プロペトとは?
プロペト(一般名:白色ワセリン)とは、石油の成分から分離され炭化水素類の混合物を精製した油脂性の軟膏です。様々な軟膏の基剤として用いられる他、皮膚の保護剤や保湿剤として広く使用されています。安全性が非常に高く、長期間の使用あるいは広範囲への使用も可能です。
プロペトの特徴
保湿の重要性
まずそもそも皮膚にとって「保湿」は非常に重要です。人の体は普段から様々な外的な刺激(物理的な刺激・紫外線・アレルギー物質など)にさらされています。これらの刺激を直に受けているのは体の最も外側にある皮膚です。皮膚は通常、刺激に耐えうるバリア機能をもっているわけですが、乾燥していると機能が低下してしまいます。つまり、皮膚を保湿することはすなわちバリア機能を保って人体を守ることなのです。実際、肌が乾燥すると湿疹やアレルギーなどの症状が出やすくなります。加齢や季節の変化によって皮膚が乾燥することは避けられませんので、乾燥を感じた場合には積極的に保湿剤を外用しましょう。
保湿剤の種類
次に、代表的な保湿剤について解説します。保湿剤には医薬品だけでなく市販品もあり実に多種多様ですが、大きく分類するとモイスチャライザーとエモリエントの2種類に分けられます。
モイスチャライザー
モイスチャライザーは皮膚からの水分蒸散を抑えたり、皮膚の内部で水分と結合してお肌の潤いを維持することで保湿効果を発揮します。特に後者が重要で、加齢によって水分を保ちにくくなった肌にも有効といわれています。ヘパリン類似物質を含有する外用薬(ヒルドイドなど)や、尿素系外用保湿剤(パスタロン・ケラチナミン・ウレパールなど)が代表です。
エモリエント
プロペトは代表的なエモリエントです。エモリエントは皮膚の上にあぶらの膜を張ることで皮膚からの水分蒸発を防ぐのが主な作用です。体をこする癖がある方などは皮膚表面の皮脂が取れてしまうため乾燥肌になりやすいですが、そういった方にエモリエントを外用すると保湿効果が期待できます。プロペトの他にセラミドもエモリエントに分類されますが、セラミドは水分と結合する作用もありモイスチャライザー的な要素も併せもっています。
モイスチャライザーとエモリエントは保湿剤としてどちらが優れているというわけではありません。患者さまご自身の肌質や、使い心地、コスト、実際に使用してみて実感した効果など、様々な観点からそれぞれに最も適していると思われる保湿剤を使用していただければ結構です。
プロペトの皮膚保護作用
プロペトには保湿作用以外にも、皮膚を保護する作用があります。ご高齢の方で小さな傷ができやすい場合は、プロペトを外用しておくことで傷ができにくくなる予防効果が期待できます。また、できてしまった傷に対しても、患部の清潔を保った上でプロペトを外用しておくと傷の治りが早いことが多いです。
プロペトの使い方
基本的な使い方
必要量のプロペトを手に取り、優しく肌になじませます。外用薬は1gを手のひら2枚分の面積に塗るのが適量といわれています。塗り終わったときに肌がテカテカして、少しベタつくくらいが目安です。1日1~3回程度外用していただくことが多いですが、特に乾燥しやすいと感じる部位には4回以上外用しても特に問題ありません。
チューブとケースの違い
処方薬のプロペトの場合、100gであればチューブで、それ以外では軟膏ツボに小分けして処方されることが多いですが、中身は同じです。チューブは衛生的で、片手でもワンタッチで使用できるなどの利点があります。軟膏ツボは小さいものであれば持ち運びに便利であり、自宅以外で時々使用したい方には便利です。
プロペトを外用する上の注意点
副作用の心配は少ないお薬ですが、プロペトを塗りすぎて毛穴をふさいでしまうとニキビが悪化する場合があります。ニキビができやすい方は注意が必要です。また薬自体のべとつきが強いため、使用感が悪く感じる方もいらっしゃいます。
プロペトの患者さま負担・薬価について
プロペトの薬価は1gあたり2.38円です。例えば100gのプロペトを処方された場合、三割負担の患者様で71.4円の薬剤費となります(薬剤費のみの計算です)。これは他の保湿剤と比較しても安価であり、プロペトを使用するメリットの1つといえるかもしれません。
よくあるご質問
- プロペトを粘膜の近くや赤ちゃんに塗っても大丈夫ですか?
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小さなお子さまからご高齢の方まで、全身ご使用いただけます。
- ベタつく保湿剤が苦手です。ベタつきにくい剤型のプロペトはありますか?
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プロペトの剤型には軟膏状のものしかありません。ベタつきが苦手な方にはヒルドイドなど別の保湿剤をおすすめします。
- プロペトと他の保湿剤を併用しても大丈夫ですか?
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基本的には問題ありません。市販の保湿剤とも併用できます。ただしニキビができやすい部位に保湿剤を厚く塗りすぎると、ニキビが増悪する可能性がありますのでご注意ください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。