ルミセフとは?
ルミセフ(一般名:ブロダルマブ)は、IL(インターロイキン)-17の働きを抑える生物学的製剤です。
IL-17は、乾癬の皮膚や関節の病態に関係が深い物質です。ルミセフは、細胞表面にあるIL-17受容体Aに結合してIL-17の作用を抑え、皮膚の炎症を鎮めたり、関節症状を改善したりします。
ルミセフの名称の由来は、光り輝く健康な肌への願いを込めて、“luminous”(光り輝く)をもとに命名されました。
ルミセフの特徴と臨床成績
ルミセフは、IL-17そのものではなくIL-17受容体Aに作用します。結果として、IL-17受容体A に結合するさまざまなILの生物活性を抑えることになるため、乾癬だけではなく幅広い病気や症状の治療に使用されます。
乾癬に対する臨床成績
中等度~重度の尋常性乾癬および乾癬性関節炎の方を対象とした臨床試験では、投与12週後にPASIスコア(乾癬の重症度を表す指標)が75%以上改善した人が94.6%、90%以上改善した人が91.9%、100%改善した人が59.5%でした。
また、別の臨床試験では、膿疱性乾癬および乾癬性紅皮症の方に対する全般改善度が評価されています。
体軸性脊椎関節炎や掌蹠膿疱症に対する臨床成績
体軸性脊椎関節炎(強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)の方を対象とした臨床試験では、ルミセフの16週間の投与で症状の改善基準を満たした人の割合は43.8%でした。この効果は、長期投与した場合でも持続することが明らかになっています。
また、掌蹠膿疱症の方を対象とした臨床試験でも、ルミセフの16週間の投与で症状が有意に改善することが示されています。
ルミセフの効能効果・用法用量
効能効果
ルミセフは、既存治療では十分な効果が得られない尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、掌蹠膿疱症に適応があります。
用法用量
通常、成人には1回210mgを初回・1週後・2週後に皮下投与し、以降は2週間の間隔で皮下投与します。
投与前の検査や自己注射の指導について
投与前の検査について
ルミセフは、投与前に血液検査と胸部X線検査(レントゲン)が必要です。また、治療中も必要に応じて血液検査や尿検査などを行います。
血液検査は当院にて行います。
胸部X線検査については、半年以内の健康診断の結果がある方はお持ちください。お持ちでない方は当院ビル3階の内科医院で撮影が可能です。
当院の自己注射の指導方法について
患者さまが治療を選択するうえで心配事となる自己注射について、当院の取り組みをご紹介いたします。どのような考えで自己注射の指導にのぞんでいるかをご覧いただき、少しでも患者さまの不安の解消につながれば幸いです。
自己注射の詳細はこちら
ルミセフの使用上の注意点
使用禁忌
- 重篤な感染症がある場合(症状を悪化させるおそれがあります。)
- 活動性結核の場合(症状を悪化させるおそれがあります。)
- ルミセフの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
使用に注意が必要な方
以下の場合は、ルミセフの投与が禁忌ではありませんが注意が必要です。
- 重篤ではないものの感染症に罹患している場合、あるいは罹患している疑いがある場合(症状が悪化するおそれがあります。)
- 結核の既往歴がある場合または結核感染が疑われる場合(結核を活動化させ、症状が顕在化するおそれがあります。)
- うつ病、うつ状態またはその既往歴がある場合、自殺念慮または自殺企図の既往歴がある場合(自殺念慮、自殺企図があらわれたという報告があります。)
- 活動期のクローン病の場合(クローン病の方を対象とした海外臨床試験で、クローン病の悪化に関連する事象が報告されています。)
ルミセフの副作用
ルミセフのおもな副作用として、上気道感染、鼻咽頭炎、かゆみ、発疹、関節痛、悪心・嘔吐、頭痛、注射部位の赤みや腫れなどが報告されています。
また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数の減少、重篤な過敏症が報告されています。
重大な副作用が生じることは稀ですが、ルミセフの投与にともない下記のような症状があらわれた場合はすみやかに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ルミセフとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、ルミセフは免疫系に関与するIL-17の働きを抑えるため,投与すると感染症にかかりやすくなる可能性があります。そのため、「生ワクチンの接種は行わないこと」とされています。不活性化ワクチンである肺炎球菌やインフルエンザのワクチンは接種可能ですが、不安がある場合はあらかじめご相談ください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中の方への使用
ルミセフを妊娠中の方へ投与した場合の安全性は確立していません。
そのため、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方への使用
ルミセフが人の乳汁中へ移行するかどうかは明らかになっていませんが、動物を対象とした試験では乳汁への移行が確認されています。
したがって、授乳中の方へ投与する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまへの使用
ルミセフは、小児などを対象とした有益性および安全性を指標とした臨床試験を実施しておらず、安全性が確立していません。
ご家庭では、お子さまがルミセフを勝手に持ち出すことがないよう十分にご注意ください。
ご高齢の方への使用
国内外の臨床試験において、高齢の方にルミセフを投与した場合に具体的な注意喚起が必要と考えられる有害事象は認められていませんが、一般的に高齢の方では生理機能が低下しています。
そのため、高齢の方にルミセフを使用する場合は、感染症などの副作用の発現に留意して十分な観察を行い、慎重に治療を進めていきます。
ルミセフ保管時の注意
ルミセフは、使用する15~30分前まで箱に入れたまま冷蔵庫(2~8度)で保管する必要があります。適切な温度管理ができなかった場合、あるいは一度でも凍結してしまった場合は使用できなくなりますので、ご注意ください。
なお、成分の劣化・変性を防ぐために、冷凍庫やチルド室、野菜室、冷気の吹き出し口付近では保管しないでください。
ルミセフの患者さま負担・薬価について
ルミセフの規格は「ルミセフ皮下注210mgシリンジ1.5mL」の1種類のみで、薬価は74,513.0円/筒です。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがルミセフを1筒処方された場合、ご負担金額は22,353.9円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、1ヵ月の医療費の支払い額(自己負担額)が高額になる場合は、高額療養費制度などの負担軽減措置が受けられることもあります。詳しくは、ご加入の保険者(市町村や企業の健保組合)にご確認ください。
よくあるご質問
- ルミセフの治療効果が得られるまでの期間はどれくらいですか?
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尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症については、通常投与開始から12週以内に治療反応が得られるとされています。強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎については16週以内に、掌蹠膿疱症については24週以内に治療反応が得られるのが一般的です。
ただし、治療反応が得られることと寛解することは別に考えなければなりません。治療反応が得られたあと、寛解するまでにはさらに時間が必要ですので、ご承知ください。
- 注射部位の痛みを和らげる方法はありますか?
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注射で痛みを感じる場合は、以下のことをお試し下さい。
- 注射する部分の感覚を鈍くするため、注射する前に約1~3分間保冷剤などで注射部位を冷やしてから消毒して注射してください。
- 薬液が冷たいと痛みを感じやすくなります。注射前にルミセフを手のひらで1分程度温めてから注射してください。なお、電子レンジなどでは温めないでください。
- 針を刺すときに時間がかかりすぎると、痛みを感じやすくなることがあります。刺す際はすばやく針を刺しましょう。
- 緊張すると痛みを感じやすくなります。注射前に3回深呼吸して、4回目の深呼吸で息を吐くタイミングに合わせて針を刺し、次の呼吸に合わせて薬液をゆっくりと10~15秒程度かけて注射してください。
- 薬液を急速に(目安として10秒未満で)注射すると、痛みを感じやすくなります。薬液はゆっくりと時間をかけて注射しましょう。
- 注射した部位は、もむ方がいいですか?
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注射部位をもむと腫れることがあります。注射後はもむなど過剰な刺激を与えないようにしてください。なお、痛みやかゆみが出た場合はご連絡ください。
- 打ってはいけない生ワクチンを具体的に教えてください。
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生ワクチンの例としては、BCG、麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)、麻疹・風疹混合(MR)、水痘(みずぼうそう)、おたふくかぜのワクチンなどがあります。黄熱ワクチンやM poxワクチンも生ワクチンですので、接種は避けてください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。