はみられず、ビタミンEの胎盤通過性が極めて不良であったと報告されています。また、動物を対象とした試験では、胎児に対する致死、発育抑制、催奇形性および新生児の形態的・機能的分化、発育に及ぼす影響は認められなかったとされています。
一方で、分娩から70日経過した方にビタミンEを投与したケースでは、母乳への移行が認められています。
いずれにせよ、投与にあたっては母体・胎児・新生児の安全を最優先に考え、慎重に治療方針を検討していきます。
お子さま、ご高齢の方への使用に関して
添付文書上、小児や高齢の方へのユベラ錠の使用に関して特に記載はありません。
ただ、ビタミンEは年齢や性別により摂取目安量や耐容上限量が異なります。そのため、投与する際には個々の患者さまの症状や年齢・性別なども加味して投与量を決定します。
ユベラ錠の患者さま負担・薬価について
ユベラ錠50mgの薬価は、5.7円/錠です。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがユベラ錠50mgを1回2錠、1日3回30日分処方された場合のご負担金額は、307.8円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、ユベラ錠にはジェネリック薬がありますが、薬価に差はありません。薬局で変更を希望しても薬剤費は変わりませんので、ご承知ください。
よくあるご質問
- ユベラ錠と同じ成分の市販薬はありますか?
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ユベラ錠の主成分であるトコフェロール酢酸エステルを含む市販薬は、ドラッグストアなどでも販売されています。ただし、市販薬にはトコフェロール酢酸エステル以外の成分も配合されており、効能効果も医療用のユベラ錠とは若干異なります。そのため、市販薬をユベラ錠の代わりに使用することはできません。
- ユベラ錠は、食前と食後で効き方が変わるのですか?
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ユベラ錠の有効成分であるビタミンEは油によく溶けるビタミンであるため、食後に服用するほうが効率よく吸収されます。
ただし、症状によっては食後ではなくあえて食前に飲むよう指示されることもあるでしょう。
したがって、服用タイミングは処方通りでお願いします。自己判断で変更するのは避けてください。
- ビタミンEは抗酸化作用があるので、シミやシワにも良いと聞きました。美肌のために、保険を使ってユベラ錠を処方してもらうことは可能ですか?
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ユベラ錠の効能効果に、「シミ・シワの改善」は含まれていません。そのため、保険を使ってユベラ錠を処方することはできません。申し訳ありませんが、ご承知ください。
なお、市販のビタミンE含有製剤のなかには、シミなどの色素沈着に適応を持つものもあります。美肌目的の場合は、このような市販薬の利用も考えてみてください。
- ユベラ錠を飲み忘れた場合は、どうすればいいですか?
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ユベラ錠を飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐ忘れた分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は飲み忘れた分は服用せず、次の服用タイミングに1回分を飲んでください。このとき、2回分を一度に飲んではいけません。