褥瘡・皮膚潰瘍治療薬「アクトシン軟膏(ブクラデシン)」

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アクトシンとは?

アクトシンの写真

アクトシン(一般名:ブクラデシンナトリウム)は、末梢血管を拡張して血流障害を改善し、肉芽形成や表皮形成などを促進する外用薬です。
皮膚の再生や傷の縮小・治癒が促進されることから、褥瘡(床ずれ)ややけどによる潰瘍の治療などに用いられます。
なお、「アクトシン」という名称は、筋の収縮性たんぱくである「アクトミオシン」に由来します。

アクトシンの特徴

アクトシンの有効成分は、cAMPの誘導体であるブクラデシンナトリウムです。
局所血流改善作用や血管新生促進作用、肉芽形成促進作用、表皮形成促進作用により、創傷の治癒をうながします。加えて、潰瘍面積を縮小させ、治癒日数を短縮する効果も期待できます。
また、基剤として用いられているマクロゴールは、滲出液の吸収に優れているほか、洗浄が容易であるという特徴を有しています。
これらの作用・特徴から、アクトシンは赤色期~白色期の比較的浸出液が多い褥瘡の治療に用いられます。

アクトシンの効能効果・用法用量および注意点

効能効果・用法用量

アクトシンは、褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)に適応があります。
1日1~2回、潰瘍面を洗浄したあと、適量をガーゼなどにのばして患部に貼付するか、患部に直接塗布します。

効能効果に関する注意点

アクトシンは熱傷潰瘍に使用できますが、潰瘍がみられない熱傷には適応がありません。そのため、潰瘍のない熱傷については他の適切な方法で治療を行います。
また、アクトシンによる治療は保存的なものにとどまります。約6週間以上使用しても症状の改善が認められない場合は外科的療法なども検討しますので、ご承知ください。

アクトシンの禁忌・副作用など

添付文書上、アクトシンの使用が禁忌となっている疾患や病態などはありません。
また、アクトシンの使用にともなう重篤な副作用の発生は、特に報告されていません。
なお、比較的発現率の高い副作用として、使用部位における疼痛や発赤、刺激感などが報告されていますが、いずれも発生頻度は1%未満とかなり低めです。
もっとも、副作用の症状や程度によってはアクトシンの使用を中止しなければならない場合もあるため、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。

アクトシンを外用する上での注意点

感染に対する注意

アクトシンには抗菌作用がありません。そのため、使用前に必ず潰瘍面を洗浄してください。
万が一、感染があらわれた場合は抗生物質を投与するなどの処置が必要になるため、「滲出液の色やニオイが変わった」などの変化に気づいた場合は、速やかに受診してください。

大量のアクトシンを長期間使用する場合の注意

アクトシンを、広範囲に大量かつ長期で使用する場合は、有効成分であるブクラデシンナトリウムを全身投与した場合と同様の症状があらわれることがあります。
注射用のブクラデシンナトリウムは、副作用として高度な血圧低下や不整脈、高血糖などが報告されているため、体調に変化がみられる場合はすぐに受診して適切な処置を受けてください。

ガーゼ交換などの処置を行う際の注意

潰瘍の改善にともない形成される新生肉芽は、ちょっとした刺激で新生血管が傷付き、出血することがあります。そのため、ガーゼ交換などをする際は、十分に注意してください。
なお、アクトシンには壊死組織を積極的に融解する作用はありません。したがって、必要に応じて壊死組織を除去したあと、アクトシンを貼付あるいは塗布してください。

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、アクトシンとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、他の外用薬を使用している場合は使い分けが必要なケースもあります。
そのため、併用薬がある場合は市販薬も含めてすべてお伝えください。

特定の患者さまへの使用に関して

妊娠中の方・授乳中の方への使用に関して

アクトシンを使用すると、有効成分であるブクラデシンナトリウムの血中濃度が上昇することが報告されています。そのため、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみアクトシンの使用を考慮します。
なお、授乳中の方への使用については添付文書に特に記載はありませんが、投与にあたっては母体や新生児の安全を最優先に考え、慎重に治療方針を検討します。

お子さまへの使用に関して

アクトシンは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
やむを得ずアクトシンを小児などに使用する場合、特に広範囲な創面に大量かつ長期に使用する場合は、全身状態や副作用の発現などに留意し、異常が認められた場合は休薬などの適切な処置を行います。

ご高齢の方への使用に関して

高齢の方の使用については、添付文書に特別な記載はありません。もっとも、高齢の方では一般的に生理機能が低下しています。
したがって、高齢の方にアクトシンを使用する場合は、症状の変化や副作用の発現などに注意しながら慎重に治療を進めていきます。

保管に関する注意

アクトシンの長期保存試験によると、10度で36ヵ月間保存した場合、外観・におい・pHなどに変化はなかったものの、規格内での含量の低下(約7%)および水分量の増加(約0.6%)がみられたとのことです。
そのため、使用期限(3年)の間、製剤の安定性を保つには10度以下の冷所保存が必要です。
ご家庭では冷蔵庫などの冷所に保管し、高温になりやすい自動車内や直射日光が当たる場所などに置き忘れないようご注意ください。

アクトシンの患者負担・薬価について

アクトシンには、チューブ品(30g/本と200g/本)とジャーボトルタイプ(200g/瓶)があります。薬価は53.3円/gなので、30gは1本1,599円、200gは1本(あるいは1瓶)10,660円になります。
もっとも、患者さまにご負担いただく金額は保険割合に応じて変わります。例えば、3割負担の患者さまがアクトシンを30g/本処方された場合、ご負担額は479.7円になります(薬剤費のみの計算です)。
なお、アクトシンにはジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。

よくあるご質問

アクトシンと同じ成分の市販薬はありますか?

アクトシンと同じ成分の市販薬は販売されていません。
市販薬のなかには床ずれに使えるものもありますが、床ずれは症状に応じた薬剤を使用して適切な処置を行わなければ症状が悪化するおそれがあります。
したがって、床ずれが疑われる場合は早めに受診してください。

アクトシンを冷蔵庫で保存していますが、軟膏が硬くてうまく塗れず、困っています。何か良い方法はありませんか?

アクトシン軟膏が硬くてうまく塗れない場合は、使用する30分ほど前に冷蔵庫から出し、室温(できれば25度以下)に戻してから塗布してください。ガーゼなどに塗り広げて使用する場合は、ガーゼに必要量を乗せてしばらく置き、少し軟らかくなってから使用するとよいでしょう。
ただし、冷蔵庫から出したアクトシン軟膏を直射日光が当たるところや高温になる場所に置くのは避けてください。また、チューブや瓶にアクトシン軟膏が残っている場合は、残薬を速やかに冷蔵庫に戻してください。その際、キャップや蓋を閉め忘れないようご注意ください。

アクトシンを塗り忘れた場合はどうすればいいですか?

アクトシンを塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布してください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗ってはいけません。塗る量を増やしても、治癒が早くなるわけではありません。また、塗る量が多くなると、全身性の副作用が生じるリスクが高くなります。

 

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