プロスタンディンとは?
プロスタンディン(一般名:アルプロスタジル アルファデクス)は、末梢血管拡張作用や血小板凝集抑制作用などを有する生理活性物質「プロスタグランジンE1」を主成分とする外用薬です。
局所の血流を改善して創傷治癒をうながすことから、通常は褥瘡(床ずれ)や潰瘍の治療に用いられます。
なお、「プロスタンディン」という名称は、「Prostaglandin(プロスタグランジン)」に由来します。
プロスタンディンの特徴
プロスタンディンは、褥瘡や潰瘍などの病変局所の循環障害を改善して、血管新生作用や表皮角化細胞増殖作用により肉芽形成および表皮形成を促進します。
臨床試験では、褥瘡や皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍、術後潰瘍)に対する有用性が認められており、これらにともなう自発痛の軽減や潰瘍面積の縮小、肉芽形成に効果が認められています。
なお、プロスタンディンは基剤に親油性の成分を使用しているため、塗布した部分が乾燥したり強い刺激を感じたりすることがあまりありません。また、その作用機序から、褥瘡ではおもに赤色期~白色期(肉芽組織や表皮が形成される時期)に使用されます。
プロスタンディンの効能効果・用法用量および注意点
効能効果・用法用量
プロスタンディンは、褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍、術後潰瘍)に適応があります。
潰瘍周囲から潰瘍部にかけて消毒・清拭したあと、1日2回、適量をガーゼなどにのばして患部に貼付するか、潰瘍部に直接塗布してガーゼなどで保護します。
効能効果・用法用量に関する注意点
プロスタンディンは熱傷潰瘍に使用できますが、治療の対象となるのは熱傷後の二次損傷により生じた熱傷潰瘍です。そのため、新鮮な熱傷については他の方法で治療を行います。
また、プロスタンディンによる治療は保存的な治療にとどまります。約8週間以上使用しても症状の改善が認められない場合は外科的療法なども検討しますので、ご承知ください。
プロスタンディンの禁忌・副作用など
プロスタンディンを外用してはいけない例
プロスタンディンを外用すると、有効成分がわずかながら体内に吸収されるため、全身に影響をおよぼすことがあります。そのため、以下の場合はプロスタンディンの使用が禁忌とされています。
- 重篤な心不全がある場合(心不全を増強させるおそれがあります。)
- 出血(頭蓋内出血、出血性眼疾患、消化管出血、喀血など)がある場合(出血を助長するおそれがあります。)
- 妊娠中または妊娠している可能性がある場合(アルプロスタジルには子宮収縮作用が認められています。)
- プロスタンディンの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
プロスタンディンの使用に注意が必要な方
以下の場合は、プロスタンディンの使用に注意が必要です。
- 心不全がある場合(心不全を増強させるおそれがあります。)
- 重症の糖尿病がある場合(網膜症など、弱くなっている血管からの出血を助長するおそれがあります。)
- 出血傾向がある場合(出血を助長するおそれがあります。)
- 胃潰瘍の合併症や既往歴がある場合(出血を助長するおそれがあります。)
- 抗血小板剤、血栓溶解剤、抗凝血剤を使用している場合(出血傾向の増強をきたすおそれがあります。)
- 緑内障や眼圧亢進がある場合(動物を対象とした試験で、眼圧上昇が報告されています。)
プロスタンディンの副作用について
プロスタンディンの使用にあたり、特に重篤な副作用は報告されていません。
比較的頻度の高い副作用としては、使用部位の疼痛や刺激感などが報告されています。
なお、副作用の症状や程度によっては、塗布の中止が必要な場合もありますので、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。
プロスタンディンを外用する上での注意点
感染に対する注意
プロスタンディンに抗菌作用はありません。そのため、使用前に潰瘍面を消毒・清拭する必要があります。万が一、感染があらわれた場合は、抗生物質を投与するなどの処置が必要となるため、症状の変化があらわれた場合は速やかに受診してください。
過剰投与に対する注意
プロスタンディンの使用量は、原則として1日あたり10gを超えないようにしてください。使用量が多くなると、有効成分であるアルプロスタジル アルファデクスを全身投与した場合と同様の症状があらわれるおそれがあります。
ガーゼ交換する際やプロスタンディンを塗布する際の注意
潰瘍の改善にともない形成される新生肉芽は、ちょっとした刺激で新生血管が傷付き、出血症状をまねくことがあります。そのため、ガーゼ交換などをする際は、十分に注意してください。
なお、プロスタンディンには壊死組織を積極的に融解する作用はありません。したがって、プロスタンディンを使用する前に必要に応じて壊死組織を除去してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、プロスタンディンとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
しかし、抗血小板剤や血栓溶解剤、抗凝血剤を使用している場合は、プロスタンディンの作用と相まって出血傾向の増強をきたすおそれがあります。そのため、これらの薬剤を併用している場合は診察時にお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中の方・授乳中の方への使用に関して
アルプロスタジルには、子宮収縮作用が認められています。そのため、妊娠中の方または妊娠している可能性のある方には、プロスタンディンを使用することはできません。
なお、授乳中の方への使用については、添付文書に特に記載はありません。
ご高齢の方やお子さまへの使用に関して
高齢の方の使用についても、添付文書上に特別な記載はありません。もっとも、高齢の方では抗血小板剤や血栓溶解剤、抗凝血剤などを併用しているケースが少なくありません。使用の際には、出血傾向の増強に注意しながら慎重に治療を進めていきます。
なお、プロスタンディンは小児を対象とした臨床試験を実施していません。ご家庭では、幼いお子さまが誤飲・誤使用することがないようご注意ください。
プロスタンディンの患者負担・薬価について
プロスタンディンには10g/本と30g/本の2規格があります。薬価は40.4円/gなので、10gは1本404円、30gは1本1,212円になります。
もっとも、患者さまにご負担いただく金額は保険割合に応じて変わります。例えば、3割負担の患者さまがプロスタンディンを30g処方された場合、ご負担額は363.6円になります(薬剤費のみの計算です)。
なお、プロスタンディンにはジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。
よくあるご質問
- プロスタンディンと同じ成分の市販薬はありますか?床ずれに使用できる市販薬はありますか?
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プロスタンディンと同じ成分の市販薬は販売されていません。市販薬のなかには床ずれに使えるものもありますが、対象となるのは軽度の床ずれのみです。
床ずれは、適切な処置を行わなければ症状が悪化するおそれがあります。したがって、床ずれが疑われる場合は早めに受診するようにしてください。
- プロスタンディンのチューブの首元にへこみがあるのですが……。これは不良品ですか?
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プロスタンディンのチューブの首元のへこみは、もともとついているものです。このへこみは、軟膏を最後まで出しやすくするためにあえて施されたものです。
輸送途中の傷や不良品ではありませんので、ご安心ください。
- プロスタンディンを塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
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プロスタンディンを塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布してください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗ってはいけません。使用量が多くなり過ぎると、出血などの副作用が発生しやすくなります。