乾癬治療薬「ビンゼレックス(ビメキズマブ)」生物学的製剤

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ビンゼレックス(ビメキズマブ)とは?

ビンゼレックスの写真

ビンゼレックスはIL(インターロイキン)-17を抑える生物学的製剤として2022年1月に国内で承認され4月20日に発売されました。適応症は尋常性乾癬・膿胞性乾癬・乾癬性紅皮症です。ビンゼレックスは皮下注射により投与する薬剤で注射器はオートインジェクターとシリンジの2種類あります。

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乾癬の生物学的製剤は日本皮膚科学会の検討委員会による審査を経て理事会で承認されて使用を許可されます。当院は日本皮膚科学会が作成する「乾癬生物学的製剤使用承認施設」に掲載されています。

ビンゼレックスの特徴

ビンゼレックスはヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクロ-ナル抗体製剤と呼ばれる注射薬で、インターロイキン(IL)-17A、IL-17F という物質の作用を中和することにより乾癬症状を改善します。IL-17は皮膚の炎症部位に近いところにあるサイトカインであるため、投与早期(1か月~4か月)から皮疹の改善が見込めます。他のIL-17製剤と比べるとIL-17Aだけでなく17Fの作用を抑えることができる点が特徴的です。また投与スケジュールを柔軟に変更できるというメリットがあります。

ビンゼレックスの対象患者

尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の方のうち以下の条件を満たす方

  • 今までの治療法(塗り薬や紫外線を用いた治療や飲み薬)で十分な効果が得られない方
  • 皮膚の症状が全身の10%(手のひら10枚分の面積)以上ある方
  • 難治性の皮膚症状または関節症状がある方

 

ビンゼレックスを使用できない方

  • 重い感染症を患っている方
  • 活動期の結核を患っている方
  • ビンゼレックスに含まれる成分に対するアレルギーがある方

 

ビンゼレックスを使用する場合に注意が必要な方

  • 感染症を患っている方
  • 過去に結核にかかったことがある方
  • ご高齢の方
  • 妊娠中、授乳中の方

 

ビンゼレックスの投与方法と効果判定

投与方法

ビンゼレックスは注射薬です。
投与部位は腹部・上腕部・大腿部となります。
自己注射は認められておらず、院内にて医師または看護師のスタッフが投与いたします。

投与スケジュール

ビンゼレックスの投与スケジュール

最初の16週間(約4か月間)は4週に1回の投与になります。その後は、病気の状態に応じて4週もしくは8週に1回の投与となります。

効果判定の目安

通常、投与開始から16週以内に効果が得られますが、16週投与しても効果がない場合は、治療を続けるかどうか再検討します。

臨床試験の結果より

ビンゼレックスの効果

治療効果の評価方法はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)という指標を用いて行います。世界的に権威があるThe New England Journal of Medicine (NEJM)に掲載されたビンゼレックスの臨床試験によると、投与16週で60%以上の方がPASI100(皮疹の完全消失)を達成しており効果が高い薬剤といえます。
効果の持続に関して、16週投与後の維持投与期間に投与量を(4週に1回投与/8週に1回投与)の2群に分けて評価しています。52週後にPASI100を達成した割合は4週に1回投与群:73.5%、8週に1回投与群:66.0%と、いずれ群においても60%を超えており効果が持続されていることが報告されています。

ビンゼレックスの使用上の注意点

IL-17は細菌やカビの感染を防ぐ働きもしているため、IL-17の働きを抑えるビンゼレックスを使用すると感染症にかかりやすくなります。
とくに皮膚や粘膜における感染(カンジダ症など)に注意が必要です。

ビンゼレックス投与中に生ワクチン(BCG、麻疹、風疹など)の接種をすると感染症を起こす危険性があるため生ワクチンの接種はできません。

感染予防のために日常生活で注意すべきこと

  • 手洗いうがいをしっかりする(口腔ケアをしっかり行う)
  • 手指消毒をする
  • マスクをする
  • 人混みを避ける

ビンゼレックスの患者負担・薬価について

ビンゼレックスの薬価(薬剤の値段)はオートインジェクター1キット156,820円、シリンジ1筒156,587円です。1回投与分の薬価は、薬剤費のみの計算でシリンジ313,174円(3割負担:93,950円)となります。なお新薬発売後1年間は自己注射ができないため、4週間ごとの来院での投与が必要になります。治療に当たってはご自身の収入により高額療養費制度など各種助成制度を利用できる可能性があります。

 

よくあるご質問

ビンゼレックスが自己注射できるようになったと聞いたのですが……。何か条件があるのですか?

ビンゼレックスは、2023年5月から自己注射ができるようになりました。ただし、自己注射ができるのは投与間隔が4週間の方のみです。
自己注射にあたっては、十分な訓練や患者さま自身の薬や病気に対する深い理解が必須です。また、自己注射を始めたあとでも、感染症など副作用が疑われる場合や自己注射の継続が困難な状況になる可能性がある場合には、直ちに自己注射を中止して慎重に経過を観察するなど適切な処置を行います。

ビンゼレックスは乾癬にどれくらい効果があるのですか?やはり注射薬だから効きはいいですか?

ビンゼレックスなど生物学的製剤の注射薬は乾癬の炎症の原因であるサイトカインの働きをピンポイントで抑えるため、一般的にほかの治療方法に比べて効果が高く、関節症状にも効果が期待できます。
実際、中等度~重度の局面型皮疹を有する尋常性乾癬の方を対象とした臨床試験では、ビンゼレックスによる16週間の治療で症状が「消失」あるいは「ほぼ消失」と診断された方は84.1%であったと報告されています。

ビンゼレックスなど乾癬治療に使える注射にはどのような種類があるのか教えてください。

尋常性乾癬に適応がある注射剤としては、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)、シムジア(一般名:セルトリズマブ)、コセンティクス(一般名:セクキヌマブ)、トレムフィア(一般名:グセルクマブ)、スキリージ(一般名:リサンキズマブ)、イルミア(一般名:チルドラキズマブ)、ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ)、トルツ(一般名:イキセキズマブ)、ルミセフ(一般名:ブロダルマブ)などがあります。
これらはいずれも皮下注射で、尋常性乾癬に適応があります。ただし、その他の疾患については適応が異なる場合があります。投与間隔も各薬剤で異なりますので、ご承知ください。

投与開始4か月後に投与する間隔が1か月もしくは2か月と別れるケースがありますが違いはなにですか?

4か月後に乾癬の皮疹の状況によって医師が判断します。2か月に1回の投与になるケースが多いですが、皮疹が強い方や体重が重い方は1か月間隔で継続するケースが想定されます。

ビンゼレックスの副作用はどのようなものがありますか?

鼻水、くしゃみ、鼻づまり、のどの痛みなどの、上気道感染や鼻咽頭炎が現れることがあります。
また、まれに口腔カンジダ症が現れることがあります。お口の中や舌に痛み、白い苔のようなものが付着したり、味覚異常などの症状が現れることお口の中に異常が現れた際はすぐにご相談ください。

口腔カンジダ症に関して教えてください。

口の中に存在するカンジダ菌は、誰しもが持つ常在菌です。この菌が増えるのをIL-17というサイトカインが抑えています。ビンゼレックスはIL-17を抑えることで「乾癬」の症状を改善するため、10~20%程度の頻度で口腔カンジダ症が現れることがあります。症状はほとんどが軽症~中等症であり、適切な薬物治療を行うことで改善します。改善後はビンゼレックスの投与を続けることができるため、「乾癬」の症状改善が期待できます。

口腔カンジダ症を予防する方法はありますか?

予防法として、

  • リステリンなど殺菌力のある口腔内洗浄剤を使用するなど、お口の中を清潔に保つ
  • 義歯がある場合には、義歯を清潔に保つ
  • 適度な水分摂取、口腔内保湿剤によりお口の中の乾燥を防ぐ

などにより、カンジダ菌の増殖を防ぎ、口腔カンジダ症を予防できる可能性があります。お口の中を清潔に保つことは、口腔カンジダ症の予防だけでなく、様々な病気の原因を防ぎ、健康を維持することにもつながりますので、ビンゼレックスの投与の有無に関わらず実践してください。

 

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