キンダベートとは?
キンダベート(一般名:クロベタゾン酪酸エステル)は抗炎症作用・抗アレルギー作用を有するステロイド外用剤で、おもに皮膚の赤みや腫れ、かゆみなどの症状を改善するために使用されます。
「キンダベート」という名称は「kinder(ドイツ語で「子ども」という意味)」に由来する造語で、「より安全に子どもにも使えるステロイド外用薬」ということからKindavate(キンダベート)と名付けられました。
キンダベートの特徴
ステロイド外用薬は強さにより5段階に分類されますが、キンダベートの強さは下から2番目のミディアムクラスです。同じ強さのステロイド外用薬としては、リドメックス(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)、アルメタ(アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)、ロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)、レダコート(トリアムシノロンアセトニド)などがあります。
比較的作用が弱いステロイド外用薬なので、顔や陰部などの皮膚の薄い部分の治療にも使われるほか、赤ちゃんなど幼いお子さまに処方されることもあります。
キンダベートの使い方
キンダベートは、アトピー性皮膚炎や乳幼児湿疹、顔面・頸部・腋窩・陰部における湿疹や皮膚炎の症状改善に使用されます。
もっとも、皮膚感染をともなう湿疹や皮膚炎には原則として使用しません。やむを得ず使用する場合は、あらかじめ適切な抗菌剤や抗真菌剤による治療を行うか、これらとの併用を考慮します。
使用回数は通常1日1~数回で、症状により使用量を適宜増減します。
キンダベートを外用する上の注意点
キンダベートを塗ってはいけない例
以下の場合はキンダベートの使用を避けなければなりません。該当する事項がある場合、あるいはキンダベート使用中に下記の疾患にかかったり症状があらわれたりした場合は必ずご相談ください。
- キンダベートの成分に対してアレルギー歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎がある場合(穿孔部位の治癒が遅れるおそれがあります。また、感染のおそれがあります。)
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷がある場合(皮膚の再生が抑制され、治癒が著しく遅れるおそれがあります。)
目のまわりやまぶた、長期にわたる広範囲への使用について
キンダベートは顔にも使用できますが、目のまわりやまぶたへの使用には注意が必要です。特にまぶたに塗布すると、眼圧亢進や緑内障を起こすことがあります。また、大量あるいは長期にわたって広範囲に使用したり、キンダベートを塗ったあとに患部を密封したりすると、緑内障や後囊白内障などがあらわれることがあります。
キンダベート使用中に、頭痛や目のかすみ、目の痛みなどが生じる場合は副作用の初期症状の可能性があるため、すみやかに診察を受けてください。
長期連用にともなうニキビなどの副作用について
キンダベートを長期連用すると、ニキビのほか、ステロイド皮膚(皮膚の萎縮、毛細血管の拡張、紫斑など)、魚鱗癬様皮膚変化、多毛、色素脱失などの副作用が生じることがあります。このような症状があらわれた場合には、徐々にキンダベートの使用を減らし、ステロイドを含有しない薬剤に切り替えていきます。
気になる症状がある場合は、自己判断で治療を中断せずご相談ください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
病気の治療で内服薬を使用している場合でも、キンダベートの使用に問題はありません。ただし、他のステロイド外用薬を使用している場合は、過剰投与になるおそれがあります。使い分けが必要な場合もあるため、併用薬がある場合は必ずお伝えください。
特定の患者さまの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
キンダベートは、ステロイド外用薬の中では比較的作用の弱いミディアムクラスに分類されますが、副作用のリスクがゼロというわけではありません。特に、大量・長期・広範囲の使用は副作用の発生リスクが高くなります。そのため、指示された範囲外に塗布したり、漫然と長期間使用したりするのは避けてください。
また、キンダベートをオムツ内の皮膚症状に使用する場合は、薬の作用が増強されるおそれがあります。そのため、塗り過ぎないようにすること・オムツをこまめに替えること・通気性の良いオムツを使用することなどを心がけてください。
キンダベートの患者負担・薬価について
キンダベートには5g/本と10g/本の2規格があります。薬価は16.5円/gなので、5gは1本82.5円、10gは1本165円になります。
もっとも、患者様にご負担いただく金額は保険割合に応じて変わります。例えば、三割負担の患者様がキンダベート軟膏を10g処方された場合、ご負担額は49.5円になります(薬剤費のみの計算です)。
なお、キンダベートにはジェネリック品があります。ジェネリック品の薬価は、軟膏・クリーム・ローションいずれの剤型でも8.5円/gなので、薬剤費の抑制に役立ちます。
よくあるご質問
- キンダベート軟膏のべたつきが苦手です。クリームやローションはありませんか?
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先発品のキンダベートには軟膏しかありませんが、ジェネリック品にはクリームやローションもあります。クリームやローションは軟膏に比べてべたつきが少なく、塗り心地がさらっとしているため、お子さまのあせもなどにも使いやすいです。ご希望がある場合は、診察時にご相談ください。
- 子どもにステロイド外用薬を使うのが不安です。キンダベートより弱い薬はありませんか。
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キンダベートは、5段階に分類されるステロイド外用薬の中で2番目に弱いクラスの薬です。1番弱い強さ(ウィーククラス)のステロイド外用薬としては「プレドニゾロン」がありますが、赤ちゃんなど幼いお子さまにキンダベートを外用して問題が生じたことはほとんどありません。お子さまにステロイド外用薬をできるだけ使用したくないというお気持ちはわかりますが、症状によってはステロイドを用いて炎症を素早くしずめることが必要な場合もあります。一方で、使用を躊躇して症状が悪化すると、より強いランクのステロイド外用薬が必要になる場合もあります。症状が落ち着けばステロイドの入っていない外用薬に変更することも可能ですので、不安がある場合はご相談ください。
- キンダベートと同じ成分の市販薬はありますか?
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キンダベートと同成分の市販薬はありません。もっとも、キンダベートと同じ強さ(ミディアムクラス)のリドメックスやロコイドと同成分の市販薬はドラッグストアなどで購入できます。
ただし、市販薬と処方薬では薬の濃度が違うことがあります。また他の成分が含まれている場合もあります。
市販薬を使用しても症状が良くならない場合・かえって悪化する場合は、薬の使用を中止して早めに受診してください。
- キンダベートの効きを強くしたいときは、たくさん塗ればいいですか?
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キンダベートに限らず、外用薬の強さは塗る量に比例するわけではありません。特にステロイド外用薬は、効果がそれほど強くないものでも使用量が多すぎると副作用の発生リスクが高くなります。自己判断で塗る量を増やすのは避けてください。
なお、軟膏やクリームは大人の手の人差し指の先から第一関節まで絞り出した量(約0.5g)で手のひら2枚分、ローションは1円玉大の量(約0.5g)で手のひら2枚分の範囲に塗り広げられます。これを目安に塗る量を決めてください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。