単純ヘルペス治療薬「ファムビル(ファムシクロビル)」PIT

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ファムビルとは?

ファムビル

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)は、単純疱疹(口唇ヘルペスや性器ヘルペスなど)や帯状疱疹の治療に用いられる薬剤です。
ファムビルの有効成分であるファムシクロビルは、体内に吸収されたあと肝臓で抗ウイルス活性を示すペンシクロビルに代謝されます。ペンシクロビルは、単純ヘルペスウイルスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスに対して増殖抑制作用を有することが認められています。
なお、「ファムビル(Famvir)」という名称は、「ファムシクロビル(Famciclovir)」に由来するとのことです。

ファムビルの特徴

ファムビルは、体内でペンシクロビルに変換されてから抗ウイルス作用を発揮するプロドラッグです。
ファムビルはペンシクロビルに比べて吸収性が良く、効率的・持続的に作用するのが特徴です。抗ウイルス薬のなかには1日の服用回数が5回というもありますが、ファムビルの服用回数は1日3回のみです。再発性の単純疱疹については、2回で終了する投与方法(PIT)が認められています。

ファムビルの効能効果・用法用量

ファムビルは、単純疱疹と帯状疱疹に適応があります。
単純疱疹の場合は、成人に1日3回、1回250mgを投与します。投与期間は原則として5日間です。
再発性の単純疱疹の場合は、成人に1回1000mgを2回投与します。2回目の服用は、1回目の服用から12時間後です。
帯状疱疹の場合は、成人に1日3回、1回500mgを投与します。投与期間は原則として7日間です。

ファムビルの「PIT(Patient Initiated Therapy)」について

再発性の単純疱疹に対する抗ヘルペスウイルス薬治療は、発病初期に近いほど高い効果が期待できるとされていますが、初期症状の時点で医療機関を受診できる方はごくわずかです。このような治療上の不都合を回避する治療として注目されているのが「PIT」です。
「PIT(Patient Initiated Therapy)」とは、「あらかじめ処方された薬を、初期症状に基づき、患者さま自身の判断で服用開始する治療方法」のことで、欧米では標準となっています。

PITの手順

PITの具体的な手順は以下のとおりです。

診断を受けます
  • 必要な検査・診断を受けます。
  • 再発性の単純疱疹を有し、その他条件に適すると判断された成人の方は、ファムビル短期投与の適用となります。
    ※その他条件:「再発頻度が年間概ね3回以上であること」「再発の初期症状を正確に判断可能であること」「腎機能状態などに特に問題がないこと」など。
ファムビルを処方します
  • 対象とされた患者さまに対し、ファムビル錠250㎎を原則として8錠処方いたします。
    ※錠剤を処方しますが、これをすぐに服用するわけではありません。単純疱疹の症状が出るまでは、直射日光を避け、初期症状に備え常に携帯してください。
再発性の単純疱疹を発症したときは
  • 患部の違和感、灼熱感、痛み、かゆみなど初期症状が発現したら、すぐ(6時間以内)にファムビル錠250㎎を4錠、まとめて服用します。
    ※服用が遅れたときは、かかりつけ薬剤師までご相談ください。
2回目の服用
  • 1回目の服用から12時間後に、もう一度、ファムビル錠250㎎を4錠、まとめて服用します。
  • これにより、口腔内や口唇、性器などにできた疱疹を改善する効果が期待できます。
薬がなくなったら
  • 服用後は、次回の再発に備え早めに受診してください。

なお、ファムビルの服用中・服用後に気になる症状があらわれたときは放置せず、すぐに医師・薬剤師に相談してください。

ファムビルのPITによる短期投与の特徴

ファムビルのPITには、以下のようなメリットがあります。

  • ヘルペスの症状が出ていないときでも受診できます。
  • あらかじめ薬を処方してもらえます。
  • 初期症状(患部の違和感や灼熱感、かゆみなど)が出たら、すぐに服用できます。
  • 症状が軽快するまでの日数短縮が期待できます。
  • QOL(生活の質)の向上につながります。

など

ファムビルの臨床上の効果

単純疱疹を対象とした国内の臨床試験では、他の抗ウイルス薬に対してファムビルの効果が劣らないことが証明されました。
また、再発性の単純疱疹において、ファムビル群(1回1000mg×2回投与したグループ)はプラセボ群に対して優越性が認められました。
帯状疱疹については、国内の臨床試験において他の抗ウイルス薬と比較してファムビルの効果が劣らないことが示されています。

ファムビルを服用する上での注意点

ファムビルを服用してはいけない例

ファムビルの成分に対して過敏症の既往歴がある場合は、ファムビルを使用できません。誤って服用すると、重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
また、ファムビルは、免疫機能の低下(造血幹細胞移植、臓器移植、HIV感染など)をともなう方に使用した場合の有効性および安全性が確立されていません。これらの患者さまに対する投与は禁忌とされているわけではありませんが、極度な免疫機能低下が認められる方については「投与しないこと」とされています。

ファムビルの副作用

おもな副作用として、頭痛、傾眠、めまい、下痢、悪心、嘔吐、口渇、口唇乾燥、便秘、発疹、動悸、体のだるさや発熱などが報告されています。
また、重大な副作用として、重篤な皮膚障害、急性腎障害、横紋筋融解症、ショックやアナフィラキシー、間質性肺炎、肝炎、急性膵炎などが報告されています。
重大な副作用の発生頻度は明らかになっていませんが、下記のような症状があらわれた場合はすみやかに受診してください。

重大な副作用 初期症状
精神神経症状
(錯乱、幻覚、意識消失、
痙攣、せん妄、脳症、
意識障害(昏睡)など)
通常の考えや判断ができなくなる、
考えがうまくまとまらない、
幻覚や幻聴がある、
意識がなくなる、手足が震える
重篤な皮膚障害
(中毒性表皮壊死融解症、
皮膚粘膜眼症候群
(Stevens-Johnson症候群)、
多形紅斑など)
高熱、唇や口内のただれ、
まぶたや目の充血、全身の皮膚の赤み
急性腎障害 尿量の減少、全身のむくみ、体のだるさ
横紋筋融解症 手足のこわばりやしびれ、
筋肉の痛み、脱力感、
赤褐色の尿
ショック、アナフィラキシー 冷や汗が出る、蕁麻疹、
喉のかゆみ、血圧の低下、
ふらつき、呼吸困難
汎血球減少、無顆粒球症、
血小板減少、血小板減少性紫斑病
めまい、鼻血、耳鳴り、
歯ぐきの出血、息切れ、
動悸、皮下出血ができる、
出血しやすい、血が止まりにくい、
発熱、寒気、
喉の痛み、突然の高熱
呼吸抑制 呼吸回数が少ない、呼吸が浅い
間質性肺炎 空咳、息切れ、
息苦しい、発熱
肝炎、肝機能障害、黄疸 体がだるい・疲れやすい、
吐き気や嘔吐、食欲不振、
発熱、上腹部の痛み、
体のかゆみ、白目や皮膚の黄変
急性膵炎 激しい上腹部の痛み、
腰や背中の痛み、吐き気や嘔吐、腹部の張り

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

ファムビルとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
しかし、プロベネシド(痛風治療薬の一種)との併用には注意が必要です。両者を併用すると、プロベネシドによってファムビルの活性代謝物であるペンシクロビルの排泄が抑制され、作用が増強されるおそれがあります。

特定の患者さまへの使用に関して

腎機能障害がある方への使用に関して

ファムビルはおもに腎臓から排泄されるため、腎機能障害のある方や腎機能が低下している方に投与すると高い血中濃度が持続するおそれがあります。
そのため、投与する際には間隔をあけて減量するなどして慎重に治療を進めていきます。

妊娠中の方への使用に関して

ファムビルは、国内の臨床試験において妊娠している方に対する使用経験がなく、妊娠中の投与に関する安全性が確立していません。
また、動物を対象とした試験において胎児毒性および催奇形性は認められていませんが、類薬では母動物への大量投与で胎仔に頭部および尾の異常が認められたと報告されています。
したがって、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。

授乳中の方への使用に関して

動物を対象とした試験において、ファムビルは乳汁中へ移行することが報告されています。
そのため、授乳中の方にファムビルを使用する場合は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用に関して

ファムビルは、小児などを対象とした臨床試験を実施しておらず、安全性が確立していません。
ご家庭ではお子さまが誤服用しないようご注意ください。

ご高齢の方への使用に関して

高齢の方では腎機能が低下していることが多いため、ファムビルを投与すると高い血中濃度が持続するおそれがあります。
そのため、投与にあたっては体調の変化などを観察しながら慎重に治療を進めていきます。

ファムビルの患者負担・薬価について

ファムビル錠の規格は250mgの1種類だけで、薬価は290.4円/錠です。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。3割負担の患者さまの負担額は、以下のようになります(薬剤費のみの計算です)。

単純疱疹
1回250mg、1日3回×5日間
1306.8円
再発性単純疱疹(PIT)
1回1000mg×2回
696.96円
帯状疱疹
1回500mg、1日3回×7日間
3659.04円

ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費を抑えられます。

よくあるご質問

ファムビルとバルトレックス(バラシクロビル)の違いは何ですか?

ファムビルとバルトレックスはいずれも単純疱疹や帯状疱疹の治療に用いられますが、有効成分が違います。
また、適応も異なり、バルトレックスは水痘(水ぼうそう)や性器ヘルペスの再発抑制にも適応があります。一方で、バルトレックスはPITに用いられません。
さらに、バルトレックスは小児にも使用できるという点でファムビルと異なります。
その他、注意すべき併用薬や副作用なども異なります。
症状によっては、薬の飲み方や服用期間も異なりますので、残薬があっても自己判断で服用するのは避けてください。

ファムビルが効かないことってありますか?

ファムビルなどの抗ウイルス薬は、症状発症から治療開始までの期間が短いほど高い効果が期待できます。逆に、治療が遅れるとウイルスの増殖が十分に抑えられないため、治癒までに時間がかかってしまいます。
そのため、症状があらわれたらすぐに受診し、薬の服用をスタートすることがとても大切です。
ヘルペスの再発頻度が年に3回以上の場合はPITの対象になる可能性がありますので、診察時にご相談ください。

PITでファムビルを処方されています。でも、ファムビルを1度に4錠も飲むのは大変なので、分けて飲んでもいいですか?

1度に服用するファムビルの量を減らしてしまうと抗ウイルス作用が十分に発揮されないため、ヘルペスの発症や症状の重症化を抑えることが難しくなります。
少し大変ですが、初期症状に気付いたら必ず4錠服用し、1回目の服用から12時間あけて2回目も服用してください。

ファムビルは抗生物質ですか?

ファムビルは抗生物質ではありません。そのため、細菌感染症には効果が期待できません。
なお、ファムビルの活性代謝物であるペンシクロビルは、単純ヘルペスウイルス1型および2型、水痘・帯状疱疹ウイルスに対して抗ウイルス作用を示します。効果が期待できるウイルスの種類は限定されていますので、自己判断での使用は避けてください。

ヘルペスの飲み薬は市販されていますか?

ヘルペスに適応がある市販の飲み薬はありません。塗り薬は市販されていますが、適応が「口唇ヘルペスの再発」に限定されているものがほとんどです。
塗り薬では十分な効果が期待できない場合も多いですので、ヘルペスと思われる症状があらわれたら、すみやかに受診してください。

ヘルペスの状態が良くなったので、途中で飲むのをやめてもいいですか?それとも5日間飲み切らないとだめですか?

ヘルペスの症状が落ち着いても、体内にはウイルスが残っている可能性があります。再発や重症化を防ぐためにも、処方された日数分を飲み切るようにしてください。

ファムビルに眠気の副作用はありますか?

ファムビルの副作用として「傾眠」が報告されています。「傾眠」とは、軽い刺激で意識が戻るものの、しばらくするとまた眠くなってしまうような状態です。
そのため、ファムビルの服用にともない傾眠傾向がみられる場合は、自動車の運転など危険をともなう作業はできるだけ避けてください。

ファムビルと痛み止め(ロキソニン、カロナールなど)は、一緒に飲んでもいいですか?

添付文書上、ファムビルと痛み止めの併用は禁忌とされていません。
しかし、痛み止めのなかには腎機能に悪影響をおよぼすものもあります。痛み止めの影響で腎機能が悪化するとファムビルの血中濃度が高くなるおそれがあるため、できれば服用前にご相談ください。

 

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