ラミシールとは?
ラミシール(一般名:テルビナフィン)は、アリルアミン系の経口抗真菌薬です。
有効成分であるテルビナフィンは、腸から吸収されたあとに爪や皮膚角質へ移行します。そして、真菌細胞内の酵素を選択的に阻害し、細胞膜の構造を破壊したり発育を部分的に阻害したりすることで抗真菌作用を発揮します。
ラミシールの特徴
ラミシールは、強い抗真菌活性を持ち、さまざまな真菌に幅広く作用するのが特徴です。皮膚真菌症の原因となる白癬菌やカンジダの発育を抑えるため、外用薬では治癒が難しい深在性皮膚真菌症や爪白癬、頭部白癬、角質増殖型の白癬などに効果が期待できます。
ちなみに、治療効果があらわれるまでの期間は、爪真菌症で24週間、角質増殖型手・足白癬では8週間とされています。
なお、臨床試験における改善率は以下のようになっています。
手・足白癬:79.4%
体部・股部白癬:91.9%
皮膚カンジダ症:75.0%
爪白癬:88.1%
爪カンジダ症:71.0%
頭部白癬:100%
深在性白癬:100%
白癬性肉芽腫:100%
カンジダ性肉芽腫:50.0%
スポロトリコーシス:66.7%
クロモミコーシス:66.7%
ラミシールの効能効果・用法用量
ラミシールは、皮膚糸状菌、カンジダ属、スポロトリックス属、ホンセカエア属による深在性皮膚真菌症(白癬性肉芽腫、スポロトリコーシス、クロモミコーシス)、表在性皮膚真菌症(白癬:爪白癬、手・足白癬、生毛部白癬、頭部白癬、ケルスス禿瘡、白癬性毛瘡、生毛部急性深在性白癬、硬毛部急性深在性白癬)およびカンジダ症(爪カンジダ症)に適応があります。
ただし、使用できるのは外用抗真菌薬での治療が困難な場合に限られます。
通常、成人には1日1回125mgを食後に投与しますが、年齢、症状により適宜増減します。なお、爪白癬に用いる場合、服用期間は24週間(6ヵ月)です。
ラミシールを服用する上での注意点
ラミシールを服用できない方・服用に注意が必要な方
以下に該当する場合は、ラミシールの服用が禁忌とされています。
- 重篤な肝障害がある場合(肝障害が増悪するおそれがあります。)
- 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少などの血液障害がある場合(汎血球減少、無顆粒球症および血小板減少があらわれることがあり、症状が増悪するおそれがあります。)
- ラミシールの成分に過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
その他、腎機能障害がある場合、重篤ではないものの肝機能障害がある場合なども、ラミシールの服用には注意が必要です(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
ラミシールの副作用
ラミシールのおもな副作用として、発疹や蕁麻疹、かゆみ、貧血、胃部不快感、腹痛、悪心、下痢、めまい、ふらつき、頭痛、眠気、味覚異常、倦怠感などが報告されています。
また、重大な副作用として、肝炎をはじめとした重篤な肝障害、血液障害、中毒性表皮壊死融解症、ショックやアナフィラキシーなどが報告されています。ラミシールの服用にともない、下記のような症状があらわれた場合は重大な副作用の初期症状である可能性が否定できないため、すみやかに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ラミシールとの併用が禁忌となっている薬剤はありません。しかし、ラミシールは一部の肝代謝酵素を阻害することから、併用に注意が必要な薬剤はいくつかあります。下記のような薬剤を服用している場合は、診察時にご相談ください。
- シメチジン(胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療薬)、フルコナゾール(抗真菌薬):ラミシールの代謝が遅延して、血中濃度が上昇するおそれがあります。
- リファンピシン(結核などの治療薬):ラミシールの代謝が促進され、血中濃度が低下するおそれがあります。
- 三環系抗うつ薬(イミプラミン、ノルトリプチリン、アミトリプチリン)、マプロチリン(うつ病などの治療薬)、デキストロメトルファン(咳止めの一種):これらの併用薬の血中濃度が上昇するおそれがあります。
- 経口避妊薬など:月経異常があらわれたとの報告があります。
- シクロスポリン(免疫抑制薬):シクロスポリンの血中濃度が低下したという報告があります。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用
ラミシールはおもに肝臓から排泄されますが、腎機能が低下している方に投与すると排泄が遅延して高い血中濃度が持続するおそれがあります。
そのため、腎機能障害がある方へラミシールを投与する際は、腎機能の程度や副作用の発現状況に細心の注意を払い、慎重に治療を進めていきます。
肝機能障害がある方への使用
重篤な肝障害がある方にラミシールを投与すると肝障害が増悪するおそれがあるため、投与は禁忌とされています。
また、慢性もしくは活動性などの肝疾患がある場合は、頻回に検査を行うなどして肝機能の変化を十分に観察し、肝障害が増悪しないよう努めます。
妊娠中の方への使用
ラミシールは、器官形成期の動物を対象とした大量投与試験で、母獣の摂餌量の減少、体重増加の抑制が観察されています。
そのため、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。
授乳中の方への使用
ラミシールは、動物を対象とした試験で乳汁中へ移行することが報告されています。
したがって、ラミシール服用中は授乳しないことが望ましいとされています。
お子さまへの使用
ラミシールは、小児などを対象とした臨床試験を実施していません。
ご家庭ではお子さまの誤服用を防ぐため、保管場所などにご注意ください。
ご高齢の方への使用
高齢の方では、一般的に肝機能・腎機能をはじめとした生理機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続する可能性が否定できません。
そのため、高齢の方へラミシールを使用する場合は副作用の発現に留意し、状態を観察しながら慎重に投与を行います。
ラミシールの患者さま負担・薬価について
ラミシール錠125mgの薬価は95.20円/錠です。
ただし、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがラミシール錠125mgを1日1回30日分処方された場合、ご負担金額は856.8円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- ラミシール錠は市販されていますか?市販のラミシールクリームなどは、爪水虫に効きますか?
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ラミシール錠は市販されていません。また、市販の「ラミシール」シリーズでは爪白癬の治療はできません。
そもそも、爪白癬に適応がある市販薬は存在しません。治療をご希望の場合は、皮膚科を受診してください。
- 医療用のラミシールクリームやラミシール外用液、ラミシール外用スプレーは、爪水虫に使えますか?
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医療用のラミシールクリーム・ラミシール外用液・ラミシール外用スプレーは、爪白癬に適応がありません。
適応となっているのは、足白癬、体部白癬、股部白癬、皮膚カンジダ症、癜風のみです。
爪白癬に使用しても十分な効果は期待できませんので、自己判断での使用は避けてください。
- ラミシール錠を飲み切っても爪がきれいになりません。効いていないのでしょうか?
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ラミシールは爪白癬に高い効果が期待できる薬剤ですが、爪が完全にきれいになるまでの期間には個人差があります。特に感染範囲が広く爪全体におよぶ場合などは、爪が完全に生え変わってきれいになるまでに1年以上かかることもあります。
ただ、薬を飲み切ったあとも効果は数ヵ月間持続しますので、あせらずに爪の状態を見守ってください。
- ラミシール錠はカンジダにも効果がありますか?
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ラミシール錠はカンジダ属による感染症にも効果が期待できますが、適応があるのは爪カンジダ症のみです。
皮膚などのカンジダ症は適応範囲外となるため、ご希望があっても処方できませんのでご承知ください。
- ラミシール錠が食後服用になっている理由を教えてください。
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ラミシールは脂溶性の薬剤なので、空腹時に服用すると吸収率が悪くなります。
実際、ラミシールの吸収率を空腹時と食後で比較すると、代謝される前の未変化体の最高血中濃度が約1.5倍も違うことが明らかになっています。
このようなことから、ラミシール錠の服用は「食後」とされています。
- ラミシール錠の服用期間はどうして6ヵ月なんですか?
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国内の臨床試験において、爪白癬については1日1回×24週間(約6ヵ月)の連続投与で有効性・安全性が確認されているためです。
なお、生毛部白癬(広範囲)の場合は2週間、手・足白癬(角質増殖型)の場合は8週間で有効性・安全性が確認されています。
- ラミシール錠で副作用が出る確率はどれくらいですか?
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副作用は、承認時までの調査767例中81例(10.56%)に認められ、そのおもなものは胃部不快感29件(3.78%)などの消化器症状でした。
また、市販後の使用成績調査では、6929例中825例(11.91%)に副作用が認められ、そのおもなものは胃部不快感114件(1.65%)、肝障害・肝機能異常などの肝胆道系障害106件(1.53%)などでした。
なお、重大な副作用である重篤な肝障害(肝不全、肝炎、胆汁うっ滞、黄疸など)の発現率は0.01%(1万人に1人程度)とされています。