ルリコンとは?
ルリコン(一般名:ルリコナゾール)は、イミダゾール系の外用抗真菌薬です。真菌の細胞膜を構成するエルゴステロールの合成を阻害することで、抗真菌作用を示します。
「ルリコン(Lulicon)」という名称は、一般名であるルリコナゾール(Luliconazole)に由来します。
なお、ルリコナゾールを主成分とする医療用医薬品としては、ほかにルコナックがあります。ルコナックは爪白癬に特化した外用液で、ルリコンの5倍の濃度のルリコナゾールが配合されています。
ルリコンの特徴
ルリコンは、皮膚糸状菌やカンジダ属真菌、マラセチア属真菌に対してすぐれた抗真菌活性を示します。また、ほかの病原性真菌(酵母様真菌、アスペルギルス属真菌、黒色真菌)にも強い抗真菌活性を示します。
作用持続時間が長いため、1日1回の使用で十分な効果が期待できます。
ルリコンの使い方
適応疾患と使用回数
ルリコンには、軟膏・クリーム・液の3つの剤型がありますが、いずれも適応症は白癬(足白癬、体部白癬、股部白癬)、カンジダ症(指間びらん症、間擦疹)、癜風となっています。
使用回数は1日1回で、基本的にいつ塗っても構いません。しかし、入浴後は角質が軟らかくなっていて薬が浸透しやすいため、入浴後の使用がおすすめです。
ルリコンを足白癬に塗るときのコツ
軟膏・クリーム
人差し指の第一関節より少し多めの量が、片足分になります。水虫の症状のある部分だけではなく、足の指の間・アキレス腱のまわり・外側面にも塗って、感染の広がりを抑えるようにしましょう。
液
液は、使用の都度、容器を上に向けてノズルの先端部分を指で数回押して、中の空気を抜いてください。容器内に余分な空気が入っていると、内圧が高まって液が余分に出てしまうおそれがあります。
空気を抜いたらノズルの先端を患部に押し当ててください。先端部分を押すたびに薬液が出るので、何度か押して十分な量を塗布するようにしましょう。
ルリコンを外用する上での注意点
ルリコンを塗ってはいけない例・使用に注意が必要な例
ルリコンの成分に対して過敏症の既往歴がある方は、ルリコンを使用できません。また、眼科用ではないため、角膜、結膜には使用できません。著しいびらん面への使用も、避けてください。
なお、ルリコン液は軟膏やクリームに比べて皮膚への刺激が強いため、亀裂部分やびらん面に使用する際には注意が必要です。
ルリコンの副作用について
おもな副作用として報告されているのは、そう痒、発赤、刺激感、接触皮膚炎、疼痛、湿疹などです。ルリコンを塗布した部分にこのような症状があらわれた場合は、早めにご相談ください。
日常生活における注意点
ほかの治療薬との併用に関して
病気の治療で飲み薬などを服用している場合でも、ルリコンは使用できます。
ただし、ルリコンを使用している部位に、自己判断でステロイド外用薬を塗るのは避けてください。真菌感染症に対してステロイド外用薬を使用すると、症状が悪化するおそれがあります。
その他の外用剤も使い分けが必要なケースがありますので、併用したい薬がある場合は診察時にご相談ください。
保管法などその他の注意点
高温多湿を避け、常温で保管してください。特に液剤は添加物としてアルコールを含むため、火気を避けて保管してください。ただし、冷蔵庫・冷凍庫などに入れる必要はありません。誤用を避けるため、小さなお子さまの手の届く場所には置かないでください。
また、いずれの剤型も衣類に付着すると黄色く着色することがあるため、ご注意ください。
なお、液剤は合成樹脂を軟化したり、塗料を溶かしたりするおそれがあります。そのため、症状のある部位以外にはつけないようにしてください。
特定の患者さまの使用に関して
妊娠中の方への使用に関して
ルリコンの妊娠中の使用に関する安全性は、確立していません。したがって、妊娠中の方、あるいは妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ処方を考慮します。
お子さまへの使用に関して
幼いお子さまへの使用に関しては、臨床での使用実績が少ないため、安全性が確立していません。もっとも、「安全が確立していないこと」と「危険であること」は、必ずしもイコールではありません。実際の治療では、有益性と危険性を比較しながら使用の可否を判断します。
ルリコンの患者負担・薬価について
ルリコン軟膏・ルリコンクリームの薬価は、36.1円/g、ルリコン液の薬価は36.1円/mLです。各剤型の薬剤費は以下のとおりになります。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがルリコンクリーム10g/1本を処方された場合、ご負担金額は108.3円です(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- ルリコンと同じ成分の市販薬はありますか?
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ルリコンと同成分の市販薬はありません。ただし、ルリコンと同じイミダゾール系の抗真菌薬は、ドラッグストアなどでも購入できます。
もっとも、真菌感染症に罹患しているかどうかは医師でなければ判断が難しいものです。また、外用薬の塗布で症状が一時的に治まっても、治療を継続して原因菌をきちんと退治しなければ再発の可能性があります。
市販薬を使用しても症状が治まらない場合・再発を繰り返す場合・症状がかえって悪化する場合などは、早めに受診しましょう。
- どれくらいの期間、塗り続けなければなりませんか。
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原因菌の種類や感染部位により、治療期間は異なります。ただし、一般的に白癬などによる真菌感染症は、外用薬の塗布で治癒したように見えても原因菌が皮膚に潜んでいることが少なくありません。そして足白癬の場合、見た目の症状が改善しても3ヵ月は塗り続けることが必要だとされています。足白癬以外の場合でも治療には時間がかかりますので、治療の終了は医師の指示に従ってください。
- ルリコンとほかの水虫の薬を一緒に塗るほうが早く治りますか?
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抗真菌外用薬は、併用してもほとんど意味がありません。いずれの成分も、真菌に対して効果を発揮するメカニズムがよく似ているため、併用しても治療期間を短縮する効果が期待できないからです。
思わぬ副作用の発生を防ぐためにも、自己判断で外用薬を併用するのは避けましょう。
- ルリコンとルコナックは有効成分が同じですが、何が違うのですか?
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ルリコンとルコナックは、有効成分の濃度や適応症が異なります。
ルリコンは、いずれの剤型でも有効成分のルリコナゾールの濃度が1%となっていますが、ルコナックはルリコナゾールの濃度が5%です。
適応症は、ルリコンが白癬(ただし爪白癬を除く)・カンジダ症・癜風と幅広いのに対して、ルコナックは爪白癬のみです。また、ルコナックは爪内部に薬剤が浸透しやすく、臨床試験では塗布後24時間での累積透過量がルリコンクリームの4.2倍であったと報告されています。
- ルリコン液がうまく出てきません。先端をはさみで切ってもいいですか?
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液がうまく出ないからといってノズルの先端をはさみで切ってしまうと、容器を傾けたときに薬液が一気に流れてきてしまいます。絶対に切らないでください。
なお、ルリコン液はノズルの先端を患部に押し付けることで薬液が出るようになっています。薬液の量が少ない場合は先端を複数回患部に押し付け、十分な量を塗布するようにしてください。その他、使用方法でわからないことがある場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。