マーデュオックスとは?
マーデュオックス(一般名:マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は、活性型ビタミンD3誘導体であるマキサカルシトール(オキサロール)と、ベリーストロングクラスのステロイドであるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート)を配合した尋常性乾癬治療薬です。
マキサカルシトールによって表皮の過剰な増殖を抑制、表皮の肥厚を改善し、抗炎症作用を有するベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルで患部の赤みや腫れ、かゆみなどの症状を改善します。
マーデュオックスの特徴
臨床上の効果
乾癬の治療には、おもに活性型ビタミンD3外用薬とステロイド外用薬が用いられますが、両者を併用するケースも少なくありません。
その点、マーデュオックスは活性型ビタミンD3とステロイドを含む合剤なので、塗布の煩雑さや塗布時間の延長を解消し、同時に高い治療効果が期待できる薬剤といえます。
実際、尋常性乾癬の方を対象とした国内の臨床試験において、マーデュオックスを塗布したグループではマキサカルシトールのみを塗布したグループおよびベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用製剤のみを塗布したグループに比べて有意に症状が改善されたことが報告されています。
使用部位や剤型などについて
活性型ビタミンD3とステロイドの配合剤としては、ほかにドボベット(カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル配合薬:ドボネックスとリンデロン-DPの配合剤)がありますが、ドボベットは顔面に使用することができません。
一方、マーデュオックスは使用部位に制限がないため、顔面に使用することも可能です。
ただし剤型が軟膏しかないため、軟膏のべたつきが苦手な方・塗る部位や季節によって剤型を使い分けたい方・頭皮などの有毛部に病変が多い方にとっては、少々使いづらいかもしれません。
もっとも、軟膏のべたつきはドボベットに比べると少なめです。また、使用できる上限量が1日1本(10g)とわかりやすく、薬価はドボベットより安価です。また、剤型による使い分けに悩む必要がないのもメリットといえるでしょう。
マーデュオックスの効能効果・用法用量および使い方
効能効果・用法用量
マーデュオックスは、尋常性乾癬に適応があります。
通常、1日1回適量を患部に塗布します。なお、1日の使用量は10g(チューブ1本分)までです。
マーデュオックスの使い方
マーデュオックスは、尋常性乾癬の症状がある部位に乗せるように広げましょう。このとき、強くこすると刺激で症状が悪化・拡大したり、鱗屑がはがれたりすることがあります。皮膚に薬を擦り込む必要はありませんので、優しく塗布することを心がけてください。
治療が進んで症状が改善してくると、外縁部に盛り上がりが残ることがあります。このような場合は、盛り上がっている部分のみにマーデュオックスを塗ってください。また、小さな皮疹が点在している場合は、皮疹部分のみに塗布してください。
皮疹がない部分にマーデュオックスを塗布すると、ステロイドの影響で淡い赤斑が残ることがあります。
なお、爪に塗布するときは、爪の根元・爪と皮膚の境目・爪の先にも入れ込むように塗ってください。
いずれの場合も、薬を塗布したあとは手をよく洗い、正常な皮膚に薬が残らないようにしましょう。
マーデュオックスを外用する上での注意点
マーデュオックスを塗ってはいけない例
以下に該当する場合は、マーデュオックスの使用が禁忌とされています。
- マーデュオックスの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症および動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみなど)がある場合(感染症および動物性皮膚疾患症状を悪化させることがあります。)
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷がある場合(皮膚の再生が抑制され、治癒が著しく遅れるおそれがあります。また、感染のおそれがあります。)
マーデュオックスの使用に注意が必要な例
以下の場合はマーデュオックスの使用に注意が必要です。副作用の発現を防ぐために、該当する事項がある場合はあらかじめご相談ください。
- 高カルシウム血症がある場合、あるいはそのおそれがある場合
- 他の医療機関にかかっている場合、または皮膚科以外の診療科にも通っている場合。
- 現在、使用している薬(処方薬・市販薬ともに)がある場合。
- 健康補助食品を摂っている場合。
マーデュオックスの副作用
マーデュオックスの有効成分であるマキサカルシトールには、血中カルシウム値を上昇させる作用があります。これに関連して、マーデュオックスを使用すると重大な副作用である高カルシウム血症や急性腎障害の発生リスクが高まることが明らかになっています。このような重篤な副作用の発現を防ぐために、マーデュオックスは1日の使用量の上限が10g(1本)とされています。
ただし、1日の使用量が10gを下回る場合でも副作用が生じる可能性は否定できません。マーデュオックス使用中に、異常な口の渇きや倦怠感・脱力感があらわれたり、尿量の減少やむくみなどがあらわれたりした場合は、すみやかに診察を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
ビタミンDおよびその誘導体(アルファカルシドール、カルシトリオール、カルシポトリオールなど)、PTH製剤(テリパラチド)、カルシウム製剤(乳酸カルシウム水和物、炭酸カルシウムなど)を使用している場合は、副作用である高カルシウム血症があらわれやすくなります。使用している場合は、診察時に必ずご相談ください。
特定の患者さまへの使用に関して
腎機能障害がある方への使用に関して
腎機能障害のある方がマーデュオックスを使用すると、血中カルシウム値が上昇するおそれがあります。
そのため、マーデュオックスの使用に際しては、定期的に血液検査を行うなどして、慎重に治療を進めていきます。
なお、検査値に異常がみられる場合は、減量または使用の中止を検討します。
妊娠中の方への使用に関して
マーデュオックスの成分であるマキサカルシトールは、動物を対象とした試験で胎児への移行が認められています。また、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルについては、動物を対象とした試験で催奇形作用が報告されています。
このようなことから、マーデュオックスは妊娠中の方または妊娠している可能性がある方には使用しないことが望ましいとされています。
授乳中の方への使用に関して
マキサカルシトールを周産期および授乳期の動物に静脈内投与した試験で、出生児の体重増加抑制が認められています。また、分娩後哺乳中の動物に静脈内投与した場合において、乳汁中への移行を示唆する報告があります。
したがって、授乳中の方については治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続または中止を検討します。
お子さま、ご高齢の方への使用に関して
マーデュオックスは小児を対象とした臨床試験を実施していないため、お子さまに使用した場合の有効性・安全性は明らかになっていません。
高齢の方への使用は基本的に問題ありませんが、一般的に生理機能が低下しているため、使用が過度になると副作用の発現リスクが高まります。使用にあたっては、指示された用法用量を守り、塗りすぎることがないようにご注意ください。
マーデュオックスの患者さま負担・薬価について
マーデュオックス軟膏の薬価は152.9円/gです。1本10gなので、薬価は1529円/本になります。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は保険割合によって変わります。
例えば、3割負担の患者さまがマーデュオックス軟膏を10g(1本)処方された場合、ご負担金額は458.7円になります(薬剤費のみの計算です)。
なお、マーデュオックスにはジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。
よくあるご質問
- マーデュオックスとドボベットは類似品なのですか?どちらかがジェネリックなのですか?
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マーデュオックスとドボベットは、いずれもステロイドとビタミンD3を有効成分とする尋常性乾癬治療薬なので、その点では類似しているといえます。
しかし、マーデュオックスの有効成分はベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート)とマキサカルシトール(オキサロール)で、ドボベットの有効成分はベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロン-DP)とカルシポトリオール(ドボネックス)なので、まったく異なります。また、一方が他方のジェネリックというわけでもありませんので、ご承知ください。
- マーデュオックスとドボベットではどちらが強いですか?
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「薬の強さ」という点では、マーデュオックスとドボベットで大きな差はありません。「どちらがより高い効果があるのか」という点についても、現時点では明らかではありません。
治療では、症状や使用部位などに合わせて薬剤を選択していきますので、ご了承ください。
- マーデュオックスは乾癬以外に使えますか?
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マーデュオックスは、尋常性乾癬のみに適応があります。その他の症状・疾患には使用できませんし、処方もできません。なお、残薬がある場合でも指示された部位以外に自己判断で塗布するのはおすすめできません。
気になる皮膚症状がある場合は受診して、適切な治療や薬の処方を受けてください。
- マーデュオックスを塗ったら皮がむけました。副作用ですか?塗り続けても大丈夫ですか?
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マーデュオックスの副作用として「皮膚剥脱」が報告されています。そのため、塗布部位の皮膚がむける・はがれる場合は副作用の可能性が否定できません。ただ、乾癬の一症状として皮膚が剥がれ落ちることもあります。
このようなことから、皮膚の剥脱が副作用によるものなのかどうかは実際に診察してみないとわかりません。マーデュオックスの塗布が継続できるかどうかも診察時に判断しますので、早めに受診してください。
- マーデュオックスはどれくらい効果がありますか?
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国内で行われた臨床試験によると、マーデュオックスを1日1回4週間塗布したグループでは、50%の方が「症状(紅斑、浸潤/肥厚、鱗屑)がない」あるいは「軽微(薄いピンクがかった紅斑をともなうのみ)」と診断されています。なお、マキサカルシトール外用製剤塗布群で同様に診断されたのは26.9%、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用製剤塗布群では30.1%でした。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。