抗真菌薬(外用薬)

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抗真菌薬(外用薬)の分類

抗真菌作用を持つ外用薬は「イミダゾール系」と「非イミダゾール系」に分けると理解しやすいです。

まずイミダゾール系は最も種類が豊富な抗真菌薬で、作られた年代によって特徴が異なります。1990年代以前に発売されたものは白癬にはあまり効かず、カンジダに対して有効な薬が多いですが、1990年代以降に発売されたものは白癬とカンジダの両方に効く薬へと進歩しました。そのため、現在主に用いられているイミダゾール系外用薬は幅広い表在性真菌症に対応することができます。

しかしイミダゾール系の薬には、一度かぶれてしまうと他のイミダゾール系の薬にもかぶれやすくなってしまう、いわゆる交差反応という問題があります。イミダゾール系の成分は市販の抗真菌薬にもよく配合されているため、市販薬でかぶれたことがある場合には、初めて使うイミダゾール系処方薬にもかぶれてしまう場合があるのです。つまり1990年代以降に発売されたイミダゾール系は「白癬とカンジダの両方に有効だが、かぶれに注意しながら使用すべき薬」という位置付けになっています。

また、1990年代以前のイミダゾール系薬は皮膚への浸透性・貯留性が低く、1日に2-3回外用する必要がありました。しかしマイコスポール以降はその欠点を克服し、全ての抗真菌薬が1日1回の外用で治療効果を発揮できるようになっています。

このようにイミダゾール系抗真菌薬は1990年代以前と1990年代以降でその性格が異なるため、この2つを分けて特徴を解説していきます。
参考)各種外用抗真菌薬の in vitro 抗真菌活性の測定:日皮会誌117(2): 149-152, 2007

1990年代以前のイミダゾール系

エンペシド
(クロトリマゾール)
1976年に発売が開始された、日本で最も古いイミダゾール系外用抗真菌薬です。白癬にもカンジダにもまずまずの効果がありますが、皮膚への浸透力と貯留性が低いため1日2,3回外用しなければならないというデメリットもあります。外用薬の剤型はクリームと外用液があります。
アデスタン
(イソコナゾール)
1982年発売。添付文書記載の実験データを見ると白癬にもカンジダにもそこまで高い効果はありませんが、臨床試験では比較的高い有効性が示されています。1日2,3回の外用が必要で、外用薬の剤型はクリームのみです。
エクセルダーム
(スルコナゾール)
1986年発売。1日2,3回の外用が必要で、剤型にはクリームと外用液があります。
オキナゾール
(オキシコナゾール)
1986年発売。1日2,3回外用。剤型はクリームと外用液があります。外用液の基材にはアルコールが使用されており、刺激感がやや強めです。
マイコスポール
(ビホナゾール)
1986年発売。外用抗真菌薬で初めて1日1回で治療できるようになった薬です。ただし、マイコスポール自体の殺菌作用は高いとはいえず、白癬にもカンジダにも強く効く薬ではありません。剤型はクリームと外用液の2種類です。

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ニゾラール
(ケトコナゾール)
本邦での発売は1993年ですが、海外では1982年から発売されていました。そのため効果としては1990年代以前のものと同様です。ただし、イミダゾール系の中でもカンジダに対する効果が特に高いとされています。マイコスポール同様に用法は1日1回で、剤型はクリームとローションの2種類です。

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1990年代以降のイミダゾール系

アトラント
(ネチコナゾール)
1990年代に入り、イミダゾール系の抗真菌薬はカンジダだけでなく白癬に対しても高い効果をもつように開発が続きました。アトラントは1993年に発売され、カンジダに対する効果と同じくらいの強さで白癬にも有効になった薬です。軟膏・クリーム・外用液の3剤型があります。
アスタット
(ラノコナゾール)
アトラントの翌年の1994年に発売されていますが、カンジダへの効果よりもさらに強く白癬への効果を有するようになりました。軟膏・クリーム・外用液の3剤型です。
ルリコン
(ルリコナゾール)
2005年に発売された、イミダゾール系で最新の皮膚真菌症治療薬です。アスタット同様、カンジダにも有効、白癬にはさらに有効な薬です。軟膏・クリーム・外用液があります。

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ルコナック
(ルリコナゾール)
これまでの薬は全て皮膚表在の真菌に対する薬でしたが、ルコナックは爪白癬治療専用の爪外用液として2016年に発売されました。爪外用液は爪への浸透力が高く、1日1回の外用で爪白癬を治せる薬として期待されています。

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非イミダゾール系

前述のように、初期のイミダゾール系薬は白癬に対する効果が乏しかったため、1990年代以降は白癬への効果が高い薬の開発が進みました。その中でイミダゾール系以外の薬も開発されており、これを総称して非イミダゾール系の薬といいます。非イミダゾール系薬は白癬への高い殺菌力を持ちますが、カンジダにはあまり効かないことが特徴です。イミダゾール系の薬には交差反応の問題もありますが、非イミダゾール系の薬は交差反応を心配する必要はありません。非イミダゾール系の薬は全て1990年代以降に作られており、用法は全て1日1回です。

ベンジルアミン系 メンタックス
(ブテナフィン)
本邦で初の非イミダゾール系抗真菌薬として1992年に発売開始された外用薬です。カンジダよりも白癬に有効です。剤型にはクリーム・外用液・スプレーがあり、少し独特な匂いがあります。
ボレー
(ブテナフィン)
メンタックスと同じく1992年発売。剤型はメンタックスと同じくクリーム・外用液・スプレーの3つです。エタノールのような匂いがあります。
アリルアミン系

ラミシール
(テルビナフィン)

1993年発売。内服薬もあるため有名な薬です。白癬に対する非常に高い効果が特徴です。剤型はクリーム・外用液・スプレーの3種類です。
モルホリン系

ペキロン
(アモロルフィン)

1994年発売。白癬によく効きます。非イミダゾール系の中ではカンジダへの効果もある方ですが、強くはありません。剤型はクリームのみです。
チオカルバメート系

ハイアラージン
(トルナフタート)

1965年発売。イミダゾール系の発売以前からあった唯一の非イミダゾール系薬です。カンジダへの保険適用はありません。剤型は軟膏のみです。
ゼフナート
(リラナフタート)
2007年発売。皮膚への貯留性が高いと言われ、白癬に非常によく効きます。剤型はクリームと外用液です。他の抗真菌薬に過敏症がある場合は使えません。
トリアゾール系

クレナフィン
(エフィナコナゾール)

2014年発売。非イミダゾール系の中で唯一の爪外用液で、爪白癬にのみ保険適用があります。爪に外用するためのハケがボトルと一体化しており、外用しやすさに考慮されています。

抗真菌薬(外用薬)の治療費

爪白癬の抗真菌薬(外用薬)による各薬剤費をお示しします。
※3割負担の方の薬剤費自己負担分の金額です。

クレナフィン(エフィナコナゾール)

薬価1本4ml 5,668円(2~8週間分)3割負担の場合1700円
爪1枚に1年間治療した場合20,407円です。
※3割負担、薬剤費のみ※治療する爪の枚数により、使用する薬剤料が異なります。

» クレナフィンの詳細はこちら

ルコナック(ルリコナゾール)

薬価1本4ml 3,263円(2~8週間分)3割負担の場合979円
爪1枚に1年間治療した場合11,747円です。
※3割負担、薬剤費のみ
※治療する爪の枚数により、使用する薬剤料が異なります。

» ルコナックの詳細はこちら

 

よくあるご質問

外用抗真菌薬で一番強い(効きがいい)のはどれですか?

抗真菌薬には、殺真菌力の強いものや適応菌種の幅が広いものなどさまざまなタイプがあります。また、白癬によく効くもの、カンジダによく効くものなど成分によって「得手・不得手」があるのも事実です。さらに言うならば、皮膚への浸透性・貯留性も薬剤ごとに異なります。
そのため、薬剤の強さ(効果)を単純に比較することはできません。
「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」にも、「薬剤間の臨床効果を比較した臨床試験はわずかであるため、薬剤間の優劣を示すことは現時点では難しい。」と記されています。

外用の抗真菌薬の使い分けはどのように決めるのですか?

処方する際には、症状のほか、原因となっている真菌の種類・使用する部位・アレルギー歴や副作用歴の有無などを考慮して薬を決定します。

カンジダと水虫は同じ薬で治療することがあるのですよね。では、カンジダに処方されたものを水虫に塗ってもいいですか?逆に、水虫に処方されたものをカンジダの治療に使っていいですか?

たしかに、カンジダと水虫(白癬)の両方に適応がある外用抗真菌薬はあります。しかし、たとえ残薬があっても指示された部位以外に自己判断で外用抗真菌薬を塗布するのは避けてください。
皮膚の病変は見た目だけで判断できないものも少なくありません。また、使用部位が変わるだけで刺激感などの副作用が生じることもあります。自己判断で塗布範囲を広げた結果、感染範囲が広がる可能性も否定できません。
気になる皮膚症状がある場合は自己判断で残薬を塗るのではなく、受診して適切な薬剤の処方を受けるようにしましょう。

 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。