トレムフィア(グセルクマブ)とは
トレムフィアは生物学的製剤のひとつで、IL(インターロイキン)-23p19という物質の働きを抑えるお薬として2018年に発売されました。
主に尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症と、掌蹠膿疱症の治療に用いられます。
乾癬の生物学的製剤は日本皮膚科学会の検討委員会による審査を経て理事会で承認されて使用を許可されます。当院は日本皮膚科学会が作成する「乾癬生物学的製剤使用承認施設」に掲載されています。
IL-23p19とは
IL-23p19はIL-17と同様、「炎症性サイトカイン」のひとつです。IL-23p19は免疫反応で働く樹状細胞から産生されます。
乾癬では免疫システムが異常を起こしているため、樹状細胞がIL-23を過剰に産生します。IL-23はリンパ球を刺激して乾癬の皮膚や関節の症状を引き起こすIL-17を多く産生させます。つまり、乾癬の発症においてIL-23はIL-17の上流で働いています。
IL-23にはIL-23p40とIL-23p19があります。トレムフィアが発売されるまではIL-23の働きを抑えるお薬としてIL-23p40の働きを抑えるお薬(ステラーラ)がありました。しかし、IL-23p40はIL-12にも関与して免疫細胞であるT細胞の分化まで抑えてしまいます。それによって正常な免疫の働きまで抑えられてしまうと言われていました。
トレムフィアはIL-23p19に限定して働きを抑えるため、T細胞の分化に影響を与えることなく乾癬の症状を抑えることができます。
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トレムフィアの特徴
- トレムフィアは乾癬に対して非常に高い治療効果がありますが、IL-17より上流にあるIL-23p19の働きを抑えるため、治療効果が出るまでにIL-17阻害薬よりは多少時間がかかります。
- 乾癬だけではなく掌蹠膿疱症の治療薬としても用いることができます。
トレムフィアを使う場合の注意点
トレムフィアは使用できる方とできない方がいます。そのため、トレムフィアを開始する際は事前に確認をさせていただきます。
トレムフィアを使用できる方
乾癬の方
- 今までの治療法で十分な効果が得られない方
- 皮膚の症状が全身の10%(手のひら10枚分の面積)以上ある方
- 難治性の皮膚症状または関節症状がある方
掌蹠膿疱症の方
トレムフィアを使用できない方
- 重い感染症を患っている方
- 活動期の結核を患っている方
- トレムフィアに含まれる成分に対するアレルギーがある方
トレムフィアを使用する場合に注意が必要な方
- 感染症を患っている方
- 過去に結核にかかったことがある方
- ご高齢の方
- 妊娠中、授乳中の方
投与方法と投与スケジュール
投与方法
トレムフィアは注射薬です。太もも、お腹、二の腕などの皮下に注射します。
投与スケジュール
初回に投与した後は、4週間後に投与します。それ以降は8週間の間隔で投与を続けていきます。なお自己注射は認められておらず、医療機関で投与してもらう必要があります。
乾癬で使用する場合
通常、投与開始から16週以内に効果が得られますが、16週投与しても効果がない場合は、治療を続けるかどうか再検討します。
掌蹠膿疱症で使用する場合
通常、投与開始から24週以内に効果が得られますが、24週投与しても効果が得られない場合、治療を続けるかどうか再検討します。
トレムフィア使用中の注意点
トレムフィアは免疫の働きを弱める作用があるため、トレムフィアの使用中は感染症にかかりやすくなります。
日常生活では感染防御のために以下の点に注意していただきます。
- 手洗いうがいをしっかりする
- 手指消毒をする
- マスクをする
- 人混みを避ける
また、トレムフィア投与中に生ワクチン(BCG、麻疹、風疹など)の接種をすると感染症を起こす危険性があるため生ワクチンの接種はできません。
治療費について
トレムフィアは高額なお薬であるため、高額療養費制度や医療費控除の対象となります。
高額療養費制度
高額医療費制度は医療費の負担額が一定額を超えた場合にその超えた金額を医療保険から支給される制度です。自己負担額は年齢や所得によって異なってきます。
医療費控除
生計を一にする家族の医療費が1月~12月の1年間で10万円を超える場合、確定申告を行うことで所得税の控除を受けることができます。
よくあるご質問
- トレムフィアの値段を教えてください。
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トレムフィアの薬価は、100mgシリンジ1mL(1回の投与分)で325040円です。
高額療養費制度などを利用しない場合、自己負担割合が3割の方では97512円の薬剤費をご負担いただくことになります。
なお、診察費などは別途必要となりますので、ご了承ください。
- トレムフィアの自己負担を抑える方法について、もう少し詳しく教えてください。
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医療費の負担を軽減する制度としては、「高額療養費制度」や「医療費控除」などがあります。
高額療養費制度の利用方法などは、加入している医療保険(保険者)にお問い合わせください。医療保険の問い合わせ先は、医療保険証などに記載されています。
「医療費控除」は、税の負担を軽減する制度です。
医療費控除は、確定申告の際に税務署へ書類を提出する必要があります。控除の対象となるのは、その年に支払った診療費・薬剤費・通院時の交通費・入院費・入院時の食事代などです。申請は、過去5年以内であればさかのぼって申請できます。
- トレムフィアはどれくらい効果があるのですか?関節症状にも効きますか?
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中等症から重症の尋常性乾癬の方を対象とした臨床試験では、52週間の治療で9割以上の方がほぼ症状がない状態へと改善しました。
関節症性乾癬の方を対象とした臨床試験では、52週間の治療で米国リウマチ学会が定義する関節症状の評価基準が20%以上改善した方がプラセボ群では0%であったのに対してトレムフィア投与群では20%でした。
一方、活動性関節症性乾癬の方を対象とした臨床試験では、24週間の治療で米国リウマチ学会が定義する関節症状の評価基準が20%以上改善した方がプラセボ群では18.4%であったのに対してトレムフィア投与群では58.0%でした。
膿疱性乾癬および乾癬性紅皮症の方を対象とした臨床試験では、16週間の治療で奏効とされた方の割合(奏効率)が膿疱性乾癬の方で77.8%、乾癬性紅皮症の方で90.9%でした。また、投与から52週後の奏効率は膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症ともに100%でした。
掌蹠膿疱症の方を対象とした臨床試験では、16週の治療で57.4%、52週の治療で83.3%の方に症状の改善が見られました。
- 掌蹠膿疱症に使える生物学的製剤はほかに何がありますか?
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掌蹠膿疱症に適応がある生物学的製剤は、トレムフィアのほかにスキリージ(一般名:リサンキズマブ)、ルミセフ(一般名:ブロダルマブ)があります。
ただ、いずれも薬価が高く、トレムフィアと同様に感染症に注意が必要です。
なお、投与間隔については各薬剤で異なります。
- IL23阻害薬やIL17阻害薬は、ほかに何がありますか?
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IL23p19阻害薬としては、トレムフィア、スキリージ、イルミア(一般名:チルドラキズマブ)があります。
IL23p40とIL12を阻害する薬剤としては、ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ)があります。
IL17A阻害薬としては、コセンティクス(一般名:セクキヌマブ)とトルツ(一般名:イキセキズマブ)があります。
IL17受容体A阻害薬としては、ルミセフがあります。
いずれも皮下注射ですが、自己注射できるのはコセンティクス、トルツ、ルミセフのみです。
また、いずれも尋常性乾癬には適応がありますが、その他の疾患については適応がない場合もあります。
投与間隔も各薬剤で異なりますので、ご承知ください。