爪白癬治療薬「ネイリン(ホスラブコナゾール)」

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ネイリンとは?

商品名 ネイリン
一般名 ホスラブコナゾール
剤型 カプセル
適応菌種 皮膚糸状菌(トリコフィトン属)
保険適用 爪白癬(爪水虫)

名称の由来は、爪(NAIL)に薬物が入る(IN)ことからネイリン(NAILIN)と命名されました。

ネイリンの働き

ネイリンの写真

白癬(水虫)の原因となる菌は皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)という真菌です。一般的に皮膚糸状菌が皮膚に感染した場合は外用薬(ぬり薬)で治療することができます。

しかし皮膚糸状菌が爪に感染してしまうと、そう簡単にはいきません。一部の特殊な薬(クレナフィン®︎外用液やルコナック外用液)を除き、塗り薬は爪の中に浸透しにくいため効果を発揮できないのです。そのため爪白癬の治療を外用薬で行うのは難しいことが多く、内服薬が爪白癬治療の中心的役割を担っています。

そんな爪白癬内服治療薬の1つがネイリン︎です。ネイリン︎は、皮膚糸状菌を殺菌することに特化した薬です。保険適用の問題もあってカンジダや皮膚白癬の治療には使用できませんが、爪白癬には非常に有効です。

ネイリンの用法用量

1カプセル(100mg)を1日1回、12週間(3ヶ月間)内服します。食事のタイミングとは関係なく内服することができます。

ネイリンの説明

ネイリンをはじめとする抗真菌薬は少し変わったお薬で、飲んでいる期間だけ効く薬ではありません。ネイリンの場合は12週間内服することによって有効成分が爪の中に蓄積し、その後も効力を発揮し続けます。そのため、内服終了後もさらに12週間は治療効果が現れるのを待つ必要があります。なお、この合計24週間の間は爪白癬治療用の外用液を併用することはできません。

他の薬も併用した方が早く治りそうな気がするかもしれませんが、ネイリンの内服︎のみで十分な効果があると証明されているため、併用治療には保険が効きません。

また一旦変色・変形した爪を回復させる効果はなく、新しく生えてくる爪が健康なものになります。ちなみに足の爪が根元から先端まで全て生え変わるには、1年以上かかるといわれています。

ネイリンの有効性

開発中に行われた臨床試験のデータを見ると、その有効性がわかります。臨床試験には足の親指の爪白癬の患者さま153名が参加し、そのうち101名がネイリンを12週間服用しています。そして服用終了してから36週間後に治療効果を評価したところ、完全治癒(爪の濁りがなくなり、顕微鏡の検査でも白癬菌が見つからない)の方が59.4%、有効(爪の濁りが30%以上減少した)の方は94.4%にもなりました。従来の爪水虫治療薬(ラミシールやイトリゾール)と比べると、これはとても高い数字です。

ネイリンの副作用

肝機能障害

ネイリン内服中は、時に肝臓などに副作用が生じることがあります。この副作用は内服を開始してから5〜6週後に生じることが多いため、その前後に血液検査を行って肝機能をチェックします。また、この時期以外でも体調に異変を感じた場合には血液検査を行う必要があるかもしれません。

検査で中等度以上の肝機能障害がみられた場合には内服を中止し、他の内服薬か外用薬での治療に切り替えます。

軽度の肝機能障害であり、自覚症状もなければそのまま治療を続行することもありますが、その場合はこまめに血液検査を行いながら慎重に治療を続けます(ちなみにγ-GTPのみの上昇の場合は、あまり心配がいらないとされています)。いずれにせよ体調にも留意しながら適宜検査を行い、副作用のリスクをコントロールしていきます。

ネイリンの禁忌(きんき)

  • 本剤の成分にアレルギーをお持ちの患者さま
  • 妊娠中または妊娠している可能性のある患者さま

上記2つのいずれか、もしくは両方に当てはまる場合はネイリンを使用できません。その場合は、他の治療方法をご提案させていただきますのでご了承ください。また他のお薬にアレルギーがあるという方でも、ネイリンに対してアレルギーを起こしたことがなければ通常問題ありません。心配な方は医師までご相談ください。

ネイリンの使用上の注意

もともと肝機能障害をお持ちの患者さま

副作用の項目でも説明しましたが、ネイリン︎は肝臓に障害をきたすことがあるお薬です。そのため、もともと肝機能障害がある場合には慎重に様子を見ながら治療に当たる必要があります。肝機能障害がある、肝臓が悪い、肝硬変があるなど、肝臓に関して病院で何か指摘されたことがある場合は治療開始前に必ずお申し出ください。血液検査の結果があれば、参考にさせていただきますので受診時にお見せください。

他のお薬を使用中の患者さま

ネイリンには併用禁忌(一緒に使用してはいけない)のお薬や、併用注意(一緒に使用する時は要注意)のお薬がいくつかあります。数が多いのでここでは省きますが、常用薬がある方は必ずお申し出ください。普段内服しているお薬が全て記載されているお薬手帳をお持ちいただくと診察がスムーズです。使用している薬の名前がわからないとホスラブコナゾールを処方しかねる場合もありますので、ご協力をお願いいたします。

妊産婦・授乳婦・お子さまへの投与

ネイリンは動物実験にて胎児への影響が認められています。そのため妊婦又は妊娠している可能性のある女性には使用できません。内服中は授乳も避けましょう。

また妊娠を希望されている場合でも、内服中から内服終了後3ヶ月間は避妊を徹底していただくようお願いいたします。小児(16歳未満)への投与に関しても、現時点では安全性を証明するデータがありません。

その他の特徴

2018年に発売が開始されたばかりの新しいお薬です。爪水虫に対する内服薬の新薬が発売されたのは、約20年ぶりのことです。1錠817円(2021年8月現在)と高価で、まだジェネリック薬も発売されていないため、ネイリンで治療する場合には3割負担の場合3ヶ月間で約2万円の薬代がかかります。

よくあるご質問

ネイリン服用中に、お酒を飲んでも大丈夫ですか?

添付文書上、アルコールは併用禁忌とされておらず、摂取にあたり注意が必要ともされていません。
しかし、アルコールの摂取が肝機能に悪影響をおよぼす可能性は否定できません。そして肝機能に障害がある場合にネイリンを服用すると、肝機能がさらに悪化するおそれがあります。
そのため、ネイリン服用中のアルコール摂取はおすすめできません。
やむを得ず摂取する場合でも、過度の飲酒は避けてください。

ネイリンと同じ成分の市販薬はありますか?

ネイリンと同じ成分の市販薬はありません。そもそも、爪水虫に適応がある市販の飲み薬はありません。また、爪水虫に効果が期待できる外用薬(クレナフィン外用液やルコナック外用液)も、ドラッグストアなどでは販売されていません。
市販薬で爪水虫の治療は困難ですので、受診して適切な治療を受けてください。

ネイリンとほかの薬の飲み合わせについてもう少し詳しく教えてください。

ネイリンは、CYP3Aと呼ばれる酵素を中程度阻害することがわかっています。そのため、CYP3Aによって代謝される薬剤と併用すると、併用薬がうまく代謝されずに血中濃度が高くなるおそれがあります。
また、ネイリンの同系統の抗真菌薬によりワルファリンの作用が増強されることが報告されているため、ワルファリンとの併用にも注意が必要とされています。
なお、CYP3Aにより代謝される薬剤は多数あるため、個々の薬剤の飲み合わせについては診察時にご相談ください。

ネイリンは、どれくらい期間をあけたら再投与してもらえますか?

ネイリンは投与終了後も効果が数ヵ月間持続します。また、爪は生え変わるまでに1年以上かかる場合もあります。
そのため、再投与までの期間について一概に「〇ヵ月」と決めることはできません。ただ、ネイリンの効果持続期間を考慮して、通常は最低でも3ヵ月以上あけてから再投与の要否を検討します。
もっとも、爪に変色・変形が残っていても状態によっては再投与を行いません。例えば、爪の症状が少しずつ改善している場合は追加の治療をしないこともあります。また、爪の検査をして白癬菌が認められなければ再投与は行いません。
なお、再投与については、爪の状態だけではなく全身の状態(特に肝機能)などにも配慮して可否を判断しますので、ご了承ください。

ネイリンの服用を途中でやめるとどうなりますか?

ネイリンの服用を途中でやめても、効果は数ヵ月続くと考えられます。
しかし、服用期間が短いと十分な治療効果が得られないおそれがあります。服用の継続が難しい場合は、早めにご相談ください。

ネイリンを飲んでも爪がきれいになりません。本当に水虫が治るのですか?

ネイリンは、いったん変色・変形した爪をきれいに治す薬ではありません。新しく生えてくる爪を白癬菌のいない健康な状態にする薬です。
きちんと治療すれば、爪の根元からきれいな爪が少しずつ生えてきますので、焦らずに状態を見守ってください。

ネイリンを飲み忘れたら、どうすればいいですか?

飲み忘れた場合は、気付いたタイミングで1回分を服用してください。1日分の服用を忘れた場合は、次の日に1回分を服用してください。ただし、2回分を一度に服用してはいけません。

 

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